Previous month:
September 2005
Next month:
November 2005

私にとって手放せないビジネス・ツールになったiPod

Einstein_1 梅田望夫氏のおかげでITConversationsの存在を知って以来(参照)、通勤時間に車の中で聞くのは音楽ではなくもっぱらコンファレンスのスピーチになってしまった。そこで節約した時間(もしくは得た知識)を考えれば、iPod nanoと車用アダプターの取り付け代金の元はとっくに取ってしまったことになる。

 最近、順番に聞いているのが去年の10月に開催されたweb2.0コンファレンスのスピーチ。全てのスピーカーの意見に必ずしも賛成できるわけでもないが、色々な人の意見を知っておくという意味ではとても良い勉強になる。この手のコンファレンスは、行くとそれなりの刺激を受けるので良いのだが、広いアメリカだとどうしても1泊とか2泊することになってしまうのが問題だ。それが、こんな形で「参加」することが出来るのだからすばらしい。

 会社の同僚にこの話をしたところ、彼もさっそくiPodを買うという。毎日の通勤時間をどう有意義に過ごすかは誰にとってもとても重要な課題だ。iPodが私のようなビジネス・マンにとってこれほど役に立つビジネス・ツールになるとは一年前に誰が予想しえただろう。


「Software is service」の心構え

051028_075214  社員向けの英語ブログの3番目のエントリーは、「Software is service: Why is it so hard for software engineers to fully internalize it?」というタイトル。私の会社には、Microsoft、Apple、PalmなどでOSとかIDEなどの開発経験のある優秀なエンジニアが集まっているのだが、伝統的なソフトウェア作りでの成功経験があるからこそなかなか理解してもらえないのが、「Software is Service」の心構えだ。今回のエントリーは、そんな彼らのためのメッセージ。

 少し前までのソフトウェア作りのプロセスは、(1)マーケットやテクノロジーのことが分かっている賢い人たちを集め、(2)彼らに作るべきプロダクトをデザインさせ、(3)必要な人員を集めて作り込み、(4)ある程度できたところでベータ版としてリリースし、(5)ユーザーのフィードバックを集めると言いながら、機能に関するユーザーからのリクエストはほとんど無視して、見つかった重要なバグにだけ対応して、(6)最終版をリリースし、(7)出荷パーティを開いてから休暇を取る、というものであった。このプロセスは中規模なもので1~2年、Windows Vistaのように大きなプロジェクトになると4年も5年もかかるケースもある。

 この場合、もっとも大切な部分は(2)のプロダクト・デザイン(ソフトウェア・アーキテクチャーも含む)であり、エンジニアの仕事はリリースした時点で終わる。

 一方、レストラン、スポーツ・ジム、テーマ・パーク、ウェブ・サイトなどのサービス・ビジネスを運営する場合には、全く違う心構えが必要である。そもそも、そういった人たちは、サービスをオープンする前に「完璧なサービスをデザインしよう」と試みすらしない。サービス・ビジネスに従事する人たちは、実際の顧客と触れ合いながらサービスを作って行くことの重要性を良く理解している。レストランのオーナーは、無駄に時間をかけて「完璧なメニュー」を用意してから開業するのではなく、まずは「仮のメニュー」を用意して開業し、客の注文するものやフィードバックに応じて、きめ細かくメニューを改良して行くのである。ディズニー・ランドが、新しいアトラクションを追加したり、長い列に並ばなくて済むような工夫をしながら改良をし続けるのも同じ理由である。一度来てもらった来園者に何度も何度も来てもらうためには、常に改良し続けることが必須なのである。

 言い換えれば、サービス・ビジネスを運営するべきで最も大切な時期は、顧客に対してサービスを開始した日から始まるのだ。サービスのオープン当初から最高のサービスを用意しようとすることよりも、オープンしたその日から顧客からのフィードバックを効率よく吸い上げ、それをいち早くサービスに反映して改善していくことを可能にするプロセスをしっかりと用意しておくことの方がずっと大切なのである。

 良い例が、「はてな」の提供するさまざまなサービスである。近藤社長が述べているように、「100%作りこんでからユーザーに届けるよりも、50%ぐらい作ったところでリリースして、ユーザーに使ってもらいながら改良して行った方が良いものが出来る」のである。これこそ、すべてのウェブ・サービス・ビジネスに関わる人達が持つべき、「サービス・ビジネスの心構え」である。

 インターネットの普及のおかげで、ソフトウェアの流通コストはものすごく安くなったし、ユーザーからのフィードバックも瞬時に得られるようになった。そんな意味では、うちのようなソフトウェアを作る会社も「サービス・ビジネス」の心構えでもの作りをしなければいけない時期が来ているように私には思えるのだ。完璧なソフトウェアを何年もかけて作りこんでから市場に出すのではなく、未完成なものでも良いからいち早く市場に出して、ユーザーと対話をしながら作り上げて行った方がずっと良いものが出来るように思える。これからは、そんな新しい形でのもの作りを可能にするプロセスをしっかりと持っている会社が強いのではないか、というのが私から社員へのメッセージである。
 


パーベイシブ・アプリケーションという世界観

051028_075147 先日、社員向けの英語ブログでPervasive Applicationというタイトルのエントリーを書いたのだが、今日はそれについての解説(翻訳したものをここに載せようと試みたのだが、どうしても翻訳調になってしまうのが耐えられないので、解説という形を採ることによりいつもの文体で書くことにした)。

 パーベイシブとは「浸透する」という意味の形容詞で、IT業界には「偏在する」という意味のユビキタスとほぼ同じ意味合いで使っている人が多い。ユビキタス・アプリケーションと呼んでも良いのかもしれないが、私としては「ユビキタスになってきたデバイスとネットワークを通じて、どんなデバイスを使っていようと、いかなるネットワークに繋がっていようと、ユーザーにコンテンツやサービスを届ける」という意味合いで、ネットワークを通じてユーザーに染み込んでいくようなイメージが出るパーベイシブの方がしっくり来る。

 アプリケーションがパーベイシブになった世界とは、Microsoft Officeのような業務用アプリケーション、ファイナル・ファンタジーXIのようなオンライン・ゲーム、iTunes Music Storeのようなメディア流通アプリケーションなど、今この世の中にソフトウェアとして流通しているあらゆるアプリケーションが、全てAJAXスタイルのウェブ・アプリケーションとして、あらゆるデバイスを通じてユーザーに届けられるようになった世界をさす。そんな世界では、例えば、早朝に自宅のMacで友達と始めたチェス・ゲームを、車の中ではカーナビを通じて、スタバでは携帯電話を通じて、そしてオフィスではWindowsパソコンを通じて、途切れなく遊び続けることが可能になる。

 そんな時代のアプリケーションは、デバイス上のCPUの種類や性能、搭載されているOSやVM、入出力装置などに関わらず、ユーザーが必要とするときに、アクセス可能な全てのデバイスで走る。そんなアプリケーションは、今のAJAXをはるかに進化したさせたようなテクノロジーを使い、デバイスの能力が高ければ最大限に利用し、デバイスの能力が低い場合もそれなりに活用して、ユーザーのおかれた状況に最も適したユーザー・インターフェイスを提供する、本当の意味での次世代型のウェブ・アプリケーションである。

 例えば、上にあげたチェスの例だと、パーベイシブなチェス・アプリケーションは、パソコン上で走らせると3D描画機能を最大限に生かし、カーナビ上で走らせると音声認識を利用したハンズ・フリーでのプレーを可能にしながらも、ローエンドなJava端末(例えばDoCoMoの700シリーズ)上でもそれなりのユーザー・インターフェイスを提供して走るのである。ユーザーは、自分が持っているデバイスにどんなCPUやOSが搭載されているかなど一切知る必要も意識する必要もなく、単に「早朝始めたチェスゲームの続きをしたい」との指示さえすれば、その時たまたまユーザーが持ち合わせているデバイスやネットワークの性能に応じた最適なユーザー・インターフェイスをアプリケーション自身が提供してくれるのである。

 私がマイクロソフトを退職して、UIEvolutionという会社を創業したのは、そんな世界を実現したいと強く思ったし、出来ると思ったからである。2000年の創業から5年が過ぎて、まだ目標の10%も達成できていないが、毎日少しずつ前進はしているつもりだ。年末には世界中の300種類の端末で動くUIEngineを使ったアプリケーションが某社から発売される予定だし、最初は携帯電話でしか動かなかったUIEngineも、セットトップ・ボックスなどの組み込み端末、Mac、Linux上でも動き始めたし、これからが一番面白い所だ。そんな意味で、「なぜUIEvolutionという会社が存在するのか」をもう一度社員に見つめなおしてがんばって欲しいと思って書いたのが、このPervasive Applicationというエントリーである。


社員向けの英語ブログ開始

051021_040000_1 シアトルでほぼアメリカ人ばかりの会社のCEOをしておきながら、こうやって楽をして日本語でブログを書いているの私だが、とうとう社員から「英語でもブログを書いてくれ」というクレームが入ってしまった。彼らもGoogleの翻訳サービスなどを使って読んでくれているのだが、トピックだけは分かるが一番大切なメッセージが伝わって来ないことが多く消化不良になるそうだ。それに加えて、最近会社も大きくなって、誰もが目の前の仕事に追われているため、「何のためにUIEvolutionという会社が存在するのか」という一番大切な部分のビジョンの共有が難しくなって来たことも感じるので、それにも対処しなければならない。そこで、思い腰を上げて主に社員向けに英語でもブログを書くことにした。

 最初のエントリーは、「二ヶ国語でブログを書くぞ!」という宣言で、二番目が「何のためにUIEvolutionという会社が存在するのか」というビジョンを書いたエントリー

 ブログを書くのにはやっと慣れた私だが、二ヶ国語で書きながらこれまでの更新頻度を保つのはきついかも知れない。しばらくは、社員向けに英語で書いたものをこちらで翻訳して公開したり、こちらのブログで好評だったものを英語に翻訳したりしながら、リズムをつかんで行こうと思う。


iPod の UI を UIEngine で作ってみた

Ipod_emulator 私の会社(UIEvolution Inc.)は、携帯電話やセットトップボックスなど各種組み込み機器向けのユーザー・インターフェイスを作るための AJAX ミドルウェア、UIEngine を開発・ライセンスしているのだが、顧客による技術評価の過程で、「どんなユーザー・インターフェイスが実現可能なのか?」と聞かれることがしばしばある。

 そんな時に個別の機能を説明するのも一つの手法だが、それだと、なかなか最終製品のイメージを持ってもらえない。そこで、ある程度作りこんだデモを見せる時もあるのだが、そうすると、今度はそのデモが一人歩きしてしまい、その時に見せた特定のユーザーインターフェイスの良し悪しの話になってしまう危険をはらんでいる。

 そこで、(昨日の夕方に思いついたばかりだが)今までとは趣向を変えて、UIEngine を使って iPod のユーザーインターフェイスをほぼ100%再現するデモを作ってみた(メニュー遷移の部分のみ)。こうすれば、うちが特定のユーザーインターフェイスをライセンスしようとしているわけではないことを明確にしつつ、UIEngine を使ってどんなことができるかを示すこともできる。

【デモ】 iPod エミュレーター ← クリックすると別ウィンドウでデモが走る(Java の実行環境が必要)

 このアプローチの微妙なところは、著作権の扱いである。そのまま商品に出来ないことは誰が見ても明らかなはずだが、顧客が万が一勘違いしてそのまま使ってしまった場合、こちらにも責任が生じるような気もする。うーん、どうしよう、せっかく良いサンプルが出来たと思ったのに…。


アップルはなぜ今の段階でFront Rowを発表したのか

050924_104009  先日の新しいMacのプレゼンの際に、スティーブ・ジョブスが「10-foot UI」(10フィートは3メートル強、テレビ用のUIのこと)としてデモしたFront Row。「なんでiMac G5に10-foot UIが必要なの?」と感じた人も多いと思うが、私もなんで今の段階で発表したのか少し疑問に感じている。

 本来なら、たぶん来春ぐらいに発売するだろうテレビにつなぐことを前提で作った新型Mac Miniの完成を待って発表すべきだったのに、なぜ今の段階で発表してしまったのかどうも理解できない。「とりあえず完成したので市場に出してフィードバックをもらう」だとか、「新しいMac G5の目玉にしたかった」とはどうも思えない。

 唯一考えられるのは、マイクロソフトのWindows Media Center Editionに対するけんせい球だ。日本ではほとんど知られていないが、マイクロソフトは「パソコンをファミリールームに」という掛け声とともに数年前から「10-foot UI」とハードディスク・レコーダーの機能を備えたWindowsをOEM販売しているのだ。

 私も今年の初めに一度は買おうとしたのだが、やたらと大きく値段が高いものしかなく、もう少し待つことにしたのだが、相変わらず状況は変わっていない。この業界に詳しい人に、「なぜMac Miniに対抗できるぐらいの大きさと値段のものが出てこないか?」と尋ねた所、「そんなものを作ってもパソコン・メーカーは全く儲からないから」というストレートな答えが返ってきてしまった。実際のところ、米国でMedia Center Editionのパソコンを売っているのは大手ではなく、Microtelなどの弱小メーカーだけだ(追記参照)。

 そう考えると、今回のアップルによるFront Rowの発表は、Dellなどの大手のパソコン・メーカーに対しての、「その市場はアップルが本気で取りにいくからマイクロソフトと組んでメディア・センター・パソコンなんか作ったら損をするよ」とのメッセージとも受け取れるのだ。ハードウェアで利益を上げざるをえないパソコン・メーカーと比べて、iTunes Music Store での音楽や映像の販売というもう一つの収入源を持つアップルは圧倒的に有利である。今回のFront Rowの発表を見て、Windows Media Center Editionの採用を見送るメーカーがいてもおかしくない。

[追記] コメントでご指摘いただき知ったのだが、今月の12日に Dell が Media Center Edition を搭載したパソコンを発表したばかりであった(参照)。まだデスクトップタイプのパソコンに搭載しただけで、家電スタイルのものを作ったわけではない。アップルとしては、Dell との消耗戦だけは避けたいだろうし、ますますあれが「けんせい球」であったように思えてくる。


NHKにこそやって欲しいiTunesによるコンテンツ配信

051009_122149  米国ではディズニーが先頭を切って乗り出したビデオ配信だが、日本で最初にそれをやって欲しいのは、そしてやるべきなのは実はNHKなのではないかと私は思っている。

 スキャンダル続きでイメージをすっかり悪くしてしまい、受信料の不払い問題で苦しむNHKだが、私は正直言ってNHKのコンテンツが大好きである。古くは学生時代にお世話になった「通信高校講座」から、「NHKスペシャル」、「プロジェクトX」、そして私の妻が大好きな「大河ドラマ」と、NHKのコンテンツにはクオリティの高いものが多い。我々の受信料で作られたそういったコンテンツは日本国民の貴重な財産であるし、NHKには今後ともクオリティの高いコンテンツを作り続けて欲しいと願っているのは私だけではないはずだ。

 そんなNHKに今必要なのは、「NHKは生まれ変わった」という姿勢を国民にはっきりと見せることと、受信料収入に代わるビジネスモデルの確立である。そのためには、単なる番組編成の変更などという生易しいものでお茶を濁すのではなく、「え、NHKがそんなことしていいの?」と日本国中を驚かし、同時に、今までとは全く異なる方法・ビジネスモデルでのコンテンツの配信に真剣である姿勢をはっきりと表すことをする必要がある。

 答えはiTunesによるコンテンツ配信しかない、と私は思う。

 ABCがしたように、いきなり放映中の朝ドラや大河ドラマが次の日にダウンロードできるようにする必要はない。とりあえず、NHKの持つ膨大なビデオ・ライブラリーの中から何度も見る価値のある教育コンテンツなどをデジタル化し、iTunesにより配信するだけで良いのだ。とりあえず、「100語でスタート!英会話」とか「今日の料理」などを一話100~300円ぐらいで配信して日本の消費者が乗ってくるかどうか試し、それがうまく行くことを確かめてから、朝ドラ、大河ドラマ、プロジェクトXなどの大物コンテンツの配信に乗り出せば良いのだ。

 「そうは言っても、NHKが民間を差し置いてそんなことをするわけにはいかない。まずは総務省と相談せねば」という答えが聞こえてきそうだが、そろそろ「なんでもかんでも総務省と相談してやらなければならない」時代は終わったということに気が付いて欲しい。総務省の許可なんか取らずに、iTunesにコンテンツ配信を始めてしまうような型破りなプロデューサーの一人や二人はNHKにもいることを切に願う。慣例なんて破るためにあるんだ。


プロトタイプ作りの効用

Gps_disney  私の関わっているプロジェクトの一つに、「全く今まで存在しなかった形のデジタル・エンターテイメントを実現しよう」というとても楽しいプロジェクトがある。この手の大きなプロジェクトを成功させるには、「大きな夢を共有しつつ、同時に一つ一つ着実に駒を進めていくこと」が大切なのだが、なかなか簡単ではない。特に、まだ「最終的に目指すもの」のイメージがちゃんと共有されていないので、各チームの動きがちぐはぐなのだ。

 そこで、私が「プロジェクトメンバー向けに、目指すライフスタイルのイメージ・ビデオを作ろう」と提案しているのだが、なかなか理解してもらえない。「プロジェクトが立ち上がったばかりなのに、そんなものはまだ作れない」とか、「もう少し見えてきてからにした方が良いのではないか」という否定的な意見が出るのだ。今日は、そんな人たちへのメッセージ。

 私がもの作りをするときは、常にユーザー・インターフェイスのプロトタイプから入る。単なるスケッチの時もあれば、一見動いているように見えるプログラムの場合もあるし、イメージ・ビデオの場合もある。とにかく、それを見た瞬間に、「どんなユーザーがどんなシナリオで使うか」がはっきりと実感できるようなものを作るように心がけている。

 大切なことは、「何を作るか」を十分に考えた後でプロトタイプを作るのではなく、「何を作ったら良いかよく分からない」段階でプロトタイプを作り始めることである。プロトタイプを作るというプロセスそのものを利用して、自分の頭の中に漠然と存在していたアイデアを目に見えるものにまとめ上げる作業を行うのである。

 サンプルとして、「世界中全ての携帯電話にGPSが組み込まれ、その位置情報をリアルタイムでサーバーに集めることができればどんなことが出来るか」を目に見える形にしてみた(添付図)。想定するユーザーは、これからディズニーランドに行こうとしている、もしくは既にランド内にいる人たちである。このサービスを使えば、チケット売り場がどのくらい混んでいるか、どのアトラクションの行列が長いのか、パレードの席取り合戦は既に始まっているのか、などが一目で分かる、というサービスだ。

 この絵は30分ぐらいで描いたのだが、それなりに発見があった。まずは、人をドットで表すだけで結構何とかなってしまうこと。ドット同士がくっつきすぎてダメかと思ったが、アンチエリアス処理を施せば何とかなる。次に、携帯電話の画面サイズ(240x320)で十分なこと。これなら、既にランド内にいる人達にも使ってもらえる。後は細かな話だが、データの送り方に注意が必要なことに気が付いた。サーバー側で位置情報も重ねてしまってビットマップを送ればデバイス側の処理は軽くて済むが、サーバーが重くてしかたがないだろう。それよりは、AJAX的な技術を使って(例えばUIEngine^^)、位置情報をデバイス側でスーパーインポーズした方が良いだろう。

 一枚の絵を描いただけで、これだけのことが分かる、もしくは意識できる、という点が重要なのである。絵を描いたりプロトタイプを作ることにより、色々と細かなことを意識せざるおえなくなり、それまで気が付かなかったことが見えてきたり、後で決めれば良いと思っていたことを前倒しで決めなければならなくなるのだ。

 ということで、これからも新しい商品やサービスのアイデアが浮かんだら、出来る限りプロトタイプや画像の形でここでどんどん公開していくことにしようと思う。…と自分の趣味を正当化してしまった私であった。


全てのノートパソコンにGPSが載ったらあなたはどんなサービスを作りますか?

Gps   少し古いニュースになってしまうが、先月のCTIAで発表されたさまざまな技術の中で一番私が感動したのがこのGPSモジュール。従来のGPSモジュールと違い、ソフトウェアでほとんどの処理をするために、ハードウェアの原価が外付けでモジュールで約5ドル、内蔵した場合だとたった2~3ドルになるそうだ(ちなみに、IOデータのGPSモジュールはアマゾンで21800円)。

 写真は、CTIAの開催期間中に、Phillipsの知り合いと朝食を一緒に食べた時に見せてもらった試作品だが(既に公開されているものなので、写真をこのブログに載せても良いと許可をもらった)、彼によるとIntel共同でGPS内臓のノートパソコンのリファレンスデザインを作り、パソコンメーカーに売り込みをかけるらしい(参照)。彼らのもくろみが成功すれば、近いうちに「ノートパソコンには全てGPSが内臓されている」時代が来ることになる。

 このモジュールをテーブルの真ん中において、「世界中の全てのノートパソコンにGPSが載ればこんなことができる、あんなことが出来る」と、妙に盛り上がってしまった。新しいハードウェアが作られたり、ハードウェアの値段が極端に下がった時こそが、ソフトウェア・エンジニアがクリエイティビティを発揮する大チャンスである。

 考えてみたら、「全てのノートパソコンにGPSが載ったらあなたはどんなサービスを作りますか?」という質問は、Google とか Microsoft の採用面接には格好の題材である(参照)。今度、うちの会社の面接でも使ってみよう。

 せっかくなので、ここで「全てのノートパソコンにGPSが載ったらあなたはどんなサービスを作りますか?」というお題で皆さんからアイデアを募集することにする。コメント、トラックバック、ブックマーク、手段はなんでも良いので、思いついたことを色々と書いて欲しい。頭の体操にもなるだろうし、ひょっとしたら、そこから何か新しいサービスが出来てしまうかも知れない。「ミュージック・バトン」ならぬ、「アイデア・バトン」である。


「ロングテール的な地デジ批判」の呼びかけ

051009_124037  先日の「アップルにして欲しい次の革命」というエントリーで、「地デジが大変な税金の無駄遣いだということをおおっぴらに指摘する人は少ない」と書いたが、本当にそうなのか少し調べて見た。すると、2002年の時点で、「通信と放送研究会」というかなりまっとうな組織が、「地上波デジタル放送への国費投入に反対する」という声明を発表していたことを見つけた。

 …数万円の基地局でテレビ番組を流せる時代に、1兆円以上の経費をかけて行われる地上波のデジタル化は時代錯誤であり、民放連の氏家斉一郎会長も認めるように、事業としても採算は取れない。ここで既成事実を認めると、今後はデジタル放送設備への公的資金(財政投融資を含む)投入の要求が出て、さらに国民負担がふくらむおそれが強い。…

 「まともなことを発言する人もいるんだ」と安心する反面、これだけ明白に間違っていることをストップすることが出来ない日本の官僚システムが本当に悲しい。マスコミまでもが、これを既成事実として受け入れてしまって、「アナログテレビに”放送終了告知シール”」などと他人ごとのように報道するだけだ。アスベストの件でもそうだったが、「問題が顕在化する前に政府の間違いを指摘して修正を促すのがマスコミの役目ではないのか?」とツッコミを入れたくなる。

 ちなみに、親しい知人に「テレビを買い替えようと思うんだけど、地デジ対応のテレビの方が何万円も高いんだけどどうしたらいいかな?」と尋ねられたら、私は迷わず「高いお金を出して地デジ対応のテレビを買う必要はないよ。2011年までには、たぶん面白いコンテンツはほとんどが地デジではなくてインターネット経由で配信されるようになっているだろうから、その時になってから、IPセットトップボックスという今のチューナーに相当するものをテレビに外付けすれば良いんだよ」と言う。

 こんなことを書いてしまうと、総務省の人は相当憤慨するかも知れないが、総務省にさからうことの出来ないマスコミが黙っているのなら、総務省に遠慮なく発言できる私のようなブロガーがロングテール的に政府の間違いを指摘して修正をうながすというのも、いかにもネット時代らしくて良いのではないだろうか。

 この呼びかけにご賛同いただけるブロガー、ブックマーカーの方々には、ぜひとも積極的な引用やブックマークをして、出来るだけ大勢の方に「地デジへの国費投入がいかに馬鹿げているか」、「地デジチューナー付きのテレビに高いお金を払う必要はないこと」を知らせるお手伝いをお願いしたい。