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プレゼン資料:iPhone Phenomenon

 今週は火曜日からノルウェーのオスロに飛んで、ワイアレス関係の会議でプレゼン。ようやく話の流れも決まって来たので、頭を整理する意味でも、ここにプレゼン資料を貼付けてみる。

Slide1 Slide2 

 最初の二枚は基本的に自己紹介。まずは、2000年に起業したUIEvolutionのビジネスを簡単に説明して、私とワイアレス業界の関わりを理解してもらう。

Slide3  Slide4 

 スライド3と4は、私の得意な「技術革新」と「人々のライフスタイル」のギャップの話。技術は日進月歩で進んでも、人々のライフスタイルの変化はすぐには訪れない。ライフスタイルの変革には必ずキーとなる役割を果たす製品やサービスが必要で、そこにこそ開発者としての面白みがあるしビジネスチャンスがある、という話。

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 5枚目のスライドが、今回のプレゼンの主要なテーマでもある、この「人々のライフスタイル革新」プロセスにおけるiPhoneの役割。携帯用のJavaやブラウザは一部の人々のライフスタイルを変えることには成功したが、テキストメッセージ(日本ではiモードメール)に相当するほどのインパクトは与えていないという話。これは、Windows Mobileに代表されるスマート・フォンも同じ(Blackberry以上のインパクトは与えていない)。その意味では、すでに存在している3Gだの高機能端末などから本来享受出来るうるメリットを世界中の人が受けているとはまだまだ言えず、そこにチャンスを見いだしたのがAppleでありiPhoneの登場だ、という話。

 6枚目のスライドは、後のBig Canvasのビジネスモデルの話に繋げる伏線として提示する、音声通話・テキストメッセージに続く「何か」とはなんでしょうか?という問いかけ。ちょっとここの部分の話の流れが悪いので、再考中。

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 7枚目のスライドは、「ハードウェアが増えるとソフトウェアが売れ、ソフトウェアが増えるとハードが売れる」というエコシステムの話。8枚目のスライドで、携帯向けのJavaのエコシステムがなぜうまく機能していないかについて解説。これに関しては、反対意見を持つ人も多くいるとは思うが(特に、Sun Microsystemsとか、DoCoMoの人とか)、こういう現実直視の厳しい言葉をストレートに投げかけてこそ、わざわざプレゼンをする価値があるというもの。

Slide9 Slide10

 そして9・10枚目がiPhoneのエコシステムの話。10枚目のスライドは、iFund VC Blogから拝借したのだが、わずか1200万台しか市場に存在しないiPhone向けのアプリの方が、米国市場に2億5000万台あるJava端末向けのアプリより遥かに多くダウンロードされている、という話には説得力がある。

Slide11 Slide12 

 11・12枚目が、iPhone向けとJava端末向けのビジネスの違いを目に見える形にしたもの。Java端末向けのビジネスの場合、市場の端末数はiPhoneよりも遥かに多いものの、ちゃんと世界市場を取りに行こうとすると、端末ごとの違いを吸収するコストや世界中のキャリアと交渉するという余計なコストが生ずるため、iPhoneのみをターゲットにしたビジネスよりも黒字化するに必要な売り上げが遥かに大きくなってしまう、という話。

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 13枚目は、「Javaはだめだとしても、他のプラットフォームはどうなの?」という疑問に答えるためのスライド。ただし、全体の講演時間は45分しかないので、たぶん深く突っ込んで話す時間はないと思うが、時間があまればここで10〜15分は余裕で話せる。講演時間の調整のためにこの手のスライドを最後の方に入れておくのは、私が良く使うテクニック。

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 そして14・15枚目は、今年の4月に起業したBig Canvasのビジネスの話。せっかくプレゼンの機会をいただいたのだから、宣伝・宣伝、と。

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 そして最後がまとめ。結局のところは、開発者にとってアプリを売るのが容易で、ユーザーにとって買うのが簡単、という環境を真剣に整えないとAppleにすべておいしいところを持って行かれちゃいますよ、という話。そして、技術革新とライフスタイルのギャップを埋めて本当の「常時接続ライフスタイル」を実現するために、色々な商品やサービスを作って行きましょう、というメッセージ。



Apple、iPhone3Gの販売数を発表

 iPhone向けのアプリを開発・販売するビジネスをしている私としては、iPhoneの販売数は「トータルのマーケットサイズ」を知る上でもとても重要。ちょうど今日になって、7〜9月期の決算が発表されたので、さっそくそれを読んだところ以下の数字を発見。

Unit sales of iPhone 3G have been significantly greater than sales of the first-generation iPhone. During the first quarter of iPhone 3G availability ended September 27, 2008, 6.9 million units were sold, exceeding the 6.1 million first-generation iPhone units sold in the prior five quarters combined.

 そもそもの目標が、2G/3G会わせて1000万台を今年の終わりまでに売る予定だったので、それを大きく上回る数字(トータルで1300万台)を3ヶ月前倒しで達成したことになる。

 日本では「ワンセグが見れない」「日本語が打ちにくい」などの批判も受けているiPhoneだが、iPhoneの一番の強みはそのトータルでの使いやすさと使う人に与える満足度の高さ。私はiPhone 2Gの時代から1年以上使い続けているが、もう普通の携帯には戻れない。この1300万台という数字は、顧客満足度90%という携帯電話としては前代未聞の数字をたたき出しているからこそ達成出来たと言える。

 この数字を見る限り、「iPhoneだけに特化してアプリを作る」という会社設立時(今年4月)の判断は間違っていなかったし、少なくともこの調子でAppleがiPhoneを売り続けてくれている限りはその方針を変える理由は見当たらない(Android携帯もようやく市場に出始めたが、本気でアプリを作る気になる条件はまだまだそろっていない)。

 ちなみに、今週末には、Big CanvasとしてPhotoShare、SmallCanvasに続く、3つ目のアプリケーションをAppleに審査のために提出する予定なので乞うご期待。


セコイア・キャピタルのプレゼンに込められたメッセージ

 シリコンバレーのVCの中で頂点に位置すると言っても良いセコイア・キャピタルが、投資先のベンチャー企業のCEOを集めて緊急のプレゼンをしたそうだ(資料は「Sequoia Capital on startups and the economic downturn」にある)。今の金融危機が今後の景気や企業経営にどんな影響をもたらすだろうかの理解を深める意味でも、ベンチャー企業経営に関わっていない人も、目を通しておいて損はない資料だ。

 この資料の中で、もっとも明確なメッセージが込められたのは49番目のスライド。

Seq_3

「このタフな環境で生き残りたかったら、これから会社に戻ってすぐに人を減らしてサバイバルに努めろ。それが出来ないベンチャー企業は生き残れないし、セコイアとしても支援できない」というのがセコイアからのメッセージ。

 ここで言うところのDeath Spiralとは、資金繰りがうまく行かなくなってから人を減らし始めると、その分収入も減ってしまい、もっと人を減らさなくなり、それがさらに収入の減少につながり...という悪循環を指す。そんな状況になるよりもずっと前に人員カットをして、資金繰りに余裕を持って厳しい時代に備えろ、という話だ。

 こういう厳しいことを包み隠さずにストレートに言ってくれる人こそが本当に役に立つ投資家。この手のメッセージを真剣に受け取ってちゃんと行動に移す勇気と決断力があってこその起業家。厳しい時代ほど切磋琢磨が進む。


PhotoShare向けAddOnソフト募集

Poweredby

 先週の金曜日(日本時間の土曜日)に販売を開始したSmallCanvas、PhotoShareユーザーの多くの方々にご購入いただき(そして実際に使っていただき)、大変感謝している。

 無料で提供しているPhotoShareに対する「ご祝儀」の意味も多々あるとは思うが、わずか三日でアクティブ・ユーザー(ユーザー数は未公表)の15%以上の方々にご購入いただけたのは予想を上回る成果。

 まだまだ母体となるユーザー数が小さいので黒字化にはほど遠いが、「無料で提供しているPhotoShareをソシアル・ネットワークの母体として活用するAddソフトをコミュニティーに向けて販売する」というビジネスモデルの確立に向けた第一歩としては悪くないすべりだしだと思う。

 後はユーザーからのフィードバックを(PhotoShareを通して直に)受けながら改良を重ねて、20%、25%、と普及率を高めて行く努力をしつつ、同時にPhotoShareコミュニティそのものを大きく育てて行く、という、とてもシンプルなビジネスモデルだ。

 ちなみに、SmallCanvasをPhotoShareのAddOnアプリケーションとして販売することを決めた段階で、PhotoShareそのものに、SmallCanvasなどのAddOnソフトの広告を表示する仕組みを入れておいた。左の図(各画像の詳細ページ)の、"Powered by (Small Canvas)"という部分がそうだ。

 仕組みはいたって簡単。SmallCanvasからPhotoShareサーバーに画像をアップロードする際に、商品のIDを一緒にサーバーに渡しておき、PhotoShare側でそれを表示する時にそれをAppStoreの販売ページへのリンクへと変換して表示するだけの話だ。

 当然だが、AddOnソフトはSmallCanvas一つで終えるつもりななく、これからさまざまな形の「ユーザーが何らかの創作活動をして作った画像をPhotoShareにアップロードして、そこから生まれるコミュニケーションで楽しむ」というアプリケーションを、社内外の力を作って開発・発売して行きたいと考えている。

 SmallCanvas以外にも、すでにいくつかのプロジェクトは進んでいるのだが、どんなアプリでも開発には1〜2ヶ月はかかると思うので、今のうちにネタを仕込んでいただこう、という願いも込めてパートナー募集要項を書いておく。

【PhotoShareパートナー・プログラム概要】

  • 対象:個人または法人
  • ビジネスモデル:アプリの売り上げからのロイヤリティ(後々はアフィリエイトも考慮)
  • ターゲットデバイス:iPhoneもしくはiPod touch
  • アプリの種類:ユーザーが何かを作ったり達成した後に、その作品もしくはスクリーンショットをPhotoShareに投稿して他のユーザーと共有して楽しめるものならなんでも。例:画像処理、写真加工、画像生成、アート系、育成ゲーム、ハイスコアを争うゲームやパズル、CGM型ゲーム、収集ゲームなど(ただし、画像処理・画像加工系に関してはSmallCanvasも含めてすでに社内でいくつかプロジェクトが進んでいるので、よほどユニークなものでないと難しい)。
  • 応募方法:アプリの実機でのベータテストが可能になった段階でphotoshare(アット)bigcanvasinc.comにメールで連絡。新規アプリである必要はなく、すでにApp Storeで販売しているもの、開発中のものもOK。
  • PhotoShareへの画像のアップロード方法:APIをライブラリで提供(UIImageオブジェクトをUploaderオブジェクトに渡すというもの)
  • 選考基準:「PhotoShareのコミュニティがそれによってもっと楽しくなるか」「有料で販売する価値があるか」「ちゃんと安定して動くか」「メモリーリークは検出されないか」などなど。
  • 応募期間:いつでも

「デッサン力」がない人が「絵を描く楽しみ」を味わえる時代

 上の三つの絵は、私がiPhone/iPod touch向けのお絵描きソフトSmallCanvasで描いた絵だが、パッと見てどう感じるだろう。「結構絵が上手な絵じゃないか」と思った人も多いかもしれない。

 実は上の三つの絵は、SmallCanvasの発売に合わせて、私自身がサンプルとして書いたもの。絵心のない私が苦肉の策で作り出したのが、SmallCanvasのundo/redo機能を駆使して写真のトレーシングをするという裏技(アプリの作者が「裏技」を発明してどうするんだ、とうツッコミはなしで^^;)。下に置いた写真をトレースするために、基本的なデッサンがしっかりとし、これだけで「そこそこ見られる絵」になってしまうから不思議だ。

 これで再認識したのは、「絵の上手さ」は、「ちゃんとした構図でデッサンが描けるか」という「テクニック」の部分と、「描き手オリジナルの表現ができるか」という「センス」の部分とから構成されており、私も含めて多くの人は「テクニック」の部分でつまづいてしまい、自分の作品を世の中に発表しようとする意欲を持つことができなかった、ということ。

 せっかく技術がここまで進歩したのだから、「テクニック」の部分はソフトウェアを使って思いっきり補助してしまい、「デッサン力」など持ち合わせていない人たちも、「センス」の部分だけで勝負できるようにすると、もっと創作意欲・発表意欲がわくのではないかというのが私の考えだ。

 特に「センス」の部分になると、「デッサン力」とは異なり絶対的な評価など存在しないのがさらに良い。上のような例だと、「なにを書くのか」「どんな構図で書くのか」「どの線を省くか」「どこにどのくらいの濃さでどんな色を塗るか」「どこまで丁寧に塗りつぶすか」などが、それぞれの作者の持ち味となり、デッサンのように「正しい書き方」などがないのが楽しみ方の自由度を高めるのである。

 「テクニック」の部分は、ソフトウェアの力で思いっきり補助し、ソフトウェアが決して補うことのできない「センス」の分だけで勝負する芸術作品。ある意味、それこそが本当の「アート」じゃないかと思ったりするんだが、いかがだろうか。

【補足】ちなみに、この「センス」の部分に関しては、山田雅夫氏の「スケッチは3分」がおすすめ。

【補足2】ブックマークで知らせていただいたhttps://blog.mf-davinci.com/mori_log/archives/2006/10/post_720.phpも参照の価値有り。


iPhone向けお絵描きソフト「SmallCanvas」リリース

Smallcanvas

 PhotoShareに続く、Big Canvasの二つ目のアプリケーションとして今回リリースしたのは、iPhone向けのお絵描きソフト、SmallCanvas。無料で提供しているPhotoShareとは違い、$1.99の有料ソフトだ。

 PhotoShareを開始した時から、色々な人たちから「PhotoShareってずっと無料で提供し続けるの?」「Big Canvasのビジネスモデルは?」と聞かれることが多かったのが、私の答えは一貫して「それはこれから見つける」というもの。

 2000年に私の一つ目のベンチャー企業として起業したUIEvolutionを経営して、一つはっきりと分かったことは、最初からビジネスモデルがキチンと作れているベンチャー企業なんてほとんど存在しない、こと。成功するベンチャー企業に欠かせないのは、「完璧な戦略・ビジネスプラン」などではなく「市場から学んだことをもとに柔軟にプランを変更していける適応能力」。

 それならば、どのみち大幅に書き換えなければならないビジネスプランの作成に無駄な時間を費やすよりは、「まずは無料版のサービスで市場に出て、そこからビジネスのネタを見つけ出して行く」というメタ・ビジネスプラン、というのもありだ、というのが私の考え。

 もちろん、そんな考えでは投資家から資金を集めることも、それを使ってたくさん人を雇うことも出来ないのだが、先に資金と人だけ集めてしまってから、収益の上がるビジネスプランにたどり着くまでさんざん苦労した経験を持つ私としては、まずは自己資金で小さく始め、小さいからこそ持てる柔軟性でビジネスのネタを見つけ出すまで試行錯誤し、その後に資金集めなり人員の増強をする、という方がずっとしっくりと来たのだ。

 そんなメタ・ビジネスプランだけで7月にリリースしたPhotoShareだが、3ヶ月運営して、ようやく少しだがビジネスのネタのようなものが見えて来たので、それを証明する意味でもリリースしたのが、今回のSmallCanvas。

 SmallCanvasで描いた絵や、何かを書き足した写真をPhotoShareに直接アップロードできるようにしてあるのは、そういった画像・写真からのViral Marketing効果を期待してのこと。ある意味で、ユーザー自身がコンテンツを作るSNSだからこそ可能なビジネスモデルだ。

 まだリリースしてから数時間しか経っていないのに、購入していただいたユーザーの方々の作品は次々に発表されているし、フィードバックも続々と入ってきている。ある意味、PhotoShareというプラットフォームを持っているからこそ可能な、ユーザーと密着した形でのソフトウェアの開発スタイル。ユーザーがどんな使い方をしているか、どんなところに不満を抱いているかなのがリアルタイムで分かる状況でソフトウェアの開発が出来る、というのは私にとっても初めての経験なので、何とも楽しい。

 ちなみに、SmallCanvasは完成品はかなりコンパクトにまとまったソフトだが、この形にたどりつくまでは色々と苦労したので、そのプロセスに関しては別途エントリーを立てて書こうと思う。


もうすぐ開始後3ヶ月になるPhotoShare

Pstraffic  左のグラフは、PhotoShareに対するトラフィックの変化を図にしたものだが、なにを表しているかお分かりだろうか。

 PhotoShareを開始したのはAppleがApp Storeをオープンした7月の11日なので、もうすぐ3ヶ月である。ユーザーの数も順調に増えているが、何と言っても嬉しいのは、アメリカ人やフランス人の中にも定着して使い続けるヘビーユーザーが現れ始めたこと。

 日本のユーザーに支持されていることは嬉しいのだが、せっかく世界中に向けて作ったサービスなので、色々な国の人に参加していただくことはとても重要。先日も、旦那が鉄道の運転手だというフランス人の女性が、運転席からのフランスの海岸の風景とかをリアルタイムで投稿してくれたのだが、そんな「体験のリアルタイムな共有」がPhotoShareならではの楽しみだ。

 ちなみに、累計で投稿された写真の数が20万枚をちょうど超えたところだが、まったくの無名のベンチャー企業がiPhoneのみをターゲットにして3ヶ月で達成した数字としては悪くないと思うのだがいかがだろう。この調子で伸びれば、今年の末までには50万枚が達成できそうな勢いだ。

 しかし、もっと興味深いのが写真に付けられるコメントの伸び。サービス開始当初は、コメントの数よりも投稿される写真の数の方が多かったのだが、8月の終わりぐらいから投稿されるコメントの数が投稿される写真の数を上回り始め、いまや写真1に対してコメント3ぐらいのペース。コメントの累計数はすでに25万件を超える。

 ここでやっと種明かしをすると、左上のグラフは、1時間あたりに投稿される写真(緑)とコメント(青)の数を時間軸にそって描いたもの。写真よりもコメントの数の増減が激しく、ピーク時(日本時間の夜の11時前後)には、1時間あたり600ほどコメントが投稿される。

 このグラフから見る限り、日中はポチポチと気が向いた時に写真を投稿しておき、一日の終わりに自分がフォローしている人の写真に一通り目を通してコメントを書いたり、自分の写真についたコメントに返事を書いたりしてから眠る、という使い方が多いのではないだろうか、と想像できる。


週刊文春とITMediaのインタビュー記事の紹介

 先月日本に帰国していた時に二つほどインタビューを受けたのだが、その二つが記事になったのでその紹介。

 一つは、週刊文春の「仕事のはなし」という記事(左の写真は、PhotoShareユーザーの方が投稿したものを拝借させていただいたもの)。まだ引退もしていないのに自分の経歴の話をするあまり好きでないのだが、聞き手の人がとても上手だったため、肩の力を抜いて色々と話すことができた。自分で読み直しても思うのだが、Windows95やInternet Exploreの開発に関わることが出来たのも、「常に技術の最前線の面白いプロジェクトに関わっていたい」という思いが人一倍強かったのが一番の理由だと思う。飽きっぽくて新しいもの好きの私にとっては、成熟した市場に向けた製品作りより、「これから」という市場で勝負する方が何倍も楽しい。今、iPhoneのアプリを作っているのも全く同じ理由だ。

 もう一つは、ITmediaの「ひとりで作るネットワークサービス:番外編」。ひとりではなくて、増井君と二人で作っているので「番外編」なのだと思うが、このインタビューはまさに現在進行系のPhotoShareに関するものだったので、思いっきり宣伝させていただいた。とても良く書けているインタビュー記事で、ある意味では私の文章よりも会社のビジョンとか、PhotoShareの目指すところとかが良く書かれているので、ぜひとも読んでいただきたい。

 ちなみに、この記事の副題が「PhotoShareで世界を変える」となっているが、それほど大それた言ったわけではなく、「画像によるリアルタイムなコミュニケーションを可能にして、人々のライフスタイルを変えるぐらいのインパクトを与えたい」という思いでPhotoShareを作ったという話である。携帯にカメラが搭載されるようになってもう何年にもなるが、それが人々の生活を変えるほどにはまだまだなっていないと思う。その意味では、まだだま進化の余地がある分野。やるべき・やりたいことはまだたくさんある。


iPhoneのJailbreakの危険性に関してひと言

 iPhoneをハックして、Appleが認めている以上のカスタマイズを可能にしたり、Apple公認のApp Store以外からのソフトをインストール可能にしたり、することをJailbreak(=脱獄)と言うのだが、PhotoShareでの会話とかを見ていると、その危険性をちゃんと理解せずにJailbreakしている人たちがたくさんいるようなので、ひとこと警告しておく。

 まず最初に考慮しておくべきことは、iPhoneはNintendo DSやSony PSPと違い、携帯電話でありメールマシンであり、インターネットマシンであり、住所録やらメールやらウェブサイトのパスワードなどの個人情報を思いっきりやりとりする、ある意味パソコン以上にプライバシー管理が大切なマシンであること。当然、ウィルスに感染したり、セキュリティホールからハッカーに情報を盗まれたりしないようにすることがものすごく大切。

 パソコンの場合は、元々がセキュリティホールだらけのオープンすぎるアーキテクチャであるがために、市販のアンチウィルス・ソフトやファイヤーウォールなどをわざわざ入れておく必要があるのは、多くの人の知るところ。

 iPhoneの場合は、「アンチウィルス・ソフトなんかよりずっと効果的な方法」として、開発者の認証コードが付いたApple公認のアプリケーションしかインストールできない、という制限を加えることによりユーザーをその手の危険から守るという方法をAppleが選択している。

 この仕組みおかげで、iPhoneを持つユーザーは、市販のアンチウィルス・ソフトなど面倒なものを導入せずに、安心してさまざまなアプリケーションを楽しめる、という仕掛けになっている。この面に関しては、後手後手のMicrosoftやNokiaよりもずっと高く評価できる。

 Jailbreakをするということは、せっかくAppleが提供してくれているこの「セキュリティの枠組み」を外すことである。そのため、ウィルスに感染してしまう可能性もあれば、予想もしないセキィリティホールから個人情報を盗まれてしまう危険に自分をさらすことになる。もちろん、jailbreakしたiPhone向けのアンチウィルス・ソフトなどを本気で作る会社もない。

 つまり、jailbreakしたiPhoneで電話をかけたり、メールをしたり、パスワード付きのウェブサイトにアクセスすることは、セキュリティホールだらけの少し前のWindowsマシンをアンチウィルス・ソフトなしで走らせるのと同じぐらい、もう少し分かりやすく言えば、新宿歌舞伎町のマンションの1階の部屋で窓を開けっ放しで女性が一人で眠る、ぐらい危険なのである。

 ということで、そんなリスクを理解した上でJailbreakをしている人たちにお願いがある。技術のことに詳しくない人たちから「jailbreakって僕もして大丈夫かなあ?」とたずねられた時に、「アップルからの保証が受けられなくなるけど、それでよかったら」とか「ちゃんと勉強してリスクを理解した上で自己責任でやると良いよ」などと不親切・無責任なことを言わずに、「ウィルスとかに感染するのがいやだったら絶対に辞めた方がいいよ」と言っていただきたい。

 もしあなた自身が、すでにjailbreakしてしまっており、jailbreakのリスクはアップルから保証を受けられなることぐらいなどと大きな誤解をしているとしたら、なんとかしてすぐに元に戻した方が良い。悪意を持ったハッカーにとって、jailbreakされたiPhoneほど簡単に個人情報を盗めるデバイスはないのだから。iPhoneが壊れてもたかだか2〜3万円の被害だが、銀行口座に不正アクセスされたら被害はそんなものでは済まない。


マーケティングともの作りの話

 「マーケティング」という言葉を聞くと「商品に関する情報を顧客に向けて発信する」だけと考える人が多いが、マーケティング部門の役割として同時に重要なのは、顧客のニーズをきちんと探り出して「何を作るべきか」という部分に反映させること。

 ちょうど今読んでいるHarard Buisness Reviewにとても良い例が出ていたのでその紹介。

 米国のペンキ会社が、競争相手に安売り競争を仕掛けてられ、「利益を削ってでもマーケットシェアを維持すべきか」という厳しい選択に迫られていた。その時にその会社のマーケティング部門が調べ出したのが、主な顧客である塗装業者が何にお金を使っているかというデータ。

 そのデータによると、ペンキそのものは経費の15%にすぎず、大半は人件費だという。それも、ほとんどのケースで、一度塗ったペンキを十分に乾かすために、次の日にもう一度現場に足を運んで二度塗りをしているためによけいな人件費がかさんでいるという。

 そのデータに基づいて開発部門が開発したのが「早く乾くペンキ」。ペンキが早く乾けば、一日のうちに二度塗りを終えることができ、大幅な人件費の節約が出来る。その結果、マーケットシェアを失わずに40%の価格を上乗せすることができたという。

ふむふむ、と。