今回の日米同意、日本の負担は約3兆円
2006.05.07
今回の米国の基地移転に関する日米合意。沖縄の8000人の海兵隊をグアムに移転するコストのうち、日本が59%の$6B(約7千億円)を負担することに対して国民の不満が高まっているが、本当に問題にすべき数字は、日本政府が米国に対して約束したトータルで約3兆円のコスト負担である。
米国が発表した資料を見ると、今回の合意に基づく日本国内での戦力再配置の総予算は$30B(約3兆3千億円)で、そのうち日本国内での戦力再配置にかかる$20B(約1兆3千万円)に関しては日本が100%負担、沖縄からグアムに移転する海兵隊の移転費$10B(約1兆1千万円)についてだけは、日本が59%負担、米国が41%負担という内訳になっている。つまり、日本側が負担を約束したのは総予算の87%にあたる$26B(約2兆9千億円)なのである。
4月の25日付で、この米国負担分の$4B(約4千4百億円)に関しての質疑応答が公開されている(参照)。
【引用】
MR. LAWLESS: The Japanese press has correctly characterized -- okay? -- that the cost for the relocation of 8,000 Marines to Guam, for the developmental costs to develop and deploy the new facilities there that will have to be built for that 8,000 Marine personnel contingent and families, probably 9(thousand) to 10,000 family members in addition to the 8,000 Marines, will be approximately $10.3 billion.
Of that $10.3 billion, they are covering about 60 percent, technically 59 percent, and we are covering the balance
MR. : The balance is about 4 -- or approximately $4 billion.
MR. : Does that nail it?
Q That's not the number I'm looking for. I'm looking for a big number. You keep saying this is just a small piece of the big agreement. You characterized the cost of the Japanese of the big realignment, the overall effort, and I'm looking for the, you know, attendant or related U.S. figure.
MR. LAWLESS: On the home islands of Japan including Okinawa, it's -- let us say, it's approximately $20 billion; add to that their costs on Guam, which are $6 billion, makes the total about $26 billion. That's the bigger context I'm talking about.
Q: It would be shared by the U.S.?
MR. GRONE: No. No.
MR. LAWLESS: Japan sharing Japan? It's their responsibility.
MR. GRONE: It's full.
MR. LAWLESS: It's -- (inaudible). That's what I'm saying.
Q: I know. But I'm asking what it's going to cost the U.S.
MR. LAWLESS: I just said the only cost is the $4 billion in Guam.
質問者は、今回の日米合意での総予算のうち正確に米国の負担が幾らで、日本の負担が幾らかになるかを何度も問い直している。結果として、米国の負担はグアムへの移転費の41%である$4B(約4千4百億円)のみ、残りの$26B(約2兆9千億円)は全て日本が100%負担することになっていることが明確になっている(西日本新聞に解説記事有り)。
3兆円近い税金をつぎ込んで実施する日本国内の戦力再配置。日本の政治家は、なぜこれほどの予算が今必要で、なぜそれをこれほどまでに一方的に日本側が負担しなければならないのか、をキチンと国民に説明する義務がある。
これほどまでの負担をしいられるぐらいなら、いっそのことアメリカの52番目の州(51番目はイスラエル)になってしまえば、という過激な意見も完全に否定できなくなる。少なくともワシントンでロビー活動をしてアメリカの議会に影響力を持つぐらいのことをしないとだめな時代が来ているのかもしれない。
最近、国内のニュース報道と海外メディアとの差異に驚きを隠せない。例えば、NY TimesやWSJ、FTなど、まず最初に紹介されるのがパレスチナに関するものだ。それだけ、エルサレム自治に関する関心が高いことが理解される(キリスト教など)。また、国際政治・経済に関する情報も多い。インターネットのおかげで、われわれは世界のニュースをリアルタイムに入手することが可能になった。Thomas L. Friedmanは、このことを「Globalization 3.0」と呼んだ。かつて、人類は国境を越えて隣国があることを理解した(「Globalization 1.0」)。また、船を使い、新たなる大陸があることに気がついた(「Globalization 2.0」)。そして、世界はネットワークを介して水平的につながった(「Globalization 3.0」)。ところが、この「Globalization 3.0」は以前の2つとは異なっている。それは何か?前者2つが直接に眼で確認できるけれども、Globalization 3.0は肉眼で確認することができない。つまり、分かっている人とそうでない(事実を知らない)人とが共存している社会がそこに存在しているだろう。われわれにとって大切なことは、出来る限り良質の情報を、できる限り多くに接する機会を個人として創りながら、第三者から見た日本観や世界観を身につけることではないだろうか・・・。
Posted by: Maki | 2006.05.07 at 14:11
話は変わりますが。書評「電波利権」QUOTE
池田信夫:電波利権
電波利権
かつてNHKに勤務したこともある池田信夫氏が日本の電波行政やテレビ局の無茶苦茶ぶりを,鋭く描いた本.政府が独占的に電波使用を決めているため,とてもおかしな状況になっており,一方でその利権を死守しようとしているのがテレビ局だ,というのが著者の主張です.その典型例として挙げているのが電波利用料です.総務省のホームページを読めば判るとおり平成4年から電波法の改正に伴って徴収されることになったのですが,この電波使用量の総額は年間500億円.そのうち携帯端末だけで83%,基地局の分を含めれば93%を携帯電話ユーザーが支払っているのだそうです.テレビ,ラジオ放送局の負担は全体の1%に過ぎません.しかもこの電波利用料を何に使うかといえば,地上波デジタル放送の中継局の工事やチャンネル変更に伴う工事に使われるのだとか.ユーザーや携帯電話会社からすれば噴飯ものですが,総務省の意向には逆らえません.下手をすれば免許取り消しになってしまいます.携帯電話のユーザーは知らないうちに地上波デジタル放送の普及に貢献していることになります.そしてこの地上波デジタル放送,衛星デジタルならば200億の追加出費で済むところを,ローカル局を残そうとするあまり,1兆円の投資が必要と書かれています.この地上波デジタル放送はまさに21世紀の戦艦大和となる可能性があるのです.この事実はもちろんテレビは伝えないし,テレビ局と新聞,ラジオ,それから多くの雑誌はいわゆるメディア・コンプレックスを形成していますから,他のメディアも取上げないということになります.そもそもアナログハイビジョンはNHKが開発した技術です.このアナログハイビジョンが普及すると見て電機メーカーは一斉に横長テレビ用のブラウン管の製造ラインを作った.しかしアメリカはまだ何の技術も無かったにも係らず,デジタルハイビジョンを提唱し,ヨーロッパは統一規格を拒否,ハイビジョンは宙に浮いてしまいました.何とかハイビジョンを世界規格にしようと,MUSEという圧縮技術を開発し衛星放送に載せ,更に何とかデジタル化し衛星デジタル放送にした.しかしそうすると地上波放送もローカル局も要らなくなってしまいます.何とかローカル局を残したい.ローカル局は地方の政治家にとっては重要な情報発信源です.ところが地上波デジタル放送を全国にオンエアするためには,基地局の設備を更新しなければなりません.本来デジタル化すれば電波を効率的に使用できますから,多局化することが出来ます.しかしそうすればテレビ局の利権は失われ新規企業が参入し,さらにハイビジョンが売れなくなってしまいます.もう横長のブラウン管の時代ではありませんが,横長の液晶はテレビに特化できますから高価格で販売できます.報道とか文化とは程遠い利権や思惑で決定され,巨費を投じて進められているのが地上波デジタル放送です.そしてこの利権を押さえているのが総務省ですから,テレビ局はますます官僚や政治家に頭が上がらないというわけです.NHK番組改竄事件も,昨年の衆議院選における小泉マジックにしても,このような状況から起こるべくして起きたこと,といえるでしょう.この他にも刺激的な内容に満ちています.もちろんNHKはいわばかつての身内ですから,かなり厳しい批判をしています.ぜひ一読をお薦めします.UNQUOTE 日本では、壮大な無駄遣いと、露骨な利益誘導がいまだに行われていると。
Posted by: snowbees | 2006.05.08 at 00:13
そもそも根本的に不思議なのだがなぜ『米軍』の基地が日本にあるのだろうか。戦争に負けたからという声もあるかもしれないが日本は連合国軍』に負けたのであって『米国』に負けたのではない。『米国』は『連合国軍』に入ったのは第二次世界大戦の最後のほうなのだからなぜあそこまで『米国』が日本に対して偉ぶるのだろうか?
また同じく『米国』に対してだがあの国は戦争の末期になると必ずといっていいほどタブーを犯すのだ。それは「非戦闘要員を殺すこと」である。第二次世界大戦で言えば東京大空襲や長崎・広島の原爆、ベトナム戦争だと枯葉剤攻撃だ。しかしそれについては誰も何も言わない。それもおかしいのでは?
さらにタブーを犯したといえば『ソ連』である。あそこは「日ソ中立条約」がありながらもそれを破って『連合国軍』に参加し北方領土を手に入れた。むしろこれは条約違反なのだから日本が樺太(サハリン)をもらってもいいくらいである。それなのに誰も何も言わない。おかしいのではないか?
とまあおかしなことはたくさんある。特に『米国』は「BSE問題」で約束(特定危険部位を入れない)を守らなかったのだから強気に出て金などまったく払わずに追い出してもいいくらいである。最初にも書いたが『米国軍』がこの国を牛耳る理由などないのだから。あのくには自分が一番えらいと思ってるような節があるから一度痛い目を見せる必要はあると思う。
Posted by: タカハシ | 2006.05.09 at 07:10
私自身、米国に暮らし始めて15年以上になりますが、欧米のカルチャーは「自分が大切だと思っていることは遠慮せずに主張し合って、その中で折り合いを付けていく」というもので、日本の「謙虚さ、相手を思いやる気持ち」を尊ぶカルチャーとは大違いです。日本の外交がどうもうまく行っていないのは、実はそのあたりに原因があるのではないかと考えています。色々と好き勝手なことを言って来るアメリカを「横暴だ」と非難するだけでは解決にならず、日本は日本なりの主張をキチンとして、そこで折り合いを見つけるべきだと思います。今回の日米合意は、ほぼ完全にアメリカに押し切られた形。なんとも情け無い限りです。
Posted by: satoshi | 2006.05.09 at 08:22
海外移住経験は十数年前に一度(フランス)しか持たないので米国内部からみた二国間の差は想像でしか分からないまま書きます。
>いっそのことアメリカの52番目の州(51番目はイスラエル)になってしまえば、という過激な意見も
昔はそう思ったのですが実際、日本を52番目やそれ以降の州に直接してしまうと掛かる管理や労力が重いので、現在の「使いっ走り」にしておいたほうが勝手が良いのだろう、うまいな、とよく思います。
一億人もいる州なんて鬱陶しそうだし。
例えが適切ではありませんが、義務教育時代に、意見の強い子が弱い子をメンテせず使いっ走りにしてる図と一緒。そういう時、弱い子から変わらないと事態はよくならない=「ええ日本め。」でしかないような。
文化性は有用なキャラクタなのでそれは活用して、例えば中国のように強靭な計算能力を中心に据えられる政治家でなければ生き残れない士気を国内で作るしかないのでしょうかね。
うーん。恥ずかしい。
Posted by: imaggio | 2006.05.10 at 00:43