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カンヌはフランスの熱海か?

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 私がカンヌに行くというと、妻に「カンヌってフランスの熱海っていうイメージがあるけど」と言われた。確かに海岸に新旧ホテルが入り乱れて建っていて、人ごみと渋滞がひどいのは確かだが、熱海よりはイメージが良いと思う。「フランスの湘南」の方がいいんじゃないだろうか?高級ブティックとレストランが並ぶところはビバリーヒルズのようだし、町のすぐ脇にビーチがあるところはワイキキのようである。

 この写真は、桟橋から撮った写真(いつものようにドコモSH505i)だが、白い砂が混じっているのか、光の加減か、地中海の色はあざやかなコバルトブルーであった。冬の海とは思えない、なんとも暖かい色である。この地方で活躍する画家が、海の色にこだわり続ける理由も分かるような気がする。


セント・ポールの町

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 今日シアトルに戻ろうとしたのだが、飛行機が土曜までいっぱいなので、今日はカンヌで一休みである。モンテカルロ、ニース、マルセーユなどのメジャーなところに観光に行く手もあるのだが、カンヌの渋滞と人ごみで懲りたので、欲張らずにのんびり過ごすことにした。とは言っても、貧乏性なので、「ホテルで一日のんびりと本を読む」なんていうのは性に合わない。そこで、車で30分ぐらいのところにある、小さなセント・ポールという町に出かけた。城壁に囲まれた石造りの町で、丘の上に立っている。道も全て石だたみであり、なかなか雰囲気のある町だ。

 「芸術家の町」と呼ばれるだけに、沢山の画廊が絵を売っている。ちらちらと覗きながら道を歩いていると、目を引く色彩の油絵の飾ってある画廊があり、足を踏み入れる。どれもプロバンスの海や花が明るい色彩で描いてあり、見ているだけで楽しくなる。よく見てみると、どれも Sultan という作家の絵である。「いらっしゃい」という声のする方を見ると、いかにも上の作業場で絵を描いていましたという様子で、作業着を着た初老のフランス人が階段を下りてきた。Sultan 氏本人である。つまりここは、アトリエ兼画廊で、Sultan 氏本人が絵を売っているのである。

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 絵も好きなタイプだし、背広を着た画商ではなく絵描き本人が売っているというという所も気に入ったので、値段さえ手ごろなものがあれば記念に絵を一枚買うのも悪くない。そう伝えると、何枚も絵を持ってきてくれては、それぞれの絵に込められた思いなどを説明してくれる。「僕の絵は、一枚一枚ぜんぶ違うんだ。ぜひとも気に入ったもの時間をかけて選んで欲しい」と言い、すごく時間をかけて絵を選ばせてくれた。親切なのはありがたいのだが、今更「買うのはやめた」とは言えない雰囲気になってきてしまった。

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 やっと一枚選ぶと、値段交渉が始まった。向こうは「町で私の絵を画商から買うと倍ぐらいするんだ」と言い、私は「こんな高い絵を買うつもりはもともとなかった」と言い、適当なところで折り合いを付けて契約成立。絵の目利きではないので、高い買い物をしたのか安く買えたのかは分からないが、プロバンスに来た記念の品と考えれば、まあ許せる値段だ。

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 お昼は、町の一つだけあるパン屋で、チョコレートクロワッサンを買い、見晴らしのよい場所にあるベンチで景色を見ながら食べる。このときに、「ああモンテカルロにしなくてよかった」と思った。シアトルに住んでから、しっかりと田舎ものになってしまったようだ。


知らない町での散歩

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 出張などで知らない町に言ったときに、地図ももたず目的もなく歩くのが私の趣味である。日の出とともにホテルからカンヌの中心から離れる方向に歩いていくと、小高い山(たぶん標高2-300メートルぐらい)が見えたので登ることにした。途中までの道が入り組んでおり、なかなか登山口が見つからなかったが、ついに見つけて登った。カンヌ湾の全貌が見渡せるすばらしいスポットであった。観光客など一人も来ておらず、近所の犬を連れた老夫婦に会っただけだ。写真の真ん中に白く見える建物がホテルで、その向こうにカンヌの中心地に向かう海岸が伸びている。

 写真で見ても分かると思うが、ホテルからずいぶん歩いてしまった。ちょっと歩こうと思ったのが、2時間もかかってしまった。でも、こんな無計画な散歩が、体にも精神にも良い効果をもたらす。昨今の言葉で言えば、「心と体にご褒美」とでも言うのだろうか。日本からシアトルに戻り、時差ぼけも取れないうちに、カンヌまで来て仕事をしているのだから、このくらいの「ご褒美」はあげるべきだろう。私の健康法である。


パネルディスカッション

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 今日は、GSMコンファレンスの最終日。「Handset Usability」(携帯端末の使い勝手)というパネルディスカッションに、パネリストの一人として参加。最終日の午後のセッションなので、多少覚悟はしていたが、客の入りはとても悪い。写真は開演の5分前の客席の様子。全体で200人いるかいないかだ。せっかく喋るなら、満席のホールでやりたい。

 トピックは私が得意な分野なので、色々と勝手なことを言わせてもらった。パネリストが6人もいたので、他の人に失礼になってもいけないので、押さえ気味に話さなければいけないのが、結構辛かった。抑えながらも、4分の1ぐらい喋ってしまったと思う。

 ちなみに、ノキアはヨーロッパの携帯電話会社に相当嫌われているというのは、業界では常識である。パネルディスカッションの質疑応答の時に、私が「つまるところはアジアのメーカーは(ノキアと違って)携帯電話会社の仕様どおりに作るから伸びているんでしょ」と振ると、オレンジ(ヨーロッパの大手の携帯電話会社の一つ)の人は、力強くうなずいていた。そんな関係にあるにもかかわらず、皆顔をあわせると、「夕べのノキアのパーティーでは飲みすぎた」とか言いながらヘラヘラしているのだから、変な業界である。


手のひら大の携帯電話!

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 モトローラの3G端末(WCDMA)が Symbian のブースに展示してあった。信じられないほど大きく(手のひら大)、モトローラは絶対本気で作っていないと思う。たぶん、Hutchson 3G あたりが、開発費も全て負担してモトローラに作らせたのだろう。モトローラ側に売る気が無いのはミエミエである。それにしても、モトローラは節操が無いというか、戦略が無い。Hutchson 3G 向けに Symbian ベースの手のひら大端末を作るかと思えば、マイクロソフトOS 搭載の携帯を作り、同時に、Linux ベースの携帯も作っている。でも、本当の売れ筋・稼ぎ頭は T-720 で、GSM/JAVA 版と、CDMA/BREW 版がある。Symbian OS を戦略商品とみなし、普及端末にはSeries-40, スマートフォンマーケットにはSeries-60, そして PDA マーケットにはSeries-70 と、きちっと作りこんで来ている Nokia とは大違いである。こんなんで、Nokia に勝てるんだろうか?


カフェで一息

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 GSM コンファレンスの喧騒からのがれて、カフェ(Safari Cafe)でランチを食べた。生ハムのサンドイッチはまあまあであったがエスプレッソ(”カフェ” と言ったらでてきた)のおいしいことといったら無い。適度な苦味がありながらまろやかで、何とも言えずに幸せになる。日本の茶道で飲むお茶に通じるおいしさである。思わず「お代わり」をしてしまった。同じシアトル在住のHaward Schwaltz (スターバックス社長)には悪いが、(ミルクで薄めてラテにしなければ飲めない)スターバックスのエスプレッソとは大違いである。スターバックス一号店がパリにできたそうだが、果たして成功できるのだろうか?


写真は黙って撮るに限る?

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 モトローラがPDA型の Smart Phone (Microsoft のOS内臓)を発表したので、見に行った。縦・横どちらにも開けるのが特徴だが、横開きにすると、横開きザウルスの小型版のような形をしている。説明員に写真を撮りたいと頼んだのが大間違いで、おおごとになってしまった。説明員が、「写真を撮る場合は、PRの許可がいる」と言い始めて、あっという間にPR担当の人が3人ぐらいの人が集まってきてしまった。モトローラとしては、デバイスのイメージが大切なので、メディアキットの写真を使って欲しいという。

 私が「コンファレンス会場で撮る『生きた』写真だからこそ良い記事("blog entry" と言っても通じない可能性が大なので "article" という言葉を使った )が書ける」と主張すると、許可はくれたが、「ズームアップはだめだ」、「ついて歩いて、すべての写真にOKを出す」という大騒ぎになってしまった。今さら、「たかが個人の趣味で書いているブログ用だ」とは言えずに、引率付きで撮った写真がこれである(これ以上のアップはだめだそうだ)。デジカメではなく、携帯(SH505i)を取り出して写真を撮りはじめると、怪訝そうな顔をするので、「GSMコンファレンスだから、携帯で撮ることに意味がある」と適当にその場しのぎをした。たかがこのブログのためにモトローラの人たちにとんだ手間を取らせてしまい、非常に恐縮である。次からは、許可を取らずに、勝手に撮ります(笑)。


アクセスの豪華ヨット?

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 GSMコンファレンスならでわの名物は、コンファレンス会場の横にならんだ豪華ヨット(日本語では、帆の無い船はクルーザーと呼ぶが、英語では帆があろうとなかろうとヨットである)。ワイアレス業界の色々な企業が、顧客との商談・パーティー、および、マーケティングのためにコンファレンス期間中借りきるのである。冬の間はどのみちヨットを使わないヨーロッパの金持ちたちにとっては、とても良い副収入元である。

 今日は、アクセスのパーティーに顔を出した。ヨットを借りるのは今年が初めてだそうだ。今年は、ヨーロッパでの売り上げを、アクセス全体の35-40%に引き上げる予定だとのことで、ヨーロッパでの「本気度」を見せる意味でも、ヨットを借りたのだろう。うちの会社も、早くヨットを借りられるぐらいになりたいものだ。

 ちょうど、Openwave の Thomas Reardon と話した後だったので、Openwave との競争などに絞って話を聞いたが、ビジネスへの取り組み方からして、対照的である。ドコモにどこまででも「着いて行く」ことによりビジネスを広げようとする姿勢、プロトコルスタックから Java VM まで、売れそうなものならなんでも幅広くいろんなものを提供する姿勢など、日本のソフトウェア会社によくありがちなビジネスへの取り組みである。「顧客の喜ぶことならなんでもする」アクセスの下請け的姿勢は、Openwave の「世界を変えてやる!」という戦略的姿勢とは、好対照である。日本以外での、アクセスとOpenwaveの対決は見ものである。

 ちなみに、アクセスによると、Openwave が 「iMode の牙城を崩した」と言っているのは、本当ではないそうである。いくら WAP 2.0 で XHTML が標準化されたとは言え、iMode のコンテンツプロバイダーは、皆、アクセスのブラウザーでのみテストしてコンテンツを出しているので、 Openwave のブラウザーで iMode のコンテンツが全てちゃんと見えるとは限らないそうである。「あるヨーロッパの携帯メーカー」との契約の件もまだ交渉中で、Openwave に決まったわけではないそうだ。

 ちなみに、Openwave の Thomas Reardon によると、独占状態のアクセスは、ブラウザーにデバイスあたり非常に高い値段を付けているそうだ(具体的な数値も知っているのだが、さすがにこんなところで公開するのはまずいだろう)。Openwave がメーラーも含めて約3分の1の値段を付けているそうで、一度牙城が崩れ始めたら、アクセスに対するプライス・プレッシャーはものすごいのではないだろうか。この戦いは見ものである。


Openwave

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 GSM コンファレンスの初日である。渋滞がひどく、近くのパーキングが全く空いておらず、とても苦労してしまった。カタログ値ではホテルから11分で会場に着くはずのところ、近くに行くまで45分、パーキングを探すのに45分、パーキングから会場まで歩くのに30分かかってしまい、約束していたミーティングをすっぽかすことになってしまった。惨憺たる出だしである。

 前置きはさておいて、本題に入ろう。疲労困憊してまずは一番手前の入り口から入ると、明らかに裏口である。天井は低く、小さめのブースがならんでいる。訳もわからず歩いているとドコモのブースがあった。予想外に小さいブースである。ドコモの人によるとGSMコンファレンスでは、これが普通である。続いて歩いていると、Openwave のブースで、CTO の Thomas Reardon が「5億台に乾杯」という言葉でスピーチを締めくくるところであった。Thomas とは、私がマイクロソフトにいたときに一緒に働いていた(Internet Explorer グループ)ので、良い友でありライバルでもある。この前のCTIAでも、レストランで会って、「Openwave のブラウザーは1Mバイト以上だろう、大きすぎるんじゃないのか?」と茶化したことがある。

 スピーチの後ブースに入っていくと、歓迎してくれ、一時間ほど話し込んでしまった。彼のグループ(ブラウザーグループ)が本当に狙っていること(「Openwave Browser v7.0 は Windows 3.01 みたいなもの」だそうだ)、Openwave がブラウザーの圧倒的なシェアを利用してメールクライアント、基本UIなどをも視野に入れてビジネスをしていることを丁寧に説明してくれた。やはり、元マイクロソフトにいただけあって、非常に戦略的である。このあたりの考え方は、アクセスやオペラには難しいだろう。

 特に Thomas が自慢しているのは、アクセスの牙城を崩したことである。ヨーロッパの iMode 仕様の携帯のブラウザーはこれまでアクセスが100%独占していたが、今回ヨーロッパの携帯電話メーカーの一社(名前はここでは公表できない)が、Openwave のブラウザーを採用することが決まったそうである。デモを見せてくれたが、まだバグがあるようだ。

 ちなみに、この写真は、Thomas がわざわざこのブログのために、ポーズをとってくれたところである。広げた左手はもちろん、「5億台」の5である。5億台は確かにすごい。うちの会社もがんばってはいるが、まだ100万台ぐらいである。いつか越してやる!


夕焼けに輝くカンヌの町

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 やっとカンヌに着いた。ホテルは正確にはカンヌの対岸にある小さな街にあり、チェックインしてから外に出ると、カンヌが夕焼けに輝いていた。ポーチから良い写真を撮ろうとしたのだが、全体に明るすぎどうも散ってしまう。ちょっとカメラの方向を変えただけで輝度が大きく変わってしまう。そこで、少し光の弱い木陰から移したのがこの写真である。燃え上がるように輝くカンヌの町の雰囲気が出ているだろうか。