デジタル・レコーディング・システム設置プロジェクト
おしっこは犬にとってのソシアル・ネットワーキング・ツール

トイレ進化論、本当の大変化はこれから始まる!?

 先週は、JavaOneのためにサンフランシスコに行っていたのだが、ちょうど良い機会なので、IDEOのオフィスにも顔を出して来た。IDEOはMacのマウス、PalmVなどさまざまなプロダクツのデザインを手がけたインダストリアル・デザインの会社。私がCEOを務めるUIEvolutionがユーザー・エクスペリエンス(おもてなし)を重視する会社だ、というのもこの訪問の理由の一つだが、私自身がインダストリアル・デザインの話が好きな上に、プロトタイプを重視する姿勢など、彼らと共感できる部分が沢山あるという個人的な理由もある。もし私がソフトウェア業界以外で働くとしたら、IDEOは一度は働いてみたい会社の筆頭だ。

 IDEOのオフィスを訪ねるのはこれで二度目だが、あそこに行くととにかく刺激される。IDEOで働く人たちはもちろんだが、そのオフィス環境から働き方まで色々と勉強になる。

 帰り際に、「トムの新しい本読んだか?」と聞かれたので、「まだだよ」と答えるとお土産にもらえたのが The Ten Faces of Innovation。まだ途中までしか読んでいないが、とても良い刺激を私の脳みそに与えてくれる。まだ日本語版は出ていないようだが、英語の勉強の意味も含めてチャレンジしてみるのはいかがだろうか。どうしても英語はダメだという人は、一つ前の本「The Art of Innovation(発想する会社!)」ならば日本語訳も出ているので、まずはそれから読むことをお勧めする。

 ちなみに、IDEOの受付の横の待合室のテーブルには表面に紙が張ってあり、横に色鉛筆が置いてある。「落書きをしながらお待ちください」という、いかにもIDEOらしい「おもてなし」だ。何を書こうか一瞬考えてから私が書き始めたのが数学の問題。次に同じテーブルで待たされる人たちへのプレゼントだ。書いているうちに、不思議なデジャブ感覚を覚える。ブログはバーチャルな世界の「落書き」なのかも知れない。

 そう考えてみると、世の中にはこんな「誰でも気軽に落書きをして良い場所」が、もっとたくさんあっても良いのではないだろうかと思えてくる。どこの公衆トイレも、個室での落書きには頭を悩ませているはずだが、いっそのこと「落書き」を人間の本能と認めて、全ての個室に落書き用の大きな紙を張っておけば良いのではないだろうか(ただしペンは持参)?一ヶ月に一度新しい紙に取り替えれば掃除の手間はいらないし、それを外に張り出しておけば良いアートにもなる。ユーザー参加型の公衆トイレ、まさにトイレ2.0だ。

 「東急ハンズのトイレに行けばどうどうと落書きが出来るし、後でアートとして展示される」とうわさになれば集客効果も上がるはず。企画を採用していただければ、私が不定期に東急ハンズのトイレの「どこか」にメッセージを残してからこのブログでそれを告知するという「落書きハンティングゲーム」をしても良い。それだけだと効果は小さいが、それをマネをするブロガーが必ず出てくるので、バイラルマーケティングの効果であっというまに広まる、という作戦だ。

 東急ハンズ自身の店舗でこの企画を実行し集客効果を狙いつつ、同時に「個室トイレ専用落書きボードセット」を販売する、というビジネスも当然ありである。必要であればトイレの清掃会社とタイアップして、清掃サービスの一環として落書き用の紙の定期的な張替えサービスも提供すれば、安定した収益も得られる。トイレの落書きを文化として定着させることに成功すれば、落書き専用のペンセットだとか、女子高生向けの絵文字のハンコだとかシールのビジネスもありそうだ。トイレの落書きだけで結構大きなビジネスになりそうな予感がする。

 どうでしょう東急ハンズさん?冗談じゃなくて、本気で。やりましょうよ、ぜひ。

【追記】上の「The Face of Innovation」に刺激されて、もう一つのエントリー「ユーザー指向のもの作りに関する一考察」をCNetブログに書いたので、そちらもぜひとも読んでいただきたい。今日中に読破しようと読み始めたにもかかわらず、二章読んだ時点でブログの執筆意欲が急上昇してしまい、読書は一時中断。まあ、これこそが良い本に出合えた証拠だと言えるのかも知れないが…

Comments

Anonymous Coward

月並みな意見だと思いますが、この状況での著作権のあり方が気になりますね。ネットでは場を提供する側に著作権が帰属するのがなし崩し的に常識になっているような気がしますが、この場合も同じ轍を踏むのでしょうか。
また、当然発生するであろう不適切な言葉に対する検閲についても、問題になりそうな気がします。もっとも、落書きの特性からいって、削除ではなく上書きという双方向(?)のコミュニティとしての検閲ならできそうな気もします。こう、キュキュッとスクラッチして「←おまえがバカ」とか。全く生産性はありませんけど。
ああ、ほんとに月並みなコメントになってしまいました。

Toppio

『ユーザー指向のもの作りに関する一考察』のエントリィを読んで感じたことを書かせていただきます。

デザイン分野の学問(の一部)では、一般的に『ユーザーの声』または『ニーズ』と呼ばれているものを、『ユーザーニーズ』と『ユーザーリクアイアメント』の2つの概念に区別して考えています。
『ユーザーニーズ』とは、ユーザーからの製品やシステムなどへの要求、クレーム、意見などを指し、一方『ユーザーリクアイアメント』とは、ユーザーニーズに対する製品としての解決案と定義されます。製品作りの流れとしては、まず『ユーザーニーズ』をユーザーから収集し、それに対して『ユーザーリクアイアメント』を多数考え出して行きます。
例えば、ある製品Aがあって、その製品の使用に関してユーザーから、

「もっと持ちやすくしてよ。」
「手に持ちにくいよ。」

という意見があったとします。これはAに対する『ユーザーニーズ』です。
そしてこの『ユーザーニーズ』に対する解決案としては、まず、

「手に持ちやすい形状にする。」

というのが挙げられますが、さらに、

「手で持たなくても良い製品にする。」

という解決案が挙げられます。これらがAに関する『ユーザーリクアイアメント』です。
製作者の視点から、ユーザーの要求を一段掘り下げることで、ユーザーが想像しないような『ユーザーリクアイアメント』を抽出することが重要なのです。
この考え方は、中島さんが紹介しておられる「The Ten Faces of Innovation」の内容と同様のことを言っているのではないでしょうか。『ユーザーニーズ』と『ユーザーリクアイアメント』の区別は製品の作り手にとって非常に重要な概念だと感じています。

こんちゃん

しょうもないコメントで恐縮ですが、先日公衆トイレの個室の壁で、
匿名のコミュニケーションが行われているのを見かけました。
出だしは、壁に貼ってある活字で『紙以外は絶対に流さないでください』
というもの。引き続き、異なる2つの筆跡で
『じゃ○○○は?(自粛)』『お持ち帰りください』
となっており、思わず笑ってしまい、用を足すのに苦労しました。

satoshi

 「ニーズ」と「リクアイアメント」という言葉が適切な言葉かどうかは少し疑問ですが、概念の部分に関しては全く同意します。

 Fordのケースでは「早く走る馬が欲しい」というユーザーからの意見の根底に、「すばやく移動する手段が欲しい」という根本的な欲求があるんですね。そこをきちんと見極めて、「自動車」というユーザーが想像もしなかったものを「馬に替わる移動手段」として提供することに成功したところにFordのイノベーションがあるという話ですね。

Barserga

The Ten Faces of Innovationですが、6/25日に日本語版が出るようですね。

著者の名前から察するに早川書房から「イノベーションの達人!」として出ている本がそうではないかと。
http://www.hayakawa-online.co.jp/product/issue_schedules/book/list.html

一応お知らせまでに。

tnk

はじめてコメントします。
セミトランスペアレント・デザインという小さな会社をやっているものです。
wombという渋谷にあるクラブのトイレで落書きを共有するという作品をつくりました。
http://www.pingmag.jp/J/2006/02/20/semitransparent-design/
↑このページの下の方に写真等もあります。

zoffy

フゴー、womb↑のトイレ、かっこよいですね。:)
いちおう、日本の特許・実用新案DBで“トイレ”“落書き”をキーワードに検索して表示された二件は防止する方向のものだけでしたよ。いけるかも。:/

イプログダイレクトの店長

>二章読んだ時点でブログの執筆意欲が急上昇してしまい、
伝わってきますよ、その感じ。文章から伝わるんですよね、そういう感じって。不思議です。

>ブログはバーチャルな世界の「落書き」なのかも知れない。
というのもとても共感しました。

yossy

私の住んでいる地域では、公共のトイレでよく目にする張り紙があります。
「差別的な落書きはやめましょう」というものです。

落書き自体は発想の転換で、「陽」にも解釈することができると思います。
ただし、社会道義に反する内容の落書きについては、ブログの発想で受容するには難しいものです。
(それはスパムだね、なんてIT用語のひとことで解釈をしてしまうのは、絶対に避けたいです。)


公衆トイレは年齢制限をかけることができないので、未成年の目にもふれることでしょう。
これが実現されたら、良識ある大人として何をするか、と自問してみる。
・・・心ない落書きをスミで塗りつぶして参加するだろう・・・でもそれをすると、そのような落書きを認めていることにもなるのかな・・・

ただし、このアイデアに興味がないわけではありません。
トイレに年齢制限は、ほとんどありませんが、男女制限はある、という命題のもとで、どんな風に展開されていくのだろう?という興味です。

しょうもないコメントですみません。

shiro

そういえばスティーブンキングの短編で、ハイウェイ沿いのトイレの落書きを収集している男の話がありました。いつもの不思議な話ではなく、リアルな話で、収集した落書きノートが彼の自殺をくいとめる唯一の希望になるという、ちょっと切なく且つ救われる話です。(「愛するものは全てさらい取られる」新潮文庫「第四解剖室」所収)
ところで、公表を前提とした落書きスペースや、「ここで書いてもいいよ」という落書きスペースは、やはり本来のトイレの落書き的なアウトロー気分(?)とそぐわないので、satoshiさんの提案する落書きスペースができても、きっと別の場所でアングラ的な落書きスペースが生じるのではないでしょうか。結局はいたちごっこかもしれないですね。
またきっとパブリックな落書きスペースの言葉は、先のスティーブンキングの主人公を押しとどめる力にはならないかも…。

AL

古めのプチホテル(有り体に言えばラブホですか)で、ノートが置いてあるようなとこがあって、たいていは好き勝手に独白が書いてあるのですが、たまに人生相談と筆跡が違う他人からの回答やら、リレー小説(完成はしてないけど)とかいうのを見かけたことが…。普通の宿だと身元が割れるんでノートがあっても褒める感想文しかないけど、ふれあいノートが置いてある喫茶店とか、今みたいに他人に向かって発信する手段がなかった頃はIPもログも探せない、本人ですら一期一会の場がありましたね。

ty

ドイツのadidasで落書き?(グラフィティ?)を使って広告展開してましたよ。
http://www.beinghunted.com/features/2006/04_adicolor_berlin/adidas_adicolor.html
ご存知でしたらごめんなさい。

ekyl vnobckmt

sogpdjtln humjswa pzrts mkuxq ioeq ilxh jvxm

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