「水からエネルギーを生み出して走る車」の話はあまりにも子供だましなので、スルーをしようと思っていたのだが、日経BPまでが軽率にも報道してしまったために(参照1、参照2)、米国の朝のニュースでも報道される始末。
日経エレクトロニクスの愛読者として日経BPにはいろいろとお世話になっている私だが、今回のは完全なミスなので日経BPのためにも指摘しておきたい。こんな詐欺のような話は頭から無視すべきなのは明々白々。こんなくだらない話を記事にした記者には厳重注意を与えるべき。日経BPとしてこれ以上の権威失墜を避けるためにも、ここから先の報道は控えた方が良いだろう。できることならば、「なぜこの手の永久機関が不可能なのか」を丁寧に解説して、不幸にも誤解してしまった読者を救済すべき。
エネルギーを使わずに触媒だけで水素と酸素を分解することはできないのは当たり前の話(エネルギー保存の法則)。化学反応を使って水を分解することは可能だが(例えばナトリウム)、その場合は「化学エネルギー」を消費しているわけで、決して水からエネルギーを取り出しているわけではない。
そもそも「水から発電する新エネルギー」という言葉使いがうさんくさい。日経BPの記者ならば、その言葉を聞いただけで「まやかし」だと見破らなければだめ。「水と空気だけで発電し続けます」という記事のタイトルも完全にミスリード。今回の話が可能であれば、「特殊なバネを使って『石』を高いところに持ち上げて、それが落下するエネルギーを使って発電する『石エネルギー車』」が可能になる。
まあ、どんな科学の法則でも絶対に覆せないわけではないのだが(ニュートン力学に対する相対性理論が良い例)、ニュートン、アインシュタイン以来の革新的な科学の進歩が、突然大阪のベンチャー企業によって達成されたとは信じがたい。
ちなみに、どうしても理解できないのがこの「ジェネパックス」社の狙い。ベンチャー企業として投資家からお金を集めようとしているのかも知れないが、ベンチャー投資であろうと全く科学的根拠のないエセ科学をうたって投資家からお金を集めれば詐欺罪は成立するわけで、そんな見え透いた犯罪に、こんなにおおっぴらに手を染めて来るとは考えにくい。作っている本人たち自らが勘違いをしてしまっている可能性がない訳でもないが、なんらかのエネルギーを注入しなければ車が走らないことは本人たちが一番良く知っているだろうから、それもありえないし。
【追記】何人かの人たちに、「すでに永久機関ではないことを認めているから良いのではないか」との指摘を受けたが、私が問題にしているのは、ジェネパックスが使っている「コップ一杯の水が、地球を支えるエネルギーに」「水が生活エネルギーに変わる」「水からエネルギーを取り出す過程で...」という、あたかも「水からエネルギーを取り出す技術を持っている」ように表現している部分。彼らのウェブサイトにある、「発電の仕組み」というアニメーションにも水が触媒と反応して水素と酸素に分かれるという表現があり、これも意図的なミスリーディング(「触媒」という言葉を使っている点に注目)。
化学反応を利用した水素電池を発明したのであれば、最初からどうどうと「画期的な電池を発明しました」と言うべき。そこを「水からエネルギーを取り出す」という言葉を使っては投資詐欺と指摘されてもしかたがない。




