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ビル・ゲイツの家のトイレは流そうとすると「本当に流しますか?」と警告してくる

Ornament  今回のみずほ証券による株の誤注文事件は、1株を61万円で売るところを、オペレーターが誤って「61万株を1円で」と誤入力してしまったのが原因だが、その際に端末には市場価格との隔たりを示す警告が表示されたにもかかわらず、オペレーターが「(警告が)よく出るので慣れの中で結果的に無視してしまった」という点が注目に値する。

 以前にも、「事故防止の難しさ」というエントリーで触れたことがあるが、「不必要な警告をしょっちゅう見ているとそれに慣れてしまい、本当に対応が必要な時にも無視してしまう」というのは人間の性である。この手のミスをした人を一方的に非難したり、「これはヒューマン・エラーでした、今後はこのようなことを繰り返さないように注意します」と謝るのは簡単だが、それでは根本的な事故防止はできない。

 「不要な警告」と言えば、パソコンがその代表選手。ファイルを消去した時の「本当に消去したいですか?」という警告。編集中の文書ファイルをクローズしようとした時の、「セーブしますか?」という警告。

 なかば「パソコンとはそういうものだ」と思い込んで使っている人が多いと思うが、実はこれはパソコンの性能が低く、ハードディスクも無かったMS-DOSの時代から引き継いでいる「負の資産」なのである。

 今のパソコンの能力をすれば、ユーザーが行う消去や編集といった作業の全てを「取り消し・やり直し(undo/redo)」可能な形で全て保存することにより、一度消してしまったファイルを復活させたり、文書に対して行われた変更を全てリアルタイムでディスク上のファイルに反映させながらいつでも元の状態に戻せるようにしておくことは簡単にできるのである。そう作っておけば、色々な警告でユーザーをわずらわせる必要もなくなり、警告は「本当に必要な時」にとっておくことができる。

 では、なぜ今のパソコンはそうなっていないのだろうか。

 答えは「あまりにも多くのユーザーが、従来型の『何でも警告してくる』形に慣れてしまっているから、いまさらそれを変更すると、逆に混乱を招くから」という保守的な意見が主流だからである。

 私がマイクロソフトでスティーブ・キャップス(参照)と取り組んだプロジェクトの一つが、まさにこの問題を解決しようという試みであった。98年当時、キャップスと私は、"auto save"(全ての変更は警告無しに即座にディスクに反映されるが、簡単にやり直しができる)と "flat file system"(ディレクトリ構造をユーザーから完全に隠し、タグとサーチ機能を全面に出したファイルシステム)という従来とは全く異なる2つのユーザー・モデルの上に成り立つオペレーティング・システムのユーザーインターフェイスを提案し、プロトタイプまで作ったのだが、残念ながら商品化まで持って行くことができなかった。「既存のユーザーが混乱する」、「今のままでも何とかなっているのになぜ変更するのだ」という保守的な意見に押し切られてしまったのだ。

 今考えてみれば、パソコンという既存のユーザーが沢山いて、すでに一定のユーザー・モデルが確立してしまっているところに新しいユーザー・モデルを提案したこと事態に無理があったのだと反省している。携帯電話とかウェブ・アプリケーションなど、既存のユーザーの少ないところに提案していれば、もう少しすんなりと受け入れられたかも知れない。今なら非同期通信を利用して「AJAXなウェブ・アプリケーション」にぜひとも適用して欲しい所だが、その話は長くなるので別の機会に譲ろう(ちなみに、「UIE Japan」に参加していただきたいのは、この一文で私が何を主張しているかすぐにピンと来るような人だ→募集要項。「明示的なセーブが必要のないウェブ・アプリケーションのアーキテクチャー」というタイトルの小論文を添えていただけるとなお良い。)。

 ちなみに、このエントリーのタイトルは、数年前に、成毛氏(INSPiRE CEO、元MSKK社長)とロブ・グレーザー氏(RealNetworks CEO)と私との会食の際に誰からともなしに言い始めた、(何かというと警告文を表示する)ウィンドウズを皮肉ったデマである。

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「不要な警告」と言えば、パソコンがその代表選手。ファイルを消去した時の「本当に消去したいですか?」という警告。編集中の文書ファイルをクローズしようとした時の、「セーブしますか?」という警告。 なかば「パソコンとはそういうものだ」と思い込んで使っている人が多いと思うが、実はこれはパソコンの性能が低く、ハードディスクも無かったMS-DOSの時代から引き継いでいる「負の資産」なのである。 なるほど、そんな理由もあったか。 確かにまだコンピュータ自体のパワーが低い時代の「常識」がそのまま使われている面... [Read More]

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”flat file system”。たしかOSASKがコレを目指していたような……?マイクロソフトがあきらめたものを作っているというのはすごいかもしれない。 というか、この人すごすぎ……! 以下引用です。 98年当時、キャップスと私は、”auto save”(全ての変更は警告無しに即座にディスクに反映されるが、簡単にやり直しができる)と ”flat file system”(ディレクトリ構造をユーザーから完全に隠し、タグとサーチ機能を全面に出したファイルシステム)という従来とは全く異なる2つのユ... [Read More]

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*リンク先のblog記事が消えていたので、ちょっと中身を更新しました* **復活 [Read More]

Comments

&

先月携帯電話をMovaからFomaに買い換えましたが、このblog投稿と似たような状況で、警告、確認のダイアログが各所であがってきます。保存したいのだからすんなり保存してくれよ!とイライラしたり、「受信BOX」と押しているのにさらに「受信BOX」のフォルダを開かねばならなかったりと階層が深く非常にストレスがたまるようになりました。その上キー入力も重いので、もう早く買い換えたい欲求が溜まりに溜まっています。
Fomaは機能が豊富ですごいんだぞ!みたいに見えますが、必要な機能に最低限のアクションで到達できるMovaのほうがUIとしての完成度高いと感じました。
携帯ショップで模型しか触れず現物を操作できないのは問題ですね。

yas

「flat file system」とは、今の Mac OS X が Tiger (10.4) からやろうとしていることですね。こちらは Spotlight と名前がついていますが。Windows だと Google Desktop。ディレクトリ構造に慣れた私は最初慣れなかったけど最近使用頻度が多くなってきました。良いアイディアです。

ところで、東証のシステムは、発行済株式以上の値を入力しても「エラー」にならず「警告」だけというのは、常識的に考えてシステム的にありえないですよね?システムエンジニアなら試験行程で試験項目は当然上げてるはず。「(警告が)よく出るので慣れの中で結果的に無視してしまった」というのも、1円でしょっちゅう入力していたからでしょう(最低価格である1円を入力しておけば、最低価格の成り行きとなるためか?)。それは、常日頃証券会社の自己売買部門が価格操作を頻繁にやってることの表れではないでしょうか(このことは前々から不透明だとする人もいます。何しろ信用取引しても利子がつきませんのでそれだけでも一般投資家より有利な条件での取引です)。表向きニュースはバグみたいなことになってます、、確かに注文を取り消せなかったのはバグかも知れません、しかしありもしない値を入力してそれが通るシステムはそもそもおかしいはず。東証のシステムも仕様を公開すべきでしょう(オープンソースとまではいいませんが、仕様だけは公開されててもいいのではということです)。そうしないと胴元のシステムの「ルール」が本当のところどうなっているのか一般のゴミ投資家(資産額1億以下)はわからないままゲームを楽しんでいるのだと思いました。

satoshi

 98年までWindowsの開発に関わっていた身としては、以来ほとんど進化していない Windows とTiger とを比べるとかなり残念ですね。メディアはあまり叩きませんでしたが、Longhorn も OFS がオプションになった瞬間に、ファイルシステム周りのユーザーモデルの大幅な変更が不可能になったのがとても残念です。

snowbees

http://www.mainichi-msn.co.jp/keizai/kinyu/
毎日新聞の記事が詳しい。銀行の情報システムの近代化は、90年代に米銀がインドのソフトを組み込んで、日本を追い越したと言われるが、東証TSEの売買システムも同じ轍か?

snowbees

http://blog.goo.ne.jp/kitanotakeshi55/e/d1a952ec92c9f20dcd632f76cb807a09
アメリカの取引所は、リセットシステムがあると。
なお、今回の不当利得については、リーマンと日興に対して、返金の和解の予定と。

スイスイ

"auto save"!まさに理想です!!
人間様が入力したんだから、とりあえず記録しておいてよ!と思っちゃいます。まだまだ人間がコンピュータに合わせなきゃいけない場面が多いですよね。
やっぱり専門家の人は考えてくれていたんですね。実現されなかったのは残念です...。保守的な人も、実際に触れば考えが変わると思うんですけどねぇ。
そういった点で私が気に入って使い続けているのが、Palmです。入力した後に”保存”なんていう操作は不要で、まさに手帳感覚で使えます。
でも、Palmの現状を見ると説得力無いですけど。

satoshi

 そうなんですよ、その辺に関しては、Palm は本当に良くできていました(と、過去形になってしまうのが悲しいのですが)。実は、PocketPCのOS と PalmOS の根本的な違いは、"タスク"の概念が根本的に違うという部分に根付いています。PocketPC は、パソコンと同じくマルチタスクと呼ばれるOSで、マシンにとってのタスク=タスク、という作り方がされています。しかし、Palm はOSそのものはシングルタスクのOSで、ユーザーにとってのタスク=タスク、という考え方で作られています。
 そのため、Palmでタスクを切り替えるときは、「現在ユーザーがしていることをそのまましまう」、そして、タスクスイッチで戻った時には、「元の状態を出来るだけ回復する」ように作られています。ユーザーのためを思って作ったPalmOSと、「Windows と出来るだけ同じプログラミング環境を開発者に提供すること」を優先したPocketPCのOSの違いですね。

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