Ad Network

Sponsored Links


あわせて読みたい

  • あわせて読みたい

« CES、二日目 | Main | CES、10枚の写真 »

「50%の完成度でサービスを出す」という言葉を誤解してはいけない

051225_115117 はてなの近藤社長の、「50%完成度でサービスを出す」という指摘は、まさに「ソフトウェアはサービス」の時代を反映する、ものすごく意味のある言葉だが、万が一勘違いする人がいると困るので、自戒も含めて補足しておく。

 ここで言う「50%の完成度」とは、「サービスとして『完成品』と呼ぶにはまだ機能が十分揃っていない」という意味の完成度を指し、決して「アーキテクチャーや不完全だったり、明らかなバグがあるのにサービスインしてかまわない」という意味ではないので注意が必要だ。

 少し前に、私の会社で外部のエンジニアを使ってあるウェブ・サービスを作ったことがあるのだが、慣れていない人にプロジェクトのマネージメントをさせてしまったために(これは私のミス)、一応外見上は動いているものが出来てきたものの、スケーラビリティに明らかな問題があり、ユーザーの数が増えたときに破綻するようなものが出来てきてしまったのだ。

 担当者としては、サービスインの期日をどうしても守りたいので、「どうせ無料のベータ版だし、ユーザーが沢山集まるとは思えないので、このままリリースしてしまいましょう。問題点は後で直せば良いし。」と言う。確かに担当者の気持ちは分かる。彼のせいでリリース日が遅れるのは心苦しいし、ウェブ・サービスなのだから後でこっそりと直すことも可能なのだ。

 しかし、私としてはどうしても賛成できなかった。機能が不十分なものをベータ版としてユーザーに提供し、ユーザーからの要求を吸い上げつつものを作り上げて行くという「Web2.0的な」もの作りは、サービス提供者にとっても、ユーザーにとっても大きなメリットがある。しかし、明らかにアーキテクチャーに欠陥があったり、バグのあるサービスをベータ版として提供することが正しいとは私には思えないのだ。

 この場合は、明らかにスケーラビリティに問題があったので、当然だがそのベータ版を使ってサービスのスケーラビリティの測定をすることは出来ない。ベータ・サービスを続行したままアーキテクチャの変更をすることも可能は可能だが、できるだけサービスを止めずに、かつ、ユーザーのデータが消えてしまったりしないように移行するのには、明らかに余計なコストがかかるし、ユーザーに迷惑をかける可能性も高くなる。そう考えると、期日優先でベータ版をリリースするのは正しい選択とは思えなかったのだ。

 そうは言っても、ケース・バイ・ケースで、多少アーキテクチャに問題があっても期日内のサービス・インをした方が良い場合もあるのだろうとは思う。私がここで言いたいのは、「Web2.0の時代だから未完成なものをベータ版としてリリースすべき」という言葉を拡大解釈して、安易に欠陥のあるアーキテクチャーやバグのあるコードのままサービス・インしてしまう言い訳にして欲しくないということである。

 「さんま定食」と「しょうが焼き定食」しか作れない段階で定食屋をオープンするのは一向に構わないが、少なくとも「豚肉にはきちんと火を通しておかなければいけない」ことぐらいは頭に入れてから店を開けよう、ということである。

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://www.typepad.com/services/trackback/6a00d8341c4f9853ef00d8345a001069e2

Listed below are links to weblogs that reference 「50%の完成度でサービスを出す」という言葉を誤解してはいけない:

» β公開とは何を意味するのか from SW's memo
Life is beautiful中島さん宅にて「そりゃそうですよね」という、50%公開の方針について一言あったので備忘も込めて。 ここで言う「50%の完成度」とは、「サービスとして『完成品』と呼ぶに... [Read More]

» 「50%の完成度でサービスを出す」というスピード感 from おもいついたら書く日記
近藤淳也の新ネットコミュニティ論より 50%の完成度でサービスを出す ウェブサービスの場合、実際は半分くらいの完成度で出した方がうまく行く確率が高いと思います。 100%まで到達しない時点で公開をしたほうが良い理由は何でしょうか。 一つには、サービスはなるべく早..... [Read More]

» 柔軟性 from てすとぶろぐ
物事柔軟性が大事です。 最近、体が硬くなって...とかいう話ではなく、Webサービスの話。 最近ブログや、GoogleMap、ちず窓(紹介記事)、gooのRSSリーダWeb版(β版の紹介記事)、はてなブックマークなど Webサービスが面白くなっている。 こんなに増えると競争...... [Read More]

» [Internet Trend]集合知が機能するベータ版リリース from Casual Thoughts about Any Phrase
Nicholas Carrが”[http://www.roughtype.com/archives/2006/01/the_beta_cultur.php:title=The Beta Culture]”というエントリーでベータ版でWEBサービスを提供し、ユーザの声を反映しながら徐々によくしていくというGoogleの”Beta Culture”に対して吠えている。 While Google has certainly proved that it can produce wonderful pro... [Read More]

» hatenalabo from 未来のいつか/hyoshiokの日記
はてなラボのサービスhttp://hatena.g.hatena.ne.jp/hatelabo/20060221/1140521491と言うのは何がなんだかよくわからないのだが、なんとなく面白そうという感じのものだ。だけど、ヘルプも何もついていないので使い方が正直よくわからない。 さっそくLife is beautiful (http://satoshi.blogs.com/life/)さんが噛み付いた。いわく「50%の完成度でサービスを出す」という言葉を誤解してはいけないである。(50%の完成度で... [Read More]

Comments

satoshiさん、『50%の完成度でサービス開始する』についての適切なアドバイスを有難うございました。自分もsatoshiさんに賛成です。リスク管理から見ても、品質や拡張性の課題は致命傷となる可能性が大きいと予想されます。しかし、この方法は、比較的に、ベンチャー企業がとってきたアプローチ方法ではないでしょうか。すると、次のような疑問も浮かんで参ります。『大企業も同じアプローチを選択しているのか・・・』と。もはや、Googleはベンチャーというよりも、巨大すぎるほどの大企業に成長しています(時価総額で)。だからこそ、今後のGoogleのビジネスアプローチに関心がもたれます。なぜならば、"Six Sigma"や"Process Innovation"といった『Radical Innovation』(HBS)とは全く異なり、事例が少ないからです。新しいスキルが求められているのかも・・・。

satoshi さん、私もその意見に賛成です。「50%の完成度」に加え「永遠にβ版」という言葉もどうかなと思います。決して「いいかげんでよい」という発想ではないと思います。経験のない技術者に誤解を与える可能性があります。「Web 2.0」はいろいろな要素が挙げられていますが吟味が必要だと思います。
Google も、Analytics で大失敗をおかしています。私はリリース初日に登録しましたが(申し込みが殺到し)未だサービスが行われていません。「タダだから許してね」…確かにそうかもしれませんがそんな発想は今回限りにしないと企業として Google もヤバいと思うし(一時期の MS のようにバグだらけのβ版をリリースして信頼を失う/最近はよく試験しているようでよくなりました。しかしそれがリリース遅れの原因になってはいますが)、Analytics のサービスでは Google もリリース後のユーザーサポート体制や運用体制で学んだことがあるのではないでしょうか?
こういうことは Google が優れているとみんな思ってるから誰も文句が言えないし、言わないだけなんだと思います。

定食屋の例は、わかりやすかったです。

 オープンソースの作者さんで、コンセプトだけ提案、と言う形で不完全ですけど、と公表しているのはありますが、企業でそれをやったら他所にアイディアを盗られて より完成度の高いサービスを先に出されて終わりですよね。近藤社長のおっしゃる 50% の完成度、と言うのは、後から考えると 50% だったというだけで、出した時点では少なくとも本人(達)は 100% と思っているのではないでしょうか?
 論文を出すときに 出版社から同じ分野の研究者に依頼して意見をいただいて、一〜二回書き直しをしたうえで(peer review とか査読と言います)出版します。頼まれなければ他人の間違いを見つけても「へへ〜ん」で終わって指摘してもらえることはないでしょうから、間違いのない情報を発信するためには良い仕組みだと思います。
 近藤社長のおっしゃることは コメントやトラックバックを通じて社会的に peer review する仕組みができあがりつつあることを示しているのではないかと思います。ショウガ焼きに火が通っていなかったら、「ネット上の口コミ」でその噂が伝わってその店がつぶれるだけ、なのでしょう。そこから学ぶことのないヒトはそのうち review もしてもらえなくなるのでしょう。
 ...他人事じゃないですが、信用第一、という言葉を思い出しました。

Satoshiさん、「β版でサービスを開始する」に関しまして、先日、Googleのアプローチに関心がもたれるとコメントさせて頂きました。その後、Googleでさえも、その施策に多くの課題を抱えていることがeWEEKの掲載記事"Google Video Is Not So Eye-Catching"から理解することができます。おそらく、「β版サービス」について、お客様から受け入れられるために必要な条件として『提供されるサービス自身が魅力あるものであり、常にワクワクさせる感を与える』ことが重要なのかもしれません。期待に反した行為は、大きなリスクとなる可能性があると予想されます。
*URL: http://www.eweek.com/article2/0,1759,1909600,00.asp?kc=EWRSS03119TX1K0000594

 確かに、Makiさんのご指摘の通り、Google のベータ・サービスですら色々と問題を抱えていますね。ベータ版をリリースする理由の一つは、そういった問題を洗い出すことにもあるので、たとえネガティブなフィードバックであっても、それが Google そのものの評判を落とすことになったりしなければ、彼らにとってプラスに働くことにはなる、という所が微妙ですね。
 逆に Microsoft の Vista のように4年も5年も作りこんでからリリースすると、時代遅れになってしまったり、ユーザーの必要としない機能に過大な投資をしてしまうリスクもあるわけで、必ずしも「どちらが良い」とは言えない所が難しいですね。
 ただし、一エンジニアとして私自身を考えた場合には、やはりユーザーからのフィードバックがリアルタイムで受けられる Google 的なアプローチに強い魅力を感じます。一冊の本を何ヶ月もかけて書くのは孤独で苦痛な作業ですが、週に二~三回、読者からのフィードバックを受けながらブログの記事を書くのはとても楽しいですから。

Satoshiさん、『ソフトウェア・サービス提供に関するβカルチャ』はまさに、MSが出来なかったことをGoogleが、実践として効果的に市場に浸透させているのではないかと思われます。そのおかげで、かつて訴訟の対象となっていたものが、"betas" という名のもとで市場サーベイまでもが行える・・・。『Google Affects』は市場文化をも変えるほどに大きな影響力を持っていたと予想されます。同社の今後のアプローチに興味がもたれます。

 99年の末ごろ(私がマイクロソフトを辞めるすぐ前)のことですが、マイクロソフト内部に「これからは6ヶ月ぐらいのサイクルでもの作りをする会社に代わるべき」という声が高まった時期があります。しかし、ゲイツは「そんなことはどんなベンチャー企業でもできる。マイクロソフトはマイクロソフトでしか出来ないことをしてこそ、勝てるんだ」と強く主張したことを覚えています。今考えてみれば、ゲイツの主張がいかに間違っていたかが良く分かりますね。

Post a comment

If you have a TypeKey or TypePad account, please Sign In