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「なぜAppleはiPadにFlashを載せるべきではない」のか

 気がついた人も多いと思うが、iPadのアナウンスメントであっさりと無視されたのがAdobeのFlash。私は意図的(=「Flashなんか重要じゃない」というメッセージ)と読んだが、皆さんはどうだろうか。

 iPhoneがFlashをサポートしていないことに対するAdobeを含めたさまざまな方面からの批判を考えれば、「the best way to experience the web (最高のウェブ環境)」を売り文句のiPadが、これだけ広く使われているFlashをサポートしないというのはおかしな話だ。

 不思議に思う人も多いかもしれないが、自分をAppleの経営陣の立場に置いて良く考えてみれば答えは明確になる。

 Appleという会社は、昔からさまざまなクリエーターたち(アーティスト、ミュージシャン、ウェブ・デザイナー、etc.)を魅力的で便利なパソコンやツールで味方につけ、彼らの作品を消費者に楽しんでもらうための道具としてさまざななデバイスやサービスを提供する、という形で大きくなってきた。

 そう考えると、よりAppleのビジネスを盤石なものにするためには、今後ますます重要になってくる「マルチメディア・ウェブサイト」のプラットフォオームを提供する立場になり、そこでオーサリング・ツールのビジネスをすることは必須である。

 プラットフォームに関しては、すでにWebKitが順調にデファクト・スタンダードの地位を築きつつあり、Appleがリーダシップを取って押し進めるCanvasタグやVideoタグを含めたHTML5が業界標準になろうとしている、というのを見れば、とても順調なことは分かる。

 問題は、オーサリング・ツールだ。ウェブ上のアニメーションというとFlashが相変わらずデファクト・スタンダードだが、その状況を打破しにくくしているのが、Flashの普及率とAdobeが提供するツール(Creative Suites)のクオリティの高さ。

 当然Appleとしては、(公式には認めていないが)HTML5ブラウザー向けのオーサリング・ツールの開発は進めているし、HTML5の普及のためにさまざまなことしている。WebkitがGoogle の Chrome ブラウザーのレンダリングに採用された時点で、Appleのブラウザーの標準化におけるリーダシップ・ポジションは確固たる物となった。

 その状況を考えれば、iPhoneやiPadでFlashをサポートするような「敵に塩をおくる」ようなことをする必要は一切ない、とAppleの経営陣が考えるのは当然だ。

 興味深いのは、このあたりの考えはGoogleも同じだということ。HTML5を押し進めるGoogleとしては、一日も早く、Yutubeも含めた自分たちのサービスでも、Flashを早く捨ててHTML5に乗り換えたいところだが、それにはまだまだ時間がかかる。それであれば、「少なくもYoutubeがFlashなしでも楽しめる様に」と専用アプリをiPhoneやiPadに提供しつつ、徐々にFlashへの依存度を低くして「脱Flash」の日のための準備を着々と進めているのだ。

 そう考えると、これから数年以内に必ず起こるFlashからHTML5へのシフトを考えると、OutputのフォーマットをFlashにでもHTML5にでもできるオーサリング・ツール、というのを作ると良いビジネスになると思うんだがどうだろうか。Adobe自身はもちろん作って来ないし(典型的なイノベーションのジレンマ)、Appleは直接HTML5へ走ると予想できる。そう考えると、「FlashからHTML5へのマイグレーション・ツール」という位置づけでそれなりのオーサリング・ツールを作れば、「まだFlashは捨てられないが、HTML5の時代が来たときには乗り遅れたくない」人たちの心をつかめると思うんだがどうだろうか。

【追記】ちなみに上のエントリーは、「自分をAppleの経営陣の立場においてみれば」という話で、当然だが、「自分をAdobeの経営陣の立場」においてみれば全く別の見方ができるわけで、「どちらが正しい」などということはない。一つだけはっきりしているのは、AppleもGoogleもHTML5ブラウザーの普及を加速して、一日も早くFlashから脱却したいと考えていること。

 じゃあ、ユーザーや業界全体にとって何が良いかというと、これも悩ましい。当面の利便性を考えれば、iPadがFlashをサポートしてくれた方がユーザーにとっては喜ばしいことだし、Flashをすでに採用しているウェブサイト運営側にとっても余計な手間をかけなくても良い。しかし、これはあくまで短期的な利点であり、長期的に考えれば、やはりできるだけ多くのユーザーがHTML5準拠のブラウザーに切り替え、ウェブサイトも積極的にHTML5をサポートした方が業界全体にとってはプラスなので、そこでAppleとGoogleがリーダーシップをとっていろいろな方法で(「FlashをiPadの載せない」という荒技も含めて)HTML5へのシフトを加速してくれることは喜ばしいことだ。

 その意味でも、FlashからHTML5への移行をスムーズにするツールというのは、とても良い触媒となってくれると思う。MicrosoftもそろそろSilverlightに固執するのを辞めて、そんな方向に動いても良いと思うんだが、それもたぶんMicrosoftのDNAが許さなんだろう。

【追記2】少し四面楚歌の状態になって来たAdobeだが、打つ手がないわけではない。Adobe自身が、FlashからHTML5への以降を加速すれば良いのだ。デザイナーの使いなれたCreative Suitesで作ったFlashムービーやFlashアプリケーションが、iPhoneやiPadのように「Flashを搭載していないけどCanvasをサポートしているブラウザー」上できちんと動くようにすれば良いのだ。それも、JavaScriptでswfファイルを解析してを再生、なんていう中途半端ものではなくて、オーサ・リングツールから直接ブラウザー上のCanvasを操作する最適化されたJavaScriptを生成するところまでやって、「これならHTML5ブラウザーさえあればFlashプレイヤーいらないじゃん!」とデザイナーたちに言わせるところまで持って行くのだ。

 普通の考え方をする経営者だと、こんな風に「今の自分の有利さをないがしろにする」ような戦略はなかなか取れないのだが、Adobeの経営者がどう出るか楽しみである。すでに開発レベルでの戦いは「HTML5がスタンダードになった時のオーサリング・ツールの覇者は誰か?」に移っている。いつまでもFlashプレーヤーに固執していると、HTML5に全力を注いでオーサリング・ツールを提供してくるAppleに足下をすくわれる可能性がある。

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Comments

wirehead

Flashもそうですが、アップルが消費期限が切れかけた技術を介錯する行為は、ここ数年の他社に依存していた技術から自らを解放する動きと符合しているとも言えそうです。

Microsoft なら IE / Office
Google なら GoogleMaps
Intel なら x86

Windowsから乗り換える安心料としてのBootCampを必要としなくなった際には、Macさえもx86ではなくARM上で動いても良いように思えます。チップ設計に加え、カーネルからランタイム、コンパイラまで手がけている今なら、数度の前例よりも障壁は低いでしょう。

Toru

はじめまして。
ブログいつも楽しみに読ませていただいています。
せっかく面白い文章なのすが、細かい部分でちょっと気になったところがありました。単語の変換について下記をご検討いただければと思います。

4段目「便利なパソコンやツールで見方につけ」→味方につけ
追記の3段目「FlashからHTML5への以降を」→への移行を

※このコメントはいつ削除いただいても結構です。

nanashi

土俵の上でがっぷり四つで組みあうのではなく、
こういう「土俵ずらし」で各社頑張られるとユーザーとしては不便極まりないんですがね…

ちゃお。

adobeの収入源は無料のFlash Playerではなく
あくまでFlashを作れるCreative Suiteなので、
記事にあるようなマイグレーションツール、または
Creative Suite上でHTML5に対応することをadobeが決断するのは
そう難しいことではないと思います。

問題はその時にあれだけ意地を張っているMSが
silverlightを捨てられるかどうか。。。

Karints

初めまして。
楽しく読ませていただきました。
IT関係の記事というのは、どれを読んでも勉強になるので。

業界というか、開発環境もそうですが、私はこの手のものには
疎い、ただの一ユーザーに過ぎないので、よく解らないことが
多いですが、こういう動きがあったのですね。

知人のWebデザイナー曰く、未だにIE6使ってるところが、
それとなくある。とのことでした。
開発側の動きは活発ですが、ユーザー側がこうも腰が重いのでは、
開発側もなかなか次に移りにくいところがあるんでしょうね。
海外だとまた違うと思いますが。

駄文失礼しました。

豊月

Flash代替の問題で成っているのは、やはりHTML5でビデオの標準規格が決まっていない事ではないでしょうか?
HTML5がFlashを代替する以前に、HTML5を決める段階でビデオformatの標準決めで問題が起きている気がします。

Mune

Adobeの中の人はそこのところ、ちゃんとわかっているみたいですよ。

http://blogs.adobe.com/jnack/2010/02/adobe_isnt_in_the_flash_business.html

za

はじめまして。iPad関連をググってたどり着きました。
ユーザー側としての意見ですが、私なんか、映画の情報を知りたいとき、
PCで検索して公式サイトに訪れてもHTML対応Verのない
FLASH専用のサイトだったら、ダウンロードや表示の際の重さに嫌気がさして
ヤフーの映画サイトなど比較的軽いサイトで情報収集するようになりました。

あとFLASHのバージョンによって再生できないのもあるので
そういう手間やサポートを考えれば搭載しない方が賢明かと思いますね。

aritak

GoogleはなぜAndroidやChrome OSを無料で配布するのか?に続いて、すごくフレームとして分かりやすいpostでした。ビックプレーヤーはみんなプラットフォームをどう押さえるか、を真剣に考えている。個人的に残念なのはその中で日本のプレーヤーがいない事。例えば今回のマイグレーションツールなども、「割と見えやすい未来」なのであれば積極的にデファクトになりうるような物を出していく日本のプレーヤーがいたら、、、と思うのは僕だけでしょうか。そうならない、育たない土壌になってしまっているのか・・・。

palm4


Adobeは次期FlashCS5でiPhoneアプリを出力できるようにして
万事休すです。もちろん、AndroidアプリとSWFも同時に生成
されるでしょう。Adobeという選択は目まぐるしく変化する
市場でこそ、その真価を発揮するのだと思います。HTML5が
市場を制覇しても、すぐにその次の技術が台頭してきます。
そういった変化に振り回されることなく、様々な立場の人が
Webの価値を享受できる価値をAdobeは提案していると思います。
Flashがなぜ今日、ここまで成功を収めてきたのには、それ
なりの理由があるのです。

Appleはクリエイターに支持されていますが、Adobeもそれ
以上にクリエイターに支持されています。Adobeはクリエイター
とWebとの橋渡しとなり、テキストと画像の世界に映像と
インタラクティブ性をもたらしました。プラットフォームと
OSの垣根も越えて、Webの一般化に貢献したことは間違いない
と思います。コンシューマーが求めているのは、Web体験です。
(Blu-Rayドライブもそうですが)規格や将来性など関係ない
のです。製品がユーザーに歩み寄るとはよく言ったものです。

私はそろそろJobsは引退する時期が来ていると思います。
いつまでもApple=Jobsが引っ張る業界ではダメなのだと
思います。iPadが出てもNetbookは売れ続けます。Appleの
イベント会場の映像を見ても一目瞭然ですが、本当に若者が
不在なのです。iPadもリタイアした中高年向けの情報端末
にしか思えません。まるで老眼で脳トレをやるための、
NintendoDS LLのようです。勝ち組の老舗企業が、有利な
ファクターを寄せ集めて作ったような製品です。

Ardbeg1958

palm4 さん。「万事休すです」では意味が分かりません。
きっと「この問題は解決です」とお書きになりたかったのでは?

palm4

Ardbeg1958さん

すみません、言葉足らずでした。
「もうどうすることもできないこと」
つまり、本来、コンシューマー向けの
製品であるはずの自社製品でFlashを
見れないようにしても、脱Flashを
実現できる可能性は低く、Appleには
「もうどうすることもできない」、
という意味でした。ご理解ください。

私は皆さんと同じようにAppleやJobsが
好きです。ただ、どのような理由があれ、
見れなくする(排除する)というマイナス
の選択は支持できません。競争の原理に
よって、改良を重ねた技術が排除される
というのは、これまでAppleが置かれて
きた図式そのものではないでしょうか。

たまに二人のスティーブが現代に生きる
ティーンエージャーだったら何をして
いるだろうかと考えることがあります。
おそらくMacは高価で買えず、Netbookに
OSX86をインストールしているかもしれ
ません。iTuneで音楽など買っていない
でしょう。Jobsには、自分たちがかつての
IBMのようになりつつあることを気づいて
ほしいものです。


just a reader

オーサリングツールとしての Flash はHTML5でもiPhone AppでもAndroid App でも任意の App に Export できるツールとして昇華することが最前の策でしょう。しかし、Director の終焉が Adobe に教えたことはプラットフォームを自社で持つことの重要さです。CD-ROMコンテンツの終焉とともに Director はその行き先を失ってしまいました。この経験が Adobe を AVM としての Flash を簡単には諦める訳にはいかないと決心させているはずです。HTML5 と昨今の景気後退が Adobe の社員のやる気を失わせ、幹部には自社技術への頑なさへとつながっていることは多くの人が指摘する Adobe の難しさになっています。ただ AVM としての Flash は iPhone 以外の非常に多くのモバイル機器への道があります。Flash や Flash Lite を Mobile Phone、Kindle、eReader などへと広げていけばよいはずです。Flash という技術を高機能ブラウザのプラグインとしてだけにしておくのはもったいないことです。

心は萌え

いま、ちょうど、Flash関連の仕事しております。
ブラウザよりは、Flashの方が互換性が高い(爆)バージョン間等も含め。
というのを考えると、ブラウザのバージョンが上がると古いものが見られなくなったりする問題。も含め。
新しさという意味ではブラウザベースですが、古い言葉でキャズムを超えようと思うと、10年前のコンテンツを10年前の作者の意図通り再生できないとダメなわけで・・・
そうなると、Flashっぽいという実感があります。
Flashの互換性はやはり、高いです。

radder

知ろうと考えですが、一般の人は動画再生以外でFlashを必要としているのでしょうか?
少なくとも私は動画サイトが見られればFlashは必要ないです。
Flashバリバリのサイトなどは全く見ないので。

No name

AppleがWebオーサリングツールを開発しているのは、
確実だと思います。
5年ぐらい前から、safariを作りWHATWGに参加し
WebObjectsの開発を止めそれから全くWebオーサリングツール
をつくらないも恐らくその為です。
問題はGoogleがOn2を買収して、H.264がWeb標準では
なくなる可能性が高まった事です。
H.264のライセンス保持者はAppleやmicrosoftを始め
日本の多くの企業が名を列ねています。
少額のライセンス料よりWeb標準を得た方が将来に渡り
得策では無いでしょうか?
だって標準技術で無いとライセンス料も得られないのだから。

R

なるほど。
そう言う考え方をすると、アップルが、Flashを搭載しない理由が分かりました。ただ、Flashがない、USB端子もない、SDカードもさせない、ipadはあのデカさ、しかも日本では、ソフトバンク(家周辺で電波が弱いので)、家にVPNできない(ジェイルブレイクすればOKみたいですが)…。

iphone、ipad共に、ちょっと気になりましたが、
要らない。と思いました。

ボクは、結局、ONKYOのUMPCに、NTTのデータカード、Wimaxをつけてたのを使用しています。
ただ、バッテリーがあまり持たないのが欠点ですが…

Karintsさん。
IE6を未だに使う理由。
WindowsXPでは、IE7がクラッシュする事があります。
もう今はそんなことないようですが、ボクはPCの電源は基本的に切らないので、よく発生しました。ですので、プリインストールされていない限りは、IE6を使います。
正直、ボクはIEはあまり使わない(他のブラウザを使用)のですが、たまに、IEでないとデバイスドライバのダウンロードが出来ない(NECなど)ことがありました。
なので、IE6でなんら不便がないのです。

通りすがり

正しくは「足をすくわれる」ですね。
「足元、足下」って地面のことですから、すくいたくてもすくえません。

とおりすがり

技術系のことにまったく詳しくない一般ユーザの一意見としては、
現時点でflashを使用したサービスが多いという事実を無視したサービス展開は
ユーザの利便性を余りに無視しているように思います。

将来的に切り替えるとしても、googleのように現状に合わせたアプリを並行して
提供するなどしてユーザに過度のストレスを与えないような配慮は必要かと。

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