理科系人間にも分かる「小泉改革の本質」
2005.08.30
以前にも、「Ajaxの本質」などのエントリーを書いたことがあるが、エンジニアにとって、物事の本質をしっかりと把握して、絶対に必要なものとそうでないものを見極める力を付けることは非常に大切である。
そこでその練習も含めて、小泉首相がやろうとしている構造改革の本質を私なりに解釈して、理科系人間の私にも納得できる形で解説してみようと思う。
今の日本が抱える一番の問題は、財政赤字である。支出が税収を大きく上回る状況を何年も続けて来たため、国債という形の大量の借金を抱える悲惨な状況になっているのだ。誰が考えても、この「支出が税収を上回る状況」は早急に解消すべきなのだが、それがとても難しいのである。
なぜ難しいかと言うと、それは政府の支出をコントロールする立場にいる政治家や官僚が、「支出を多くしたほうが自分自身が得をする」立場にいるためである。つまり、地方にどのくらいダムや道路を作ったら良いかを決める立場にある人達が、地方にダムや道路を作れば作るほど(つまり地方に金をバラ撒けばバラ撒くほど)、地元からの票が集められる、引退後の天下りポストが保障される、などの恩恵を受ける構造になっているのである。こんな構造になっていれば、政府の支出がどんどん増えていくのは当たり前である。
そんな政治家や役人の行動を、「それは彼らのモラルが低いからだ」と批判するのは簡単だが、とんだ勘違いである。私も含め、世の中の99.9%の人間は、お金を使えば使うほど自分が得をする環境に置かれれば、お金を使うに決まっている。人間とは元来そういうものだ。そんな状態に彼らを置いてしまっている構造そのものに根本的な欠陥があるのである。つまり、これはモラルの問題ではなく、インセンティブ(動機付け)の問題なのである。
この問題の正しい解決方法は、その構造そのものを壊してしまうこと(=構造改革)にあるのだが、それがまた難しいのである。なぜなら、そういった構造を決める立場にいる政治家の多くが、同時に今の構造から多くの恩恵を受ける立場にあるからである。彼らとしては、構造改革をすることイコールその恩恵を失うこと、なので、当然のように構造改革に反対する抵抗勢力となるのである。
悲観論者は、「そんな状況では決して日本の国はまともにならないじゃないか」と嘆くかも知れないが、必ずしもそうではない。我々有権者には、『票』という武器がある。この武器を最大限に生かして、抵抗勢力を国会から追い出し、自分自身の目先の利益を犠牲にしてでも構造改革を進めてくれると信じるに値する政治家に票を投じれば良いのである。
小泉首相は、自分こそそんな政治家であり、郵政民営化という踏み絵を使って抵抗勢力を追い出した自民党に票を投じて欲しいと主張しているのである。小泉首相を信じるも信じないも、我々有権者の自由であるが、彼のこの問題に関する立場が10年前から一環している点は評価に値する。後は、我々有権者が、小泉首相に本当の構造改革を起こすだけのリーダーシップがあると判断するかどうかである。
[参考文献]
小泉内閣総理大臣記者会見、衆議院解散を受けて
郵政民営化をわかりやすく理解するために
なぜ、郵政公社を民営化するべきなのか?
自民党の政治システムと郵政民営化と小泉純一郎
米国政府の「年次改革要望書」を読む
ぐっちーさんの金持ちまっしぐら、心理戦