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なぜ「iPhoneキラー」がことごとく失敗するのか

 MBAの授業の一環で、"Marketing Myopia" (by Theodor Levitt) という1960年に書かれた論文を読む機会があったのだが、色々とうなずけるところがあったので、メモ代わりに。

 家電メーカーのような技術系の会社は、どうしても技術系の人が経営者になりがち。技術系の人は(私も含めてだが)色々な問題を論理的に解決しようとする。技術的な問題を解決するためにはこのアプローチはとても有効だが、消費者心理のように曖昧で非論理的なものには適用できない。

 技術系の経営者が陥りやすい失敗は、自分がコントロールできる分野、すなわち、技術的に難しい問題を解決することにばかりエネルギーをそそぎ、非論理的で簡単にはコントロールできない消費者の動向のようなものに十分な注意を払わないこと。

 その結果、「消費者はどのみち論理的な行動なんてしないんだから、それに関して色々と戦略を立てたところで無駄」という発想の元に、「良いものさえ作れば売れる」というプロダクト指向・技術指向の経営に陥ってしまうこと(自分が得意なところで勝負したがるのは人間の常)。その結果が、消費者のニーズを無視した「ひたすら大きなテレビ」「ひたすら高性能なパソコン」「ひたすら高機能なケータイ」作りである。

 最近やたらとアップルが成功しているのは、やはり「マーケティングの天才」であるスティーブ・ジョブズがトップにいるから。iPhoneには加速度センサーやマルチタッチなどの最新の技術が使われてはいるが、そこに惑わされてはいけない。iPhoneが「業界全体を揺るがせるほどのインパクト」を持っているのは、とことんにまで使う人の満足度を高めるために綿密に設計された「消費者指向」のもの作り・マーケティングの結果であるから。

 加速度センサー・マルチタッチという最新の技術を持てば他社と差別化できると思って入れたわけではなく、使い勝手の向上のためには加速度センサーとマルチタッチが不可欠、という理由で入れている点に注目すべき。カメラの画素数が日本のケータイほど高くないのも、画素数を上げてもユーザーの満足度には繋がらないから。スペック競争の消耗戦におちいりがちな日本のメーカーとは大違いだ。

 正面にボタンが一つしかないこと、箱を開けるとすぐにiPhoneが見えるように梱包されていること、iPhone SDKのNDAがあれほど厳しいこと、シリアルナンバーが刻印されていること、薄くて軽い割には妙に質感があること...そういった一見あまり本質的でない部分でのこだわりが、実はユーザーの満足度に直結しているということは、技術一本やりの経営者にはなかなか理解しにくいのかも知れない。

 色々なメーカーから「iPhoneキラー」を自称するデバイスが出て来ているが(例:Samsung’s Instinct)、どれもが全く対抗出来ていないのは、それらの企業が技術面・プロダクト面でしかiPhoneを見ていないから。アップルがどうやって消費者の心をつかんでいるか、どうやったら多少の欠点までもかわいく思えてしまう熱狂的なファンを作っているかを理解した上で戦略を立てない限り、差は開くばかりだ。

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Comments

ぶらりん

このカテゴリーのデバイスがiPhone以外全滅だったとして、いや全滅まで行かないとしても(出荷台数その他のベンチマークで)差が開くばかりだったとして、そのカテゴリーは存立できるのでしょうか?そのカテゴリー一点に絞ったビジネスは維持できるのでしょうか。

思い出します。US市場でPalmというキラーPDAが昔あったことを。。。。2年もしたら誰も使わなくなりましたけどね。

Trans

ちょっとソースを失念したのですが、たしかジョブズはここ数年Appleは市場調査をほとんどしていないと語っていました。

この言葉を素直にとると、iPhoneやiPodは綿密な市場調査結果の産物ではなく、いかに自分たちが使いたい物、欲しい物を創作してきた結果であるということになるのだと思います。

higekuma3

技術力が、かつてあった技術者出身の
経営層って、
文化系のバランスのよい企画を
受け入れられないみたいなんですね。

MDが、頑張ってた頃。
CD-Rが6000円だった頃に、
音楽は、
CD-Rとシリコンメディアに置き換えられる予定です。
なぜなら、メディア単価の安さは、そこにいきつくからです。

ってプレゼンしたら、
追い出されてしまいましたよ。

10年以上前でも、
半導体のプロセスを考えると、
あっと言う間に、
100円切るのは、自明の理だったんですけどね。


自分の作り上げた
技術に固執しちゃうんですよね。
技術者って。


技術者じゃないと、
システムとかプラットフォームにしか
思い入れがないから、
いくらでも、
乗り換えちゃう。


そう考えると、Jobsさんは、
何かの、技術を確立した人では、ないのかも
しれませんね。

hige

iTunes Music Storeが100万曲突破したって?最初は物珍しさや新しい物好きが買うだろうけど、すぐに下火になるだろうね。みんな飽きるの早いし。

iPodなんて所詮流行物だし、すぐに廃れるよ。

Palmだって一時期流行ってもすぐ消えたしね。過去の例から考えても成功なんてしないだろう。

DAPなんて売れないし使いづらいしニッチな市場でしかない。

タッチパネル操作は使いづらいから有り得ない。

そもそも市場がない。

携帯電話事業は既に成熟しきっていて、革新の余地、新規参入の余地などない。


多分、↑のようなコメントを一度は聞いたり読んだりしたことはあるだろうし、その時々、その時点ではこれが多数派の意見。相変わらず否定から入る人がやたら多いけど、何故駄目なのかとか、こうすれば良いなんて考えない。まずは否定。とりあえずは否定。「それは過去に失敗してるから駄目だろう」「みんな飽きやすいからすぐに廃れる」 それが社会の常識。

一言で言えば、過去の例から否定=思考停止なんだと思う。すぐ飽きるよw は?エコシステム?なにそれ? Palm駄目だったじゃんw は?技術の進歩?インターネット?え、なにそれ?

稲田

うーん、正直に言って、画竜点睛を欠く分析かと。


>最近やたらとアップルが成功しているのは、やはり「マーケティングの天才」であるスティーブ・ジョブズがトップにいるから。


>とことんにまで使う人の満足度を高めるために綿密に設計された「消費者指向」のもの作り・マーケティングの結果であるから。

教科書回答的にはそういうことになるのかもしれませんが、結局のところ
アップル(ジョブズ)と他の家電メーカーの一番の違いは、厳密に言うと、
「ユーザーの満足度を考えているかどうか」じゃなくて、
(ジョブズが)理想としている、本気で欲しいものを作ってるかどうか、
だと思うんですが、いかがでしょう。
自社社員でさえ普通に欲しいと思うようなプロダクトといいますかな。

単にユーザーの満足度を考えているだけでは、ユーザーを牽引して、
さらに時には「我慢」さえ強いるようなあのカリスマ性は説明できないと思うんですよ。
どれだけ本気で理想を貫いているか、といいますかな。

おもてなし、だけでは人はついてきませんよ。

higekuma3

というか、
アップルが、「MS以上のMS化」のほうが
怖いです。

gagne

>その結果が、消費者のニーズを無視した「ひたすら大きなテレビ」「ひたすら高性能なパソコン」「ひたすら高機能なケータイ」作りである。

個人的には、「消費者のニーズを総て詰め込めば売れるだろう」的な発想が「ひたすら高性能・高機能な○○」作りとして現れていると考えます。その結果、消費者は使いもしない高性能・高機能を買わされてしまっている。
「顧客第一主義」が物作りをダメにしてるのでは?と思います。

iPhoneが革新的に素晴らしいかと聞かれたら、Noと答えます。
でも、楽しいかと聞かれたらYes!と答えます。

humu

昔,電話線を握り締めてAppleTalkだ!って叫んで失敗してましたね・・・
結局のところ成功し続けることも失敗し続けることも無いってことなのかと
バクチに賭ける意気込みも規模も常人が理解できる範囲を超えてるから成功したときに
「すごい!」と思うのだろうけど

Daddy

アップルのように、作り手がいいと思うものを追求する会社がある一方、Ebayのようにユーザーのフィードバックを元に進化して成功する会社もあります。はたしてどちらがいいものか。

たとえばソニーみたいに失敗した会社に向かって「ユーザーの声を聞かずにメーカーが好きなものを作るからだ」「独自の技術やフォーマットをユーザーに押し付けるからだ」というのは簡単ですが、じゃーアップルはどうなのかと。

最終的には経営者のセンスなのでしょうが、そう一言で片付けるのもちょっとなあ。

権兵衛

>(ジョブズが)理想としている、本気で欲しいものを作ってる

その結果市場で売れる製品を作っている、というのが
マーケティングの天才ということなんでしょうね。
彼の場合。

権兵衛

>このカテゴリーのデバイスがiPhone以外全滅だったとして、
>いや全滅まで行かないとしても(出荷台数その他のベンチマークで)
>差が開くばかりだったとして、
>そのカテゴリーは存立できるのでしょうか?
>そのカテゴリー一点に絞ったビジネスは維持できるのでしょうか。

現に iPod や Mac はビジネスとして維持できているので、
iPhoneの場合も問題無いでしょう。

もちろん、もう少し広く見た「携帯電話」とか「パソコン」とかの
カテゴリーは厳然として存在しているわけで。

ヤマグチリョウタ

この分析自体、大変失礼ながらAppleを近視眼的にしか捉えておられないように思えます。

iPodが成功したのは、iTunesがWindows対応したからですし。
iPhoneが成功したのは、成功したiTunesのエコシステムに乗っかったからですし。
iPadも同様ですよね。
Macが今までどうにか生き延びていられるのも
iPodから始まった成功にどうにか乗っかれているからでしょう。
そのMacのコピーも今は「Windowsも動きます」でしょう?
すっかりなかったことにされていますが、過去にNewtonなんて失敗もしています。

「業界全体を揺るがせるほどのインパクト」がなくたって、モバイルインターネットは進化して行くと思います。
ましてや世界の趨勢は「オープン」「クラウド」なのに、AppleはiTunesでエコシステムという名の囲い込みをしていますし、味をしめてMacにもApp Storeを導入していますよね。
そういう「俺ルール」で過去失敗して来ていることも忘れてしまったように思えます。

無論Appleも馬鹿ではないはずなので、Windowsの二の舞はしないでしょうから、早晩優位が崩れるとは到底思えません。
ただAppleが明らかに意識しているGoogleが「iPhone対抗」という旗を降ろした時がとても興味深いです。

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