午前三時のルースター
期待に胸を膨らませて読み始めた、宮部みゆきの「名もなき毒」が、大はずれで読むのに二週間もかかってしまったので、少し読書に食傷だったのだが、この「午前三時のルースター」は最高。飛行機の中で一気読みをしてしまった。
垣根涼介は作品数は多くないが、ヒートアイランドといい、これといい、登場人物は魅力的だし、ストーリーには説得力があるし、ひさびさの逸材だ。宮部みゆきの若いころの作品(レベル7とか龍は眠る)に匹敵する。
しかし、最近の宮部みゆきはいったいどうしてしまったのだろう。相変わらず文章はうまいし、人物の描きこみは天下一品だが、登場人物が魅力にかけるし、ストーリーに迫力がないのである。「理由」あたりの作品からその傾向が見られるが、「宮部の本は全部買う」私のようなファンがいることを良いことに、出版社の人が時事ネタからあらすじを決めて、それに宮部が肉付けして出版しているんじゃないかと思えるような単なる「技巧作品」が多いのが、ファンとしては本当に悲しい。
その点、垣根涼介はまだまだ「アツイ」作家である。こんなストーリーを書きたい、こんな登場人物を描いてみたい、という作家の情熱が文章からあふれ出てくる。
ちなみに、「何もかも忘れて一気読みをせずにはいられないぐらい」面白い本というのは、「健康に悪いと思いながら、スープを全部飲まずにはいられないぐらい」おいしいラーメンに通じる部分があると思うが、いかがだろうか。そう考えると、最近の宮部は、チェーン店化して味が落ちてしまったがブランド力だけで相変わらず集客力のある行列のできるラーメン屋、という感じか。垣根さんには、チェーン店は開かずに、今までどおり店は小さくとも一杯一杯心のこもったラーメンを作り続けて欲しいものである。
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