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「アメリカの大学で勉強したかった」と思った日

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 今日は息子の大学の「Parent Orientation」の日。日本の大学で言う「入学式」に相当するもので、今年の9月から freshman (=一年生)として入ってくる生徒の父兄を招待して、学校の見学、ランチ、学校側からの祝辞と挨拶、小グループに分かれての質疑応答、ディナーパーティ、という一日がかりのイベントである。

 息子と一緒に各地の大学を見てまわった時にも感じたことだが、今日は一層強く、「アメリカの大学で勉強したかった」と思った。教育システムから環境までが大きく違うのである。私の母校には申し訳ないが、特に日本のマンモス校と米国の小規模なリベラルアーツ(一般教養)の大学を比べると、その差が際立つ。

 日本ではあまり知られていないが、アメリカで「医者」や「弁護士」になるためには、まずリベラルアーツの学校に行き、4年間みっちりと勉強する必要がある(日本の大学のように、バイトや同好会活動の片手間に卒業できるようなものではない)。そして、その4年間でさらにトップクラスの成績を修めた生徒だけが、医者になるための medical school や、弁護士になるための law school (どちらも大学院)に行けるのである。中学・高校と親の言うなりに塾や予備校に行かされて、「一発勝負」で医大に合格してしまったり、弁護士になる気もないのに「なんとなく」法学部に行ってしまう日本の学生とは大違いである。

 もちろん、リベラルアーツは一般教養なので、卒業後にマーケティングだとかファイナンスの仕事に就く学生もいれば、4~5年働いた後にMBAを取得するために別の大学に行く人も多い。この大学の場合でも、卒業生の半分以上は卒業後6~7年以内に修士号を取得するそうである。

 ちなみにこの手の小規模なリベラルアーツの大学の環境がどのくらい恵まれているかを、この大学を例にしてデータで示すと以下の様になる。

  • 一学年の生徒数は約300人
  • 生徒と先生の人数比は8対1
  • 平均的なクラスのサイズは16人
  • 先生の97%は博士号の所有者
  • 卒業生の21%がそのまま修士課程に進む
  • 週に4日、政治やビジネスの著名人を招待してディナーパーティの開催

 今の日本には、極度にゆがんだ受験システムのおかげで、「大学に何をしに来たのか」、「卒業したらどんな職業に就きたいのか」全く分からない大学生が増えていると聞く。そんな状態のまま、ろくに勉強もせずに大学3年生の時から(景気の良さそうな業種から適当に企業を選んで)就職活動をしているようでは、「自分の才能を最大限に生かした、人生を楽しめる仕事」に就ける可能性は低くて当然だ。

 もしこのブログを読んでいる学生で、自分が上に書いたような状態にあると感じているなら、思い切ってアメリカのリベラルアーツの学校に編入することを考えてみるのも良いかも知れない。当然楽な道ではないし、少し遠回りになるだろうが、「自分が本当に楽しめる仕事を見つける」、ためだったら少しぐらいの努力や遠回りは惜しむべきではないはずだ。終身雇用制が崩壊しつつあり、高度経済成長期の常識が通じなくなりつつある今の日本において、「どの会社に入れば安定した人生を送れるか」という消極的な考え方ではなく、「どんな仕事がしたいか」、「どんな才能が自分にあるか」を良く見極めて仕事を選ぶべきである。

 日本の大学であれ、アメリカの大学であれ、大学というのはその「見極め」をするためのとても大切な時期だ、ということを心して大学生活をエンジョイして欲しい、というのが大学に入学したての息子への父からのメッセージである。

Comments

りんご(パズルと迷路で最強の塾をつくる!)

こんにちは、いつも楽しく読ませていただいております。
私もアメリカの大学で学びました。かなりの回り道でしたが
得たものは非常に大きかったです。自分の子供にもアメリカの大学で学ばせたいと常々思っています。
またよろしくお願いいたします。

satoshi

>私もアメリカの大学で学びました。かなりの回り道で
>したが得たものは非常に大きかったです。

 そうでしたか。ブログを時々読ませていただいていますが、
自分の「物の見方」というか「価値観」みたいなものを
しっかりお持ちとの印象を受けていましたので、納得です。

 一度別の機会に時間をかけて書いてみたいのですが、
「その人の人生にとって何が大切か」みたいなその人なりの
「価値観」というか「アイデンティティ」を持てない若者
が増えているような気がします。「偏差値を上げて良い大学
に入って、一流上場企業に就職さえすれば幸せになれる」と
いう高度成長経済期の「時代遅れの価値観」を親と学校から
一方的に押し付けられて、「自分なりの価値観を養う」こと
なく大学生になっているためではないか、と私は危惧して
います。

りんご

こんにちは、ブログってすごいですね。
どうしてsatoshiさんのようなすごい方と自分がコミュニケートしているのか、驚くばかりです。
今日はsatoshiさんが私へのコメントで書いておられた「自分なりの価値観を養う」ことについて書かせていただきました。
恥ずかしながらTBさせていただきます。
これからもよろしくお願いいたします。

&

卒業してから就職しないで無気力になる日本の学生。
ニートと呼ばれる若者たち。
そのような若者も米国のような教育システムで育っていれば起業しているかもしれない。
この先もこのまま続くようであれば、日本はどうなることやら。

snowbees

ところで大学の授業料はいくら位か教えてください。
比較までに、日本と豪州の例を下記:

http://plaza.rakuten.co.jp/aguchan/diary/200503310000/#trackback

yoshi

私もアメリカの大学で学びたかったと思っていますし、子供にもそうさせたいとは
思ってますが、全てがよいとは思っていません。

私は予備校の数学と物理の先生、大学の指導教官(4年と大学院)との出会いが今の
ベースになっていると思っています。この3人の先生から物事の本質を見極めることの
大切さを学びました。

確かに全体の教育システムとしてはアメリカの方がよいかもしれませんが、いかに良い
師に出会うかというのも大切かと思います。なかなか難しいかもしれませんが。

結局はどこで学ぶのではなく、本人の志が大事かと。

Hisada

ご無沙汰しています。コメントは初めて投稿させていただきます。
私の娘もこの9月から、NHにあるリベラルアーツのカレッジに入学しました。先日そこまで行き実際にに自分の目で学校を見てきました。中島さんのコメント同様娘の入学までの期間にそのシステムや日本の大学との違いを知るにつれ、同じような思いを抱きました。わが子ながら、「うらやましい」と思ってしまいます。

satoshi

 それはおめでとうございます。Hisadaさんの、「わが子ながらうらやましい」という感想には私も全く同感です。

yuki

一年近く前のエントリーですが。。。

僕は2004年に秋田にできた国際教養大学というところに通ってる学生です。
まだ新しいので卒業生はいませんが、中島さんのおっしゃるリベラルアーツ校の条件をほぼ満たしているいい大学だと思います。

ただ、そういう大学って価値観やアイデンティティーを持たない若者にとっては茨の道ですね。

僕自身そういったものを持たない若者だったので、相当回り道をしてきました。結果として、「自分の才能を最大限に生かした、人生を楽しめる仕事」を追求するための準備期間になったのか、と思います。

志や目標、あるいはアイデンティティー。今の若者の多数に、それらを確立する場所や時間が必要なのではないでしょうか。

NY

こんにちは。興味深く読ませて頂きました。

一つ気になったのですが、
「日本ではあまり知られていないが、アメリカで「医者」や「弁護士」になるためには、まずリベラルアーツの学校に行き、4年間みっちりと勉強する必要がある」とありますが、なにもリベラルアーツの学校に行く必要はないわけで、むしろ医者になるにはリベラルアーツの単科大学ではなく、University(総合大学)に行ってBiologyなどの理系のmajorを選択するほうが普通です。リベラルアーツの学校を卒業してもmedicalスクールへの入学は可能ですが、少数派と思われます。誤解を招くと思いましたのでおせっかいと思いましたがコメントさせていただきました。
(アメリカ人医師である主人や友人に確認済みです)

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