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日本の放送局が本当に恐れるべきなのはスマートビエラではない

日経新聞に Google の Chromecast に関して書くことになった。一度は Chromecast を Apple TV と比較する形の記事を書いてみたのだが、単なるありきたりなデバイスの紹介記事になってしまい、何だか面白くない。

その記事を読んでいるうちに、何だかもやもやした「わだかまり」のようなものが頭の中にわき上がって来るので、それに耳を傾けてみると、そこには、例の「新型スマートビエラに拒絶反応を起こしている日本の放送局」の件があった。

放送局にとって本当の敵は、スマートビエラではなく、電波利権にあぐらをかいてきた放送局がYoutubeやニコニコと同じ土俵で戦わなければならない時代の到来を早めるだろう、Chromecast や Apple TV なのだ。にも関わらず、これまで仲良くやってきたパナソニックを「放送画面とネットから取得した情報を同時に表示するのはARIBの規定違反」と叩く日本の放送局の態度は、なんとも時代錯誤で見苦しい。

ということで、最終的には

攻める「ネット配信」に守る「放送」 敵か共存か 

というタイトルで Chromecast と 新型スマートビエラを対比する形で起こりつつ放送革命の話に繋げる記事に仕上げてみたので、ぜひとも読んでいただきたい。


今週の週刊 Life is Beautiful:7月30日号

今週のメルマガ「週刊 Life is Beautiful」の配信準備が整ったので、内容を簡単に紹介する。

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今週のざっくばらん

Chromecast

Google が発表したChromecastがどんなデバイスか、という点に関しては色々な記事が書かれていますが、「Apple TV の AirPlay の部分だけを抜き出したデバイス」 と考えて良いと思います。Android 端末や、パソコン上の動画をテレビに投射(cast)することを可能にするデバイスなのです。技術そのものに特にアドバンテージがあるとは思えませんが、Apple のクローズドなアプローチに対して Google らしいオープンなアプローチで迫る、というのは...

米国にとってのTPP

日本では賛否両論のTPPですが、米国国内ではほとんど報道されることはありません。米国で暮らすほとんどの人にとって、TPPは米国のグローバル企業が海外でビジネスをしやすくするための政治的駆け引きの一つでしかなく、デメリットもなければ、メリットも(グローバル企業の利益の増加→株価の上昇)という間接的なものでしかなく、あくまで「他人事」なのです。WTO(世界貿易機構)の際には私の住むシアトルで暴動が起こるほど反対運動がわき上がったのと比べると大違いです...

私の目に止まった記事

TCL Announces 50-Inch 4K HDTV for $999

3DTVが完全な失敗に終わり、スマートテレビがなかなか立ち上がらない中、家電メーカーは次の目玉として4Kと呼ばれる超高解像度テレビを押しています。中国・台湾・韓国勢の参入により一気にコモディティ化が進んで利益が上げられなくなった市場で、彼らが参入して来る前に(たとえ一時的にであっても)この手の新製品で利益を上げることを期待しているのです。しかし、残念なことに 4K テレビの市場は予想よりもはるかに早くコモディティ化が進んでいます...

Qualcomm Q3: immune to smartphone slowdown

スマートフォン向けのチップでトップシェアを誇る Qualcomm が第三四半期(4月〜5月、Qualcomm の年度は10月からスタートするため、暦上の第二四半期が第三四半期になります)の決算を発表しました。先進国におけるスマートフォンの市場が飽和状態に近づいていると言われている割には、去年の同じ四半期と比べて利益が31%増、売り上げが35%増と、とても好調です...

CHART OF THE DAY: Microsoft's Big Problem In One Chart

Microsoft が抱える「大問題」を人まで分かる様にしたチャート、というタイトルの記事です。タイトルの通り 2011 年を境に スマート・デバイスの出荷数とパソコンの出荷数が逆転していることが良くわかります...

Apple Acquires Another Crucial Mapping App Company

Apple が日本の「駅ナビ」に相当するサービスを提供している HotSpot を買収した、という報道です。Apple は最近、やはり位置情報の会社であるカナダの Locationary を買収しており、位置情報関連のサービスが Apple にとってますます重要になっていることが明確です...

Scientists discover what’s killing the bees and it’s worse than you thought

農作物の受粉に重要な役割を果たしているミツバチが大量に巣箱ごと死んでしまっている問題に関して、ようやく科学者が原因が農薬にあることを突き止めたけれども、問題は想定されていたよりもとても複雑で、ある種の農薬を禁止すれば良いという単純な話ではない、という報道です...

エンジニアのための経済学:Apple の決算

Apple が第三四半期(4月〜6月期)の決算発表をしました。ややもすると、WWDCの基調講演 や 新製品の発表ばかりに目が行ってしまいますが、業界の大きな流れを把握するには、主要な企業の決算発表に目を向けることも大切です。ちなみに、決算発表をちゃんと見たい場合には、メディアによる報道やプレスリリースではなく、上場会社に義務づけられている書類(四半期の決算は Form 10-Q)に目を通すことにしています。Apple が投資家向けのページで公開している今四半期の Form 10-Q から前年度の第三四半期の Income Statement との比較をしたものを抜き出したのが下の表です...

読者からのご質問・ご意見コーナー

今週はこんな質問が来ました。

参議院選挙を控え、ヤフーがビッグデータを用いた議席数の予測を行なっている そうです。

https://japan.cnet.com/news/society/35034916/

しかし、従来でも開票率0%でも当選確実が報道されるなど、少数のサンプリン グでも統計的な手法で、ほぼ確実な結果が出せます。 選挙に限らずですが、ビックデータというものは、それほど重要なものなので しょうか。IT関連各社が取り組むだけの理由があるのだと思うのですが、いまひ とつよくわかりません。。

あまりにも良い質問なので笑ってしまいました。この「ビッグデータを用いた議席数の予測」はかなりデタラメです。そもそもビッグデータとは、あまりにも情報の量が多くて、通常のリレーショナル・データベースでは処理できない...


neu.Tutor TOEIC版のリリースのお知らせ

半年ほど前にアクティブラーニングの羽根拓也氏の学習テクニックを満載した neu.Tutorというカード型の学習ツールをリリースしたが、今回の neu.Tutor TOEIC版 は、それにTOEIC対策の語彙集を音声付きで組み合わせたもの。中部大学の青木由香里先生が厳選した1000単語が含まれており、短期間で TOEIC 向けのボキャブラリーを強化したい人を対象としている。

アプリをダウンロードすると128単語までは無料で勉強出来るので、まずは騙されたと思ってこれで実際にボキャブラリーを増やすことができるかどうかを1週間ほど体験していただきたい。そこで格段の効果が上がったと思えた方に、1000単語すべてにアクセスする有料オプション(450円)を買っていただければ良いという設計になっている。

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今週の週刊 Life is Beautiful:7月9日号

今週のメルマガ「週刊 Life is Beautiful」の配信準備が整ったので、内容を簡単に紹介する。

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今週のざっくばらん

アメリカ合衆国という国

7月4日は米国の「独立記念日」で、全米の各地でコンサートや花火大会が開かれました。広い意味では、日本の「建国記念日」と同じですが、日本の建国記念日が「日本の初代天皇である神武天皇が即位した日」という、現代の我々とはあまりにもかけ離れた神話上の逸話に基づくのに対し、米国のそれは「イギリスの圧政から独立を勝ち取り『自由の国』を作った」という...

起業家のためのすばらしい制度

先週は政府の「ベンチャー企業にお墨付きを与えようとするプログラム」の批判をしましたが、少し調べてみると、とても良い制度もあることを発見したので、紹介します。これから会社を立ち上げようという起業家が、無担保・無保証で1500万円までの融資を受けることできる制度です。脱サラしてベンチャー企業を立ち上げようと考えているエンジニアの方はぜひとも利用すべき制度だと思います...

Qixil というサービス

先月に梅田望夫さんのオフィスで会った合田武広さんという人が立ち上げた Qixil というサービスが、一般に公開されたので、さっそく試してみました。色々なトピックに関して質疑応答が出来る Quora のようなサービスです。立ち上げ当初の招待制の時期に集めたメンバーに起業家が多かったとのことで、現時点では「ベンチャー部門」の質疑応答が一番充実している、という特徴を持ちます...

私の目に止まった記事

Apple to build solar plant to power data center

Apple がデータセンター用の電源を供給するための太陽発電施設に投資する、という報道です(実際に設置・運営をするのは地元の電力会社で、Appleはその設置費用の一部を負担することになるようです)。Apple はNevada州の北部のLyon群にデータセンターを設置することを昨年発表しましたが、その電気は隣接する137エーカーの土地に設置された太陽発電所から...

エンジニアのための経済学:起業家に会計の知識は必要か?

上に紹介した Qixil に投稿されていた質問で、簡単な答えはそちらにも書いておきましたが、私の考えは「会計の知識はあった方が有利だし、どのみち必要になるので早いうちに勉強しておいた方が良い」というものです。私の場合、まったく会計の知識を持たずに UIEvolution を企業しました。幸いにも...

今週のビデオ:Moving Atoms: Making The World's Smallest Movie

Moving Atoms: Making The World's Smallest Movie

IBMの研究者が公開した「A Boy And His Atom: The World's Smallest Movie」という原子で作ったアニーメーション映像の制作過程をビデオにしたものです。アニメーション映像の方がFacebookを使ってバイラルに伝わって来ましたが、私はこの制作過程のビデオの方が見る価値があると思います...

今週のクラウドファンディング:The Roost

The Roost - Stop hunching over your laptop! 

良い姿勢で仕事をするにはどんなセットアップで仕事をすべきかを色々と試していたところだったので、この Roost にはとても心を引かれています(まだ購入はしていません)。私もそうですが、最近はノートパソコンをメインのパソコンとしてオフィスで使う人が増えていますが、ノートパソコンで長時間仕事をすると、どうしても背中が丸くなるし首や腰が痛くなってしまいます...

読者からのご質問・ご意見コーナー

今週はこんな質問をいただきました。

1年半ほど前から自作のAndroidアプリを公開して、現在は3本のアプリから毎月合計400ドル程度の広告収入を得ています。ひと月ほど前からはiPhone/iPadアプリの開発も始め、先週1本目のアプリをApp Storeに提出した所です。

本業の業務システム開発のかたわらに少しづつ自作アプリを増やして行き、近い将来(2~3年後?)にはアプリ開発からの収入のみで暮せる様になれればと考えています。ただ、現状では 深夜や早朝しか時間が取れない事やデザインのスキルが自分には乏しい事などから「このまま片手間に一人でやって行くのは厳しいな」と痛感しています。

どうせやるのであれば本腰を入れて、会社を辞めてしっかりと時間を取った上でデザインの出来る人と組んでやるしかないかなと思います。

また一方で、今のような形での(ネイティブアプリ中心の)スマホ/タブレットアプリケーションの市場というものがいつまで続くのか、という点に少し不安を感じないでもありません。そのうち個人のレベルでは太刀打ち出来る市場ではなくなるのではないか、という不安です。

個人開発者として今後長くスマホ/タブレットアプリ市場でやって行くためには何が必要か、もしくは今後のアプリ市場の見通しについて、など、ご意見をお聞かせ願えれば大変有難く思います。

とても良い質問ですね。

まずは「今のような形での(ネイティブアプリ中心の)スマホ/タブレットアプリケーションの市場というものがいつまで続くのか」という部分ですが、私も当初は比較的近い時期に HTML5 アプリに置き換わると予想していましたが、最近はこの市場も結構しぶとく残ると...


放送と通信の壁に穴を開けたパナソニック

パナソニックが「テレビ放送と同時にネットから取得した情報を画面には表示しない」という放送業界と家電業界との紳士協定を破ったとして、新型テレビのCM放送を拒否されているそうだ(参照)。

一見何気ないニュースだが、これは既得権益を守るためのルールでガチガチに固められてイノベーションが起こりにくくなっている日本としては、非常に画期的なことである。

日本のテレビ放送には、BML(Broadcasting Markup Language)という仕様で文字を送る仕組みがついているが、これをわざわざ HTML にしなかった理由は、放送と通信の間に人為的な垣根をもうけて放送局の既得権益を維持しようという試み以外の何物でもなかった。

今回問題となっている「テレビ放送と同時にネットから取得した情報を画面には表示しない」という紳士協定も、テレビ放送にネットから取得してきたTweetや広告を重ねて表示されては、付加価値がネット側に移動してしまうことを放送局が恐れているからに他ならない。

そんなテレビの視聴スタイルが一般化すれば、「映像も放送ではなくネットから取得すれば良い」ということに消費者が気づき、「放送用の電波」を独占的に所有している放送局と同じ土俵で戦う「ネット放送局」ビジネスが台頭して来る可能性があるからだ。

そうは言っても、ニコニコ放送局やYoutubeは着実に視聴率を伸ばしているし、Apple TV や Roku に代表される「インターネット・セットトップボックス」がテレビ受像機をさらにコモディティ化しようとしている今、パナソニックとしては「放送局の顔色をうかがって」いては時代に乗り遅れてしまうと判断したのだろう。

いずれにせよ、小さなベンチャー企業ではなく、老舗のパナソニックがここに風穴を開けたということは画期的であり、高く評価できる。パナソニックの担当者たちにはぜひともとことん頑張ってもらいたい。