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「サーチエンジン最適化遊び」のススメ

060409_095432  先日の「なぜブログを書くの?」というエントリーにも通じる話だが、「ブログを書く」という行動は、私にとって究極のエンターテイメントにもなりつつある今日このごろである。

 私は昔からあまり「人為的に作られた楽しみ」があまり好きではない。「このアイテムを取得して、経験地をあげて、こうしてこうすれば勝てる」みたいにレールにはまった遊び方をしなければならないゲームよりも、ルールは単純だけれども奥が深い囲碁だとかサメガメのようなゲームの方が好きなのは、そのあたりに理由があるのだろう。

 そんな私にピッタリなのが、「サーチエンジン最適化遊び」。ルールは単純だ。

【ルール】 まず、多くの人がググりそうな単語を選び、SEOを駆使して検索結果の上位に入ることを目指したエントリーを書く。ただし、エントリーの内容はあえてその単語でググって来る人の期待するものとは違うものにしなければならない。

 この遊びを思いついたのは、ずいぶん前の「恐竜絶滅の謎の答えは経堂にあり」というラーメン屋に関するエントリーを書いた時。「恐竜、絶滅」などのキーワードでググってそのエントリーにたどり着く人たちが沢山いるのだ。「恐竜の絶滅」に関してまじめなレポートを書こうとしている人が、恐竜の絶滅とは全く関係のない私のうんちくを読むハメになっていると想像しただけで楽しい。

 ここまで書いたところで、気がついた人もいるとは思うが、先日の「なぜFカップを持つグラビアアイドルが最近増えたのかに関する一考察」は、これを狙った私の確信犯的なイタズラである。一週間後の現時点で、「Fカップ、グラビアアイドル」でググると四位(参照)、「Fカップ」だけでも九位(参照)である。サーチ結果を見ていただければ分かるが、敵は商売でSEOをしているサイトばかりなので、ベストテン入りは十分に満足できる結果だ。

 「サーチエンジン最適化」の話題を良く目にすることがあるが、実際にこんな遊びを通して学べることも沢山あるので、SEOに興味のある方には、ぜひとも試していただきたい遊びである。

【追記】 あらかじめ白状しておくが、このエントリーそのものが「サーチエンジン最適化」という単語でググって上位に来ることを狙った遊びである。結果は約一週間後に発表する。Stay tuned!


布石と世界観の話

060409_094144  先日も「松下電気産業とスクエニの提携」についてのエントリーを書いたが(参照)、CNET Japanの読者にもキチンと説明しておこうと、「シームレス・コンテンツ」というエントリーをCNETのブログに書かせていただいた。

 以前からの私の「パーベイシブ・アプリケーションの世界観」などのエントリーを読まれている方には、特に目新しい話ではないかも知れないが、こうやって具体的なパートナー企業の名前まで上がってくると、今まで点と点でしかなかったものが、しだいに一つの絵として形を見せ始めるのでそれがとても楽しい。

 最近は一エンジニアとしてではなく、CEO(UIEvolution)、チーフ・ソフトウェア・アーキテクト(スクエニ)というポジションでしかもの作りに関われずにいるため、どうしても囲碁で言うところの「布石を打つ」みたいな役目どころが回ってくるのだが、まわりの人たちに「なぜこんなところに石を置いたか」をキチンと説明しておかないと、その布石が生きて来ない。

 かと言って、私みたいな立場の人間が、あまり細かく「この布石はこう利用して、ここをこう責めなきゃだめじゃない」などとあまり細かなことに口を出すと、マイクロ・マネージメントになってしまうし、ビジネスにスケーラビリティが生まれないので、その辺りのバランスがものすごく難しい。

 結局のところは、「こんな世界が実現したい」という世界観を共有できる人を会社の内外に増やし、その人たちと信頼関係を築きながら一つの目標に一歩一歩着実に進んで行くしかないのかな、と思う。


ブロッケン現象ふたたび

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 ラスベガスの滑走路を離れた機内から窓の外を眺めている私の耳に、機長のアナウンスメントが聞こえてきた。「シアトルへの到着予定時刻は午後5時45分、天候はうすぐもり、到着時の気温は…」。

 「到着が夕方っていうことは、北上する飛行機には左上から太陽があたるはず。すると右の窓側の席に座る私には、飛行機の影が雲にうつるところが見えるということだ。ということは…」

 そうである。去年の末に一度目撃して以来(参照)、飛行機に乗るときの楽しみにしているブロッケン現象を観察する大チャンスである。あれ以来、飛行機に乗るときにはできるだけ窓際に座るようにして観察を続けてきたのだが、ブロッケン現象をはっきりと見るには、低い所にある比較的薄い雲に飛行機の影がうつる、という条件が必要らしいことが分かってきたのだ。

 …

 「まもなく、シアトル国際空港に向かって高度を下げ始めます。安全のためにシートベルトをお閉めください」のアナウンスとともに窓の外を見ると、確かに薄い雲がかかっている。目を外の明るさに慣れさせながら飛行機の影を探すと、あった。きれいな虹色の輪が見える。

 あらかじめポケットに忍ばせてあった撮影器具(良い子にまねされては困るので、ここには書けない)を取り出してパチパチと撮影する。「ピロリーン、ピロリーン」と音をたてるのが少し恥ずかしいが、ノイズのある飛行中のジェット機ではそれほど問題にはならない。

 家に帰って撮影した映像をパソコンで吟味する。前回のものよりははるかに良いが、全体に「白とび」してしまっている。今度飛行機に乗るときはちゃんとデジカメを持って行こう。


ラスベガス空港でエクササイズ

 セキュリティゲートを抜けると、吹き抜け天井のホールに出る

 そこから長いエスカレーターを上ると、ターミナルだ

 人の流れに乗って当然のようにエスカレーターに向かう私

 その時、エスカレーターの横の階段を登っていく女性の姿が目に入る

 ビルの4階分もあろうかという階段をわざわざ歩いているのだ

 良く見ると初老の女性だ、ゆっくりとしたペースだが足取りはしっかりしている

 それを見たとたん、私も階段を登らずにはいられなくなる

 運動不足の体に少し刺激を与えるのに良い機会かもしれない

 私が登り始めた時には、すでに彼女は階段の半ばにいる

 しかし、ペースが違うので私達の距離はだんだんと縮まる

 このままだと、ちょうど同時に登り終わりそうだ

 私の息が荒くなる、彼女の背中が近づく

 二人で同時に最後の一歩を踏み出す

 それと同時に私の方に顔を向けて微笑む彼女

 「Good Excersize!」と微笑み返す私

 「It was!」と答える彼女

 空港でエクササイズも悪くない


松下電器産業とスクエニの提携

Espn  まずは、このプレスリリースから読んでいただきたい。

Uniphier上にシームレス・コンテンツの開発および利用環境を共同構築

 スクエニが松下電器産業と協力し、スクウェア・エニックスが保有するソフトウェア技術を活用したミドルウェア「SEAD Engine」を、松下電器のデジタル家電統合プラットフォーム「UniPhier」に共同で組み込み、デジタル家電上でのシームレス・コンテンツ利用の技術・ノウハウを構築して行く。

 というアナウンスメントである。私の大好きな分野の話なので、本来ならば「シームレス・コンテンツってパーベイシブ・アプリケーションのことじゃん」とか「これって、両社にとってこんな戦略的な意味を持つに違いない」とかツッコミを入れるのに最適なテーマである。

 しかし残念なことに、スクエニがUIEの親会社であること、私自身がスクエニのチーフ・ソフトウェア・アーキテクトとしてこのプロジェクトに関わっていること、および、この「SEAD Engine」なるものがこの資料の末尾にも書かれている通りUIEngineの上に構築されていること、を考慮すると下手なことは言えない。私が「これはこんな時期にこんな商品として実を結ぶに違いない!」などと言ってしまうと、それが「インサイダーの発言」として引用されて一人歩きしてしまい、後から「あくまで私見で公式な意見ではありません」と言っても取り返しがつかないことになってしまうから気をつけなければならない。

 酒の席で話題が下ネタになった時は、あくまで一般論にとどめておき決して自分自身のことなどは話さない方が良いと思っている私だが、これにも同じポリシーを適用した方が良さそうだ。

 ということで、今日はこのくらいにしておくが、あくまで一般論として「シームレスコンテンツとは何か」を理解したければ、このブログの「パーベイシブ・アプリケーションという世界観」、もしくはCNetの「ネット時代のデジタルライフスタイル」を読んでいただければ良いと思う。

 また、Uniphierに組み込まれるSEAD Engine上へのコンテンツの開発に興味がある開発者の方々は、当面はUIEngine のSDKで遊んでいただければ良い(ダウンロードはこちら)。SEAD EngineはUIEngineを拡張したものなので、UIEngine上に作ったコンテンツは、キチンと移植性を考慮して開発したものであればSEAD Engineの上でもそのまま動く。UIEngine は既に携帯電話を含めた数多くのデバイスに移植済みなので、とりあえずは携帯電話用のコンテンツの作成に使っておいていただければ、Uniphier+SEAD を搭載した家電製品が世の中に出たときには、そのままコンテンツを持っていくことができるのである。

【関連ニュース】


CTIA2006: IMSの本当の狙い

060406_110103  CTIA 2006 に来ているのだが、「インターネット」、「パソコン」、「通信」、「家電」、「ゲーム」という複数の業界をまたがって仕事をしていると、色々と興味深いことが見えてくる。

 もっとも面白いのが、一つの業界だけ見ている限りそれなりに納得できるのだが、複数の業界を見ると「ものすごく矛盾してるじゃん!」みたいなことが平気で起こってしまう点である。

 当初は私も、それを単なる「お互いの業界の勉強不足」と解釈していたのだが、最近は結構意図的な部分もあるのではないか、という見方を持ちはじめた。特に、それぞれの業界が持つ「絶対に譲れない部分」がオーバーラップし始めた時に、それが顕著になる。

 典型的な例が、日本の衛星放送のデータ配信に使われているマークアップ言語 BML (Broadcast Markup Lanugage)。家電業界が、パソコン業界の進出を阻むためにあえてHTMLとは異なるものにしたことは、知る人は知る事実である。

 今回、CTIAに来た一つの目的は、携帯電話業界で今話題の、IMS (IP Multimedia Subsystem)とは何か・どんな意味を持つのか、をちゃんと理解することであった。IMSに関しては、前もって勉強してはおいたのだが(そのときに書いた英文のレポート参照)、いつくかどうしても腑に落ちない点があったので、色々な人からヒアリングをしてちゃんと理解しようという狙いである。

 IMSは、音声、動画、プレゼンス情報、ルーティング、などをIP網を通して行うことにより、携帯電話、固定電話、インターネット端末、間でデバイスやネットワークのタイプを問わずにユーザーどうしがコミュニケーションができるようにしよう、という3GPP(携帯電話の世界標準を定める機構)が提案している標準プロトコルである。

 通信事業にたずさわっていない人がこの定義を見ると、「すばらしい、これでIP電話と通常の電話の垣根が取り払われるのか!」「auとDoCoMoの電話機の間でテレビ電話が可能になるのか!」とか喜んでしまうのだが、実はそんなに簡単な話ではないのである。

 IMS関連の資料を丁寧に読むと、IMSの目指す本当の目的は、メッセンジャーだとかVoIPなどのようなサービスを通信事業者のサービスとして提供してしまおう、という所にあることが見えてくる。通信事業者にとっては、「ただのインターネットへの接続事業(dump pipe)」になりさがり、一番おいしい所を Yahoo、AOL、Microsoft、Skype に持っていかれることだけはなんとしてでも避けなければならない。そこで、「ネットワークへの接続」というレイヤーと「サービスの提供」というレイヤーを、通信事業者の持つ「通信品質」、「従来の電話網との接続」などの強みを生かして切っても切れないものにしてしまおう、という業界を挙げての大作戦の核になるのがIMSなのである。

 YahooやSkpe側からすれば、「そんな余計なことはせずに携帯電話からもインターネットに直接アクセスできるようにしてくれれば、メッセンジャーだとかVoIPだとかのサービスはこっちが提供するよ。あんた達は、ネットワークへの接続ビジネスだけやってて欲しい」と言いたいところだろうが、DoCoMoやNTTから見れば「我々が膨大なお金を費やして作ったインフラの上で、おいしい所だけを持っていくビジネスは許せない」という話である。

 ここまで理解して初めて、「IMSがなぜこんなに今回のCTIAで話題になっているか」が分かってくる。特に米国では、携帯電話、IP電話、インターネット接続を三つ抱き合わせにしたトリプルプレー、もしくはそれにケーブルTV(もしくはIPTV)を組み合わせたクアトロプレーが今後の通信・放送ビジネスのトレンドとなりつつあるので、そこでIMSによりサービスレイヤーも握ってしまうことは、通信事業のコモディティ化を避けるためにも必須、と考えているのである。

 こんなことを頭において、ソフトバンクによるVodafoneの買収を見ると色々と妄想がふくらんでしまう。敵はたくさん作ってしまったようだが、将来の日本の歴史の教科書に「20世紀から21世紀の変わり目に日本の通信革命を起こした男」として名を残すのは孫さんなのかも知れない。

【追記】 夕べは海部さんの主催する、「無線ギークの会」に参加させていただいた。最近は、ブログを通して知り合ったゲーム業界、ネット業界、家電業界、通信業界、SI業界、とさまざまな業界の人たちとの交流が増えている。そのおかげで、このブログで発信している情報量よりはるかに多い情報が流れ込み、その結果、ますます書きたいことが増えてくるというポジティブ・フィードバックがかかっている。こうやっている限り、「書くネタは決して尽きないのかな」、と思う今日このごろである。


デジタルデバイドとユーザーエクスペリエンス

060331_002756  CNetのブログに「ユーザー・エクスペリエンスとパーベイシブ・アプリケーションの世界」というエントリーを書きつつ考えたことがあるので、今日はそれに関するエントリー。テーマはデジタルデバイドである。

 デジタルデバイドとは、さまざまなデジタルデバイスやネットワークの恩恵を受けられる人と受けられない人の間に大きなギャップが生まれることを指す(参照)。ギャップが生まれる原因には、所得、地域、年齢、教育の違いなどさまざまなものがある。「所得・地域格差」に関しては、私のようなエンジニアに何が出来るわけでもないので口を挟むつもりはないが、「年齢・教育」に関しては言いたいことが山ほどある。

 この手の議論の際に「デジタルデバイドを解消するために人々の情報リタラシーを高めよう」などという発言を聞くことがあるが、私はこの「○○リタラシー」という言葉が大嫌いだ。もともと「リタラシーがない」とは「文盲である」という意味であり、そこには「本来、まともな大人が持つべき教育を受けていない」というニュアンスが含まれている。そのため、「あの人は情報リタラシーがない」と言うと、言外にどうしても「いまどきパソコンぐらい使いこなせない人が悪い」というニュアンスが含まれてしまうのである。

 この「いまどきパソコンぐらい使いこなせない人が悪い」という発想が私には許せないのだ。

 Windowsを作っていた私が言うのもなんだが(というか、だからこそ言う責任があるのかも知れないが)、逆に「普通の人が使えないようなパソコンを作っている方が悪い」と考えるべきなのである。

 私がそれを最初につくづく感じたのは、何年か前に、知り合いの「私もパソコンぐらい使えるようにならなきゃ、パソコン教室にでも行こうかな」という発言を聞いた時である。「教室に通わなきゃ使えないようなものを作ってしまったのかァ」と結構落ち込んだ。

 技術者の我々から見れば「もう何年も前からやろうと思えばできるようになっている」ことが普通の人たちにとってどのくらい難しいのか、そしてその難しさゆえに、彼らにとってみれば「そんな技術は存在しない」に等しい状況であることを、良く認識する必要がある。

 私の愛読書の日経エレを見ていると、毎号、「次世代の通信網はWiMaxだ」、「次世代のCPUはテラフロップス級だ」、「有機液晶の時代だ」などの要素技術の言葉であふれている。確かにそういった要素技術も大切なのだが、もう少しトータルでみたユーザーエクスペリエンスの向上を考えたもの作りをしない限り、デジタルデバイドのギャップは広がるばかりだ。

  • 携帯で撮影した写真をブログに貼り付ける
  • 自分達のバンドが演奏した曲をポッドキャストで公開する
  • ハードディスクレコーダのディスクが一杯になったので、パソコンにバックアップする
  • iPodをカーステレオに繋いで音楽を楽しむ

 こういった技術者から見れば「そんなの簡単じゃん」ということが、一般の人々にはまだまだ難しすぎるのである。このデジタルデバイドを埋めるのは、ユーザーの役目ではなくて、作る側の責任であるという認識を持ってもの作りをする必要がある。「ネットに繋がった次世代テレビを楽しむには、まず教室に通ってください」、とは絶対に言えないのだから。

【追記】 ちなみに、英語の「Use Experience」をそのまま「ユーザーエクスペリエンス」と書いてしまったが、適切な日本語がどうしても思い浮かばない。「ユーザー体験」じゃ変だし、単なる「使い心地」でもない。こんな大切な言葉なのに…。


ポップ予告@CTIA Wireless 2006

Ctia2006_1 今週はラスベガスで「CTIA Wireless 2006」が開かれる。携帯電話を含むワイアレス業界で米国最大のイベントだ。前回のCTIA(参照)に引き続き、今回も会社として会場にブースを持つので、もしCTIAに行かれるのであれば、ぜひともお立ち寄りいただきたい(場所は Central Hallの1260)。

 日本での知名度はまだまだだが、米国の携帯電話業界では Mobile ESPN のインタラクティブなウェブ・アプリケーション一式を作った会社として知名度が上がってきたUIEvolution。今回のショーでは、「加入者との密接な関係を築くには、携帯電話のユーザーインターフェイスも(従来型の組み込みアプリではなく)ウェブ・アプリケーションとして提供する時代」というメッセージで、UIEngine とそれを使ったソリューション・サービスをプロモートする予定。

 ちなみに、私自身は水曜日と木曜日(5日と6日)のみラス・ベガスにいるのだが、UIEvolution のブース近辺には5日の午後(2時~4時ぐらい)に出没する予定である(一部の人には「ポップする」と言った方が通じるかも知れない)。雑談であれ、UIEngineの説明であれ、雑誌のインタビューであれ大歓迎なので、気軽に声をかけていただきたい。


なぜFカップを持つグラビアアイドルが最近増えたのか、に関する一考察

060403_051019 【注:"Fカップ、グラビアアイドル"でググってこのページにたどり着いた方へ】 このエントリーは、いたってまじめな科学的なテーマに関する考察であり、そういったキーワードから類推されるような画像は掲載していないので、ご了承いただきたい。

 「最近のグラビアアイドルは、胸が大きくなったものだ」と感じているのは私だけでは無いはずだ。80年代なら、CカップやDカップでも十分にグラビアアイドルとしてやっていけたが、今はFカップが当たり前である。いったいどうなっているのであろう。

 一昔前であれば、それを「最近の子供達は戦後の食糧難の時期と比べて良いものを食べているから」と説明できたが、ここ数年の変化はそれでは説明できない。科学うんちくの大好きは私としては、この謎を解明せずにはいられないと考えていたのだが、その謎を解く手がかりを、先日知り合いのアメリカ人二人と食事をしているときに手に入れることができたのでここで披露する。

 レストランでの話題は、シアトル近郊で勢力を伸ばしている Whole Foods という自然食スーパーについてだったのだが、一人が「うちは娘がいるからあそこのミルクしか飲まない」と言うと、もう一人が「うちもそうだ」と言うではないか。

 私が、「いったい何のこと?」と尋ねると、「娘のオッパイがやたらと大きくなるのは困るから」と真面目な顔をして言う。彼によると、普通のスーパーで売っているミルクは、牛に与えたホルモン剤がわずかだが混入しているため、女の子に毎日飲ませると第二次性徴が早くおとずれ、オッパイが必要以上に大きくなるのだと言う。

 私が、「まさか」と言うと、もう一人まで、「サトシは娘がいないから知らないだけだ。ちゃんとした実験データもあるんだ」という。実験データによると、ホルモン剤の混入したミルクを飲む子供の中には、9歳ぐらいから第二次性徴が始まってしまう例があると言う。

 さっそく家に帰って、ネットで調査をすると、確かにそんな実験結果も一部では出ているようだ。代表的なものが、「OCA in Washington Post on Issue of rBGH」。乳牛一頭あたりのミルクの生産量を増やすために投与されるrBGHというホルモンが悪さをしているのでは、と疑問を投げかけている。

 真偽のほどはまだ明らかでは無いようだが、娘を持つ父親としては、できるだけリスクを減らそうという親心なのであろう。「娘が高校生ぐらいになって、『パパ、どうして私の胸は皆みたいに大きくないの』と詰め寄られるかもしれないが、いつかは娘も分かってくれるはずだ」という彼らの言い分は確かに分かる。

 「これでグラビアアイドル達の謎が解けた」と一度は思ったものの、さらに調べると、このrBGHは米国でしか使われておらず、日本のミルクを飲む限りは心配はないようだ。と言うことで、残念ながらこれで全ての疑問が解けたわけではない。もう少し調査の必要がありそうだ。