今年の2月に、「米国からの日本のテレビ試聴成功」と言うエントリーを書いた通り、日本のHDレコーダーに録画した日本の番組をシアトルの家からインターネット経由で試聴できるようにしたのだが、まだまだ色々と問題がある。
まず、最初の問題はストリーミングの不安定さである。どこに問題があるのかはまだ完全には解明出来ていないのだが、日本のビデオサーバーから直接ストリーミングで試聴しようとすると、しばしば「バッファ中」になってしまい、30分番組を見るのに1時間かかってしまったりするのだ。
しかたがないので、パソコンに一度ダウンロードしてから見ているのだが、それならばテレビの近くにわざわざパソコンを設置するのではなく、専用のメディアプレーヤーだけを設置して、LAN経由でパソコンからストリーミングした方が使い勝手が良さそうだ。
そこで、この前日本に行った時にヨドバシカメラにメディアプレーヤーを見に行ったのだが、どれもまだまだ家電と呼べるレベルには至っていないので、もう少し待つことにした。
しかし、先週末に CompUSA (大手パソコン小売店)に別の用事で行った時に、D-Link 製のメディアプレーヤーを見つけて衝動買いしてしまった。日本製のメディアプレーヤーよりはずっと家電に近いデザインだし、Rhapsody や Napstar などのサービスとも繋げることが可能だと書いてあるところが気に入った。
早速家に帰って設置してみた。パソコンで専用のメディアサーバーを走らせておく必要がある点が難点だが、基本的な性能はなかなか良いし、使い勝手も悪くない。日本のHDレコーダー(Sharp の Galileo)からダウンロードしておいたVGAサイズのMPEG2ビデオが WiFi (11g)経由でなんの問題もなく視聴できる。動画の質も42インチのプラズマでの視聴に十分耐えられる。
ちなみに、この「パソコンをメディアサーバーとして使いテレビに繋いだメディアプレーヤーでLAN経由で再生する」という方向性は、一つの答えではあるのだが、どうも私にはそれが究極の答えであるとは思えない。それよりも、「全てのメディア・コンテンツはインターネット上のサーバーに蓄積しておき、メディアプレーヤーでブロードバンド経由で再生する」方が直感的に正しく思える。
まさに、前者が Microsoft と Intel を中心としたソフト・ハード企業の理想とするデバイス指向(device-oriented)な世界で、後者がGoogle や Amazon などのサービス企業の理想とするサービス指向(service-oriented)な世界であり、この戦いからは楽しくて目が離せない。
この「デバイス指向」と「サービス指向」という対立する視点からさまざまな企業を見つめなおしてみると、興味深い側面が見えてくる。
・iTunes でサービス指向のビジネスに一歩踏み出した Apple Computer
・デバイス指向ビジネスの巨人であるが故のジレンマを抱える Microsoft
・出井さんの掛け声にも関わらず、サービス指向への変革に失敗したソニー
・「テレビを制するものは家電を制す」とのゆるぎない信念の元に着実に駒を進めるパナソニック
・Microsoftに苦しめられたために、サービス指向へ変革をせざるおえなかった Real Networks
・サービスビジネスだけでは飽き足らずにネットワークビジネスに進出したソフトバンク
・あっというまにサービスビジネスの巨人となってしまった Google
・潔くパソコンビジネスを売却した IBM
・コモディティ化しつつあるISPビジネスからサービスビジネスに進出する BigGlobe、Nifty
・コモディティ化しつつあるインフラビジネスからサービスビジネスに進出する NTT
リストが無限に続きそうなので、ここらでやめて、ダウンロードしておいた大河ドラマでも見ることにする。