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日本のケータイが「ガラパゴス化」した本当の理由

「ガラパゴス」という言葉が今年の流行語大賞の候補に選ばれたということを聞いていたので、密かに受賞しないかと期待していたのだが、残念ながら大賞は逃したようだ(もし大賞に選ばれていたら、私が受賞することになったのかどうかの疑問はこれで解けずに終わってしまった)。しかし、この言葉をずいぶん前から使っている私としては、この言葉が一人歩きしているようでなんとも言えない気持ちなのでひと言。

まず最初に断っておくと、私が2001年のCTIA(米国の携帯電話業界で一番大きなカンファレンス)のスピーチでこの言葉を使った時は、単に日本という「単一民族で、国民の大半の生活レベルが同じで、家電とか携帯電話のようなガジェットに流れるお金が比較的多い」という特殊な環境で、iモードを中心に「ケータイ・ライフスタイル」が異常なスピードで進化をとげていることを表して、「ガラパゴス現象」と呼んだだけのこと。決してネガティブな意味ではない。

当時は、まだ(今は亡き)Sun MicrosystemsがJ2ME/MIDPの仕様とそれをパソコンの上でエミュレートするWireless Toolkitを発表したばかりで、米国の通信キャリアが販売している携帯電話はJava VMを搭載するどころかまともなブラウザーさえ載っていない旧式のものであった。それに対して、日本はiモードのおかげて世界初の携帯コンテンツ・ビジネスまですでに立ち上がっており、欧米よりは少なくとも24ヶ月は進んでいるというのが私の見立てであった。

当時、米国の通信業界では「これからはデータ通信の時代だ」というかけ声だけはありながら、日本という島国で起こっている「ケータイ・ビジネス」「ケータイ・ライフスタイル」の急速な進化のことを知らない業界人ばかりだったので、警告を与える意味でも、日本で何が起こっているかをドワンゴの「釣りバカ気分」の面白さを手振り身振りで伝えるスピーチをしたのである。

あれからもう10年近くになるが、当時は世界のどこよりも進化している携帯電話を作っていた日本のメーカーも、今やAppleの横綱相撲とAndroidを担いだアジア勢のコモディティ戦略の狭間で生き残りさえ難しい状態である。

私が本来ポジティブな意味で使っていたガラパゴスという言葉も、今や「日本国内だけの独自規格を作って世界に通用しなくなること」という一方的にネガティブな意味になってしまったのも、この状況を見ればしかたがないのかも知れない。

しかし、一つ困ったことは、この「ガラパゴス化」という言葉が、独創的だったりリスクの高かったりする意見に対する格好の逃げ口実に使われてしまっていること。そもそも、合議制で「出る釘(もしくは杭)は打たれる」という突出したものを嫌う文化の日本で、これを言いはじめたら何も新しいことができなくなる。

考えてみて欲しい。MicrosoftのWindowsにしろ、AppleのiPhoneにしろ、結果的に勝っているから誰も何も言えないが、ガチガチの独自規格である。日本のケータイが世界に通用しなかったのは、独自規格だったからではなく、ドコモや日本のメーカーのやり方が生温かったからに過ぎない。

私は、当時たまたま、AT&T Wirelessの重役連中と近い位置にあったので良く知っているのだが(当時のUIEvolutionの会長は、元AT&T Wireless CEOのSteve Hooper)、ドコモはせっかく大株主になって取締役の座を持ったにも関らずAT&Tからは完全にただの「財布のヒモの緩いダンナ」と見られていたし、ドコモと一緒に米国に進出するはずだった日本のメーカーも「AT&Tはドコモみたいな大量の発注を約束してくれないから、先行投資はできない」と全くの及び腰であった。

それに比べて、なりふりかまわずにシェアの拡大に走ったSamsungの実行力にはすごい勢いがあったし、消費者のニーズを的確につかんだRIMのBlackberryはまたたくまにシェアを伸ばした。

その結果、iPhoneが引き金となったスマートフォンの時代が来る前から、日本の携帯電話メーカーは海外からほぼ撤退していたし、それがソフトウェアの開発投資の面でも、部材の調達コストの面でも大きく不利に働くことは目に見えていた。

つまり、日本の携帯電話メーカーが今の窮地に陥ったのは、「日本独自の規格のケータイを作っていたから」でも、「iPhoneとAndroidが世界を席巻したから」でもなく、iPhoneが登場する以前の、2000年代前半の経営判断のミスにあるのである。

日本のメーカーにiPhoneに対抗するケータイが作れない原因はいろいろとあるが、もっとも致命的なのは「ターゲットにしている市場が小さすぎる」ことにある。こんな状況では、ソフトウェアの開発に莫大な資金を費やすことは到底無理だし、部材の調達コストもAppleやSamsungよりもはるかに高くなる。

分かりやすく言えば、「世界を相手に巨大なビジネスをしているハリウッドには、日本市場だけをターゲットにしている日本の映画業界は予算面だけ見てもかなうわけがない」のと全く同じ状況が日本のケータイ業界に起こっているのである。

ということで、再度繰り返すが、日本のケータイ・メーカーがこんな状況になってしまったのは、独自規格のためなんかではなく、ドコモからの「調達」という甘い蜜に飼いならされた日本のメーカーの経営陣が、2000年代の前半にリスク覚悟で海外に本気で進出する、という戦略を取らなかった・取れなかったことにある。言い換えれば、ケータイがガラパゴス化したから負けたのではなく、メーカーの経営陣が(肉食獣のいない島国で)ガラパゴス化したから負けたのである。

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Comments

Kokorohamoe

日本の携帯電話メーカー とはいったいどこのことでしょう?
日本最大の電機メーカーはおそらく、日立グループかとおもわれます。(約9兆円弱規模 リーマン前は11兆 ソニーは7兆円規模 リーマン前は8兆)
かの日立グループは それこそ、原発から鉄道まで幅広く活動しており、携帯も作っておりますが・・・一部門のことで経営責任まで求められては酷でしょう。
同じく、東芝・三菱なども、いわゆる重電メーカーで 携帯のことで経営責任まで求められては酷でしょう。
 
こういう言い方は何かもしれませんが、いわゆる日本の電機メーカーは それぞれ、主戦場を持っており、実は携帯電話は華々しくはあっても、主戦場ではない時代が長く続いていた。という見方もできます。
日立・東芝の各グループが、原発の海外受注 鉄道の海外受注と同じ 熱意で携帯の海外展開をするでしょうか?という問いだと思います。
また、日本政府が 原発の海外受注 でみせたような対応を 携帯でするでしょうか?という問いだと思います。

私たち、庶民からすると、携帯やテレビといった分野は身近であるために非常に焦点が当たりやすい分野になっていますが
大企業からすると、それよりももっと大掛かりで焦点が当たっている われわれとは遠い分野があるように思います。
その焦点の当たり方が正しい・間違っているはあるとしても。
私たちと同じ感覚で、大企業の経営を語ることはできないかと思います。

本年はお世話になりました。また、来年のご活躍を願っております。

Apollo440

半導体や薄型TV,PCも似たような状況なわけで、経営判断というよりは、民族的な何か、だと思うんだけど、どうでしょう。真面目で遊びがなくリスクを嫌う、といった。

#あと、日本の映画界は、別にハリウッド的な物を目標(注:世界を目標にしていないというわけでなく、あくまで自分の土俵で戦うって事で。意地ってやつかも?)にしているわけでもない、気がします

そんなんだからダメってこと?ダメでもない気がするけど。どうなんだろう?

読みました

日本映画の例えはわかりやすい。

特撮で名を上げた円谷プロが、着ぐるみの映像方法に固執したように、どの分野でも「過去の成功体験」から抜け出せないジレンマがあるのがわかる。

一般消費者からすれば、国内メーカーである必要性が、だんだんと薄れている。
製品のグローバル化も、だんだんと一般化する。もちろん携帯でも。

日本の市場が先細りしていく今後の10年。
日本向けの商品を売り込む市場が消滅しつつある中、逆に「非日本向け商品」の開発が、一般化する「非ガラパゴス化」がこれからのトレンドのような気がします。

もちろん、成功する商品は少ないけど、車や家電に出来た事が、他の商品でも出来ないはずがないと思います。

Shinichiroh Takezaki

メーカの経営陣がガラパゴス化して負けた。...そうかもしれませんね。

読み人知らず

部品・部材レベルでは負けどころか圧勝なんでべつにいいのでは?
iPhoneだって組立こそ韓国ですが、部品の大部分が日本とアメリカで占めてます
サムソンは日本の部材やら工作機械がなければ何も出来ませんし

fag

海外に進出しなかったことだということはここ数年散々言われたので気がついています。しかしその反省が何処に向かったかといえば、社員を海外に出すのではなく日本においたまま英語公用語化してTOEICの点数を使って日本式の満点からのマイナス点数基準でマイナス評価をつけコストを抑えるのに使ったり、実際に社員を出す海外が中国やインドであるのにそれでもTOEICを基準にしたりすることです。海外に進出するにはその国の文化や習慣からくる経済活動も含めて積極的に社員を出さなければならないのにそういう判断は可能な限り遅延させられるので、プロジェクトは潰れるまで延期します。そこでは海外進出とは、グーグルの無償のアンドロイドを使いインドの安いソフトウェアと中国の安いハードウェアを組み合わせることと理解されていて、これからもっとも独自規格で挑戦できるクラウドやネットは単にキーワードとして共有されているにすぎないことです。

ななし

戦犯はimode作ったやつでしょ

なな

日本人がリスクを取れないのは、個人の失敗を許さない社会にあるのではないかと思います。ウチの会社では、「一度失敗してもくじけず、成功するまでやる」といった風土はなく、「一度失敗したら(その人は)さようなら」ってところが多いので、90%以上の勝算がないと博打を打たせてもらえないのです。これは自分の会社の例ですが、他所も似たようなものでは無いかと思ってます。
「失敗が怖いので、リスクは取れず、保守的にならざるを得ない」ので、結果として「行動が遅れ、世界から孤立する」のではないかと。

これを変えるには会社全体を「火の如く攻める集団」へと導く、戦国武将のような野心あふれる人物が先頭にたつ必要があるでしょう。

ななし

KDDIがW-CDMAを選んでくれていたら、ほんの少しは話が違っていたのかもしれない。

yanada

間違った問いかけは、間違った問題認識から生まれる。
間違った問題認識から正しい解答は導き出せない。

「日本にはなぜAppleのような企業が無いのか?」
「日本企業はなぜAppleのようにできないのか?」

こんな問いかけ、よく見かけますよね。
でもこれはちょっとおかしい。
Apple(あるいはMicrosoft/Google/その他諸々以下同様)が無い、
Appleのようにできる企業が無いのは日本だけじゃありません。
と言うかAppleはアメリカにしかないのです。
「日本に無い」のと「アメリカにしか無い」のは全然違います。
つまり問いかけが間違ってる、不適切であると言うことです。
となれば問題認識も同様です。
正しい解決策が導き出されることもまず無いでしょう。

「なぜ日本にAppleが無いのか?」なんていくら頭を捻っても
公的な問題提起に偽装した私的な愚痴を量産するのがせいぜいでしょうね。

ヤマグチリョウタ

そもそも「iPhone対抗モデル」を目指す必要があるのかどうか。
AndroidにせよWP7にせよiOSとは全く違う訳ですから、
同じ方向性を目指している限りはiOSには永遠に追いつけないままです。
これは日本メーカーや日本キャリアだけの問題ではないでしょうけど、
「iPhoneではない道」をもっと希求すべきではないかと思います。
yanadaさんが上で仰っている通り「私的な愚痴」を繰り返していても仕方ないのかなと。

半兵衛

いやいやいや
yanada氏やヤマグチリョウタ氏の物言いがまるで江戸時代の尊王攘夷を唱えた
刀で異国を追い返せと言っていた武士のように思えます
AppleやMicrosoftを起業できない国がiPhone以外の道を作れると思ってるのでしょうか
まずは薩摩の西郷や龍馬がやったように黒船をiPhoneを真似るしかないのでは
まして情報が発達した現在では一国だけの道なんてありえない
i-modeは世界ではまったく相手にされませんでしたフランスのミニテルのように
ならば潔く捨てるべきではないのでしょうか刀が鉄砲に勝てないように

ヤマグチリョウタ

> 平兵衛さん

幕末・維新の例え…(苦笑)

私は「iPhoneではない道」がiモードなんて一言も言ってませんよ?
既存のフィーチャーフォンではない、でもiPhoneでもない「道」です。
それがAndroidだ! WP7だ! とはまだ言えないですけどね。

何にせよ貴殿のお考えは単なる思考停止にしか見えません。
「iPhoneを越えられるモノはどこも作れっこないんだから、ごちゃごちゃ言わずとっととひれ伏せ」って言っているようにしか読めませんよ?
yanadaさんの方が余程建設的なご意見だと思いますが?

Ms08hm

ガラパゴス賛美は気持ちが悪い。
imodeを代表とする日本の携帯ビジネスは世界的に見て異様な奇形でしかなく、世界に受け入れられなかったのは日本のハードメーカーのせいではなく、そもそもその奇形的な規格を立ち上げようとしたdocomoのミスであった。
そもそもwwwは世界的に規格をすすめていて、一企業の都合で歪めてしまうような公益性の低いモノではなかった。
docomoのimodeは当時の低いハードスペックに合わせて独自企画を満載した歪んだカタチのインターネットで、当初から限界が見えていた。
それをコンテンツ自体のレベルを落とし、
さらにスペックが低く、二年も持たない端末を四半期ごとに新機種を発表して次々に買い替え需要を促すためにキャリアがメーカーに開発補助をし、メーカーは結局ユーザーをよりもキャリア目線でたん末を開発する市場経済のカタチからすると歪んだハード市場を作り上げた。
さらにコンテンツ市場は単なる画像データに壁紙などと称して月額料金を徴収したり、PCユーザー視点からはせいぜいWebゲームに過ぎない程度の品質のゲームにやはり高額な月額料金を徴収するボッタクリとしか言えない市場となり、ネットを単なるキャリア囲い込みの徹底した集金システムに仕上げてしまった。
こんなimodeを受け入れるほど海外のメーカーは思慮が浅くはなかったと言うだけ。
結局端末のスペックと通信速度が安定すれば、フルブラウザひとつ搭載すれば凌駕されてしまう程度の市場でしかなかった。
このハードとエコシステムの違いは結局一時期国内で普及していたワープロ専用機の多機能モデルとのちにそれを駆逐したPCの違いに近い。
誰が使い始めたかなどどうでもいい。
ジャンクは最初からジャンクに過ぎなかったと言うだけ。

独創道

いちいち世界基準や標準に合わせたところでキリなど無い。世界に合わせようとし過ぎたために、ゴチャ混ぜになったのだ。ガラパゴス化した原因で知られていない側面である。「日本の顔」と呼べるものが無いのである。

D

2年前に書かれたのが信じられない。
よく考えられた考察だ。

imodeは独自規格で縛ったのが、問題でポータルサイトにすれば良かったと思う。

今からでも遅くないかも!?

キャリアで縛ったり、海外の圧力で?ナンバーポータビリティを導入されたんじゃないかな?

自動車も軽自動車規格で縛るのは、小型車の研究、開発には役立ったけれど、スマートみたいな、ことができたかな?

Izumikawa_aoi

それの何が悪いの?
これからはアジアの時代です
欧米こそがガラパゴス

なんで世界の中心であるアジアの日本様のケータイが落ち目のアメリカごときの世界標準とやらに合わせなきゃいけないの?

世界の覇権国である中国にあわせるなら分かるけど

今の落ちぶれたアメリカごときに世界標準を名乗る資格がある?

あと3年で中国に抜かれ、5年後にはインドにすら抜かれる
一発屋のアメリカ経済

いまどき世界標準=欧米っていつの時代の話?

80年代の若者?
20年前のアメリカ全盛期じゃあるまいし。

今や世界の中心はアジア
と言うか人類史上ほとんどの時代の覇権国はアジアだったし
そのトップクラスのひとつである日本で通用すればそれは世界標準。

今の世代はアメリカなんて一発屋の落ちぶれ国家は眼中にないよ

スマホゴリ推しから五年経った今でもガラケー使用者の方が8割と言うんだから、日本完全勝利。

一発屋のアメリカごときが、世界の中心である目上の日本人に向かって生意気な

アメリカこそがガラパゴスになりつつある事に早く気づきなさい

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