今週の週刊 Life is Beautiful : 11月15日号

今週号の週刊 Life is Beautifulの配信準備が整ったので、簡単に内容を抜粋して紹介する。

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先週、気になったニュースはやはりオリンパスの粉飾決算事件。日本の会社は、形だけは欧米と同じ「株式会社」という形態を取ってはいるが、実際には「会社が誰のものか」が曖昧で、かつ、取締役会のほとんどのメンバーが経営陣だというとても特殊な形になっている。そのため、すべてがうまく行っている時は良いのだが、一度歯車が狂い始めると、それを監視する仕組みがないために、今回のようなルール違反を平然としてしまう。...

時事トピック
iPhoneが加速する通信革命(7)

iPhoneが登場したのは2007年のことだが(発表は1月、発売は7月)、その前夜にあたる2006年は米国のモバイル業界にとっては、少し停滞ぎみの年であった。日本のコンテンツ・プロバイダーによる米国のコンテンツ・プロバイダーの買収がさかんに行われたのは2004年前後...

エンジニアのための経営学:Discount Cash Flow と Net Present Value(3)

読者の一人から、Discount Cash Flowに関してとても良い質問が送られて来たので、今日はそれに答えます。

Discount Cash Flow では銀行預金の金利をベースに考えていますが,日本のような超低金利の世界だと計算上はあまり影響が大きくないことになります。一方で投資家の目線で見ると,銀行預金以外の選択肢もあるわけで,そういった選択肢よりも投資が魅力的かどうかが問題になってきます。そう考えると,Discount Cash Flow を計算するときに,銀行預金の金利以外についても考慮した指標にするべきだと思っています。質問としては,(1) そういった考え方があるのか,(2) 実務家の目線の実感としてそのような指標には意味があるのか,といったところの考えをお聞かせいただければ幸いです。

結論から先に言えば、Discount Cash Flowにおいて銀行預金の金利をベースに考えるのは間違いで、それぞれの企業のリスクに応じた金利を適用する必要があります...

ブログには書けない話・書かない話
私が Internet Explorer の開発に関った理由: その3

社内で評判になりつつあった Light-weight Server を商品化するアイデアに目覚めた私は、上級副社長のBrad Silverbergのオフィスに押しかけた。WindowsチームとInternet Explorerチームの両方を統括する立場の人物で、私から見れば、上司の上司のさらにその上司であった...

読者からの質問コーナー

今週は、読者の一人から送られて来た、以下の質問に答えてみたいと思います。

MicrosoftやGoogleは自社製品やサービスを提供する、いわば「サービス指向型」なビジネスです。だからこそ、野球選手のような優秀な人材を集めることが重要なのは理解できます。
ですが、官公庁・特殊法人および銀行などの大企業からの受注というのは、いわば「案件指向型」です。タイプが異なるので、必要な人材も多少異なるのは当然だと思います。

そこでですが、シアトルでは官公庁や銀行などから請け負う「案件指向型」というビジネスは存在しないのでしょうか?もし存在するのであれば、日本のゼネコン型とはどこがどのように異なって成立しているのでしょうか?

米国にも、日本のITゼネコンと同じ様に、「案件指向型(英語だと Engineering Service)」のビジネスをしている会社はあります。IBMとかAccentureが良い例です。私がシアトルに作った UIEvolution Inc. も...


今週の週刊 Life is beautiful 11月8日号

 今週のメルマガ(週刊 Life is Beautiful)の内容は以下の通り。

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先週、私の目を引いたのは、ファイナンシャル・タイムズの Japanese TV manufactures admint defeat という記事。ブラウン管から液晶・プラズマを使った薄型テレビに切り替わる際に世界を席巻した日本の家電メーカーが、テレビの低価格化と円高のダブル・パンチで苦境に立たされているという話...

時事トピック
iPhoneが加速する通信革命(6)

ここまで、iPhone登場前には主流と見られていた、Symbian OS、J2ME/MIDP および DoJa、BREW の3つのモバイル・プラットフォームについて説明して来た。いずれのプラットフォームもそれなりの数の端末に搭載され、開発者を集める事にも成功したが、それが新しいビジネスを生み出したり、通信事業者のデータ通信サービスに大きなインパクトを与えたかと言えば、それはとても限定的であった。

その唯一の例外とも言えるのが日本のモバイル市場...

エンジニアのための経営学:Discount Cash Flow と Net Present Value(2)

Discount Cash Flow の考え方が広まる以前は、「何年で元が取れるか(Pay Back Period)」が投資の際の判断基準として広く使われていた。「ここに工場を建てるのには1000億円かかるが、一度完成すれば毎年100億円の利益が生まれるので、10年で元が取れる」「4年で初期投資が回収できるプロジェクトの方が、元を取るのに10年かかるプロジェクトよりもリスクが少ない」などの使い方をする...

ブログには書けない話・書かない話
私が Internet Explorer の開発に関った理由: その2

インターネットの仕組みが実はとても単純な仕組みで出来ていることに気がついた私は、さっそく何か作ってそのアーキテクチャを実感してみたくなった。仕様書を読んで仕組みを理解するのと、その仕様書に基づいて何か作ってみるのでは理解度は大きく違う。ちょうど長いトンネルを抜けてWindows95を出荷したばかりなので、自由になる時間はたっぷりとある。多くの仲間たちはバケーションをとっているので、会社もとても静かだ...

読者からの質問コーナー

読者の一人からARMのビジネスモデルを例に挙げた上で、「半導体のビジネスモデルは、今後どう変わっていくと思いますか?」という質問が寄せられていたので、今週はそれに答えてみます...


今週の週刊 Life is Beautiful : 11月1日号

今週の週刊 Life is Beautiful の配信の準備ができたので、簡単に内容を紹介させていただく。

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時事トピック
iPhoneが加速する通信革命(5)

BREWビジネスモデルの一番の弊害は、Verizon/Qualcomm間で設定されたBREWアプリの価格決定と支払いの仕組みであった...

エンジニアのための経営学:Discount Cash Flow と Net Present Value(1)

米国でMBAを取得した人たちが企業の投資計画の話をする時に良く使うのが Net Present Value (NPV)という言葉。「ここに工場を1000億円で建てたとすれば、予想される収益から計算して Net Present Value は42億円になります」「1年後のユーザー数が10万人と仮定すると、Amazonのec2を使った場合はNet Present Valueはプラスになりますが、自社サーバーを構築した場合はマイナスなってしまいます。ユーザーを60万人以上集める自信がなければ自社サーバーは辞めた方が良いと思います」のような使い方をする...

ブログには書けない話・書かない話
私が Internet Explorer の開発に関った理由: その2

私がMicrosoft自身がブラウザーを作っているということを知ったのは、Windows95の開発も最終局面にさしかかっていた1995年の前半のことである。Windows95のリリースと同時に、「プラスパック」というパッケージソフトを小売り販売し、その中に Internet Explorer というブラウザーを含めることになったことを知らされたのだ...

読者からの質問コーナー

読者の一人から

SEやプログラマの人材募集を見ますと(特に新卒)、経験不問、文系学部卒業でも可というような条件が多く見られます。本当に経験不問、文系学部卒業でも問題なく業務がこなせるのでしょうか? 他の理系職種(ハードウェアエンジニアなど)で、このような条件は考えられません。企業としては、何に期待しているのでしょう?

という質問が送られて来ました。とても良い質問なので、少し丁寧に答えてみたいと思います...


来週の週刊 Life is Beautiful(10月25日号)

メルマガをiPadで読んでいただいている読者の方から、メルマガがブログと比べて(レイアウト上)読みにくいという指摘があったので、来週号から試験的に HTML に少し細工をして可読性を上げることを試みることにしてみた。

メルマガなので、CSSを使うことはできないので(ひょっとしたら裏技があるのかも知れないが...)、ヘッダータグに style を直接追加して font, border, padding, margin などを指定している。

今回はそのレイアウトのまま、各トピックの先頭部分を貼付けてみる。

時事トピック
iPhoneが加速する通信革命(4)

SymbianともJ2MEとも異なる形で市場に現れたのが Qualcomm の BREW OSである。BREWに関しては、たまたまその当時、私自身がCEOのPaul Jacobsに近い位置にいたこともあり(Qualcommは、私が元マイクロソフトのメンバーと2000年に設立した投資会社Ignition Parnersの最初のファンドの投資家)、当事者の一人としてその誕生に立ち会うことができた。...

エンジニアのための経営学
Porter's Five Forces(3)

今度は、このPoter's Five Forces で携帯電話機メーカーのビジネスを解析してみよう。

1. The threat of the entry of new competitors (新規参入の脅威)

それなりの資本力が必要という意味ではさすがに誰でも簡単に参入できるマーケットとは言いがたいが、iモードケータイが全盛だった2000年代の前半と比べると、(1)規格部品を組み合わせるだけで作れる様になった、(2)製造を100%アウトソースすることが可能になった、(3)Androidというソフトウェアプラットフォームが無料で入手できる、という3点において参入障壁が大きく下がったのは事実である。...

ブログには書けない・書かない話
私が Internet Explorer の開発に関った理由: その1 

私はMicrosoftにいた90年代に、Windows95とInternet Explorer 3.0/4.0 というとても面白いプロジェクトにソフトウェア・アーキテクトとして直接関わることができた。これらのプロジェクトはMicrosoftにとって戦略的にとても重要だっただけでなく、パソコン・インターネット業界全体に大きなインパクトを与えることになったわけで、「世界中の人たちに自分が作ったソフトウェアを使って欲しい」と考えていた私にとっては夢のようなプロジェクトであった。...

読者からの質問コーナー

今週は、米国でMBAを取得中というかたから、M&A(吸収合併)の難し関してこんなコメントがありました。

ということで、M&Aにおいて単にMBA卒な投資銀行に大量のフィーを払うのではなく(笑)、その価値を最大化するにあたりどうすべきかと自分ならどういう役割を果たせるものかと日々ぼんやりとですがと考えています。今回のスクエニの話で言えば...


今週の週刊 Life is Beautiful : 10月18日号

今週のメルマガ(週刊 Life is Beautiful)の内容は以下の通り。

時事トピック:iPhoneが加速する通信革命(3)

今回は、一時期は携帯アプリの世界標準として注目された J2ME/MIDP に関して。なぜ NTT DoCoMo だけが世界標準と少しだけ異なる J2ME/DoJa を出す事になってしまったのか、そしてその「分裂」が標準化および日本のケータイ・コンテンツの輸出にどんな影響を与えたのかを考察する。J2MEとAndroidには(言語がJavaだという部分を除いても)多くの共通点があるので、J2MEの衰勢に関して学んでおくことは、Androidアプリを作っている人・作ろうとしている人にとってはとても価値のある話だと思う。

エンジニアのための経営学:Porter's Five Forces(2)

今週は、先週に続いて、iOS アプリ・ビジネスの魅力および問題点について、Poter's Five Forces モデルを適用して考察する。

スクエニによるUIEvolution Inc.の買収 : その8(最終回)

今週は、ここまで書いて来たことのまとめ。なぜスクエニによる買収が失敗に終わったのか、そしてそれから学べる事は何か、を私なりにまとめてみた。

質問コーナー

今週は、読者からいくつか面白い質問が来ていたので、それに私なりの回答を書いておいた。

  • 「仕事術に関して、ソフトウェア方面が 今は一番進んでいる」と考えてよいのでしょうか?
  • パナソニックのバリュープロポジション
  • 中島さんがもしプログラミング初心者にプログラミングを教えるならどの言語を最初に教えますか?

ちなみに、「質問は月一回まで」などの誤解があるようだが、特に制限をもうけてはいないので、気軽に送っていただけると助かる。

 

 

 


来週の週刊 Life is Beautiful(10月11日号)

来週の週刊 Life is Beautiful(10月11日号)の配信準備が整ったので、内容を紹介する。

ありがとうスティーブ・ジョブズ

これは私からスティーブ・ジョブズに送る言葉。

時事トピック:iPhoneが加速する通信革命(2)

今回は、iPhoneが登場する前の Nokia/Symbian の立ち位置について。ここ数週は、iPhoneが携帯電話業界にどんな革命を起こしたのかの理解を深めるために、「iPhone前夜」の業界がどんな状態だったのかについて解説している。

エンジニアのための経営学:Porter's Five Forces(1)

経営学のフレームワークのひとつである Porter's Five Forces を、「iPhoneアプリ市場」を例にとって解説する。

ブログには書けない話・書かない話、スクエニによるUIEvolution Inc.の買収 : その7

今回も前回に引き続き、スクエニからの独立直後の経営立て直しの話。

質問コーナー

読者からGoogle、Apple、任天堂のバリュー・プロポジションのレポートが送られて来たので、それを紹介するとともに解説を加える。「週刊 Life is Beautiful」は、こんな形のゼミ形式でのディスカッションを重視しているので、この手のレポートや質問は大歓迎である。

 


来週の週刊 Life is Beautiful(10月4日号)

来週で足掛け3ヶ月目に入るメルマガ「週刊 Life is Beautiful」。ちゃんと読み続けていただくためには、読者にとって役に立つ中身の濃い文章を書き続けるしかない。忙しければしばらく放置しておけば良いブログとはここが大きく違う。

来週号のトピックは以下の3つ。

時事トピック:iPhoneが加速する通信革命

先日の「auの決断と通信事業の未来と」というエントリーに、「iPhoneを売るということは、『より良い土管を提供しよう』という決断だ」と書いたが、これについて少し詳しい解説。モバイル元年とも言える2000年にUIEvolutionのCEOとして業界に飛び込んだ私として言いたい事は沢山あるので、2〜3回に分けて書く予定だ。

エンジニアのための経営学:バリュー・プロポジション

米国のMBA取得者が良く使う「バリュー・プロポジション」という言葉の意味を説明した上で、なぜそれが企業経営にとって大切なのかを解説する。「企業を一つ選んで、その企業のバリュー・プロポジションについて解説する」という読者からの小論文の募集もしている。

ブログには書けない話・書かない話:スクエニによるUIEvolution Inc.の買収(6)

今回は、スクエニからの独立直後に訪れた危機に関して解説する。「企業の存続のために社員をレイオフする」という二度と繰り返したくない経験をしたわけだが、そんなレイオフを経営側の人間としてどんな気持ちで実行したかについて書いてみた。


東電の「黒塗りメソッド」でメルマガの宣伝をしてみるテスト

東電が事故原因の究明に必要な操作手順書を「黒塗り」して提出したことに関しては、先のエントリーで書いた。まったくもってけしからん話だが、この黒塗り資料には思わぬ効果があることに気がついた。黒く塗りつぶした部分がものすごく読みたくなるのである。

これは新手のマーケティング手法として使えるかもしれない。ということでさっそく、私のメルマガの宣伝に応用し、来週配信予定のメルマガの一部を「黒塗り資料化」した画像を作って下に貼付けてみた。名付けて「黒塗りメソッド」。さて、効果は上がるだろうか?

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今週のメルマガ、9月13日号の紹介

週刊 Life is Beautiful、9月13日号の配信準備が整ったので、内容を紹介する。

エンジニアの経営学:会社はだれの者か

株式会社に関して、日本ではしばしば議論になるのに、米国ではまったくならないのが「会社は誰のものか」というテーマ。今回は、この日米の違いにハイライトを当てた上で、日本ではなぜそんな曖昧さが許されているかについて解説してみた。

ブログには書けない話・書かない話:スクエニによるUIEvolution Inc.の買収、その3

今回は、成毛氏の発言により「スクエニによるUIEの買収が失敗であったこと」が明らかになったプロセスについて書いてみた。そもそもこの手の買収や合併を成功させるのは簡単ではないが、それが失敗に終わったことを素直に認めることはもっと難しい。

菅首相はなぜあの段階で「ストレステスト宣言」をしたのか?その4

今回は、日本ではなぜ首相の支持率がすぐに低下してしまうのかを、どうして米国の大統領はあれほど「国民を元気づけるスピーチ」を重視するのかという観点から考察してみた。

質問コーナー

今回は、「資本主義が日本人を幸せにしているとは思えない」という読者からの指摘に、私なりの考えを書いてみた。とても難しい、深いテーマだが、同じ資本主義の国でありながらもっと人々が自由に暮らしている国もたくさんあるわけで、そのあたりは今後ともに色々な角度から考察して行きたいテーマではある。


今週のメルマガ、9月6日号の紹介

ようやく2ヶ月めに入るメルマガ「週刊 Life is Beautiful」。9月6日号の入校準備もほぼ整ったので、内容を紹介する。

エンジニアの経営学:取締役会の位置づけ

前々回から日本企業のコーポレート・ガバナンスの問題点を指摘して来たが、今回は株式会社における取締役会の位置づけに焦点を当てて、日本と米国の違いを解説して見た。必ずしもどちらが正しいという話ではないが、東電の株主総会が大株主からの委任状によって形だけのものになってしまっているのななぜか、などの基本的な疑問に答えてみたいと思う。

エンジニアのキャリアパスについて

読者の一人から「ITの本場アメリカでは、40歳前後を過ぎても開発の現場で活躍しているエンジニアは多いのでしょうか?もしそうなら、その方達はどのような形で会社に、ひいては業界全体に貢献されているのでしょうか?」というとても良い質問が寄せられていたので、私の経験を通して解説してみた。日本企業の終身雇用制は、会社が提供してくれるキャリアパスに一生つきあって「会社人間」に喜んで鳴って行く人たちにとっては、何とも心地良いものだが、そこにうまく乗れなかった人、そんな枠組みからはみ出してしまうような人たちにとっては、弊害以外の何物でもない。最近の日本の閉塞感の根本的な原因はこのあたりにあると考えている私としては、このテーマには色々な角度から取り組んで行きたいと思う。

ブログには書けない話・書かない話:スクエニによるUIEvolution Inc.の買収、その2

今回は、買収される側の企業の創設者/CEOとしての私の気持ちの部分を書いてみた。ベンチャー・キャピタルから資金を集めるということが何を意味するかをつくづく学べた経験であったので、ベンチャー企業をいつかは起こしたいと考えているエンジニアの方たちに参考になれば良いと思う。

菅首相はなぜあの段階で「ストレステスト宣言」をしたのか?その4

菅首相は首相ではなくなってしまったが、私としては浜岡原発を止めたことと、あの「ストレステスト宣言」だけはとても高く評価している。新首相のもと原発問題がどちらに向かうのかはまだわからないが、少なくとも菅首相が首相のクビを差し出してまで示した方向性は維持して欲しいと考えている。