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ベストセラー・ブックス(4月~5月)

060409_094256  私は昔から本屋に行くのが大好きだが、そんな時にどうしても見てしまうのがベストセラー・コーナー。売れている本が必ずしも面白いとは限らないのだが、どのみち本屋にある本を全部チェックすることも出来ないので、まずはベストセラー・コーナーにある本からチェックする、という行動についつい出てしまうのである。

 そんな「本屋さんのおもてなし」を見習って、このブログでもベストセラー・コーナーを設けようと思い立った。当初はサイドバーに貼り付けようと考えたが、それだと時系列的に見ることが出来ないのが難点だ。ならば月に一度ぐらいの頻度で、ベストセラーをブログ・エントリーとして書くのが良いかも知れない。

 そこで、さっそくの第一弾。5月だけだとサンプル数が少なすぎるので、4月分も合わせた2ヶ月間のベストセラーだ。

第一位 イノベーションのジレンマ
 私が「マイクロソフトを辞めるキッカケを与えてくれた本」と紹介したビジネス書。アマゾンのアフィリエイトを始めて以来、コンスタントに上位に顔を出すロングセラーだ。今の職を離れてベンチャー企業に転職しようか(もしくは自分で起業しようか)悩んでいる人の背中をドンと後押ししてくれる本だ。

第二位 発想する会社―世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法
 インダストリアル・デザイン業界でダントツの地位を占めるIDEOのカルチャーに関する本。業界は何であれ、イノベーションに関わる人たちにが常に意識しておくべき幾つかの大切なポイントを分かりやすく解説してくれる。

第三位 ザ・サーチ グーグルが世界を変えた
 グーグルというよりは、サーチというウェブ・サービスがインターネット黎明期からどんな進化を遂げ、どうやってグーグルという企業の誕生に至ったのかを包括的に書いた良書。グーグルですら最初はなかなかビジネスモデルが見つけられずに苦労していた部分の記述などはとても良い勉強になる。

第四位 文章表現400字からのレッスン
 このブログを書くようになってから、「分かりやすい文章」「読んでもらえる文章」の書き方を意識するようになった。その過程で、多くの「文章の書き方」本を読んだが、これは第六位の「短い短い文章術」と並んで一押しの良書。ブログのような短い文章を書くべき時に頭に入れておくべきポイントが良くまとめられている。

第五位 ブルー・オーシャン戦略
 血みどろの消耗戦(レッド・オーシャンの戦い)を避けるにはどんな発想でもの作りやサービス作りをすれば良いかを実例を数多く挙げて分かりやすく解説してくれるビジネス書。第一位の「イノベーションのジレンマ」とセットで読むと色々と考えさせられるはずだ。

第六位 頭の良くなる「短い、短い」文章術
 題名はなんとも微妙だが、これからブログを書こう考えている人、ブログを書き始めたが何を書いて良いか悩んでいる人に絶好の本。「文章術」というよりは「文章を書く姿勢」を教えてくれる点がすばらしい。「書くように生きる―ブログ時代の文章術」と改題して再発行すればガンガン売れると思うのだが、いかがだろうか?

第七位 明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命
 経済学者ピーター・ドラッカーの数多い書物の一つ。米国が推し進めているグローバル経済の根底にある価値観とかを理解するには絶好の書物。とにかく中身が濃いので、覚悟して読んだ方が良い。
  
第八位 「みんなの意見」は案外正しい
 原文の題名は「wisdom of crowd」。ユーザー参加型のサービスに関わる人はぜひとも読んでおくべき社会心理学の本。この本を読めば、ソシアル・ブックマークにしろ、Googleのページランクにしろ、アプローチは異なるものの、「いかに大勢の人の意見を利用してネットにあふれる情報の中から有用な情報を見つけやすくするか」という試みだということが良く分かる。

第九位 ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる
 このブログの読者には、紹介するまでもないと思うが、梅田望夫氏が「ネットを知らない人たち向け」に書いたビジネス新書。「ネットの世界では何かが起こっているらしいが、一度は勉強しておかなければ」と常々感じていた人たちの琴線に触れたのか、一躍ベストセラーに。

第十位 Life Hacks PRESS ~デジタル世代の「カイゼン」術~
 私が読んでもいなければ、紹介もしていない本がなぜか第十位に。このブログの読者層がどんな人たちかが良く分かる。

 こうやって並べてみると、第十位の「Life Hacks PRESS」以外は全て私自身が結構気に入っている本ばかり。巷には「アフィリエイトで儲けるノウハウ集」みたいな本があふれているが、結局のところ自分が本当に気に入ったものを素直な気持ちで人に勧めるのが一番の近道なのではないだろうか。


ワイルド・ソウル、マフィアの親分が語る人生哲学

060419_133653  週末から読み始めたのが、稲垣涼介の「ワイルド・ソウル」。小説としてもとても楽しめるのだが、登場人物の一人の語る言葉に妙にうなずいてしまったので、ここで引用。

「世の中には、二種類の人間しかいない。分かっていない人間と、分かっている人間―目に見えている世界の表層だけをなぞる人間と、その表層の集合体から本質を見極めようとする人間だ。」
 …
「表層だけをなぞる人間でも、世間並みの成功は収めることができる。事象のみを捉え、その対処法を経験値として蓄積してゆく。そして、その経験値を元に未来に対処してゆく。少し聡い人間なら誰でもやっていることだ。だが、あくまでも意識にはその表層レベルにいる。いわば処世術にすぎない。それでは本当に分かっているとはいえない。住む世界や国が変わり、就く仕事が変われば、それまでの話だ。以前の対処法は通用しない。が、その表層の集合体から物事の理(ことわり)を導こうとするものは、違う世界でも生き残ってゆく。」

 小説に埋もれさせておくにはもったいない言葉だ。

 日本の終身雇用制の最大の弊害は、「自分の会社の中でしか通用しない処世術を身につけることばかりに時間を費やしてきた会社人間」を数多く作り出してしまったことだ。終身雇用制が崩壊しようとしているこの時代は、一人一人が「違う世界でも生き残る力」を蓄える努力をすべき時代なのかも知れない。作者がそこまでのメッセージをこめてこの言葉を書いたのかどうかは不明だが、少なくとも私にはそう受け取れた。

 ちなみに、このセリフは南米のマフィアの親分、ドン・バルガスのもの。小説の登場人物とは言え、マフィアの親分の言葉に強くうなずいてしまう私ってなんなんだろう。


Cooper River Salmon

060529_111943  今週末は月曜日が Memorial Day で休みの三連休。本来ならばこの週末あたりから、本格的なアウトドア活動を始めるのが多くのシアトルの人たちの楽しみだが、今年はあいにくの雨。仕方がないのでコスコに買い物に行くと、Cooper River(カッパー川)のサーモン(鮭)が大量に入荷しているではないか。

 Cooper Riverは、ここ数年、「最高級の鮭の採れる川」としてシアトル近郊で急速にブランド力を増しているアラスカの川の名前。5月の中旬に解禁になると同時に、シーフードレストランは特別メニューを提供して客単価を上げることに必死になるし、スーパーは大量に入荷して一気に売りさばく。

 「みごとなマーケティング戦略だな」と思いつつ、この手の季節ものには弱い私達夫婦も一尾分買い求める(約3ポンド、1.5キロ)。

 とうてい一度には食べきれないので、まずは半身をバーベキューにする。去年までは塩コショウで焼いていたのだが、今年は少し趣向を変えて、塩だけで焼くことにしてみた。それも、たっぷりめの塩を両面にふりかけ、冷蔵庫で4時間ほどラップをせずに置いておいてから焼く、という懲りようだ。

 焼き方も、焼き網の上に直接置かずに、焼き網の上に石を並べ、その上に更に別の焼き網を置いてその上で焼くという「遠火の強火」。遠火過ぎたのか焼くのに45分もかかってしまったが、出来上がった「鮭の塩焼き」は絶品。だし醤油をかけた大根おろしと、炊き立てのご飯と一緒に口に含むと、そこには言葉では表せない幸せが広がる。


レーズンサンドの謎(付録:登録商標の調べ方)

060528_230131  妻が日本からのお土産に持って帰って来てくれた小川軒のレーズンサンド。ほどよく冷やしたそれは、私の「死ねるスイーツ」のリストに加えても良いぐらいのおいしさだ(死ねるスイーツの定義に関しては「ミルフィーユの悩み」参照)。

 何気なく包み紙を見ると、Raisin Wich(レイズンウィッチ)と書いてあるではないか。レーズンサンドではなかったのか?これはぜひ調査しなければならない。こんな謎を抱えたままレーズンサンドをおいしく食べ続けることはもうできない。

 そこで仮説を立てた。

 「他の会社がレーズンサンドの登録商標を持っているに違いない」

 さっそく、Googleで「レーズンサンド 登録商標」でサーチをする。見つからない。「小川軒のレーズンサンドの本当の名前はレイズンウィッチです」などと書いてあるブログは見つけたが、この謎の核心に迫る答えを見つけ出した人はいないようだ。

 そこで前から一度勉強して見たいと考えていた、登録商標の検索を初めてしてみることにした。特許電子図書館の「おもてなし」があまり良くないので苦労してしまったが、これが私が見つけ出した手順である。

(1)まず、商品区分を調べるために、商品・役務名リストというページの「商品・役務名」に一般名称を入力し(このケースではクッキーと入力した)、検索実行ボタンを押す。するとほぼ同じ画面が表示され混乱してしまうのだが、注意深く見ると画面上部に「リスト表示」というボタンがあるのでそれを押す。すると、入力した一般名称に関連する商品のリストが表示されるので、そこの「区分」というコラムの数字を覚える(このケースでは30)。

(2)次に、呼称検索ページに行き、「呼称」に調べたい商品名を全角カタカナで(このケースだとレーズンサンド)、「区分」に上で覚えた数字(このケースだと30)を入力し、検索実行を押す。するとまたまた同じような画面で混乱させようとして来るのだが、このおもてなしの悪さにめげずに画面上部の「一覧表示」ボタンを押す。

(3)そうすると、指定した商品名を含む商標の一覧(このケースだと二つ)が表示されるので、出願・登録番号コラムの「商願XXXX-XXXXXX」というリンクをクリックすると、それぞれの詳細情報を読むことができる。

 レーズンサンドに関しては、商願2006-008937として株式会社グレープストーンという会社が商標登録していることを発見。グレープストーンという会社名には聞き覚えがないので、ググってみると、グレープストーンは「銀のぶどう」、「東京ばなな」などの複数のブランド名で和洋菓子ビジネスを展開する菓子大手。

 しかし、私の知る限り、「銀のぶどう」も「東京ばなな」もレーズンサンドは売っていない。すると今度は新しい謎、「グレープストーンはなぜレーズンサンドという登録商標を取得したのか?そしてそれで何をしようとしているのか?」が気になる。

 ここは「きっと『銀のぶどう』あたりからレーズンサンドを発売する予定なんだ」と素直に解釈しても良いのだが、最近MBAとの付き合いの多い私は、「きっと小川軒に買収を持ちかけているに違いない」と思ってしまうのだがどうだろうか。最近のグレープストーンは、「一店舗複数ブランド」というユニークな店舗展開をしているが、「小川軒」のブランドはそこに良くマッチするように思える。


子供達にだけ聞こえる超音波着メロ

060514_081838  「授業中にはケイタイの電源は切るように」

 こんな規則は今や世界中の学校にあるが、そんな規則の裏を書く特殊な着メロを使う子供たちがイギリスで増えているらしい。

 Pupils perform 'alarming' feat - Metro.co.uk(英文)

 人間の耳はある程度以上の周波数の音(超音波)を聞き取ることは出来ないが、その上限の周波数には個人差があり、特に年齢が大きく影響する。20才を超えた辺りから、ちょうどボーダーラインの18~20KHzが聞き取りにくくなるのである。

 イギリスの子供がそれを利用して作った「子供達にだけ聞こえる超音波着メロ」が、イギリス中の子供達に大流行だという。授業中にその着メロがなると、子供たちは聞こえるのだが、先生には聞こえないために、それがおかしくてクラス中がクスクスと笑い始めるのだそうだ。


ユーザー参加型コンテンツビジネスのまとめ

  • 060409_092149  最近CGM(Consumer Generated Media)関連の質問をされることが多いので、一度頭の中にあるものを整理する意味でも、箇条書きにしておく。

従来のWeb1.0的なコンテンツビジネスと比べた時の利点
・常に新鮮なコンテンツをコストをかけずに提供できる点
バイラルマーケティング効果(コンテンツを作ったユーザーが他の人に宣伝してくれる)
・根本的にコミュニケーションツールであること(人がオンラインになるのは、他の人と繋がるため)
・ユーザーの数が増えれば増えるほどサービスの価値が上がる点
・長く使えば使うほど、そのユーザー自身の財産が形成され、サービスから離れにくくなる点

意識しておくべき点
・自社コンテンツを持っていない企業が新規参入できる点
・ユーザーは予想もしない使い方をすることがあること
・コミュニティの作られ方しだいでサービスの質が大きく左右されること
・積極的に参加するユーザーと消費するだけのユーザーの両方がいること(比率はまちまち)
・必ずしも一社が閉じた形で提供する必要はないこと(ブログが良い例)
・サーチ可能なPermalinkの重要性 (梅田氏の「mixiはWeb1.0」発言はこれが理由)

CGMだからこそ生じている新たな問題点・課題
・著作権の侵害 (まさにYouTubeはその代表)
・コンテンツの質・価値・量が不ぞろいなこと
・プライバシー侵害(意図的なものも、そうでないものも)
・未熟なビジネスモデル

問題の解決への糸口になりそうなキーワード
・フィルタリング
サーチ&ディスカバリー
・パーソナライゼーション
群集の知恵(wisdom of crowd)
・アフィリエイト
・プロシューマー(プロデューサーとコンシューマーの間)

 箇条書きにしたら、なんだかパワポの資料みたいになってしまった(文字が多すぎるけど)。でも、今度話す機会があった時に使えそうだ。


Dilbert Joke、社員のやる気をどうやって向上させるか

Dilbert  日本での知名度はあまり高くないかも知れないが、Dilbertというコミック(日本の4コママンガのようなもの)がアメリカ人の間では人気だ。だめな管理職だとかずるい社員を描いた、皮肉たっぷりの大人向けマンガだ。

 私自身は絵は書けないが、ときどきDilbertの台本を頭の中で作って遊んでいる。今朝、通勤途中に考えた作品がこれ。

社長と部長がオフィスで立ち話をしている。

部長「最近社員のやる気が落ちているように思います。」
社長「確かに。何とかしなければならないな。」
部長「運動会はどうでしょう。」
社長「運動会か。大きな会社みたいだな。」

そこへ社員が歩いてくる。

社員「部長、お話中申し訳ありませんが、相談があります。」
部長「いったい何だね。」
社員「今度のプロジェクトなんですが、私にはどうしても収益が上がるとは思えないんです。」
部長「収益?ビジネスのことは僕らに任せて、君はソフトウェアを作っていればいいんだよ。」
社員「でも…」
部長「いいから、さっさと席に戻って仕事をしてくれたまえ。大事な会議の最中なんだ。」

部長は再び社長の方を向く。

部長「社長、運動会がだめなら、ボーリング大会ではどうでしょう。」
社長「ボーリング大会か。俺はベストスコアが101だからなァ。」
部長「やりましょうよ、社長。社員のやる気が上がること間違い無しです!」


おしっこは犬にとってのソシアル・ネットワーキング・ツール

Guardy  私の家にはシェルティーが一匹いるのだが、彼を観察しててつくづく思うことは、「犬のおしっこ」は彼らにとって、とても大切なソシアル・ネットワーキング・ツールだ、ということだ。

 彼を連れた早朝の散歩は、私達夫婦の日課だが、散歩道の途中に小さな広場の横を通ると妙にそちらに行きたがるので、最近は紐をはずして少しだけ自由にさせることにしている。その時の彼の行動を観察すると色々なことが分かってくる。

 まず広場のさまざまな場所を移動しながらクンクンと匂いを嗅いでまわる。鼻先を地面に触れんばかりにして歩きまわり、ところどころで立ち止まり、そこだけ丁寧に匂いを嗅いだりするのである。明らかに他の犬の残したおしっこの匂いを嗅いでいるのである。まるでネットサーフィンをしながら時々立ち止まって面白そうな記事にでも読みふけっているような行動だ。

 それが一段落すると、今度は自分がおしっこをする場所を決めるために、もう一度同じところを匂いを嗅ぎながら歩き回り、満足した場所に来るとおしっこをする。一ヶ所だけにする日もあれば、数ヶ所にする日もある。明らかに後から来る犬たちへのメッセージを残しているのだ。

 残念ながら私には彼らがどんなメッセージを残しているのかを知ることはできないが、想像することぐらいならできる。

「ハンサムなスピッツさん求む。スピッツ3才、メス、発情中」
「俺、スピッツじゃなくて、シェルティなんだけどいいかな。やさしくするから。」

 まさに、ソシアル・ネットワーキング・ツールである。これからはあの広場を「出会い系広場」と呼ぼう^^。


トイレ進化論、本当の大変化はこれから始まる!?

 先週は、JavaOneのためにサンフランシスコに行っていたのだが、ちょうど良い機会なので、IDEOのオフィスにも顔を出して来た。IDEOはMacのマウス、PalmVなどさまざまなプロダクツのデザインを手がけたインダストリアル・デザインの会社。私がCEOを務めるUIEvolutionがユーザー・エクスペリエンス(おもてなし)を重視する会社だ、というのもこの訪問の理由の一つだが、私自身がインダストリアル・デザインの話が好きな上に、プロトタイプを重視する姿勢など、彼らと共感できる部分が沢山あるという個人的な理由もある。もし私がソフトウェア業界以外で働くとしたら、IDEOは一度は働いてみたい会社の筆頭だ。

 IDEOのオフィスを訪ねるのはこれで二度目だが、あそこに行くととにかく刺激される。IDEOで働く人たちはもちろんだが、そのオフィス環境から働き方まで色々と勉強になる。

 帰り際に、「トムの新しい本読んだか?」と聞かれたので、「まだだよ」と答えるとお土産にもらえたのが The Ten Faces of Innovation。まだ途中までしか読んでいないが、とても良い刺激を私の脳みそに与えてくれる。まだ日本語版は出ていないようだが、英語の勉強の意味も含めてチャレンジしてみるのはいかがだろうか。どうしても英語はダメだという人は、一つ前の本「The Art of Innovation(発想する会社!)」ならば日本語訳も出ているので、まずはそれから読むことをお勧めする。

 ちなみに、IDEOの受付の横の待合室のテーブルには表面に紙が張ってあり、横に色鉛筆が置いてある。「落書きをしながらお待ちください」という、いかにもIDEOらしい「おもてなし」だ。何を書こうか一瞬考えてから私が書き始めたのが数学の問題。次に同じテーブルで待たされる人たちへのプレゼントだ。書いているうちに、不思議なデジャブ感覚を覚える。ブログはバーチャルな世界の「落書き」なのかも知れない。

 そう考えてみると、世の中にはこんな「誰でも気軽に落書きをして良い場所」が、もっとたくさんあっても良いのではないだろうかと思えてくる。どこの公衆トイレも、個室での落書きには頭を悩ませているはずだが、いっそのこと「落書き」を人間の本能と認めて、全ての個室に落書き用の大きな紙を張っておけば良いのではないだろうか(ただしペンは持参)?一ヶ月に一度新しい紙に取り替えれば掃除の手間はいらないし、それを外に張り出しておけば良いアートにもなる。ユーザー参加型の公衆トイレ、まさにトイレ2.0だ。

 「東急ハンズのトイレに行けばどうどうと落書きが出来るし、後でアートとして展示される」とうわさになれば集客効果も上がるはず。企画を採用していただければ、私が不定期に東急ハンズのトイレの「どこか」にメッセージを残してからこのブログでそれを告知するという「落書きハンティングゲーム」をしても良い。それだけだと効果は小さいが、それをマネをするブロガーが必ず出てくるので、バイラルマーケティングの効果であっというまに広まる、という作戦だ。

 東急ハンズ自身の店舗でこの企画を実行し集客効果を狙いつつ、同時に「個室トイレ専用落書きボードセット」を販売する、というビジネスも当然ありである。必要であればトイレの清掃会社とタイアップして、清掃サービスの一環として落書き用の紙の定期的な張替えサービスも提供すれば、安定した収益も得られる。トイレの落書きを文化として定着させることに成功すれば、落書き専用のペンセットだとか、女子高生向けの絵文字のハンコだとかシールのビジネスもありそうだ。トイレの落書きだけで結構大きなビジネスになりそうな予感がする。

 どうでしょう東急ハンズさん?冗談じゃなくて、本気で。やりましょうよ、ぜひ。

【追記】上の「The Face of Innovation」に刺激されて、もう一つのエントリー「ユーザー指向のもの作りに関する一考察」をCNetブログに書いたので、そちらもぜひとも読んでいただきたい。今日中に読破しようと読み始めたにもかかわらず、二章読んだ時点でブログの執筆意欲が急上昇してしまい、読書は一時中断。まあ、これこそが良い本に出合えた証拠だと言えるのかも知れないが…


デジタル・レコーディング・システム設置プロジェクト

Studio ひょんなことから、我が家に音楽のデジタル・レコーディング用のシステムを設置することになったので、ハードとソフトの選定中。こと音楽関係になると全くのドシロウトなので色々と勉強しながらの作業である。

 とりあえず理解したのは、市販のパソコンに内蔵されているサウンドカードは音楽の録音には適さないということ(マイクからの信号を増幅するプリアンプの性能が重要らしい)。特にドラムセットの音をマルチトラックで録音するには、少なくとも3つ以上のマイクからの音を同時に録音が可能なサウンド・インターフェイスを入手しなければならないらしい。

 色々と調査をした結果、現時点での候補は以下の通り。

パソコン:iMac (もちろんIntel Core Duo)
サウンド・インターフェイス:PreSonus FirePod (FireWire接続)
編集ソフト: GarageBand (iMacに付属)

 iMacなのは単なる私の好み。サウンド・デバイスは近所のギター・センターの赤い髪をトサカの様に立てた店員のお勧め。インターフェイスはUSBよりもFireWireの方が良いという彼の言葉を信じることにする。音楽の編集はFirePodにCuBase LEというソフトが付いて来るのだが、Intel版のiMacはまだサポートしていないとのことなので、そこはMacに付属してくるGarageBandでよかろうという甘い考え。

 Intel版のiMacとFirePodの組み合わせは、まだ実績も少ないようなので、何とも言えない不安があるのだが、その不安だけで、Windowsマシンにしたり、IntelでないiMacにするのはあまりにも惜しい。ネットを調べた限りではFireWireで繋がるサウンド・デバイスはドライバーは不要ということなので、何とかなるのでは、と楽観的に考えている。

 近いうちにこの設備を整える予定なので、もし音楽のデジタル録音に詳しい人で、私の間違いや勘違いに気がついた方や、他のもっとお勧めの構成を知っている方がおられたら、ぜひともご指摘いただけるとありがたい。特にIntel 版のMacにFireWireのサウンド・インターフェイスを繋いだ方の失敗例・成功例などの体験談は大歓迎である。