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「ビットの集まりを売る時代」の次に来るもの

「書くように生きる」ことのススメ

Egg_plant 久々の良書に当たった。とても儲けた気分だ。

 会社を経営するようになってから、沢山のビジネス書や啓蒙書を読むように努めているが、大半は読んでも得るところのない本である。本当に中身のない本の場合もあるし、難しすぎたり次元が違いすぎて全然頭に入って来ない場合もある。だから、たまに良書に出会うと、本当に儲けた気分になる。

 私にとっての良書とは、今までボンヤリとしか把握できなかった事柄を、「目からウロコが落ちたように」はっきりと見せてくれる書物である。ドラゴンボールで、ナメック星の最長老がクリリンの頭に手を置いて、眠っている潜在能力を呼び覚ましてくれるシーンがあったが、まさにそんな感じである。

 今回の「目からウロコ本」(もしくは「ナメック星の最長老本」)は、轡田隆史氏の「頭の良くなる、短い短い文章術」。ブログを書いている人、ブログを始めたが何を書いたら良いか悩んでいる人、に特にお勧めである。

 感動した点は複数あるが、何よりも「書くように生きる」という筆者の人生観に感銘を受けた。筆者は、良い文章を書く上で一番大切なことは、普段からボンヤリせずに、周りで起こるいろいろな事柄を、批評の精神を持って見て生きることだ、と言っているのだが、これには本当に「目からウロコが落ちる」思いをした。これこそが、私がブログを書き始めてから、漠然と感じていた自分の内面に起こりつつある変化を、的確に説明する言葉だ。

 ブログを書き始めてから、今までだったら軽く見過ごしていたような事柄に関しても、興味を持つ様になった。「郵政民営化が今度の選挙の争点になっているみたいだけど、どんな意味があるんだろう?」、「ソシアルブックマークというのが流行っているらしいが、一体何だろう?」などの疑問が浮かんだ時に、昔だったら「まあいいか、知らなくても不自由しないし」と簡単に見過ごしていたのに、最近は、「少し掘り下げたらブログのネタになるかも」とついつい思ってしまうのである(「理科系人間にもわかる小泉改革の本質」「恋はブックマーク」参照)。

 それに加え、何かに気がついたり感じたりした時に、「ブログのネタとして使うことを前提に、自分の考えを頭の中で文章化してみて、書く価値があるかどうか判断する」習慣が付いたのである。まさに、この筆者の勧める「書くように生きる」を実践しているのである。そのお陰で、色々な事柄がよりはっきりと理解できるようになったし、より多くのものを楽しめるようになった。少々の失敗だって、「ブログのネタ」になると思えば辛くない(「Queenのライブコンサート?」、「井上揚水のパジャマがない」参照)。

 この本は、表面上は「どうやったら上手な文章が書けるか」という内容ではあるのだが、筆者自身が「書くように生きる」人生を明らかに楽しんでいることがにじみ出ているため、結果として「書くように生きることのススメ」になっている部分がすごい。

Comments

YamaPing

 その昔 所ジョージが、オールナイトニッポンを担当するようになってから 何でもラジオのネタにつなげてしまう、と言っていたのを思い出しました。私のように思いついた時に気ままに誰にも読まれない文章を書くのと違って、ある頻度で情報を発信する方々は そんなことを考えられるのでしょうね。
 確か当時の所さんは、言動が生意気だと言われて仕事が来ない時期だったそうなのですが、こういう目を養っていたことが その後の躍進につながって行ったのでしょうね。

satoshi

 所ジョージにしろタモリにしろ、話の面白い人というのは、ふだんからボンヤリとせずにしっかりと目を開いて生きているから面白いんですね。この本の筆者も、朝日新聞のコラム「素粒子」を毎日のように執筆する間に、そんな生き方を身に着けたようです。

YamaPing

丸山茂雄さんが 最近の御自分の感じ方の変化を今日のブログ
http://d.hatena.ne.jp/marusan55/20050917
で書かれていらして、やはり頻繁に文章を書く方の感覚なのだな、と思いました。同じ日に 同じような感覚についての文章を読むというのも面白いなと思って、追加コメントさせていただきます。
 私も見たもの感じたことを頭の中で文章にしてみる習慣はあるのですが、実際に打ち込むことをしていなかったので、老化防止もかねて(?)書くようにしてみようかと思います。

satoshi

YamaPing さん、コメントありがとうございます。ブログを書くことお勧めします。色々と自分自身のことを発見しますよ。

snowbees

話は変わりますが。小泉・自民党の大勝について。ある脳科学者*によれば、小泉首相は、ホリエモンやスティーブ・ジョッブズなどのIT企業家と同様に、右脳と左脳のバランスが抜群であると。
(週刊アエラ9/26号)
*茂木健一郎氏の対談(下記)も面白い。

http://www.ewoman.co.jp/winwin/57mk/

satoshi

 確かに、自民党とアップルの「圧勝」に共通する点は、分かりやすいメッセージを使った絶妙なマーケティングですからね。難しいこと(ITとか政治)は右脳が発達していないと理解は出来ないのですが、それを感性に訴えるメッセージにするには左脳が重要です。ホリエモンはまだ実績は上げていませんが、マーケティングに関しては天性のものを持っているようですね。

snowbees

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532311837
{中村邦夫・「幸之助神話」を壊した男}を約2時間程度で読んだ。私の注目点は:
*同氏の勤務時間は、通常、7:30-16:30である。夜の接待よりも、自宅で読書する方が好き。年間の読書量は、約150冊である。
*在米体験:1987-1997の10年間。それ以前は、20年ほど、名古屋支社で家電の営業一筋であった。
*英語の勉強:アメリカへ赴任後に、教会の英語クラスで勉強した。教材は、新約聖書から旧約聖書まで進んだ。アメリカ人との会話も、聖書を話題にするとスムースになる。
*書類の決裁;ファックスとメールで済ませる。例えば、茨木工場のトップ3人が本社へ来ると、往復2時間で合計6時間のムダになる。
*Empowerment(権限委譲)が原則である。
引用終わり。日経新聞の記者に珍しく、企業寄りのゴマスリや提灯記事を抑制している。

muka

最近、ブログを拝見させていただきながら、何かおもしろさ、フィーリング的に心地よさを感じてましたが、このエントリーを読んで、私が感じ取っていたものの理由がわかった気がしました。

自然体の中に真実を感じますが、人生観にまで達しているということなのでしょうね。体系的に整理されているかわわかりませんが、この本に共鳴されている部分があると言うこと自体、satoshiさんにその感覚が「ある」からだということでしょうか。

リンクさせていただきましたが、よろしかったでしょうか?
http://www.mukaihatake.com/blog

誠夏

はじめまして。水嶋誠夏と申します。どこかからの「ビル・ゲイツの面接試験」へのリンクで、ここを知りました。
それがおもしろかったので、ここにある文章は全て読まさせて頂きました。
どの文章にも、引きつけられる魅力がありました。

2004.03.20 スクエニによる UIE の買収
>一億人の人々に僕らが作ったソフトウェアが使われる時代も近い!
応援しています。誰かが、前向きに生きているのを見ると、うれしくなってしまいます。
そのソフトがおもしろいと、もっとうれしいのですが!

2004.10.08 「おまかせ」文化論
プロポーズ大作戦って見たこと無いのですが、なにかすごくマヌケな話のようであり、心温まる話のようでもあります。こういうお約束が、人の心を動かすのでは?と思います。良きにせよ、悪きにせよ。

2005.01.07 宮崎アニメと不確定性原理
ハウルは見ていませんが、すごく同感です。ラピュタや魔女の宅急便からは、前向きな生きる力を感じるのに、
もののけ姫や千と千尋の神隠しからは、あるがままを受け入れるかのような、諦め感が伝わってきます。
千と千尋の神隠しに関しては、こうだったら良かったという想像ラストを書いてみたので、よろしかったらお読みください。
http://www.tvnet.ne.jp/~entrance/opinions/sentihi.html

2005.01.24 Longhorn は Cairo か?
新しくて魅力的な技術を導入するのに、過去の遺物が邪魔になる・・・・
これは、コンピューター特有の問題かも。
過去の経験が役に立っているにせよ(例えチューリングのような天才でも、いきなりWindowsは作れないように)、進歩のスピードが速すぎて、どうしよもなくなるなんて、他の分野から見たら、うらやましい限りなのかもしれません。

2005.04.08 江戸時代から続くクローン技術
日本人の根性と、ソメイヨシノのしたたかさに感動しました。
桜は、ぱあっと咲いて、いさぎよく散るのが美しい・・・・と考える日本人(自分もですが)は、
その桜がいっせいに枯れ始めたらどうするんだろう・・と思いました。
>一個の個体としての意思を持って我々を見ているとしたら
多分、神様の使いか何かと。じゃなきゃ、こんなに増えないし、今まで生き残ってませんよ(笑)。

2005.05.12 運命の出会い
あまり恋愛物語を見ないのですが、この文章は心にくるものがありました。しかも靴!
靴でここまで感じさせるなんて。自分も、Rockportの靴は好きです。
やっぱり、履いた瞬間に「これだ!」って思ったような。

2005.09.17 「書くように生きる」ことのススメ
このエントリーを読んで、自分にも「ナメック星の最長老」現象が起こりました。
私は昔、作文が苦手だったのですが、今、小学生に「作文ってどうやって書くの?」と聞かれたら、
「その場にいなかった人に、その出来事が伝わるように書けばいいよ。」と言おうと思っていました。

そこからさらに進んで、「他人に伝える事を前提に生活せよ」とは・・・・本当に衝撃でした。
確かに生活がすごく楽しくなりそうな予感がします。
本やゲームでも、以前は手当たりしだい試していたものが、
最近では、(今までの経験を活かして、という名の下)おもしろそうなものにしか手をださない様になってしまい、
ハズレを引く確率は減ったものの、大切なものも失ってしまった気がします。

「ブログのネタ」になればいっか、ぐらいの感覚で色々な経験をしていく事は、すごくいい事だと思います。

これからも、このブログを楽しみにしています。
それでは、Nakajimaさんの毎日が充実したものでありますように。

satoshi

mukaさん、コメントありがとうございます。リンクはもちろん歓迎です。人生観のシンクロというほど大げさなものではないのですが、ブログを書き始めてから色々なものがより新鮮に楽しく見えるようになってきたことは漠然とですが実感していたので、この筆者の考え方にものすごく共感できたのだと思います。

誠夏さん、「文章全て」って結構すごい量じゃありませんでしたか?20ヶ月間毎日のように書いていますから。「おまかせ文化論」とか「運命の出会い」のような地味めなエントリーにコメントをいただくと、とても嬉しく思えます。Ajax だとか Google だとかの派手なエントリーにばかりブックマークが沢山付くので、こういった地味めなエントリーも読んでもらえているという実感が持てると、バランスが保てるので助かります。

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