英語うんちく ― 米国はイラクに正義をお届け?!
2006.06.08
今朝のニュースのトップは、アルカイダ幹部のザルカウィの殺害のニュース。ブッシュの記者会見が放映されていたが、そこでの言葉がここでの「英語うんちく」に最適なので引用。こんな感じだ。
Last night, the Special Operation Forces delivered justice to the most wanted in Iraq.
そのまま直訳すると、「昨夜特殊部隊が、イラクで最も望まれている人に正義を届けた」なってしまってわけが分からない。"wanted" という単語は西部劇やピンクレディーの歌(古い!)にも出てくるので、「お尋ね者」のことだとは分かる人も多いとは思うが、問題は "deliver justice" の部分である。
辞書を引くと justice の訳語としてまずは、正義、公正、公平、などの単語が並んでいるがどう考えてもそれは「届ける」ものではない。しかし、注意深く見れば、当然の応報、処罰、などの訳語も並んでおり、そのあたりから大体の意味はつかめると思う。つまり、"deliver justice"は「正義の鉄拳を振るう」もしくは「天罰を下す」という意味の言い回しなのである。
ブッシュがこんな仰々しい言葉を使うのには理由がある。そこには、「米国は世界の警察であり裁判官であり、イラクへの軍の派遣は決して間違いではなかったし、無駄ではなかった」というメッセージが強く込められているのである。
長引くイラク戦争と高騰する原油価格で、ブッシュの支持率は下がる一方であった。そもそもイラクに戦争を仕掛けた一番の理由であったはずの「大量破壊兵器」を見つけることもできなかったし、相変わらず自爆テロの続くイラクから軍を撤退することも出来ないし、ブッシュ政権としては、この状態を好転させる何かがぜひとも必要だったのである。
そこにこの空爆の成功。ブッシュの取り巻きたちは、これを機会に米国が「世界の警察官」であることを世界に誇示するとともに、米国国民からの支持率アップに繋げたいと狙っているに違いない。
ちなみに、米国のマスコミもこの手のニュースは好意的に報道する。「空爆などせずに逮捕して、裁判にかけるべきだったんじゃないの?」などと野暮なことを言っても視聴率は稼げないところがこの国の国民性を良く表している。愛国心教育が大問題になってしまう日本とは大違いだ。
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