成田空港置き引き事件
2006.03.03
最初からやな予感がしていた。スペインから帰ったばかりの知り合いから、スリにあった話を聞いたばかりだったかも知れないが、いつもパスポートを入れておくバッグのポケットが詰め込んだバブ(入浴剤)で一杯だったので、別のポケットにパスポートを入れている時に、なぜか視線を感じて回りを見回したあたりから事件は始まっていたのだ。
手荷物として機内に持ち込めるように小さめの旅行カバンで飛行機に乗る私だが、例によって日本からシアトルに向かう私の両手は、デパ地下で買ったおみやげの詰まった紙袋で一杯だ。このまま更に買い物すると紙袋が破れそうだったので、チェックインを済ますとまずはトラベルショップに行ってビニールのバッグを買い求める。
お土産やの前にある椅子に座って、紙袋の中身を買ったばかりのバッグに詰め替え、妻の好きな明太子を買い求める。残念ながら私の大好きな「笹かまぼこ」は売り切れだ。明太子をバッグに入れようと後ろを振り向くと旅行カバンはあるのだが、ビニールのバッグがない!「あれ?」と言って店の中を探し回る私。心配そうに「どうしました?」と声をかける店員。
「置き引きされたらしい。」
そう言う私に、「もう一度探してみましょう」とやさしく声をかけてくれる店員。店長も飛んできて、「どこに置きました?」「どんなバッグでしたか」と矢継ぎ早に質問する。その時、ちょうど成田空港のセキュリティの人が通りかかるので、事情を説明すると。「置き引きは私の管轄外です。警察にとどけた方が良いでしょう。」と交番の場所を教えてくれる。
心配そうな店員に見送られて、交番に向かう私。時計を見ると、私のフライトの出発時刻まで一時間半しかない。これから交番に行って、事情を説明していて、フライトに間に合うだろうか。バッグの中身を聞かれたときにちゃんと答えられるように心の中で準備をする。
「千枚漬け、桜餅(ああ、楽しみにしてたのに…)、ちりめんじゃこ、ノートブックケース(不幸中の幸いにもパソコンは旅行バッグの中だ)、メモリーカード(変なデータは入っていないかな?)、DoComoのPHSカード(でも、どうせサービスは今年で終わりだ。次はウィルコムだな)、赤外線モジュール(これは買いなおさなきゃ)、…あまり高価なものを入れておかなくて良かった。あ~、でも悔しい。私としたことが…」
交番のある地下1階に下りるためにエレベーターに乗り込む。下の方にある「B1」のボタンを押そうとすると、肩にかかったカバンがじゃまで押せない。え、肩のカバン?え、ええ~、お前ずっとそこにいたのか?あわててエレベーターのドアを開けて、出発ロビーに戻る。「交番に行く前に気がついて良かった~」と胸をなでおろす私。
しかし、何であのお土産やの店長は、私が「このくらいの大きさで、緑色のビニールのバッグ」と説明している私の肩にそのバッグがかかっていることに気がつかなかったのだろう。「置き引きされた~」と主張する私に、「ひょっとしたら、その肩のバッグでは?」とは言えなかったのだろうか?
「おさわがせしました。肩にかかってました~」とお土産やの店長にすなおに謝りに行けない私はまだまだ修行が足りないのかも知れない。