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アルファギークはLonghornの夢を見るか?

Sunset   Tim O'Reillyの定義によるとアルファギークとは、「産業を変化させる力を持つ新しい技術に早いうちに飛びつき、ああでもないこうでもないといじくっているうちに、技術が進むべき方向性を示し始める、先鋭的で飽きっぽいエンジニア(はてなの辞書より引用)」のことだそうである。そんなアルファギークたちが、マイクロソフトの次世代OSであるLonghornをそんな「産業を変化させる力を持つ新しい技術」とみなして、ああでもないこうでもないといじくり始めるような状況を作り出すことにマイクロソフトは成功するのだろうか、というのが今日のトピックである。

 結論を先に言ってしまうと、成功させるのはとても難しいと私は見ている。私自身、もしLonghornのベータ版で遊ぶか、Googleの新しいウェブ・サービスのベータ版で遊ぶかの選択肢を迫られたら、迷うことなく後者を選ぶ。アンケートをとったわけではないが、たぶんこのブログを読んでいる人たちの大半が後者を選ぶだろうことは簡単に予想できる。

 どうしてこんなことになってしまったのか、そしてそれが何を意味するのかを良く理解することが、今後の10年間を考えていく上では非常に重要である。

[どうしてこんなことになってしまったのか]
 単刀直入に言ってしまうと、「OSのイノベーションでは人々のライフスタイルを変えるほどの革新は起こせるとは思えなくなった」からである。エンジニアたちが、家族に文句を言われながらも仕事に没頭できるのは、「人々のライフスタイルを変えてしまうほどのインパクトを与える技術革新に寄与する」ことが何よりも楽しいからである。80年代後半から90年代にアップル、IBM、マイクロソフトが起こしたOS革命は、パソコンを我々の生活に無くてはならないデバイスの地位まで一気に押し上げ、人々のライフスタイルを変えた。そんな時代に、OSの開発やそんなOS向けのアプリケーションの開発に従事出来たエンジニア達は本当に幸せであった。

... しかし、Windows 95は、これ以上はないというほど良いタイミングでデビューしました。インターネットはまだ注目を集めておらず、すべての作業はクライアント上で行われていました。MS-DOSとWindowsを融合させたWin95は、それだけでも話題性のある製品でしたが、同時にその他のハードウェアメーカーやソフトウェアメーカーも新製品を発表しました。さまざまな出来事が同時に起こった結果、Windows 95のデビューは一製品の枠をはるかに超える騒ぎを引き起こしたのです。これらの出来事は他社によるもので、当社はその恩恵にあずかりました。... (CNet 「スティーブ・バルマーの楽観的未来予測」より引用)

 しかし、これからの10年を考えた時に、マイクロソフトがLonghornやそれに続くOSにどんな機能を入れてきたところで、OSのイノベーションに人々のライフスタイルが変わるほどのインパクトを与える力が持てるとは私にはどうしても思えないのだ(「PCのコモディティ化」参照)。それに比べると、GoogleやYahooが提供するウェブ・サービスやウェブ・アプリケーションには、明らかに「人々のライフスタイルを変えてしまうほどの」インパクトを持つ革命が潜んでいる匂いがする。現に、過去2~3年間で私自身が「ああでもないこうでもない」と遊んだ技術を列挙すれば、ブログ、RSS、skype、P2P、アマゾンのウェブ・サービス、Perl、AjaxGoogle MapFlickrはてな、となる。どれもウェブ・サービスの絡んだジャンルであり、OSまわりの新規技術で私の目を引いたものは一つも無い。

[これは何を意味するのか]
 この事態は、もちろんマイクロソフトにとって由々しき事態である。しかし、それは決してLonghornが遅れたからだとか、Longhornのプロモーションがうまくいっていないなどという小さな理由ではなく、そもそも「OSをイノベーションさせることそのものがエキサイティングではない」ことに根本的な原因があるので始末が悪い。多くのユーザーがマイクロソフトに期待しているのは、「ウィルスに犯されない」、「クラッシュしない」、「使っているうちに妙に遅くなったりしない」OSであり、それ以外のイノベーションはOSには求めていない、というのが一般的な見方ではないだろうか。

 しかし、だからといって看板商品であるOSのイノベーションを止めてしまうわけにはいかず、Longhornを出さざるおえないのがマイクロソフトの宿命である。まさに「イノベーションのジレンマ」に書かれているモデル・ケースのような道をたどっているのである。その辺りのジレンマはビル・ゲイツもスティーブ・バルマーも十分に承知の上で、ウィンドウズ・ビジネスで稼いだお金を利用してウェブ・サービス・ビジネスを立ち上げようと、MSNやXBox Liveに膨大な資金を投入しているのである。

 マイクロソフトで90年代にOSやブラウザーの革新を推し進めて来た「新しい技術が好きで飽きっぽい」エンジニア達が、2000年あたりを境にして流出し始め、ベンチャー企業を立ち上げたり、そういったウェブ・サービス・ビジネスの会社に移り始めたのも全く同じ理由である。Googleは最近、そんなエンジニア達の受け皿としてマイクロソフト本社のすぐそばにオフィスを開いた

 この厳しい状況に、マイクロソフトがどう対処するかは見ものである。莫大な資金と人材は明らかにプラスとしても、ウィンドウズとオフィスという二つの看板商品はプラスにもマイナスにもなりうる両刃の剣である。「新しい技術が好きで飽きっぽい」エンジニアの比率が減り、「安定して収入の得られる職が欲しくてマイクロソフトに入った」エンジニアの比率が増えてしまえば、例えマイクロソフト帝国であろうと崩壊は免れない。正念場である。

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