Nokia インターネット・タブレット
2005.05.25
インターネット・バブルのまっさかりに、Sony、Gateway Computer、WebTV などが一斉に「家庭用インターネット専用端末」を売りに出したが、ことごとく失敗した。失敗の原因は複数あるが、一番の原因は、「インターネットをするのに一番適したパソコンが低価格化した」ことにある。
2005年の今になって、その市場に Nokia がポータブルなインターネット専用端末「Nokia 770」を出してきたことは興味深い。家庭にブロードバンド・WiFiが普及してきたことを考えれば、ライフスタイルとして、ソファーに腰掛けてテレビを見ながらインターネット、という図は十分考えられるので、その市場の開拓という意味合いを持つのだろう。そんな場面では、キーボード付きのノートブックは大きすぎるし、値段も高いし、ハードディスクの動作中に持ち運ぶのは良い考えではない。そこで、タブレット型のハードディスクなしのインターネット専用端末を実験的に投入して、市場が立ち上がるかどうかを見ようという戦略だろう。
新しいもの好きの私としては、少し欲しいような気もするのだが、買ったところで、(買って2ヶ月で使わなくなってしまった )Sony の Clie のような運命をたどることは目に見えている。息子に買い与えたところで、MSN のメッセンジャーや iTune が動かないのでは全然使い物にならないと捨てられるだけだろう。
では、どうやったらこんなデバイスを普及させることが出来るのだろう。私が Nokia の担当者だったら、音楽・ゲームなどのコンテンツを配信するサービスと絡めて売ることを考えるだろう。ちょうど、DoCoMo の iMode や、Apple の iTune に相当するサービスだ。言い換えれば、「汎用のインターネット専用端末」としてではなく、「コンテンツ配信サービス向けの専用端末」としてサービス込みで提供するのである。
「汎用のインターネット専用端末」として売ると、どうしてもパソコンと比較されてしまい、「少し高いけどワープロも出来るし、ゲームも遊べるし、メッセンジャーも走るからパソコンを買おう」ということになってしまう。それに対して、サービスを絡めて「月々2000円で音楽聞き放題、ビデオ見放題、ゲーム遊び放題の新世代ネット家電」として売りに出せば、消費者にはとても分かりやすいし、パソコンとの差別化を強く出せる。
売る側からしても、ビジネスモデルを「売り切り」のものから、「月額課金」のサービス型ビジネスモデルに切り替えることが出来るのでメリットは大きい。その上、消費者との継続した関係を結ぶことができるので、マーケティング面での利点も非常に大きい。
ただし、Nokia というハードウェア企業が、そんなサービスを提供するべきかどうか(もしくは出来るかどうか)は大きな疑問である。サービスの提供は、ネットワーク事業者(NTTやComcast)、ISP(NiftyやAOL)、もしくはメディア・コンテンツ会社(Walt DisneyやSony Pictures)のどこがやってもおかしくないのだが、もしそこが今後の「ネットに繋がった組み込み機器ビジネス」において最もおいしい部分になるとしたら Nokia としても簡単に明け渡したくはないだろう。
ハードウェア企業の中でも、Nokia、Sony、Apple のような「ブランド力重視」の企業にとっては、ユーザーとの関係で主権を取ることは必須であり、本来得意でないはずの「サービス事業」への進出は不可避のようにも思える。Sony の新CEOにコンテンツ・ビジネス出身の人が選ばれたことも、Apple がiTune Music Store を始めたのも、そんな方向性の現れと解釈しても良いだろう。
この見方からすれば、NTTがOnDemandTVというビデオ配信サービスを始めたのも、ESPNがMVNO(Mobile Virtual Network Operator)ビジネスに進出するのも、全て関連している。来たる「ユビキタス・ネットワーク/デバイス」の時代に、ネットワーク・デバイスの垣根をまたいだコンテンツ配信サービスの主権を握るのはいったいどの企業になるのだろうか。目が離せない。
タブレットで、メッセンジャーや iTunes を使いたい場合は、こんなものもありますよ。
http://www.viewsonic.com/products/mobilewireless/wirelessmonitors/airsyncv210wirelessdisplay/
http://www.viewsonic.com/support/mobilewireless/airpanelsmartdisplays/airpanelv150p/
Remode Desktop を使えるので、デスクトップアプリがそのまま使えますし、日本語もOKです。(もちろんローカルアプリはだめですが)
でも、それほど売れていないようです...
結局 LCD が安くならない限り安い PC かノートPCに流れてしまうのでしょう。
コストをサービスで回収するというのはアイデアですね。
この場合、Apple や NTT のようにすべて(ソフト、ハード、サービス)を自社でやる場合はいいですが、そうでない場合の成功したケースがなかなか出てきていないような気がします。
Posted by: shun | 2005.05.25 at 12:40
Remote Desktop ですか、これはいいですね。LCDが安くならないというのであれば、普段はPC用のモニターとして使っておき、切り離しすとタブレットとなり Remote Desktop ができるというデバイスにする方法もありですね。
Posted by: satoshi | 2005.05.25 at 14:06
私的には、このようなデバイスが「汎用のインターネット専用端末」として成就して欲しいと願っています。そしてその座をPSPに期待しています。パソコンを一般家庭に普及させるときの問題は「なんだか使い方がわからない、なんだか知らない内に動かなくなってしまったようだ、なんだか‥」といった、「なんだか‥」が多すぎることです。腫れ物に触るかのような家電は浸透しませんし、全市民権を得るとは到底思えません。またパソコン・ソフトウエアの多様なユーザインターフェースも一つの諸悪の根源ですし、その辺を「汎用のインターネット専用端末」の登場でユーザインターフェースの整理整頓+淘汰がおこなわれるなされると期待しているのですが‥
Posted by: tosuzu | 2005.05.25 at 14:58
>tosuzu さん、
おひさしぶりです!「そしてその座をPSPに期待しています」なんてセリフをクタラギさんに聞かせたら大喜びしますよ。専用端末対汎用端末という選択肢と、専用サービス対汎用インターネットという選択肢という組み合わせの中で、どう決着が付いていくのかは見逃せない戦いですね。
私は、もし仮に汎用インターネット端末のビジネスが成り立つとすれば、PSPよりもタブレット型Macの方が可能性が高いと思っています。私は以前から、ソニーがアップルを買収して本気でマイクロソフトと戦う、という構図を期待しているのですが、なかなか実現してくれませんね。
Posted by: satoshi | 2005.05.25 at 15:25
お久しぶりでございます。汎用端末を目指して専用端末になるケースも見逃せませんね。Appleといえば、Newton MessagePadを「汎用インターネット端末」として復活させて欲しいですね。初期モデルを持っていますが、当時、あの美しいデザイン、そしてNewtonOSの素晴らしさには感激したものです。
Posted by: tosuzu | 2005.05.27 at 17:18
Newton のファンっていまだにいるんですね。私は一時期、Newton の主要な開発者の一人、Steve Capps と仕事をしたことがあるのですが、ものすごい人でした。マイクロソフトとは全く違うベクトルでしたが、圧倒されるまでのクリエイティビティにあふれた人で、本当に勉強になりました。あんな人がいたからこそ、Newton が出来たんだなと納得した覚えがあります。
Posted by: satoshi | 2005.05.27 at 19:20
はじめまして。
私の場合、ネットアクセスの半分は、ネット小説を読むことに費やされるので、そのためだけのお気軽端末がないかと思っています。
候補その1はWindowsCEのPDA、1号機であるカシオのA-21の後継機の開発を継続していてくれたらよかったのに。
もちろん、キーボード付きで、ということです。
その次がタブレットPC、しかし価格とサイズで手が出せず。
これは、と、思ったのが「京ぽん」こと、ウィルコムのAH-K3001V。
Opera内蔵のPHSで、パケット料金が定額なので、室内屋外どこでも使い放題の上、小型軽量、画面は小さいけど、文字を読むだけなら問題なし。
と、いうわけで、しばらく使っていましたが、今度は、通信速度の遅さ、これは通信費用の節約のため、32kのコースを選択した為なのですが、これが気になってしまいました。
せめて無線LANが使えれば、と、思っていたら、W-ZERO3が発売されました。
これなら、欲しかった機能がほとんど網羅されています。
今はこれを使っています。
ただ、これを使っていて思うのですが、近年のネットコンテンツはIE5.0以降対応のものが多いです。
これでは、専用端末を使った場合、正しく表示されません。
こう言ったことも、専用端末の普及を妨げているのでしょうか。
Posted by: 坂牧和彦 | 2006.04.22 at 16:11