iPhone OS 3.0 に関してひと言
米国のPR会社に勤める知り合いに「iPhoneの新しいOSに関してひと言」というテーマでインタビューを受けた。要約するとこんな感じ。
米国のPR会社に勤める知り合いに「iPhoneの新しいOSに関してひと言」というテーマでインタビューを受けた。要約するとこんな感じ。
先日、宿題の形にしてあえて私の意見を書かなかった「Appleが打つべき次の一手」。さまざまな意見が集まって私自身にとってもとても良い勉強になったが、やはり戦略として重視すべきなのは
今週はMBAの授業の一環でインドのいくつかの企業を訪ねてまわっているのだが、今日行ったのはInfoSys。
本日、Big Canvasとしては6本目となるアプリケーション、PhotoCanvasをリリースした。去年の7月にPhotoShareをリリースして以来、PhotoShareのアドオン的な存在のアプリを4本リリースしてきたわけだが、それを通じて学んださまざまなことの集大成が今回のPhotoCanvas。
iPhone向けのアプリを開発・販売するビジネスをしている私としては、iPhoneの販売数は「トータルのマーケットサイズ」を知る上でもとても重要。ちょうど今日になって、7〜9月期の決算が発表されたので、さっそくそれを読んだところ以下の数字を発見。
Unit sales of iPhone 3G have been significantly greater than sales of the first-generation iPhone. During the first quarter of iPhone 3G availability ended September 27, 2008, 6.9 million units were sold, exceeding the 6.1 million first-generation iPhone units sold in the prior five quarters combined.
そもそもの目標が、2G/3G会わせて1000万台を今年の終わりまでに売る予定だったので、それを大きく上回る数字(トータルで1300万台)を3ヶ月前倒しで達成したことになる。
日本では「ワンセグが見れない」「日本語が打ちにくい」などの批判も受けているiPhoneだが、iPhoneの一番の強みはそのトータルでの使いやすさと使う人に与える満足度の高さ。私はiPhone 2Gの時代から1年以上使い続けているが、もう普通の携帯には戻れない。この1300万台という数字は、顧客満足度90%という携帯電話としては前代未聞の数字をたたき出しているからこそ達成出来たと言える。
この数字を見る限り、「iPhoneだけに特化してアプリを作る」という会社設立時(今年4月)の判断は間違っていなかったし、少なくともこの調子でAppleがiPhoneを売り続けてくれている限りはその方針を変える理由は見当たらない(Android携帯もようやく市場に出始めたが、本気でアプリを作る気になる条件はまだまだそろっていない)。
ちなみに、今週末には、Big CanvasとしてPhotoShare、SmallCanvasに続く、3つ目のアプリケーションをAppleに審査のために提出する予定なので乞うご期待。
シリコンバレーのVCの中で頂点に位置すると言っても良いセコイア・キャピタルが、投資先のベンチャー企業のCEOを集めて緊急のプレゼンをしたそうだ(資料は「Sequoia Capital on startups and the economic downturn」にある)。今の金融危機が今後の景気や企業経営にどんな影響をもたらすだろうかの理解を深める意味でも、ベンチャー企業経営に関わっていない人も、目を通しておいて損はない資料だ。
この資料の中で、もっとも明確なメッセージが込められたのは49番目のスライド。
「このタフな環境で生き残りたかったら、これから会社に戻ってすぐに人を減らしてサバイバルに努めろ。それが出来ないベンチャー企業は生き残れないし、セコイアとしても支援できない」というのがセコイアからのメッセージ。
ここで言うところのDeath Spiralとは、資金繰りがうまく行かなくなってから人を減らし始めると、その分収入も減ってしまい、もっと人を減らさなくなり、それがさらに収入の減少につながり...という悪循環を指す。そんな状況になるよりもずっと前に人員カットをして、資金繰りに余裕を持って厳しい時代に備えろ、という話だ。
こういう厳しいことを包み隠さずにストレートに言ってくれる人こそが本当に役に立つ投資家。この手のメッセージを真剣に受け取ってちゃんと行動に移す勇気と決断力があってこその起業家。厳しい時代ほど切磋琢磨が進む。
「マーケティング」という言葉を聞くと「商品に関する情報を顧客に向けて発信する」だけと考える人が多いが、マーケティング部門の役割として同時に重要なのは、顧客のニーズをきちんと探り出して「何を作るべきか」という部分に反映させること。
ちょうど今読んでいるHarard Buisness Reviewにとても良い例が出ていたのでその紹介。
米国のペンキ会社が、競争相手に安売り競争を仕掛けてられ、「利益を削ってでもマーケットシェアを維持すべきか」という厳しい選択に迫られていた。その時にその会社のマーケティング部門が調べ出したのが、主な顧客である塗装業者が何にお金を使っているかというデータ。
そのデータによると、ペンキそのものは経費の15%にすぎず、大半は人件費だという。それも、ほとんどのケースで、一度塗ったペンキを十分に乾かすために、次の日にもう一度現場に足を運んで二度塗りをしているためによけいな人件費がかさんでいるという。
そのデータに基づいて開発部門が開発したのが「早く乾くペンキ」。ペンキが早く乾けば、一日のうちに二度塗りを終えることができ、大幅な人件費の節約が出来る。その結果、マーケットシェアを失わずに40%の価格を上乗せすることができたという。
ふむふむ、と。
このブログでも、日本の携帯電話と比べてiPhoneがどう違うかという話をさんざんと書いて来たが、結局のところ一番本質的な違いを生み出しているのは、「誰のために携帯電話を作っているか?」という点。
日本の携帯電話メーカーが「NTTドコモに育ててもらった」ことに関しては誰も否定できないわけで、その意味では消費者よりもキャリアの意向を優先して作らなければならない。足並みがそろいやすい分「お財布ケータイ」みたいなことはやりやすいことは確かだが、iPhoneのような不連続的な進化はさせにくいのも事実。
これは、日本以外の国でも言えて、
"The larger handset manufacturers had gotten really good at developing products that the wireless carriers want," said Jonathan Hurd, a director at consulting firm Altman Vilandrie & Co. "Apple developed a product that the consumer wanted."【Smart Phones Challenge Firms - WSJ.comより引用】
を読んでいただければ、NokiaとかMotorolaもやはり「キャリアの顔色をうかがいながら」物作りをしていることを理解してもらえると思う。
私のようにアプリケーションを作る立場に立つ方としても、「世界各国のキャリアとそれぞれ交渉してアプリを配布してもらう」なんてまどろっこしいことはしていられないわけで、その意味でもiPhoneは本当に破壊的。色々な面で、Appleが他の携帯電話メーカーの手がとどかないところを独走中なのも当然。
「必ずしも消費者のことだけを考えて物作りができない」既存の携帯電話メーカーは、これからも苦しい戦いを強いられることになる。
MBAの授業の一環で、"Marketing Myopia" (by Theodor Levitt) という1960年に書かれた論文を読む機会があったのだが、色々とうなずけるところがあったので、メモ代わりに。
家電メーカーのような技術系の会社は、どうしても技術系の人が経営者になりがち。技術系の人は(私も含めてだが)色々な問題を論理的に解決しようとする。技術的な問題を解決するためにはこのアプローチはとても有効だが、消費者心理のように曖昧で非論理的なものには適用できない。
技術系の経営者が陥りやすい失敗は、自分がコントロールできる分野、すなわち、技術的に難しい問題を解決することにばかりエネルギーをそそぎ、非論理的で簡単にはコントロールできない消費者の動向のようなものに十分な注意を払わないこと。
その結果、「消費者はどのみち論理的な行動なんてしないんだから、それに関して色々と戦略を立てたところで無駄」という発想の元に、「良いものさえ作れば売れる」というプロダクト指向・技術指向の経営に陥ってしまうこと(自分が得意なところで勝負したがるのは人間の常)。その結果が、消費者のニーズを無視した「ひたすら大きなテレビ」「ひたすら高性能なパソコン」「ひたすら高機能なケータイ」作りである。
最近やたらとアップルが成功しているのは、やはり「マーケティングの天才」であるスティーブ・ジョブズがトップにいるから。iPhoneには加速度センサーやマルチタッチなどの最新の技術が使われてはいるが、そこに惑わされてはいけない。iPhoneが「業界全体を揺るがせるほどのインパクト」を持っているのは、とことんにまで使う人の満足度を高めるために綿密に設計された「消費者指向」のもの作り・マーケティングの結果であるから。
加速度センサー・マルチタッチという最新の技術を持てば他社と差別化できると思って入れたわけではなく、使い勝手の向上のためには加速度センサーとマルチタッチが不可欠、という理由で入れている点に注目すべき。カメラの画素数が日本のケータイほど高くないのも、画素数を上げてもユーザーの満足度には繋がらないから。スペック競争の消耗戦におちいりがちな日本のメーカーとは大違いだ。
正面にボタンが一つしかないこと、箱を開けるとすぐにiPhoneが見えるように梱包されていること、iPhone SDKのNDAがあれほど厳しいこと、シリアルナンバーが刻印されていること、薄くて軽い割には妙に質感があること...そういった一見あまり本質的でない部分でのこだわりが、実はユーザーの満足度に直結しているということは、技術一本やりの経営者にはなかなか理解しにくいのかも知れない。
色々なメーカーから「iPhoneキラー」を自称するデバイスが出て来ているが(例:Samsung’s Instinct)、どれもが全く対抗出来ていないのは、それらの企業が技術面・プロダクト面でしかiPhoneを見ていないから。アップルがどうやって消費者の心をつかんでいるか、どうやったら多少の欠点までもかわいく思えてしまう熱狂的なファンを作っているかを理解した上で戦略を立てない限り、差は開くばかりだ。
PhotoShareがiPhoneユーザーのみを対象にしていることに対して、「なぜ他の携帯電話もサポートしないの」「なぜウェブから写真を投稿できるようにしないの」という質問を良く受ける。
答えは単純で、「新しい会社で全く新しいサービスを作るのだから、ターゲット・ユーザーとユーザー・シナリオを絞り込んで、大手SNSサービスとのはっきりした差別化をはかる必要があるから」である。
ふたたび、今読んでいる"Marketing Management"(MBAの教科書)から引用する。
Successful new firm formation typically requires a competitive strategy that delivers superior value to a narrowly defined target segment in a way that either avoids direct confrontation with established competitors or is difficult for them to emulate.
この市場に全くのゼロから新規参入する企業としては、既にMySpace, Facebook, Flickrという世界中に何百万人・何千万人のユーザーを抱えるSNSサービスと真っ向から戦うのはどう考えても無理。彼らが提供していない・提供できていない新しい価値を提供しない限りは決してユーザーに使ってもらえない。
PhotoShareの場合、「iPhoneユーザーのみ」という絞り込みがここでいう"a narrowly defined target segment"に相当するし、"superior value"は常時接続デバイスであるiPhoneの利点を最大限に生かした「いつでも、どこでも、その場で」写真を撮って共有・life loggingすることに特化されたおもてなしである。
その意味では、「まるで教科書通りのmarket-orientedなもの作り」をしているわけだが、だからと言って成功が保証されていないところがこのビジネスの難しさ。