セカチューブームは「多元的無知」か
「色に情報を運ばせる」テクニック

Edward Tufteに学ぶプレゼンのスキル

 「スティーブ・ジョブスに学ぶプレゼンのスキル」は、このブログの人気エントリーの一つだが、ことプレゼンに関して私が師と仰ぐのはEdward Tufteである。日本ではあまり名が売れていないようだが、米国では「データのプレゼン技法」に関しては第一人者で、本も何冊も書いているし、全米各地でセミナーも行なっている。

 私自身も、一日セミナーに参加したことがあるが、膨大な量の実例を集めて、それぞれのどこが優れているか、どこがダメなのかを的確に分かりやすく説明してくれるTufteは、まさに「プレゼンの神」であった。彼からは色々なことを教わったが、特に心に残り、今でも常に実戦しようと心がけていることは、

・文字に頼らず、図を効果的に使うこと
・一度に見せる情報量を絞ること
・意味を持った色使いをすること

の三つである。特に最後の「色も情報を運ぶことができる」という点は、それまで意識したことがなかっただけに、とても参考になった。

 そんなTufteの影響を受けた私が、資金集めのために何度も何度もUIEvolutionの会社説明をしているうちに作ったのが、以下の二枚のスライドである。

Vision Mission

 一枚目が、「どんな世界を実現しようと考えているか」というビジョンを説明するスライドで、二枚目が「UIEvolutionの役割(ミッション)」を示したスライドである。色々なスライド構成を試したのだが、最終的には、この二枚のスライドさえあれば、1分間のエレベーター・ピッチ(エレベーターに乗っている時間で出来るぐらい短いプレゼン)から、1時間の投資家向けプレゼンまですべてこなせるようになったのである。

 文字に頼っていない点は一目瞭然だとは思うが、私が特に気を使ったのが色使い。一枚目のスライドでは、ネットに繋がった各種デバイスを通してさまざまなコンテンツにアクセスしたり、知り合いとコミュニケーションできること、を示したかったのだが、Music、Video、Games、Photosとコンテンツを並べた後にFriendsをそのまま並べると対称性が壊れてしまう。そこでFriendsだけ色を変えることにより、それだけが独立したものであることを際立たせているのだ。二番目のスライドでも、「コンテンツ提供者」から「デバイスメーカー」に向けてグラデーションを付け、同時に半透明の矢印をオーバーラップさせることにより、バリューチェーンが形成されていることを示している。Tufte教授のお墨付きをもらったわけではないが、及第点ぐらいはもらえる自信がある。

 ちなみに、Tufteの著書のうち、私が持っているのは以下の三冊。

The Visual Display of Quantative Information
Visual Explanations
Envisioning Information

 残念ながら日本語版は出版されていないようだが、どの本も彼が集めてきた実例の写真とそれに関する解説という構成なので、英語がそれほど得意でない人でもチャレンジする価値はあると思う。

【追記】 Tufteがグラフィカルにデータをプレゼンする良い例として使うのが、以下の図(クリックすると拡大図を含むページに飛ぶ)である。19世紀初頭に、ロシアに進軍しながらそのシビアな気候のためにほぼ全員を失うことになったフランス軍の行程がいかに悲惨なものであったのかを、たった一枚の図で表したものである。黄土色が行きの行程、黒が帰りで、それぞれの幅が兵隊の数を示している。

Frencharmy

Comments

やむ

プレゼンの要点3つについてはとても同感できます。
ただ、気になるのは3点目です。
私も色で識別できるようにしていた時期がありましたが、思っていた以上に色の認識に個体差があると言う事実に気づいたので、最近では色や濃淡で表現しないようにしています。
代わりに、斜線などの模様で表現し、その上で色分けをしています。
従いまして、私の場合は、3点目の項目が以下のようになります。

・意味を持った模様使いにすること
 (ひいては必ず白黒印刷できるようにする)

いかがでしょうか。

satoshi

 確かに白黒印刷できるようにすることに関しては悩ましいと思う時はありますが、色の認識の個体差まで考えたことはありませんでした。難しい問題ですね。少し考えてみます。

nari

色にかんしてですが、

http://www.nig.ac.jp/color/

ここなどを参考になさるとよいかと思います。

以前に大学で、公共系のGUIをデザインしたときに、色彩計画で、いろいろ考えたことがあります。

それをチェックする、ツールなどは富士通のフリーのソフトや、このようなものがあります。
http://jp.fujitsu.com/about/design/ud/assistance/colordoctor/
http://www.vischeck.com/
こちらはフォトショップのツールにプラグインに入れて簡単にシュミレーションが可能です。

男性は20人に1人という割合ですので、大きな公演ともなれば、見えずらい方も多々含まれるかと思います。

そのうち、赤や緑が見にくいと言う第1、第2で、ほぼ100%で、第3色盲と呼ばれるのは非常にレアなケースだそうですが、緑と赤で反対色を使って目立つように、とやると、見えなくなってしまいます。

色だけでなく、形や線の種類でも、わからせるというのは、ユニバーサルという観点から、重要だと思います。

zuka

いつモブログを拝見させていただいています。
先日、Tufte氏の著書を入手し、読み込んでいるところです。
関連の記事を自分のブログにエントリーしましたので、よろしければご覧ください。
http://passionhack.seesaa.net/article/46674490.html
よい書籍をご紹介いただき、ありがとうございました。

けいた

私のこの本を読ませていただきました。
全く同じ感想を持っております。
ただ、少々実例が少なかったように感じます。

kika

Tufte氏の講演は私もSFにて聴きに行き、感動しました。そのときからTufte氏のファンです。
同じ本3冊も重宝してます。日本で知られていないのがもったいないですね。

たまたま見かけた面白いビジュアルシンキングというサイトで、図解であらゆることを解説するというもので、
http://www.visualthinking.jp/

Edward Tufte 氏のこと、この著者に伝えたいなと思い検索したらこのサイトが出てきました。
共感したのでコメントさせていただきました。

ゆい

ボストンの翻訳会社に勤めていた時(多分 1999ー2000年頃)にEdward Tufte の The Visual Display of Quantitative Information の翻訳のプロジェクトに関わりました。本を出版するために自ら出版社を立ち上げたり、自身の美学にマッチするフォントが見つからないと自らカスタムフォントをつくったりと、行動力と繊細な美意識を持ったダイナミックな人でした。

面白い事に、彼は今オバマ政権のデータプレゼンテーションの手助けをしています。

ニューズウィークの記事:
http://www.businessweek.com/innovate/NussbaumOnDesign/archives/2010/03/president_obama_8.html

Tufte のサイトから:
http://www.edwardtufte.com/bboard/q-and-a-fetch-msg?msg_id=0003e0

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