有名ブログを10分で斜め読みする裏技
「博士の愛した数式」は、「電車男」の作った理科系男のステレオタイプ化を払拭できるか?

ディベートは 楽しくするもの したいもの

051221_190251  先日、SixApartの関社長と食事をしたのだが、その時に「日本人はディベートが得意ではない」という話になった。私も以前から色々と思うことがあったので、ここに書いてみようと思う。ただし、今回のテーマは「どうやったらディベートに勝てるか」とかいうテクニックの話ではなく、それ以前にある「どうやってディベートを楽しくするか」に関しての話なので、誤解しないで欲しい。

 関社長に言わせると、日本人には、ネットの世界であれリアルの世界であれ、自分の意見を否定されるとそれを自分の人格を全否定されたと誤解して、怒ってしまったり、しょげてしまう人が多いと言う。確かにその通りだと思う。もちろん、それは受け取る側だけの問題だけではなく、反対意見を表明する場合に問題がある場合が多い。

 例えば、一つ前のエントリーで「有名ブログを10分で斜め読みする裏技」という話を書いたが、これに対して、

 「ブックマークの数だけでエントリーの良し悪しを判断するはどうかと思う」
 「そもそもブログを斜め読みするのって失礼だと思う」

などの意見が寄せられた。こういう形で反対意見を表明していただければ、私としても耳を貸す気になるし、建設的なディベートもできそうだ。しかし、全く同じ意見を、

 「ブックマークの数でエントリーの良し悪しを判断するのはバカだけだ」
 「ブログの斜め読みを奨励するとは失礼な人だ」

と書かれてしまうと、もう単なる意見の表明ではなく、「私の人格」に対する攻撃となる。こんなコメントが寄せられると、私としてもどう対処して良いか分からない。人によっては怒ってしまったり、しょげてしまったりするだろう。掲示板やブログのコメント欄が荒れる原因のほとんどは、(意見の食い違いではなく)こういった「人格攻撃」が原因だ。

 この世の中には色々な人がさまざなな価値観を持って暮らしているのだから、当然色々な意見があってしかるべきである。自分と違う意見を持っている人とディベートをするのは、すごくプラスになり、楽しいことだが、一つだけ気をつけなければならないことがある。「相手の意見」は幾らでも攻撃して良いが、「相手の人格」を否定したり攻撃するのはマナー違反である。そこさえ気を付けていれば、「楽しく意見を戦わせる」ことが可能なはずである。

【追記】 トラックバックなどで「ディベートと論議をごっちゃにしてないか?」との指摘があったので、追記。「ディベート(debate)」という言葉には、米国の学校の授業などで行われる「二つのグループに分かれて一つのテーマについて討論して勝ち負けを決める討論会」という狭義と、「ネットやリアルの世界で交わされる討論・論議」という広義とがある。このエントリーでは、前者ではなく後者の意味でディベートという言葉を使っている。

Comments

YamaPing

 「ハーバードの医師作り」という本にあったのですが、教官が学生の手技に意見するときに「悪魔の味方になって言うんだけど」と言うそうです。自分の人格ではなく、キャラクターを作って そのキャラに言わせるんですね。
 米国でのディベート教育は 予め対立する意見を設定しておいて、自分の意見とは別に こっちの意見を勝たせるためにどうすればいいか考えなさい、と言うように指導すると言う話を聞いたことがあります。やはり素の自分ではなく「自分が果たすべき役割を背負った自分」に言わせるから、そのキャラを攻撃されても痛くないのかも知れません。
 作家の落合信彦さんは、外国の要人にインタビューするときに相手を怒らせるようにしているそうです。相手のキャラを引きはがして本音を引き出すためのテクニックなのですね。
 日本人のディベートの欠点は、素で議論してしまうことが関係しているのかも知れません。生テレビ、とか、国会、とか...演出としては面白いけど、問題を解決させるための自分の役割を果たしていないですよね。
 長コメント失礼しました。

snowbees

ブログ参加者のうち、他人を誹謗中傷して、自分だけがスッキリするという、デコスケがいます。私は、これを、「トイレの落書き」と呼びます。

YamaPing

 先のコメントの後、一日遅れのゆず湯に浸かりながら考えたのですが、blog や2ちゃんの様な匿名サイトは 素を出さない工夫かな、と。中には 自分の人格が攻撃されないことを利用して、他人を誹謗中傷するデコスケも居るんでしょうね。
 satoshi さんのように御自分の情報をさらすのは、自分がデコスケにならないための宣言なのかも知れません。もちろんそれだけではなく、御自分の立ち位置を明らかにして議論の軸を作り出すためだったり、会社のプロモーションだったりもするのでしょう。最近 ご無沙汰してますが、昨年のホリエモンさんのブログはその辺り本当にうまいなぁ、と思っていました。
 このあたりが、日本に多いと言われる匿名日記型の blog と外国の blog の違いなのでしょうか。...自分でも試していますが(まだまだ修行中です)、これってなかなか難しいですね。...ありゃ、また長くなっちゃった。失礼しました。

satoshi

 YamaPingさんのご指摘の通り、実名でブログを書くことにより、自分の立ち位置を明確にしているというのは確かだと思います。私の場合、リアルでも言いたいことは結構言える方なので、「実名ブログだから言いたいことが言えない」なんてことは無いですね。もちろん、実名だからこそ気をつけなければならない点はありますが(例えばインサイダー情報を流さないとか)、そういったものは匿名でも本当はしてはいけないことなので、結局は実名の方が「正しい抑制」が効いて良い、と私なりには感じています。

akion

ふと思ったのですが、「このクラスのソフトウェアならバグがx個あったとしても出荷製品として問題ない」と言える、不完全を前提としてより良くしていけば善いのだという感性と、出荷はバグゼロにしてからという完全志向の差も根っこは同じなのかも知れませんね。

不完全が当たり前なら人の意見によって変わっていくことを楽しむこともできるでしょうけれど、完璧と思って表明した意見を否定されるのは恥だと感じるでしょうから。相手に意見を言う行為のスタート地点が違うんでしょう。ボールを投げるときはゲームが続けられるように意識していたいと思います。そうでないと石ころ投げつけたのと変わりませんものね。

Satoshi

 コメントありがとうございますakionさん。特にブログの場合、その「あえて未完成な意見」みたいなものをエントリーとしてあげておいて、コメントやトラックバックからより学んで自分なりに見方をまとめて行く、ということはできますね。雑誌のエッセイとかだと、それができないので困ります。あるいみで、ブログは「エッセイ2.0」ですね。

Maki

「世界はネットワークを介して水平につながった」(Thomas L. Friedman)という。所謂、『Globalization 3.0』が現実のものとなった。われわれは、誰でも容易にネットワークを介して情報発信することができる。反対に、ネットワークは個人と個人を結びつける新しいツールとなった。本当に、ひとはブログを使いこなしているのだろうか?かつて、無性に本が読みたくなった学生時代、神保町や本郷の古本屋へ足を運んだ。安価ではあったが、すべて有償。しかも、自腹だった。しかし、価値ある知識・ナレッジに出会ったときの感激はいまでも忘れることはできない思い出だ。その後、同じ筆者の書籍をひたすら購入して読みふける・・・。今日、情報は無制限に拡大している。いわんや、ブロードバンド、モバイルをや・・・。しかし、かつて実現できなかったこと。すなわち、ライターと直接に情報交換が可能となった。satoshiさんのブログ情報は、海外からの"活きた"価値あるビジネス最前線の情報をわれわれに与えてくれる。さらに、"無償"というオマケ付きだ。価値あるブログが長期にわたり継続できるよう、われわれは価値あるソーシャル・ネットワークコミュニティを皆で守って行く必要があるだろう。普段、ブログを介して情報を獲得することはごく当たり前のことになっている。しかし、実は守っていくことの方が難しいのではないだろうか。

satoshi

 Makiさん、丁寧なコメントありがとうございます。私もこのブログを始めて2年たちますが、私自身も、そして読む人も慣れてきたせいか、しだいに「心地よいリズム」のようなものがつかめて来たような気がします。やはり無理をしては長く続けられませんから。これからもよろしくお願いします。

&

この「人格に対する攻撃」「人格の否定」というのは、子供のしつけにも通ずるものがあるのではないでしょうか?
怒り方のヒントがかくされているような気がします。

satoshi

 私も二人の子供を持つ身ですが、その辺りをちゃんとしないと、子供達はものすごく敏感に反応してきますね~、特に反抗期には。

umiyuki

他人の立場から、批判の内容を読むと的を得ていると感じることの方がむしろ多いように思います。
ブログの書き手は、人格攻撃に到る前段階でそれを察知して修正するのがいいのだろうと思います。

私自身は、誰から見られるか分からないというプレッシャーを感じるのでブログは書いていません。
Hotmailにメモや考えを書く習慣になっていて、数百項目あるのですが。

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