任天堂の「肩すかし」作戦とXavixPORT
ソウル(魂)のあるもの作り

任天堂の基調講演を見て感じたこと

Ramen_1 久しぶりにビデオを見て感動してしまった。とは言っても、「スローダンス」の最終回のことではなく、東京ゲームショウでの任天堂の岩田氏による基調講演のことである。

 昨日の私のエントリーに対していただいたトラックバックのおかげで存在を知った基調講演のビデオであるが、「ゲーム業界に働く人は必見」の内容である。岩田氏の一言一言を丁寧に噛み締めて見て欲しい。

 もちろん、任天堂による講演なので、任天堂のゲーム機のプロモーションであることには変わらないのだが、重要なのはその根底に流れる、性能や規模ばかり追い求める今のゲーム業界全体に対する警告と、ユーザー層を増やそう、ユーザーに新鮮な驚きを与えようという(今のゲーム業界が失いつつある)基本に戻った姿勢である。

 以前のエントリーにて、「米国のMBAたちがビジネスで勝つためにエンジニアに作らせたXbox 360」と、「日本のエンジニアがエンジニアのために作ったPS3」、と両社の戦略を表現したことがあるが、DSとRevolutionに関しては何と言えば良いか悩んでしまうぐらいこの講演の中身は濃い。

 「より多くの人にゲームを楽しんでもらうために、停滞気味のゲーム業界に新鮮な驚きを与えるために作ったDSとRevolution」とでも言えば良いのだろうか。岩田氏が48分間の講演で熱く語ったメッセージをワンフレーズで伝えるのはとても難しいが、他の二つと比べて、「誰が」という部分に適切な主語が見つけられなかったことそのものが、ユーザー重視の証かもしれない。

 これでソニー、マイクロソフト、任天堂3社のビジョンがかなり明確になった。常にユーザーインターフェイスのイノベーションに関わっていたい私としては、心情的には岩田社長のビジョンに思いっきり心打たれてしまったが、だからと言って任天堂が勝つとは限らないのがこの業界の難しさである。

 先手を打つマイクロソフトが今年のクリスマス商戦に向けて前代未聞のキャンペーンを世界的に展開するだろうことは火を見るよりも明らかである。そこで一気に勝負がついてしまうのか、それとも後発のソニーと任天堂が2006年度に三つ巴の戦いを繰り広げてくれるのか、ものすごく楽しみである。あえて予想するとすれば、ソニーとマイクロソフトが土俵の真ん中でがっぷり四つの体力勝負でコアゲーマーの奪い合いをし、任天堂がその戦いをよそに土俵の外で着実にゲーム市場の裾野を広げる、というシナリオが一番ありえるように思える。本当に目が離せなくなってきた。

Comments

kwmr

こんにちは。
kwmrです。こうしたコミュニケーションができてうれしいです。
私はゲームに関しては、全くの素人(XBOXやPS2は持っていますけれども;)で、論評などできる立場ではないのですけれど...。これからのゲーム機の可能性は計り知れないものがあると想っています。
 裾野を広げること、非市場へのアプローチとネットワークの利用こそ、あのエントリーで書いた袋小路を抜ける突破口だと考えていたのですが、岩田社長のプレゼンを見て、確信しました。
 PS3,Xbox360が従来通りのコアゲーマーに特化した路線をこのまま突っ走るのかどうか、他の機器との連携とか、本業とのシナジーを生み出す形での非市場へのアプローチは十分あり得るだろうなと想います。
本当に目が離せませんね。:)

snowbees

出井ソニーの文化は、正に「ゴウマン、うぬぼれ、不遜」で、朝日新聞やNHKの惨状と同類項です。しかし、次世代ゲームマシンについては、日本代表として、成功して欲しいと思います。ただし、これは、井深ソニー以来のソニー・ファンの願望であって、技術的などの裏付けはありませんが。

satoshi

kwmrさん、私もこんな形のコミュニケーションが出来ることが楽しくてしかたがありません。これからもよろしくお願いします。

snowbeesさん、確かにソニーには日本代表としてがんばって欲しいですよね。特に今回は、マイクロソフトと一騎打ちに近い形になるので、壮絶な戦いになるでしょうね。

snowbees

任天堂・相談役 山内博
1)ユーザーと同じ目線で「おもしろいソフト」を追求する。画面や音をよくするために、ハードのレベルアップは必要だが、それ以上のオーバースペックはメーカーの技術屋の自己満足であると。また、社長退任にあたり残した言葉は、「これまで同様、楽しさとおもしろさを模索し続けてほしい」と。
2)倒産の危機を三度経験したので、無借金経営に徹した。2005年3月期の連結決算によれば、現金・預金は8266億円。総資産1兆1326億円の実に73%に当たり、また売上(5152億円)をはるかに上回る。
3)後継者と目された、娘婿の荒川實氏が米国任天堂社長を退任した。山内は、2002年、「誰よりもおもしろいソフトを作る」岩田聡を社長にした。
4)一時的な成功に浮かれないのは、盛者必衰の歴史に彩られた京都に育ったからか。任天堂の社名は、「運を天に任せる」に由来すると。山内は、「運を天に任せず、人事を尽くして天命を待つ」人である。以上、「経営者を格付けする」有森隆著、草思社より。

satoshi

ふむふむ…

nao

今になって読むとこの時のsatoshiさんの予言どおりの展開になりましたね。

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