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PhotoShare1.10の新機能とTwitterとのさらなる連携


Screenshot 2009.05.22 14.02.26 PhotoShareというサービスを開始して10ヶ月以上立つが、かなりユーザー数・投稿される写真も増えたので、そろそろ「人力によるカテゴリー分け」を試す時期が来たと判断して、Version 1.10 にいくつかの新機能を追加した。

 ピーク時になると、PhotoShareには一時間に500以上の写真が投稿され、「最新の写真」はあっという間に流れてしまい、しょっちゅうPhotoShareを立ち上げている私でも大半の写真を見逃すことになる。そこで少し流れの遅い「人気の写真」というものも用意してはあるのだが、「誰もが見たいだろう写真」を選び出そうという行為そのものに無理があるのでこれは根本的な解決にはならない。

 そこで、投稿者にある程度のカテゴリー分けをお願いしすることにより、自分の興味に合った写真を見つけやすくしようと導入したのが「コミュニティ」という機能。写真を投稿する際に、投稿者が「どのコミュニティ向けか」を指定できるようにしただけのとてもシンプルな機能だ。

 投稿先のコミュニティを指定するためには、まずは「コミュニティに参加」しなければならない仕組みにしてあるのだが、これはコミュニティの総数が増えた時に簡単に選べるようにという意味もあるが、他のユーザーがどのコミュニティに属しているかを見て、そこから自分が属したいコミュニティを発見できるように、という意味もある。

 ちなみに、今回のバージョンではまだユーザーが自由にコミュニティを追加できるような機能は提供していないが、今後のバージョンアップで順次対応して行く予定である。

 もう一つは、閲覧者がタグ付けできる「エモタグ」(Emotion Tagの略)という仕組み。「何に関しての写真か」はコミュニティの仕組みである程度把握できるので、ここは割り切って、閲覧者には「写真を見てなにを感じたか」という感情表現をすることにより別の角度からのカテゴリー分けをしてもらろうという仕組みだ。とりあえずは、Pretty!, Cool!, Adorable!(可愛らしい), LOL!(爆笑), Artistic!, Beautiful!, Yummy!(おいしそう)の7つのタグのみを用意しているが、後々追加できるように、サーバー側の変更だけで自由に追加できるようにしてある。

 まだこの仕組みを公開して日が浅いのでタグの数はそれほど多くはないが、すでにこの仕組みのおかげで、「Pretty!タグの付いた写真だけを見る」という楽しみ方ができるようになっており、今後の展開が楽しみだ。

 ちなみに、最近米国のマーケティング業界では「Twitterを使ったマーケティング」の話題で持ち切りなので、その勉強も含めて、7つのエモタグが付いた写真(もちろん「全員に公開」と指定したものだけ)のストリームそれぞれにTwitterの擬人アカウントを作り、そこに写真のタイトルとリンクを流す、という仕組みを作ってみた。Twitterユーザーの方はぜひともお試しいただきたい。
 これが果たしてPhotoShareのユーザーを増やすことに役に立つかどうかはしばらく効果を測定しないことには何とも言えないが、こんな形でTwitterとの連携ができることを実証できただけでもとても良い勉強になったと思う。

PhotoShare の Atom/JSON/JSONP Feed の正式発表

 PhotoShareの写真のFeedに関しては、少し前に実装が完了していたのだが、「サンプルをきちんと整えてから」などと考えているといつまでたっても発表できないので、とりあえずFeedのURLのみ発表してしまうことにした。


 PhotoShareの場合、ユーザーごとにユニークなIDが当てはめられている。iPhone上のPhotoShareからメアドを登録後に通常のブラウザーからログインして、"My Photo"を開いた時にURLバーに表示されるURLの最後の部分がそれだ。例えば私の場合、それが"http://www.bcphotoshare.com/photos/67"なので、"67"がユーザーIDとなる。

 そのユーザーIDを利用して、指定したユーザーの公開写真のフィードを Atom/JSON/JSONP の三つの形式で取得が可能である。以下が私のユーザーIDから生成した各種フィードのURL。


 アクセス回数制限のようなものは特にもうけていないので、ブログパーツを作るなり、RSSリーダーに読み込ませるなど自由に使っていただいてかまわない。何か面白い活用が出来た場合には、トラックバックなりコメントで知らせていただけるととてもありがたい。

外国為替相場取引(FX)で確実にもうける方法(必勝法)

 ワシントン大学で受講しているMBAもあと1ヶ月を残すところまで来たが、最後の期に受けている授業の一つが "International Finance" という外国為替に関する集中講座。今までいろいろと疑問に思ってきたことが一気に解消されたので大好きな授業の一つだ。

 その授業の中で、金利の低い外貨で借金をして家を買った結果巨額の借金を抱えることになってしまった人たちがアイスランドにたくさんいる話だとか、リスクを十分に理解せずに為替リスクを100%負って金利の高い外貨預金に走る日本の主婦たちなのど話が出たので、日本の事情に関して少し調べてみた。

 その結果分かったのは、為替相場にあまり詳しくない一般人にすべてのリスクを追わせて、自分たちだけは手数料で荒稼ぎしている業者が横行しているということ。

 たとえば「FXはハイリスク? - FX徹底比較!初心者が失敗しないFX業者の選び方」というサイト。書いてあることは一見まともだが、許せないのは

十分にリスクを把握して、損失を抑えて取引すれば 国内の好不況に関わらずに安定して利益を出す事も可能です。


という部分。まったくのでたらめだ。外国為替相場はすでに徹底的な効率化が進んでいて、頭を使ってリスクを負わずに確実に儲けられる部分(アービトラージュと呼ばれるもの)は24時間相場に張り付いているプロの相場師たちが数秒で吸い取る仕組みになっており、しろうとができることは運に頼ったギャンブルだけ。「安定して利益を出す事」など誰にもできない。

 ルーレットの赤黒に賭け続けるのと同じで、「長くやっていれば手数料の分だけ必ず損をする」のがしろうとにとっての外国為替相場。短・中期的にみれば儲ける人も損をする人もいるが、たまたまある時期勝ち続けることできた人を「安定して利益を出した人」とは決して呼ばない。

 ではなぜこれだけ多くの人がFXや外貨預金に手を出してしまうかというと、その複雑さ故に「頭を使いさえすれば儲けられそうな気にさせる」魅力があるからだ(パチンコの「確率変動」が「システムの裏をかいて大もうけが出来そうだ」という幻想を生み出すのと同じ)。

 たとえば、外貨預金が良い例だ。ゼロ金利で資金の運用先に困っている主婦に、

「10パーセントの金利が付くニュージーランド国債を買いませんか」

と持ちかけるのだ。

「為替のことは良くわからないから」

という主婦に、

「為替のことなら当銀行には専門家が沢山いるのでまかせてください。ちなみに、これが過去5年間の円とニュージーランド・ドルの相場の変動をグラフにしたものです。若干短期的には上下していますが、長期的にみれば安定しています。よほどのことがないかぎりこの傾向が続く可能性が高いと専門家たちは見ています。ニュージーランドの政権はとても安定しているので、イラクとかアフガニスタンとかの通貨に投資するよりは何十倍も安全です。10パーセントの金利ですから、100万円を5年間預けていただいた場合、相場に変動がなければ161万円になって戻ってくることになります。もちろん、ニュージーラン・ドルの相場が下がれば若干それよりは低くなりますが、元本割れする可能性はかなり少ないのは分かりますよね。それよりも魅力的なのはニュージーランド・ドルの相場が上がった場合。その場合、為替利益も上乗せされるので180万円とか200万円とかになって返ってくる可能性もあるわけです。」

「でも最近は円高の傾向にあるって新聞で読んだこともあるし」

「確かに一時的にはその傾向もありましたが、すっかり戻ったじゃないですか。知らない人も多いんですが、実は日本政府が積極的に介入して為替相場を安定させているんです。ソニーやトヨタのように輸出に頼った企業が多い日本としては、円高が進むとそういった企業の業績が悪くなり、国内の景気が悪くなってしまうんです。そこで日本政府としては為替相場をできるだけ安定させなければいけないんです。日本政府がこの金融政策を取り続ける限り外貨預金は安全、と見る専門家もいます。」

「日本政府がついているなら安心ね。じゃあ、まずは100万円お願いします。」

という感じだ。「過去の相場のグラフ」を見せたり「日本政府の介入」という言葉で説得力を増せば、経済知識のあまりない一般の人をだますことはそれほど難しくない。銀行とかには一応「説明義務」が課せられてはいるが、ほとんど役に立っていないのが現状だ。

 そもそも「ニュージーランド・ドルの金利がなぜ高いか」という経済原則に立ち戻って考えてみれば、通貨としてのリスク(=将来下がる可能性)が高いから金利が高いわけで、期待値は日本で預金していたのと同じ。本当にニュージーランド・ドルの魅力が高ければ機関投資家のお金が流れるので、為替と金利の両方が自動的に調整されているはず。その調整がされていないということは、市場全体が「ニュージーランド・ドルは将来下がる可能性が高い」と感じているという証拠。銀行のセールスマンが「今後の為替の見通し」に関して何を言っても耳を貸してはいけない。彼らは手数料を稼ぐことを目的に甘い言葉を投げかけているだけだ。

 結局のところカジノのルーレットと同じで、外貨預金を長期的に何度も繰り返していれば、リターンは日本で預金したのと同じことになり、トータルでは為替手数料分だけ損をするということになる、というのが経済の原則だ。

   ◇ ◇ ◇

 じゃあ為替相場で儲ける方法が全くないか、というとそんなことはない。一番手っ取り早いのは、人のお金を預かって、それで相場で勝負をすることだ。たとえば「利益がでた場合利益の20%を手数料としていただき、損失が出た場合は手数料はいりません」という条件で人からお金を預かって相場で勝負をし続けたとしよう。もちろん、ギャンブルなので利益が出る場合もあるし損失が出る場合もあるが、長くやっていれば平均して2回に一回は利益が出せるので、それで十分な手数料が稼げる。

 もちろん、長期的に見ればその手数料の分だけ客が損をすることになるが、かならずしも全員が損するわけでもないので、たまたま利益を出すことができた顧客だけをリピーターとして確保して残りは切り捨て、新しいカモを次々に見つけてくれば良いだけのことだ。

 香港あたりにはこんな形で巨額の利益を出し続けている相場師がいるそうだが、たぶん日本にもいるだろうから気を付けた方が良い。まあ広義では株式ファンドやヘッジファンドのマネージャーもほぼそれと同じことをしている訳で、その意味では決して最近始まった話ではないが。

【追記】参考までに以前に私がギャンブルについて書いた考察へのリンクをここに張っておく。FXとギャンブルの共通点を理解する上で役に立つと思う。

iPhone OS 3.0 に関してひと言

 米国のPR会社に勤める知り合いに「iPhoneの新しいOSに関してひと言」というテーマでインタビューを受けた。要約するとこんな感じ。


インタビュアー:3.0 に関してどう思うか

:Big Canvasのビジネスにとって一番プラスになるのは間違いなくPush Notification。昨年の9月にリリースされるはずだったので、その時から首を長くして待っていた。PhotoShareのようなコミュニケーション型のサービスにとって、Push型で情報を届けることは、携帯電話にふさわしいおもてなしを提供するという意味でも必須。3.0向けのSDKを入手し、開発をしているところだ。

インタビュアー:3.0でApp Storeはどうなると思うか

:私は常日頃から「AppleはGoogleやMicrosoftの18〜24ヶ月先を走っている」と言っているが、今回のアップデートで、Appleは業界のリーダーシップのポジションをまだしばらくは走り続けることを明確にした。Big Canvasのようなベンチャー企業にとって「適切なマーケットにタイミングよくものを出すこと」は何よりも大切。iPhoneと他のプラットフォームの差がこれだけ開いてしまうと、私のような開発者に「少なくともここ数ヶ月は他のプラットフォームのマーケットに目を向けなくても大丈夫」という安心感を与えてしまう。これがAndroidとかWindows Mobileのアプリ市場のスムーズな立ち上げをさまたげ、さらに差が開いてしまうという悪循環を起こしかねない状況だ。別の言い方をすれば、iPhoneは社運をかけてアプリを開発する魅力があるが、AndroidにもWindows Mobileにもそんな魅力はない、というのがベンチャー企業の経営者としての正直な感想だ。

 この手のインタビュアーは、はっきりとした意見を言ってあげると喜ぶので、多少誇張した面もあるが、それにしても最近のMicrosoftはどうしようもない。シアトル近辺にとびかう噂では、iPhoneの登場でWindows Mobileチームは完全に浮き足だってしまい、せっかく立ち上がりかかったエンタープライズ・ビジネスからコンシューマー向けに大きく舵取りをして、混乱の極みだそうだ。Windows Mobileにだけは手は出さない方がよさそうだ。

Appleが打つべき次の一手

 先日、宿題の形にしてあえて私の意見を書かなかった「Appleが打つべき次の一手」。さまざまな意見が集まって私自身にとってもとても良い勉強になったが、やはり戦略として重視すべきなのは

・iTunes storeという武器をいっそう強力なものにして誰も追いつけないところまで持って行く
・iPhone 向けのアプリの開発者が増えていることをアップルにとっての最大の武器にする
・$200〜$300という低価格のnetbooksがMacBookに与える値段圧力に対する戦略を立てる

の三点である。

 現在のAppleを見る限り「(Apple TVとかiCameraのような)新しい市場を開拓してビジネスを広げる」という戦略よりも、まずは「世界最大のデジタル・コンテンツ・ストアであるiTunes store」と「急激に増えつつあるiPhone向けのアプリの開発者」という二つの強みを徹底的に強化し活用して行くという戦略をまずは優先すべきように思える。

 しかし、そのためには稼ぎ頭であるMacのビジネスが他のパソコンメーカーの値段競争に巻き込まれないように細心の注意を払いつつ、パソコン業界のBMW(ルイビトンでも良い)の位置を確固たるものとして、キャッシュフローを生み出し続けるように保つことがとても大切である。

 上の三つの戦略に基づいて戦術レベルまで掘り下げるとこんな感じになる。

iTunes storeの強化
  • 映画の品揃えをNetFlixやAmazonに対抗できるレベルまで増やし、本気で「ビデオレンタルビジネス」の市場を奪いに出る
  • 米国のスタバでやっているような「無料WiFiを通して今流れている音楽をその場でiTunes storeから買える」というサービスを全世界の人の集まる場所で展開する (「iTunes store in the air」戦略)。
アプリの開発者の支援・活用
  • アプリの開発者の収益をさらに増やすような仕組みを次々に追加して行く(iPhone OS3.0がアプリ内課金や月額課金をサポートするのはこれが理由)
  • xCode/Cocoaに慣れたアプリの開発者がiPhone以外の端末でもビジネスが展開できるような仕組みを作る (↓下記参照) 
netbooks対抗
  •  MobileMe専用端末としてのnetbookを発売する
  • 「MobileMeを通じてMac本体とデータを共有する」 というシナリオに特化して設計する
  • CPUはIntelのATOM、OSはiPhone OSを元にしたものにする
  • キーボードはBluetoothでの外付け。 キーボードなしでも使える。 
  • 本体価格は$300程度に抑え、その代わりMobile Meの年会費$99を必須とする
  • この端末向けのアプリの販売をiTunes storeから行う
  • Amazonと提携し、Kindleの代わりにAmazonにこの端末を販売してもらう 
 ちなみに、これは「もし私がApple内部にいたらこう考える」というだけの話なので、決して「これが正解」と言っているわけでも、実際にAppleがこういう戦略を取るだろうと予想しているわけでもないので注意していただきたい。この業界で働く誰もが常にしておくべき「頭の体操」の一つだと思っていただければ良いと思う。

Appleの将来について考えてみる

 昨日のエントリーで、SWOT analysisという話をしたが、SWOTはStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(ビジネスを延ばす機会)、Threat(ビジネスをおびやかすもの)の頭文字をとったもの。既にStrengthとWeaknessに関しては書いたので、今日はOpportunityとThreatに関して。


Opportunity

 この業界をとりまく環境でAppleにとって最も好ましい現象は、若い人たちのライフスタイルの変化。パソコンや携帯を使いこなし、CDやDVDはもう買わずにiTunes storeや携帯サイトから音楽をダウンロードし、TVの前に座っているよりもパソコンや携帯をいじっている方がはるかに長いという「デジタル・コンテンツ時代世代」が急速に増えていること。

 この手の不連続な変化のことをパラダイム・シフトと呼ぶが、これこそがアップルにとって「家電の主役交代」を起こす大チャンスである。家電業界での現在の主役はPanasonic・Sony・Sumsungなどだが、彼らのビジネスはこのパラダイム・シフト前のライフスタイルに会わせたもの。パナソニックの開発陣がせっかくネットに繋がるテレビを作っても、「ネットに繋がるなんてよけいなことを言うと団塊の世代の人たちは買ってくれなくなる」という販売網と顧客ベースに立脚しているビジネスをしている限り、パナソニックのテレビのネットへの接続率は低迷したままだ。アクトビラが成功すると思えないのも同じ理由だ。

 もう一つのOpportunityはハードと販売チャンネルがばらばらなために世界規模のコンテンツ・ビジネスを展開することが難しくなってしまい成長が止まっている携帯コンテンツ業界の現状iPhoneで携帯業界に大きな風穴を空ける可能性。iPhoneのマーケットシェアは携帯電話全体で見れば高々1%だが、アプリケーションのダウンロード数という意味で言えば、既にJavaアプリすべてを会わせた数字を上回っているというデータもある(参照←これは米国のケース)。既に「iPhoneが売れているからアプリを作る面白いアプリが沢山あるからiPhoneを買う」というサイクルが始まっており、少なくとも市場規模でSony PSPやNintendo DSと並べるプラットフォームになることは目に見えている。

Threats

 Threatsの一つ目はnetbook。Macのビジネスが着実に伸びている理由の一つはiPod/iPhoneの成功によるブランド・イメージによるものだが、注目すべきは「主にネット・写真・音楽をするんだから、Windowsアプリなんて不要」というユーザーが増えているからこそ、Macへの乗り換えがスムーズに行われている点。そんなユーザーにとっては、「格好悪いWindowsマシンよりはクールなMacBook」はコストパフォーマンスをちゃんと考慮しても魅力的だ。そこに穴馬的な存在で表れたのが、netbookと呼ばれる$200-$300の超小型で低価格のミニノートブック。容量も処理能力も高くないが「主にネット・写真・音楽をするんだから、Windowsアプリなんて不要」というユーザーの一部がこちらに流れる可能性もあるし、それが間接的にMacBookの値段に圧力をかける可能性は十分にある。

 もうひとつのThreatsはandroid。スマートフォンだけでなくnetbookにも使うことが考慮されているようだが、「ハードやソフトでは儲けなくて良い」というビジネスモデルのGoogleがOSを提供しはじめた、というのは少しやっかいだ。Androidの存在は、ただでさえ低価格化が進んでいる携帯電話やパソコンの値段にさらに下降圧力をかけることになるので、その値段競争にまきこまれないようにうまく立ち回って今の粗利益率を保つことがAppleにとってはとても大切だ。

次の一手は?

 ではこのSWOT Analysisの結果、私がたどりついた「アップルが打つべき次の一手」はなんだろうか。せっかくなので、「宿題」としてこのエントリーではまだ書かないで置こうと思う。ぜひともコメント欄なりトラックバックなりでの活発な議論をしていただきたい。

AppleをAppleにしているもの

 ワシントン大学で受講しているMBAの授業もあと3ヶ月を残すばかり。来週から始まるクラスの一つが「General Management & Strategy」というクラス。Microsoftの戦略コンサルタントを勤めるCharles Hillというやり手の教授の授業は、スピード感とテンションの高さで大好きなクラスの一つだ。

 最初の授業が「Apple 2008」と題したケーススタディ。Appleの歴史を勉強した上で、Appleの長所・弱点、そしてそれを取り巻く環境を解析する(SWOT analysis)というクラスだ。妻が「あなたが教えるべき」というぐらい楽しいテーマなので、水を得たさかなの様にレポートを一気にまとめて準備完了。せっかくなので、キーポイントをここに書いてみる。

 Appleの強みはいろいろとあるが、「他の企業がそうかんたんにはまねできない強み」という意味で絞り込めば、以下の2つになる。

1. デザイン重視のカルチャー

 「Steve Jobsが商品のデザインの細かなところまで口を出す」という話は有名だが、単にそれだけの話ではなく、Jonathan Iveが率いるデザイン・チームの商品開発に関しての特権を与え、それを開発陣が許してしまうカルチャーを作ってしまったところにSteve Jobsのすごさがある。これが、iPod nanoやMac Book Airのような「ただただセクシー」なデバイスを作ることを可能にしている。

 一般のハードウェア・メーカーは、「デザイナーはケースだけ作っていればいいから、中身は俺たちにまかせろ」的なもの作りのカルチャーがしみついているので、デザイナーが「コスト度外視でネジが見えないようにして」とか「重くなってもいいからアルミの削り出しのケースを使いたい」などと言ってもなかなか通らない。「中身よりも外身が大事」「デザイナーの方がエンジニアよりも最終決定権を持つ」ぐらいの大きな変革を社内に起こさない限り、Appleのような製品はなかなか作れない。

2. iTunes Store

 iTunes Storeはその仕組みやコンテンツの充実度で既にMicrosoftやNokiaの2年先を走っているが、根本的な強みはそこにではなく、「既に数百万人のユーザーがiTunes storeでいろいろなものを抵抗なく買っている」という事実にある。だからこそiPhone向けのApp Storeはあっというまに成功をおさめたわけで、そんなユーザーを抱えていないMicrosoftやNokiaは仕組み作りだけでなく、ユーザー集めから始めなければならないから大変だ。特筆すべきは、iPhone向けのアプリの販売が、通信キャリアの課金システムを使わずに成り立っている点で、それが世界規模でのアプリの流通コストを極端に下げ、開発者を夢中にさせているのだ。

 そして弱みと言えば、この一点に限られる。

Steve Jobsの現実歪曲空間を作る力に頼ったビジネス

 Jobsがすごいのは、新商品の発表を一手に引き受けて見ている人を酔わせるプレゼン能力(Marketing)、とことん細部までこだわったデザインを追求するリーダーシップ(Design)、音楽業界や携帯電話業界の常識を塗り替える契約を交わしてしまう交渉能力(Business Development)の三つを持ち合わせ、文字通り業界を乗り越えたビジネス革新を起こしてしまったこと。Jobs抜きでどこまでファンをつなぎ止められるか、どこまでデザイン重視のカルチャーを維持できるか、業界の壁を乗り越えた革新を起こし続けることができるか、がこれからのAppleを担う鍵となってくる。

 レポートには、これからAppleはどんな戦略のもとにどんな商品・サービスを展開しているべきか、という話も書いたのだが、それは別のエントリーで書こうかと思う。

SamsungがWidgetプラットフォームをオープン化

 MicrosoftやNokiaがもたもたしている間に、あっというまに「開発者にとって最も魅力的なモバイルプラットフォーム」の座に付いてしまったiPhoneだが、他の会社も黙って指をくわえているわけではない。


 今回のCTIAで興味深かったのがSamsungのTouchWIZというプラットフォーム(詳細)。HTML+Javascriptベースのウィジェットを待ち受け画面で複数走らせるという、iPhoneとは大きく違うアプローチである。

 JavaやC++でSamsung端末向けのPhotoShareを提供しろと言われても「ちょっと勘弁」だが、HTML+Javascriptならば考えても良いかな、というのが正直なところ。そろそろパソコンやブログ向けのWidgetも作りたかったのでちょうど良い機会かも知れない。

 ちなみに、Samsungから開発キットが出るのだが、それを作っているのが私が取締役を勤めるUIEvolution。これまでは、独自の描画エンジンUIEngine向けのビジネスだけをしてきたが、これをきっかけにもう少し広い意味での「デバイスに依存しない形のアプリ開発環境」を提供しようという試みだ。

「戦略的OS」の開発がことごとく失敗している点に関する一考察

 90年代にIBM、Microsoft、Apple各社が巨額の開発費を投じて作っていた「戦略的OS」がすべて失敗してしまったことを皆さんはご存知だろうか?

 IBMが作っていたのはOS/2。元々はMicrosoftとの共同開発だったが、途中で仲違いをしてしまい、最後はIBMだけが細々とサポートしていたことすら覚えていない人が多いとは思うが、Windows95の成功であっというまに市場から消えてしまったのがOS/2。具体的な数値は公開されていないので分からないが、両社が数百人体制で数年間開発していたので、少なく見積もっても日本円で数百億円は投じられたことは間違いない。

 しかし、OS/2は少なくともリリースまで結びついたから良い方だ。悲惨なのは、Microsoftが開発していたCairoとAppleが開発していたTaligent (=pink)。

 Cairoの方は私自身が初期のころにいたこともあるし、最終的には「Chicago(Windows95のプロジェクト名) vs. Cairo」の戦いの最前線にいた私としては知りすぎている点も多いのだが、一つだけ確かなのは、プロジェクトとして最初からトップクラスのエンジニアを集めすぎて「船頭多くて船進まず」の状況になってしまった点。それに対して、「Cairoまでの場つなぎ」的な存在だったChicagoが少人数で経営陣の注目を浴びずにもの作りに集中できたのはラッキー以外の何ものではない。

 TaligentはMac OSに続く「次世代OS」としてAppleが'88年から開発しはじめ、途中でIBMとのジョイントベンチャーとしてスピンアウトしながらも空中分解してしまった幻のOS。開発はかなりの難産だったようで、'96年にNeXTを買収せざるを得なかったのはこのプロジェクトが失敗したことに加えてその後のOS(Copland)の開発までもが難航してしまったから、というのは有名な話。そのNeXTがOS Xという形で世の中に出たのは5年後の'01年のこと。MicrosoftがWindows95+WindowsNTで大攻勢をかけた90年代の後半にApple側のOSの進化が止まっていたというのは、Windowsがなぜあれほど成功できたかを説明する上でも歴史上の重要な事実。

 そして今のOSの市場を見ると、Linus Tolvaldsという個人がが作ったLinuxと、Steve JobsがAppleを追い出されて作ったNeXTを元にしたOS Xと、Cairoまでの場つなぎに過ぎなかったWindowsと、企業の中核戦略からはかけ離れたところで作られたものばかりが使われている、というのがなかなか面白いところ。

 「日の丸OS」だったはずのB-Tronもどこかに行ってしまったし、そもそも「戦略的OS」を意図的に作るってことにかなり無理があるんじゃないかと思える。結局のところ、ソフトウェア作りはアートに近くて、大企業が資金力にまかせて優秀なエンジニアを集めても無理があって、少人数で作ったものが市場原理で自然淘汰されてこそ良いものができると思うんだがどうだろう。


 

米国AppStoreのTop100に載るのに必要なダウンロード数はいつくか

ColorCanvasBasic アプリの数も2万5千を超え、まさにRed OceanとなったiTunes app store。こうなってくると、NTTドコモの iモードと同じで、トップランクに載るかどうかが勝負の分かれ目。


 一体どのくらいダウンロードがあればトップ100に入れるのか、というのはどの開発者も興味があるところ。

 今回、PhotoShareユーザーを増やす目的で意図的に無料で配布したColorCanvasが首尾よく米国のApp Storeのトップ100に入ってくれたので、ダウンロード数(米国のみ)を公開してみようかと思う。

3月26日 4117
3月27日 4632
3月28日 5557
3月29日 8227
3月30日 6145 
3月31日 6021 ←この日からランク入り
4月1日  6039

 アップルがランキングを決める時に何日前まで遡るかが明白ではないので、大体の目安でしかないが、過去の経験から見るに過去の2〜3日を見ているようなので、「過去三日の平均ダウンロード数が6000を超えたあたりでランク入りする」と考えて間違いはないようだ。

 「どうやったらそんなに沢山のダウンロードをしてもらえるのか」という質問が来そうなので先に答えておくと、「試行錯誤で学んでいくしかない」というのが正直な所。「どう作るか」の部分よりも「何を作るか」「どう見せるか」が大切なことだけは間違いないので、とにかくアプリを作って人に使ってもらって、そこから学んで行くしかないと思う。

 ちなみに、ColorCanvasは「iPhoneのPhotoShop」の地位を目指して開発しているPhotoCanvasの派生物。機能が多い分だけ「何ができるのか」が説明しにくくなってしまったPhotoCanvasのごく一部の機能を切り出して、より分かりやすい形にまとめただけの話だ。無料だからというのはもちろんだが、やはり「何ができるアプリなのかが明白」な部分が沢山の人にダウンロードしてもらえている理由だと思う。

AppBankインタビュー

 ここしばらくこのブログのアカウント(Typepad)の調子が悪くブログの更新ができなかったのだが、ようやく復活。サイドバーの問題もこれで解決できた。April Foolのジョークができなかったのが残念だが、しかたがない。


 ということで、復活第一弾は、日本にいた時に受けた、iPhone・iPod touchラボ×AppBank共同インタビュー」の話。

 仕事でもスポーツでもなんでも、新しいことを始めること利点の一つは、人との出会い。Big Canvasを立ち上げてから、いろいろと新しい知り合いが出来たのだが、その中でも極めつけの人たちがAppBankの二人。いろいろな意味で「正のオーラ」を出しまくっている人たちなので、そのエネルギーをもらうためだけでも日本に行く価値があるとも言える二人。

 私が3日しか日本に滞在しなかったにも関わらず、そこにNPO法人「ドリームワークス」の記者発表(参照 )と、「iPhone・iPod touchラボ×AppBank共同インタビュー」(参照 )を押し込んでしまう機動力は本当にすごいと思う。会社を二つ立ち上げ、MBAの授業を一通り受けてから、ようやく理解したのは、会社にとって一番大切なのは人だってこと。戦略だとかビジネスモデルとかは大切だけど、それだけでは絵に描いた餅。それを実際のビジネスに結びつける機動力・実行力を持った人材こそが会社の成功のためには必須。そんな力を感じさせてくれる二人だ。

 それはさておいて、インタビュー記事の副題が「生きてるだけで丸儲け」になっているのに笑った。これはもともとは明石家さんまの言葉で、「人間、生まれた時には何も持っていないんだから、後はひたすら得ることばかり。人生楽しまなければ損」というさんま独特の人生哲学。最近、歳をとるとともにますます好き勝手なことばかりしている自分の行動を説明するのにぴったりの言葉だから、便利に使わせてもらっている。

 ちなみに、インドに行って、いろいろな人に会ったり、さまざまな場所を訪れるうちに強く感じ始めたのが、いろいろな宗教だとか人生哲学すべてに普遍的に存在する共通項目のようなもの。

・「生きるためにしなければならないこと」と「やりたいこと」を同じベクトルに置くことができれば人生が楽しくなる
・「人のためになること」と「自分のためになること」を同じベクトルに置くことができれば人生が満ち足りたものになる
 
どちらも簡単には実現できる話ではないが、そういう形を求めていろいろと試行錯誤する過程そのものも楽しむことができれば、それこそ「生きてるだけで丸儲け」だと思うんだがどうだろうか。

単なる「低コストの外注先」ではなくなりつつあるインドのIT産業

 今週はMBAの授業の一環でインドのいくつかの企業を訪ねてまわっているのだが、今日行ったのはInfoSys。

 InfoSysは、Fortuneマガジンが"Top Companies for Leaders 2007' list"の10位に選んだ、インドの「IT産業」の花形。

 単なる表向きの宣伝ではなく、会社としての経営理念だとか、人の採用のしかたまで踏み込んだとても有意義なディスカッションができた。

 日本のIT産業と大きく違う部分をハイライトしてみると、以下のようになる。

1. 日本のITゼネコンのように下請けを使うことは一切せず、すべて社内のエンジニアが顧客のためのプログラムを直接作る。エンジニアの数はちょうど10万人を超したところ。

2. InfoSysにとっての一番の財産はエンジニアたち。社員教育にとても力を入れている。新入社員は数週間の合宿で基礎知識を徹底的に叩き込まれ、その後も6ヶ月はトレーニング期間。

3. 新入社員の年収は日本円にして50〜60万円。それが2〜3年後に一人前の仕事ができるようになると250万円程度になる。シニアエンジニアだと1000万円クラスもいる。絶対値だけだと日本よりも低賃金だが、昼ご飯を60〜80円で食べることができるインドの物価(ちょうど日本の10分の1ぐらい)を考えると、悪くない数字だ。

4. 基本給与に加えて、顧客の要望する品質のものをスケジュール通りに開発するエンジニアには、基本給の最大50%までのボーナスが支給される。このシステムにより、顧客の満足度を高めることを会社の理念の核に置いていることを全社員に徹底的に知らしめている。

5. 日本のようなSE/PGのような分け方はせず、顧客のビジネスの領域(例えば金融業)に詳しい「ビジネス・コンサルタント」とJ2EEとか.Netという個別の技術力を持つ「テクニカル・エキスパート」がチームを組んでプロジェクトを担当する。どちらの職種が偉いなどということは決してなく、キャリアパスとして、特定のビジネスの領域の知識で勝負するのか、特定の技術力で勝負するのか、を選ぶだけのこと。

6. InfoSysの売り上げの90%以上が海外(60%が米国)。「官庁からの受注でおいしい思いをする」なんてことはできず、すべて実力で顧客を勝ち取らなければならない厳しい環境に常に置かれて鍛えられて来たのがインドのIT業界。

 なぜInfoSysがここまで急速に成長できたかが良く理解できる話だ。国全体としてはまだまだ発展途上のインドだが、ことIT産業の外貨獲得額という話で言えば、すでに日本を大きく抜いている。エンジニアの待遇も労働環境も決して悪くない。インドのことを「単に値段が安いだけの外注先」と見下していると痛い目にあう。