新宿警察署刑事課見学ツアー
2004.09.13
早朝、うちの会社から日本に出張中の「外人部隊」の一人から連絡が入った。相棒のビルがなんらかのトラブルに巻き込まれ、警察からまだホテルに戻っていないという。チンピラに絡まれ、パスポート・携帯などを奪われたらしい。月曜日の朝から、とても刺激的な始まりだ。
日本もそれほど治安が悪くなってしまったのかと気をもみながら新宿警察著に電話し、刑事課に繋いでもらう。確かにビルはトラブルに巻き込まれ、被害届けを通訳を使って作成中という。少なくとも「被害者」として丁重に扱ってくれているらしく、一安心する。言葉が通じなくて、誤って拘留されているという訳ではないらしい。被害者なので、身元引受人が必要というわけでもないらしいが、本人もショックを受けているだろうし、新宿警察署まで迎えに行くことにする。
新宿駅から警察署まで歩く間に、この滅多に得ることの出来ない経験を楽しんでいる自分に気づいた。本当の警察署の、それも刑事課の中を見れるかもしれないのだ。「踊る大走査線」の一ファンとしては、滅多にないチャンスだ。警察署が見えるころには、私の頭の中には「踊る大走査線のテーマ」が流れていた(ちなみにこういった「非常事態」でも楽しんでしまう私を、「不謹慎」と呼ぶ人がいることは承知しているが、今さら性格を変えられるものではない)。
入り口にいる警察官にいかにも毎日来ているかのように会釈をして建物に入る。受付で、「刑事課」と言うと持ち物検査も無しに中に通してくれた(あまり賛成できない)。エレベーターで4階に上がるとすぐ刑事課のドアがある(写真)。近代的なビルにも関わらず、手書きの表札なところが妙にリアルだ。
ノックしてドアを開けると、そこは湾岸署の刑事課を1.5倍ぐらい雑多にしたような部屋で、スチール机の上には書類が山積みだし、皆とても忙しそうだ。ワイシャツの人も半分ぐらいいるが、パンチパーマにアロハの人もいる。特にアロハの人は、いかにも歌舞伎町の似合う所轄の刑事という感じだ。一瞬、「この人の写真をブログに乗せたい!」と思うが、「写真を撮らせて下さい」の一言が言えなかった(まだまだ、修行が足らない)。
「ビルという外人がお世話になっていると思いますが。」と一番手前の人に話しかけると、「ああ例のね。ちょっと外で待ってて」と廊下に追い出されてしまう。私の刑事課初ツアーは、わずか10秒ぐらいで終わってしまう。
しばらくすると、ワイシャツを着た人当たりの良い刑事さんが出てきて、事情を説明してくれる(ここで、「この人はきっとキャリア組みだな」と思ってしまう私は、刑事ドラマの見すぎかもしれない)。刑事さんによると、ビルは一人で夜の歌舞伎町に繰り出し、いわゆる「ぼったくりバー」に引っかかったらしい。道でしつこくキャッチセールスをして来る黒人に連れられて怪しいバーに行ったというのだから、しかたがない。
結局のところ、「外人が不慣れな町で冒険心を起こして当然の報いを受けた」というありきたりの顛末(てんまつ)となった。本人は私に警察署まで迎えに来てもらったことにかなり恐縮していたが、「実は刑事ドラマが好きで、結構楽しかった」と正直に言っても説明が長くなりそうなので、「気にしなくていいよ」と軽く受け流すプチ偽善者の私であった。
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