ゲーム・オン・デマンドの時代
2005.06.02
私はずいぶん前から、「パッケージ・ソフトのビジネスモデルの時代は終わる」、だとか、「デジタル・コンテンツは、次第に月額固定料金での『見放題・遊び放題・使い放題』のサービスとして提供されるようになる」などと釈迦の説教のように言い続けている。しかし、実際そういったサービスがどんどん始まらない限り、現実感を帯びないのも事実である。
そんな私にとっては、今回の So-netのゲーム・オンデマンド・サービスの発表は、まさに「待っていた」サービスである。少し驚いたのは、最初にこのサービスを始めたのが、Yahoo BB ではなく、So-net であることだが、もっと驚くべきは、So-net はこの技術をソフトバンク・グループの一員である、Softbank Broadmedia Corporation からライセンスすることである。ソニー本体のエンジニア達は、「そんな技術、俺達に作らせてくれよ!」と悔しがっているに違いない。
ちなみに、技術はいたってシンプルである(ちなみに、ソフトウェアの世界では「シンプル」は褒め言葉である)。実際のゲームはサーバー側で動かし、その映像と音だけをブロード・バンドを通してセットトップボックスに送るのである。Windows Terminal が同じような技術を使っているし、以前 WorldGate という米国の会社がブラウザーまでサーバー側で走らせる、というサービスを展開していた。
この技術が優れている点は、ゲームソフトそのものは全てサーバー側で管理されているため違法コピーが不可能なことと、「月額固定料金で遊び放題」のサービス型のビジネスモデルに適していることである。ユーザーに提供するセットトップ・ボックスに特別なグラフィック・チップや、高速なプロセッサーが必要無い点も優れている。
このアプローチの一番の問題は、IPベースのネットワークに特有のネットワーク遅延と、負荷が増えた時のサーバーのレスポンス・タイム、がユーザー・エクスペリエンスに与える影響の大きさである。今の時代のゲーム端末やパソコンのレスポンスの良さに慣れたユーザーは、わずか 100ms の遅延にも敏感に反応する。今の IPv4 のネットワークを使う限り、どうしても 100ms 程度の遅延は生じてしまう。そんなネットワーク環境の下で、今のユーザーが満足できるユーザー・エクスペリエンスを提供するのは至難の業であるはずだ。何か特別な仕掛けがあるのかも知れないし、遊べるゲームが限られているのかも知れない。
全てのゲームをネット配信の形でサービスとして提供する時代を実現するためには、技術面でもビジネス面でも乗り越えなければならないハードルが沢山ある。そんな中で、パイオニアとなって世界で最初のゲーム・オン・デマンド・サービスを始める So-net のチャレンジ精神はとても偉いと思う。
伊藤直也さんのブログで知ってやってきました。どれも非常に興味深くて楽しく読ませていただきました。今後も楽しみにしています。
So-netのオンデマンドゲームについて補足ですが、今回採用されているG-cluster技術は、2004年から本格展開が始まっており、すでに@niftyやBIGLOBE、ODN、エキサイト、ライブドアといったISPやポータルが採用しています。そう考えるとSo-netの採用は少し遅いくらいかもしれません。
G-cluster以外にも、ソフトバンクBBでは同じような手法で「BBソフト」というサービスもやっています。このサービスも新しいオンデマンド配信という意味では注目かとも思います。コンテンツ配信に非常に期待する1人として、こういった取り組みがもっと広がっていくと良いなと期待しております。
BBソフト
http://bb.softbankbb.co.jp/ybb/bbsoft/
Posted by: KAI | 2005.06.04 at 08:17
Kaiさん、コメントありがとうございます。2004年から既にサービスインしていたとは知りませんでした。ご指摘ありがとうございます。遊び心地はどんなもんなんでしょうね。今度日本に行ったときに、試してみる必要がありますね。
Posted by: satoshi | 2005.06.04 at 15:33