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« 「3強1弱、あと番外」の方向に向かうスマートフォン市場 | Main | 週刊 Life is Beautiful 2012年1月10日号 »

トヨタ自動車が原子力発電機を搭載した自動車を売らない理由

福島第一原発事故の「事故原因」が少しづつ解明されてきているようだが、なによりもこの事故から我々が学ぶべきなのは、どうやったら二度とあのような事故を起こさないようにできるか、という教訓だ。

そしてその教訓は、「防護壁をもうけて10メートルを越す津波にそなえること」のようなその場しのぎの答えでも、「すべての原発を直ちに止める」という極論でもない。

二度とあのような事故を繰り返さないためには、「事故原因」を「非常用ディーゼル発電機が津波により使えなくなってしまったから」という「直接の事故原因」を求めるだけでは不十分なのはもちろんだが、「津波の危険を知りながら対処を怠った東電が悪い」という「人的事故原因」を求めるだけでも不十分である。

もっとも重要なことは、なぜ東電が「津波の危険を知りながら対処を先送りするような行動に出たのか」を明確にし、その根本原因を修正することである。

普通のビジネスであれば、これほどの大災害を起こす危険があるのであれば、万全の安全対策を取るのが普通である。そして、万全の安全対策が取れないのであれば、そんなビジネスには手を出さない。

それは「万が一の大事故」を起こした時に会社が倒産してしまうからである。トヨタ自動車が原子力発電機を搭載した自動車を売らない理由はまさにそこにある。

では、なぜ東京電力は、津波の危険を知りながら、その対処を先送りし続けるような行動に出たのだろうか?

原子力損害賠償法があるからである。

原子力損害賠償法は表向きは「被災者の救済」を目的にしたように書かれているが(参照)、この法律の一番の目的は電力会社の救済である。わずか1200億円の損害賠償責任保険への加入を義務づけ、「賠償措置額(=1200億円)を超える原子力損害が発生した場合に、国が原子力事業者に必要な援助を行うことを可能とすることにより被害者救済に遺漏がないよう措置する」と規定している原子力損害賠償法は、「万が一の大事故を起こした場合にも電力会社は倒産させません」と言っているのに等しい。

被災者の救済が一番の目的であれば、「万が一の大事故の際に電力会社が倒産してしまった場合には、被災者への救済が国が肩代わりする」と規定するだけで十分だったはずである。

こんな電力会社救済法があるから、津波の危険に対しては何度も指摘されながら対処を怠って来たし、活断層の真上に原子力発電所を作るような危険きわまりないことを平気でしてきたのだ。

「万が一の大事故を起こしても電力会社は倒産させない」と規定している原子力損害賠償法こそが、東電に「津波の危険を知りながら対処を怠る」という行動に出させたのだ。

原子力損害賠償法が作り出すモラル・ハザードに関しては、Vermont Law School の Mark Cooper 氏の「Nuclear liability: The market-based, post-Fukushima case for ending Price-Anderson」がとても的確で建設的な指摘をしている。

彼は、福島第一での事故の一番の教訓は、原子力損害賠償法により引き起こされたモラル・ハザードこそが事故の根本原因であったことを指摘した上で、米国で福島第一のような事故を起こさないようにするには、(米国の原子力損害賠償法である)Price-Anderson法を廃止し、事業者に「万が一の大事故」の全責任を追わせるしかない、と指摘している。

原子力損害賠償法を廃止して、電力会社が全責任を追う事にすれば、事故を起こしたとたんに会社が倒産してしまうような大規模な原子力発電所は作らなくなるだろうし、安全対策にも本気で取り組むしかなくなり、津波への対処を先送りするようなことはなくなると彼は指摘する。

日本には「再生可能エネルギーは経済的に見合わない」と指摘する役人や経済学者がたくさんいるが、電源三法交付金と原子力損害賠償法の両方を廃止してしまえば、原子力発電ほど事業リスクが高く経済的に見合わないものはない。

「政治判断」で脱原発などしなくとも、電源三法交付金と原子力損害賠償法の両方を廃止すれば、ごく普通の経済原理で危険な原発はこの世から消えてなくなる。もし、「保険会社が損害保険を喜んで引き受ける」ぐらい安全で、かつ「再生可能エネルギーよりも安く」「交付金などなくても地方が立地を認める」原発が作れるものならどんどん作ってもらえば良いと思う。

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Comments

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トヨタ〜という例えは乱暴過ぎます。
今日には自動車に載るような原発はありませんから…
せめてトヨタが自動運転の自動車を販売しない理由、の方が妥当では?
(自動運転の技術はだいぶ確立していますが事故の責任を取れない)

You'll stealing from as

いつになったら、マイカーでスキーの帰りに寝て帰れるようになるのでしょうか?

You'll stealing from as

ソ連も原子力飛行機を開発しており、改造Tu-95ターボプロップ戦略爆撃機に小型原子炉を搭載したTu-119で試験していた。

Tu-119は、原型のTu-95の搭載エンジンであるクズネツォフNK-12とは別に、クズネツォフNK-14原子力エンジンを搭載していた。実際に飛行中に原子炉を稼動させ、1965年に初飛行したといわれている。一部情報によれば48時間連続して原子炉を稼動させることに成功したとされ、乗員は被曝せず生還できたというが、実際にはその大半が数年のうちに亡くなったようである。詳細は当該項目を参照。

Kenn Ejima

おっしゃりたい趣旨はわかりますし、電力会社を保護する法の存在なんて論外だというのにも同感です。

しかし、国家の存在意義の第一は「国民の安全を守ること」であるので、民間企業の自己責任ならばどんなリスクの高い決断をとることも自由に許す、ということは、やはり違うのではないでしょうか。強欲はどんどんリスクへの感受性を下げ、破滅へ導くことを、2009年のウォール街で学んだばかりではなかったですか。原子力ほど、賭けに負けたときにそのダウンサイドの被害が取り返しのつかないほど甚大な案件については、国家による関与、それも「規制」という形での関与は、あってしかるべきかなと思います。

これは損害賠償というシステム自体の限界だとも思います。損害賠償の存在は、小さな悪党をdiscourageするには使えますが、「大きすぎてつぶせない」ほどの巨悪は防げない。

せっかくの提案なので、もうすこし、煽り要素に寄り過ぎずバランスと実現性を考慮した内容にまとまっていくといいですね。

笑い猫

電源三法交付金と原子力損害賠償法の廃止には賛成です。
今回の事故が実際におこってから原発事故の対応はとても一企業ではできないことがわかりました。
国が対応するにしたところで十分な対応やら補償やらできるとはとても思えません。
原発の推進は限界でしょう

KEN

記事を拝見して単純に思ったのは「電源三法交付金と原子力損害賠償法の両方を廃止する」には、結局「政治判断」が必要になるのではないでは?ということです。
「廃止すれば、経済原理によって原発はこの世から消える」というのは理解できますが、廃止させることなんて簡単にできるんですか?

そもそも、そんな交付金や賠償法なんかができてしまう背景があるはずです。裏側には、利権や政治的な事情が絡んでいるはずだと想像します。

なので「『電源三法交付金と原子力損害賠償法』を無くせばあのような事故は二度と起こらない」というのも結局は極論になってしまうのではないでしょうか。
以上、失礼致しました。

T20

原子力の推進の裏には、その気になれば日本はいつでも核兵器を保有することができるという、他国への威嚇やけん制の意味合いもあると思うので、
減らすべきだとは思いますが、0にするのは難しいものなのかもしれません。

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