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ユビキタス羊[3] ソフトウェアはサービス

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これは、このブログを利用して執筆中の「ユビキタス・コンピューターは電気羊の夢を見るか」の第3章である。以前の章は、以下のリンクからアクセス可能である。
 1.まえがき
 2.「端末は窓」の意味

 私がまだマイクロソフトにいた98年ごろ、私も含めたインターネット最前線にいた人々の口癖は “Software is Service” (直訳は、「ソフトウェアはサービス」であるが、「ソフトウェア・ビジネスはサービス・ビジネス」と言った方がより明確であろう)であった。今までの、「Microsoft Office△△を○○円で買ってもらい、その2年後に新しいバージョンへのアップグレードを◇◇円でしてもらう」という「売り切り」型のソフトウェア・ビジネスから、「Microsoft Office サービス」に月々○○円で加入してもらう(そして新しい機能は逐一追加していく)、というサービス・ビジネスへの変換をすべき時が来ていた。

 その背景には、2つの重要な要素があった。マイクロソフト・オフィスそのものの問題と、インターネットという新しいプラットフォームの脅威である。

 マイクロソフト・オフィスは、98年当時ですでに大半のユーザにとって十分すぎる機能を持っており、新しいバージョンを出しても既存のユーザーがお金を出してまでアップグレードしてくれないという状態にあった。その状況は、2004年の現在でもいっさい解消しておらず、ユーザーの多くが、古いバージョンのオフィスをパソコンを交換するまで使い続けている。その売り方ゆえに、小まめなアップデートをユーザーに提供する道がなく、プロダクトの進化も2・3年に一度と非常に遅いものとなってしまっている。ビジネスモデルを月額課金のサービスモデルに変更することにより、ユーザーの意見をすばやく反映した改良を小まめに提供していくことが可能になり、それによりユーザーのより強い抱え込みがしたかったのである。

 インターネットというテクノロジーが、マイクロソフトのウィンドウズ・ビジネスを脅かすほどのプラットフォームになりうることを最初に言い出したのはネットスケープという会社である。95年に書かれた、”Netscape One” という文書には、全てのアプリケーションをサーバー側からブラウザーを通して提供するウェブ・アプリケーションという構想が明確に書かれてあった。それにより、ユーザーをアプリケーションのインストールやアップグレードの苦役や、特定のOSの乗ったマシンを選ばねばならないという呪縛(つまりマイクロソフトの呪縛)から開放することが出来る、というのである。技術的には、正しくかつ革新的なことを言っており、マイクロソフトにいた私ですら関心してしまったほどの文書であった。(この「宣戦布告」にマイクロソフトが黙っている訳がなく、有名な「ブラウザー戦争」が95年に始まったのだが、その話は別の機会に書こう)。

 このインターネットの脅威に対しては、マイクロソフトは、インターネットとマイクロソフトの基幹ソフト(OSやブラウザーなど)を組み合わせたものをインターネット時代のプラットフォームとして提案することにより対応してきた。その新しい時代のビジネス・モデルは、従来の「売り切り」型のビジネスではなく、eBay や Amazon が提供しているようなサービス型のビジネスにであるべきことは、すでに見えており、そこでの先駆者になりたいという思いがあったのである。

 ただし、この「ソフトウェア・ビジネスはサービス・ビジネス」という考え方を突き詰めていくと、マイクロソフト・オフィスもゼロから作り直さねばならないし、ウィンドウズというOSのビジネスそのものも否定しなければならない。それ故に、あれから6年も発つのに、マイクロソフト自身のサービス・ビジネスへの移行は進んでいない。それに対して、過去のしがらみのない、eBay、Amazon、Google、Salesforce.com などがサービス・ビジネスでの先駆者として先を走ることができるのである。

 ここまで読んでくれば明らかだとは思うが、ユビキタス時代のソフトウェア・ビジネスもまさにサービス・ビジネスであるべきだ、というのが私の見方である。アプリケーションやコンテンツが特定の端末向けに開発され、ユーザーがそれを手作業でインストールして初めて動かすことのできる時代から、サーバーから任意の端末にアプリケーションやコンテンツに提供されるようになる時代には、アプリケーションは端末ごとに「売り切り」の形で売られるのではなく、ユーザーごとにサービスとして売るべきである。つまり、ユーザーはあるアプリケーション・サービスへ加入しすることにより、どんな端末(例えその端末が人から借りたものであれ)からもアプリケーションを走らせることが出来るようになるのである。言い換えれば、アプリケーションが端末に帰属する時代から、ユーザーに帰属する時代に変わるのである。

(続く…)

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