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米国アマゾンが、PS3を$299で予約受付開始!?

Ps3  今週になって、マイクロソフトがXBox360の発売価格を発表したばかりだが、なんといつのまにか米国アマゾンがPS3の価格を$299として予約受付開始(Wish List への登録)をしているではないか!うそだと思う人は下のリンクをクリックしてみると良い。

 Sony PlayStation3

 しかし、良く読んで見ると、単なる「PS3はこんなマシンになるらしいよ。」という紹介記事でしかない。アマゾンがこんなことをするとは知らなかったが、単に話題作りでサイトにトラフィックを増やそうとしている作戦に過ぎないようだ(現にこのブログがそうしているように^^;)。

 マーケティングのテクニックとしては、こんなのもありだとは思うが、一つだけ問題なのは、(たぶん)アマゾンが勝手につけた$299.99という価格。ソニーから価格に関してなんのアナウンスも無い現時点で、勝手に値段を決め付けて一見売っているように見せかけるのは問題があるのではないか?私がソニーの担当者だったら、すぐにアマゾンにクレームを付けて、値段を「未定」に変更させるだろう。


「UIEngineパートナーズ」募集

050813_115356  ここ数ヶ月ばかり、Googleやはてなのように「元気の良い」企業のビジネスのやり方についてこのブログに書くことが多いが、「評論」で飯を食っているわけではないので、それだけではだめだ。こういった企業の新しいやり方を参考にして、自分の会社のビジネスに良い意味で反映して行く必要がある。

 そんな目で自分自身のビジネスを見つめなおして見ると、「ユビキタスなコンテンツ・アプリケーション・サービスのためのプラットフォーム」という触れ込みで開発・販売しているUIEngineのまわりに、開発者のコミュニティが育っていないことが目に付く。純粋にビジネス面だけ見ると、ディズニー、ESPNなどの大手の顧客を米国で抱え、携帯電話からセットトップボックスへのビジネスの拡張も進んでおり、そこそこ順調ではある。しかし、「ユビキタスなプラットフォーム」と呼ぶにはあまりにもそれに親しんでいる開発者の数が少ない。

 考えて見ると、これまでは「コンテンツ・プロバイダーやサービス・プロバイダーに売り込みに行く」という古典的な営業活動しかしておらず、大切な「開発者のコミュニティを育てる」という活動をほとんどしていなかったのだ。ここは大いに反省すべきである。特に、最近は自分で開発者を抱えていないコンテンツ・プロバイダーやサービス・プロバイダーとのビジネスが増えているため、アプリケーションを開発していただける「開発パートナー」の育成が急務である。

 そこで早速だが、まずはコミュニティの核となっていただけそうな開発者の方々を募集することにした。理想的なパートナーとしては、

(1)組み込み機器のユーザーインターフェイスの開発をしているが、従来の方法では時間とコストがかかりすぎる。
(2)ビデオ・オンデマンド、音楽ダウンロード・ストリーミングなどのサービス・アプリケーションを開発しているが、C++でアプリケーションを作るのは手間がかかりすぎるし、ポータビリティが悪い。かといって、ブラウザーのみでユーザーインターフェイスを作ると使い勝手が悪すぎる。
(3)携帯電話、PDA、セットトップボックス、パソコン、ゲーム機、カーナビなどの各種デバイスを横断した形でのオンライン・サービスを提供したいが、通常の開発方法ではコストと時間がかかりすぎる。
(4)新しいデバイスをゼロから作ると、ハードが安定して動くまでの間ソフトの開発が思うように進められず、ユーザーインターフェイスの作りこみはいつも納期ぎりぎりでやっつけで作ることになってしまい、「使い勝手を良くする」ところまでは考える余裕はない。
(5)Google Map に代表される AJAX には興味があるが、同じようなテクニックを携帯電話とかセットトップボックス向けのウェブ・アプリケーションの開発に応用したい。

といった現実の悩みや欲求を抱えている開発者の方々である。UIEngineがそういった悩みの全てを解決するとは言わないが、現段階でもかなり役に立てるはずだし、開発者のコミュニティからのフィードバックを受けて順次改良して行きたいと考えている。

 mixi上に、「UIEngineパートナーズ」というコミュニティを作ったので、ぜひとも参加の申し込みをいただきたい(上のページで、「このコミュニティに参加」というリンクをクリック)。参加希望者の数にもよるが、出来るだけ実務で上のような問題を抱えている開発者の方々を中心に、まずは小さなコミュニティを作ろうと思う。このコミュニティを通じて、開発者の方々の生の声の収集、開発環境の提供(ベータ版を9月の始めに提供する予定)、プログラミングテクニックの交換、開発環境に関するフィードバックの収集、開発パートナーの募集、などを行わせていただきたいと考えている。(もし、mixiのアカウントをお持ちでない場合は、このブログのコメント欄を通してご連絡いただきたい。)

(写真は本文とは関係無いが、先週金曜日に見に行ったマリナーズの試合で撮った写真。知人からもらったチケットだが、前から5番目という特等席であった。このぐらい近くから見ると、さすがに迫力がある。)
 


メディアプレーヤーが「家電」になる時

050815_145305_1  今年の2月に、「米国からの日本のテレビ試聴成功」と言うエントリーを書いた通り、日本のHDレコーダーに録画した日本の番組をシアトルの家からインターネット経由で試聴できるようにしたのだが、まだまだ色々と問題がある。

 まず、最初の問題はストリーミングの不安定さである。どこに問題があるのかはまだ完全には解明出来ていないのだが、日本のビデオサーバーから直接ストリーミングで試聴しようとすると、しばしば「バッファ中」になってしまい、30分番組を見るのに1時間かかってしまったりするのだ。

 しかたがないので、パソコンに一度ダウンロードしてから見ているのだが、それならばテレビの近くにわざわざパソコンを設置するのではなく、専用のメディアプレーヤーだけを設置して、LAN経由でパソコンからストリーミングした方が使い勝手が良さそうだ。

 そこで、この前日本に行った時にヨドバシカメラにメディアプレーヤーを見に行ったのだが、どれもまだまだ家電と呼べるレベルには至っていないので、もう少し待つことにした。

 しかし、先週末に CompUSA (大手パソコン小売店)に別の用事で行った時に、D-Link 製のメディアプレーヤーを見つけて衝動買いしてしまった。日本製のメディアプレーヤーよりはずっと家電に近いデザインだし、Rhapsody や Napstar などのサービスとも繋げることが可能だと書いてあるところが気に入った。

 早速家に帰って設置してみた。パソコンで専用のメディアサーバーを走らせておく必要がある点が難点だが、基本的な性能はなかなか良いし、使い勝手も悪くない。日本のHDレコーダー(Sharp の Galileo)からダウンロードしておいたVGAサイズのMPEG2ビデオが WiFi (11g)経由でなんの問題もなく視聴できる。動画の質も42インチのプラズマでの視聴に十分耐えられる。

 ちなみに、この「パソコンをメディアサーバーとして使いテレビに繋いだメディアプレーヤーでLAN経由で再生する」という方向性は、一つの答えではあるのだが、どうも私にはそれが究極の答えであるとは思えない。それよりも、「全てのメディア・コンテンツはインターネット上のサーバーに蓄積しておき、メディアプレーヤーでブロードバンド経由で再生する」方が直感的に正しく思える。

 まさに、前者が Microsoft と Intel を中心としたソフト・ハード企業の理想とするデバイス指向(device-oriented)な世界で、後者がGoogle や Amazon などのサービス企業の理想とするサービス指向(service-oriented)な世界であり、この戦いからは楽しくて目が離せない。

 この「デバイス指向」と「サービス指向」という対立する視点からさまざまな企業を見つめなおしてみると、興味深い側面が見えてくる。

・iTunes でサービス指向のビジネスに一歩踏み出した Apple Computer
・デバイス指向ビジネスの巨人であるが故のジレンマを抱える Microsoft
・出井さんの掛け声にも関わらず、サービス指向への変革に失敗したソニー
・「テレビを制するものは家電を制す」とのゆるぎない信念の元に着実に駒を進めるパナソニック
・Microsoftに苦しめられたために、サービス指向へ変革をせざるおえなかった Real Networks
・サービスビジネスだけでは飽き足らずにネットワークビジネスに進出したソフトバンク
・あっというまにサービスビジネスの巨人となってしまった Google
・潔くパソコンビジネスを売却した IBM
・コモディティ化しつつあるISPビジネスからサービスビジネスに進出する BigGlobe、Nifty
・コモディティ化しつつあるインフラビジネスからサービスビジネスに進出する NTT

リストが無限に続きそうなので、ここらでやめて、ダウンロードしておいた大河ドラマでも見ることにする。


二重虹(ダブルレインボウ)

050814_074955  シアトルはここのところさわやかな快晴続きでとても気持ちが良い。昼間の気温は30度近くになるのだが、湿度がとても低いし、朝晩は冷え込むのでとても過ごしやすいのだ。亜熱帯と呼びたくなるような気候の日本から戻ったばかりなので、その差が際立って感じられる。

 左の写真は週末に偶然撮影した二重虹。庭に水を撒きながら、「どうやったら虹が見えるのかしら」と見当違いの方向に水を撒いている妻に、「太陽を背にして水を撒くと、自分の頭の影を中心に虹ができるんだよ」などと得意の理科系うんちくを展開しながら、ポケットに入っていた(シアトルではデジカメの役目しか果たさない日本の)携帯電話で撮ったのがこの写真。撮影中には気がつかなかったが、写真には外側の虹(副虹)が写っている。狙って撮影したわけでもないので、何か儲けた気分だ。

 ちなみに、内側の明るい方の虹を主虹(しゅこう)と呼び、赤が外側で紫が内側である。一方、外側の暗い方の虹は副虹(ふくこう)と呼ばれ、赤が内側で紫が外側である。色の順番が逆になるのは、主虹の光が外から内側に向かって曲がりならが水滴の中で一回だけ全反射して目にとどくのに対して、副二次の光が水滴の中で入射光とクロスする形で二回全反射して目にとどくため屈折の方向が逆になるためである。

 ところで、写真でもはっきり分かるが、二つの虹の間が他の部分より若干暗く見える。これは、屈折と反射の関係で光の粒から反射してくる光が全く無い部分で、「アレキサンダーの暗帯(Dark Alexander Band)」というりっぱな名前が付いている。Alexander of Aphrodisias というアリストテレス学派の哲学者が最初にこの現象を指摘したため(科学的な説明が付いたのはずっと後のこと)、こう呼ばれるそうである。「彼の生きていた時代(紀元2~3世紀)には、肉眼で見える身近な現象を『指摘』するだけで、自分の名前を付けられたのか~」などと少しうらやましく思ってしまった私である。

[参考文献]
Y.AYA's Garden
The Rainbow and the dark Alexander Band

[追記]
 読み直しをしている時に気がついたのだが、Google AdSense がこの記事に合わせて見つけてきたのが、「日焼けした畳が蘇る」という畳クリーナーと、「太陽光発電表示装置」の広告。「虹」というキーワードだけで、引っ張ってきたのだろうか、なかなかするどい。


立体視 3Dブログ第二弾、ジョーク編

 先日の、「世界初、3Dブログ」は大好評で、久しぶりに一日のページビューが1万を超えた。「雨の日はライトセーバー」以来のヒットだ。技術系の記事をいくら丁寧に書いても、高々3~4000ページビューなのと比べると大違いだ。やはり世の中にはエンジニア以外の人が多いようだ(あたりまえか^^;)。

 そこで、調子に乗って「3Dブログ」の第二弾。今回は、ジョークの「落ち」を読むには立体視をしなければならないという、世界初の「立体視ジョーク」である。ちなみに、並行法だと「落ち」が浮き上がって、交差法「落ち」が沈み込んで見える。モニターのドットピッチによっては難しい場合があるので、うまく出来ない場合は、拡大や縮小をしてから見ると良いかも知れない。

3d_quiz


2005年ユーザーインターフェイス大賞、有力候補発見!

Timer ユーザーインターフェイスに関わる仕事をしていると、日常の何気ないもののユーザーインターフェイスまでいちいち気になり、「これはこうすれば良いのにな」とか、「これじゃ普通の人は使えないよな」とか思うことは一日に何度もある。

 もちろん、逆に「このユーザーインターフェイスに脱帽!」と感動を覚えることもごくたまにあり、そんな時は設計者に対する「羨望」と、「どうして先に思いつかなかったんだろう」と悔しがさが同時に湧き上がって来る。

 ごく最近、そんな思いをさせられたのがこの「インスタント・ヌードル・タイマー」。お湯を入れたカップヌードルを上に置くだけでタイマーのスイッチが入るという直感的なユーザーインターフェイスがなんと言ってもすばらしい。「お湯を入れて3分待つ」ことが「調理」に相当する行為であることに着目し、「調理=コンロ」という直感的に結びやすい形状をとって、(1)購買者の注目を引き付ける、(2)キッチンで見つけやすくする、という両方の役目を果たしているところがすごい。もちろん、ユーモアのセンスにも脱帽である。楽天で7月のベストセラーランキングに入っていることもうなずける。

 ところで、このブログの前に別の場所で書いていたブログでは "User Interface is Art" というタイトルで、主にユーザーインターフェイスに関するうんちくを書き、「User Interace of the Year(今年のユーザーインターフェイス大賞)」などという賞を主催して遊んでいたのだが、その賞を再開するのも悪くないかもしれない。2005年の最初のノミネーションはこれに決まりだ。

[今日の誤変換] ノミネーション=飲みネーション: 酒飲みばっかりの国ってことか、そこじゃ下戸の私は非国民だ^^;)


組み込みソフトをXMLが変える

050813_010637  このブログで「愛読書は日経エレクトロニクス」とさんざん言ってきた私の愛が通じたのか、遂に日経エレが UIEngine を取り上げてくれた。「組み込みソフトをXMLが変える。開発効率向上の切り札に」という解説記事(7月18日号51ページ)。

 携帯電話や各種家電AV機器などを含む組み込み機器のソフトウェア開発コストは上昇の一途をたどっており、ムーアの法則とともに急激に下がっているハードウェアコストとの兼ね合いから、危機的な状況にある(端末一台あたりの製造コストが下がると、固定費であるソフトウェア開発費の比率が相対的に上がるので、実質的なソフトウェア開発費のトータルコストに対する比率の上昇をさらに加速させることになる)。そのソフトウェア開発を、XML と スクリプトを使って効率化し、かつOSやCPUに依存しない形でライブラリー化して再利用可能にしようという動きがある、という記事である。

 2000年の設立時から UIEngine をさまざまなOSの上に移植し(BREW、DoJa、MIDP、μiTron、Palm OS、Windows CE、Symbian OS、Linux、VxWorks、J2SE、P-Java、…)、XML と スクリプトを使ったユーザーインターフェイスの開発のメリットを訴えてきた私としては、「やっとマーケットのニーズが高まってきた」と喜こばしい限りである。新しいテクノロジーを元にしたビジネスは、タイミングが大切で、遅すぎるとだめなのはもちろん、早すぎるてもビジネスが立ち上がる前に息切れしてしまう。2000年の設立はある意味で少し早すぎたのだが、我慢強い投資家のサポートと、立ち上がり始めた携帯電話市場でのビジネスのおかげで息切れせずに生き残れたのが幸いである。

 記事は8ページに渡って UIEngine も含めて5社から提供されている技術を、ほぼ適切な指標で比較しているのだが、一つだけ大切な指標をポッカリと見逃している。AJAX などに代表される、「非同期メッセージ型ウェブ・アプリケーション」の組み込み機器市場での重要性である。組み込み機器がネットワークに繋がって来ると、デバイスにあらかじめ組み込まれた「組み込みユーザー・インターフェイス」と、ネットワーク側から提供される(音楽・映像・ゲーム配信などの)「サービス・ユーザー・インターフェイス」のシームレスな融合が必須になってくる。その部分を掘り下げてもらえれば、非同期通信に重点を置いて設計された UIEngine の良さが際立ったはずなのだが、取り上げてもらっただけでも良い宣伝になるので、贅沢は言えない。次の記事に期待しよう(それとも、「ユビキタスネットワーク時代の組み込み機器用アプリケーションのアーキテクチャー」という論文でも書いて投稿してしまおうか?)。


世界初?立体視、3Dブログエントリー

 シアトル行きの飛行機の中で、PhotoShop で作ったのが、下の「シークレット・メッセージ入り」3Dブログエントリー。マジックアイなどで知られる3D視(立体視)をしない限り絶対に見破られないように作るのに少し工夫が必要であったが、一度テクニックを開発したら製作そのものは以外と簡単であった。ちなみに、自分でも作りたいと思う人は、「マジックアイ、3D絵本の作り方」も参照いただきたい。([追伸]第二段、「立体視ジョーク」もエントリー済みなので、そちらもどうぞ)。

3d_message

[追伸] このシリーズの秘密文書の作成に参加していただける人を募集しています。プログラムやPhotoShopの知識は必要ありません。ユーモアのセンスがあれば誰でも可能です。詳しくは、こちらへ(mix のアカウントが必要です)。


小泉さん、米国産アルファ・メイルにご注意

050809_123600  私もつい最近のエントリーで、アルファ・ギークという言葉を使ったばかりが、最近アルファ・ギークだとか、アルファ・ブロガーだとか、「アルファ」という接頭語の付く言葉を良く聞く。そこで、得意の英語うんちくを展開。

 元はと言えば、動物学者が狼の群れ(パック)の行動を観察した結果、狼の社会にははっきりとした序列(上下関係)があることを発見し、その序列で一番上の狼から順に、アルファ、ベータ、ガンマ、と付けたのが始まりである。つまり、狼の群れにおけるアルファは、その序列の頂点にあるリーダーのことである。上下関係をしっかりと付けてそれを守るという性質は、集団で狩をすることが食料確保をする上で重要な役割を果たす狼の社会において、必要不可欠なものとして遺伝子に刻み込まれた狼の本能である。

 こんな「狼の社会学」用語がなぜ一般の人に知られるようになったかと言うと、この狼の本能が犬にも受け継がれているからである。犬を育てたことがある人なら一度は聞いたことがあると思うが、「アルファ犬」という言葉がある。甘やかされて育てられたのが原因で、自分が人間も含めた家族の中で「アルファ」だと誤解してしまって飼い主の命令を全く聞かなくなってしまった犬のことである。一度自分が「アルファ」だと誤解してしまうと、本能がじゃまをして後から修正がきかないため、飼い主も犬自身も色々と辛い目にあうらしい。

 この「アルファ犬」はまれなケースだが、後から生まれてきた赤ん坊を自分より序列が下だと誤解してしまうケースは実際にあるそうだ。そんな誤解を避けるためには、新しく家族の一員が増えた際には、アルファ役の飼い主が、はっきりと序列が分かるような断固とした態度を犬に見せ付けることが大切だそうだ。

 ちなみに、アメリカ人との日常会話でこの「アルファ」という言葉が犬以外の場面で出てきた時が一度だけある。ラスベガスで主催されたコンファレンスの夜に、得意先と人たちとカジノでお酒を飲みながら数ドル単位の軽いギャンブルをしていたところ、うちの営業のトップが、最低賭け金(minimum bet)が100ドルのテーブルでブラック・ジャックをすると言って客を引き連れていくではないか。私が、「いったい何考えてるんだ?」と聞くと、「俺がアルファ・メイル(alpha male)だっていうことを見せ付けてやるんだ」とウィンクをして行ってしまった。

 私はあきれてホテルに戻って寝てしまったが、朝起きて聞いてみると、夜中の3時まではでなギャンブルを続け、結果的に一晩で4万ドル(訳400万円)以上のプラスだという。客の前で格好悪く負けられないという彼の強い思いがギャンブルの神様に通じたらしい。それだけでもすごいのだが、それ以来その顧客との関係がぐっと良くなり(当然のように、ビジネス・ミーティングのたびに「あの晩はすごかった」と盛り上がった)、大型契約を結ぶことができたのだからもっとすごい。結果的に見れば、彼の「アルファ・メイル」作戦が功を奏したと言える。

 それ以来意識して見ているのだが、米国で成功しているアメリカ人には、政治家にしろビジネスマンにしろ、この「アルファ型人間」が結構多い。何をしていても自信にあふれており、まわりに「こいつに任せておけば大丈夫」みたいなオーラを発散している人間達であり、同姓にも異性にも人気があるのが特徴である。学校の教育も、ハイ・スクールあたりから「アルファ型人間」を高く評価する教育がが始まっており、トップクラスの大学は毎年何千人・何万人もの「アルファ型エリート」を世の中に送り出している。

 当然、アメリカ政府は、『日米貿易交渉』の場にはそんな「アルファ型エリート」をごっそりと送り込んで来るはずで、そんな連中と、「出る釘は打たれる」式の日本の教育システムで育った日本の官僚たちが対等な交渉が出来るとはどうしても思えない。そんな連中と対等に渡り合える人材を育てずに、郵政民営化や金融ビッグバンで形だけの「日本のグローバル化」をするのはとっても危険なことに思えて仕方が無い。まずは、教育から先に改革して行くべきじゃないんでしょうか、小泉さん?


マジック・アイ、視力の良くなる(?)3D絵本の作り方

Magic_eye_practice_thumb 先日、本屋に行くと、「マジック・アイ・エクササイズ」などの、「立体視」(「3D視」)の本が山積みになっていた。ずいぶん以前からある技術だが、最近「視力が良くなる」などの触れ込みで一部の人たちに流行っているようだ。

 この手の技術を見ると、「この本で視力を良くしてみよう」という消費者の立場ではなく、「どうやって作るのだろう」、「私にも作れるに違いない」と、製作側の立場に立って考えてしまうのが私の性分である。

 そこで(本は買わずに、家に帰って)早速作ってみたのが、左の習作(左の絵は、縮小画像なので、3D視は無理。クリックして大きな図を開き、画面の少し先を見るようにすると「3D視」ができる)。

 3D視用の画像を作る時に大切なことは、リファレンスとなる繰り返しパターンをバックグラウンドに置くこと。これを省くと、「3D視」をするのが極端に難しくなるので要注意。出版物の中にも、この辺りをキチンと理解せずに作っているものがあり、「3D視には練習が必要です」などと書いてあるので困る。ここでは45度傾けた市松模様にしたが、もちろん別のパターンでもかまわない。この際、繰り返しパターンの幅は、画面(印刷した場合は紙)の上で2~3センチぐらいにしておくこと。あまり細かいと、2つ以上ずらして見てしまうことがあるし、あまり幅が広いと目線をそこまで広げられない。

 ちなみに、この作品だが、一番上の列には、比較のために青い長方形をリファレンス・パターンと同じ間隔で配置してある。こうしておくと、左右の目には同じ像が写るので、3D視をしても、青い長方形は浮かんで見えたりして来ない。

 二番目の列には、青い長方形をリファレンス・パターンより少し狭い間隔で配置してある。こうしておくと、3D視をした時に、右の目には左の目より少し左にずれた位置に青い長方形が見えるため、結果として浮かんで見えるのである。「3D視画像」の基本中の基本テクニックである。

 三番目の列の青い長方形は、それぞれの間隔を微妙にずらして配置してあるため、それぞれが異なった浮かび上がり方をして見える。長方形の間隔は、計算して決めたのではなく、3D視をしたまま画像を編集して作った。結構簡単に思ったような浮き上がり方に長方形を配置できる。

 とりあえず今日の所は、分かりやすくするために、あえて単純化したケースのみにとどめて置いたが、これを応用して、さまざまな奥行きを持つ3Dオブジェクトを見せたり、3D視したときだけに浮かび上がる隠し絵を作ったりすることもできるので、皆さんにもぜひ試していただきたい。

 ちなみに、これを作っていたら、妙に目が疲れてしまった。本当に「3D視」に視力を良くする効用があるのか少し疑問である。