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サッカー選手のワザ、ゴルファーのワザ、じゃあ、プログラマーは?

 少し前に、「世界のワールドカップCM集」というエントリーを書いたが、その時に見つけたビデオの一つに、どう考えても特撮としか思えないようなワザを見かけたので、サッカーに詳しい知り合いに真偽のほどを尋ねたところ、「本当に出来る人がいるらしい」とのこと。まずはビデオを見て欲しい(真ん中の矢印をクリックするとビデオが始まる)。

 これはすごい。ちなみに、これで思い出したのはTiger Woodsを使ったNikeの広告。日本で放映されたかどうかは知らないが、米国のゴルファーの間ではかなり評判になった。

 ちなみに、プログラマーが30秒ぐらいで人に見せられるワザというのはあるのだろうか?「Hello World」を30秒で作って見せろといわれれば出来るが、そんなことはタイプ打ちさえ早ければ誰でもできる。そうではなくて、見た人に「おお、プログラマーってスゲェ。俺には出来っこネエ。」と言わせるような何かである。

 誰か思いついたら、ぜひともビデオに収めてYoutubeにアップロードした上で、トラックバックなりコメントで教えて欲しい。


「色に情報を運ばせる」テクニック

 昨日のエントリーで、プレゼンの資料において、「色に情報を運ばせる」ことについて簡単に触れたが、少し説明が不十分だったと思われるので、具体的な例をあげてもう少し分かりやすく説明しよう。

 まずは下の図を見て欲しい。

Color_info1

 ブログに関わる人たちをグループ化した図だが、グループが三階層に分かれることと、その数が上位層になるほど数が少なくなることを表現する、という目的はきちんと果たしている。

 問題は色使いである。せっかくカラー画面を使ってプレゼンをするのだからと、色を着けたのだろうが、色分けそのものは何の役も果たしていない。「役目はないが、無駄ではなかろう」というのが通常の考え方だが、Tufteはそれを「情報量の無駄使い」と呼ぶ。彼ならば、こんな「色使い」を薦めるだろう。

Color_info2

 上位層に行けば行くほどブログとのかかわりが「濃い」ことを色の濃淡で表している。つまり色情報がちゃんと役割を果たしているのだ。それに加え、この段階ではまだ青系の色しか使っていないので、別系統の色で表現した図を重ねあわせることが可能になるのである。たとえば、ブログと既存メディアを比較したこんな図を作ることが可能になる。

Color_info3

 ちなみに、このテクニックはプレゼンだけでなく、アプリケーションやウェブサイトのユーザーインターフェイスにも応用が可能なので、覚えておいて損はしないと思う。


Edward Tufteに学ぶプレゼンのスキル

 「スティーブ・ジョブスに学ぶプレゼンのスキル」は、このブログの人気エントリーの一つだが、ことプレゼンに関して私が師と仰ぐのはEdward Tufteである。日本ではあまり名が売れていないようだが、米国では「データのプレゼン技法」に関しては第一人者で、本も何冊も書いているし、全米各地でセミナーも行なっている。

 私自身も、一日セミナーに参加したことがあるが、膨大な量の実例を集めて、それぞれのどこが優れているか、どこがダメなのかを的確に分かりやすく説明してくれるTufteは、まさに「プレゼンの神」であった。彼からは色々なことを教わったが、特に心に残り、今でも常に実戦しようと心がけていることは、

・文字に頼らず、図を効果的に使うこと
・一度に見せる情報量を絞ること
・意味を持った色使いをすること

の三つである。特に最後の「色も情報を運ぶことができる」という点は、それまで意識したことがなかっただけに、とても参考になった。

 そんなTufteの影響を受けた私が、資金集めのために何度も何度もUIEvolutionの会社説明をしているうちに作ったのが、以下の二枚のスライドである。

Vision Mission

 一枚目が、「どんな世界を実現しようと考えているか」というビジョンを説明するスライドで、二枚目が「UIEvolutionの役割(ミッション)」を示したスライドである。色々なスライド構成を試したのだが、最終的には、この二枚のスライドさえあれば、1分間のエレベーター・ピッチ(エレベーターに乗っている時間で出来るぐらい短いプレゼン)から、1時間の投資家向けプレゼンまですべてこなせるようになったのである。

 文字に頼っていない点は一目瞭然だとは思うが、私が特に気を使ったのが色使い。一枚目のスライドでは、ネットに繋がった各種デバイスを通してさまざまなコンテンツにアクセスしたり、知り合いとコミュニケーションできること、を示したかったのだが、Music、Video、Games、Photosとコンテンツを並べた後にFriendsをそのまま並べると対称性が壊れてしまう。そこでFriendsだけ色を変えることにより、それだけが独立したものであることを際立たせているのだ。二番目のスライドでも、「コンテンツ提供者」から「デバイスメーカー」に向けてグラデーションを付け、同時に半透明の矢印をオーバーラップさせることにより、バリューチェーンが形成されていることを示している。Tufte教授のお墨付きをもらったわけではないが、及第点ぐらいはもらえる自信がある。

 ちなみに、Tufteの著書のうち、私が持っているのは以下の三冊。

The Visual Display of Quantative Information
Visual Explanations
Envisioning Information

 残念ながら日本語版は出版されていないようだが、どの本も彼が集めてきた実例の写真とそれに関する解説という構成なので、英語がそれほど得意でない人でもチャレンジする価値はあると思う。

【追記】 Tufteがグラフィカルにデータをプレゼンする良い例として使うのが、以下の図(クリックすると拡大図を含むページに飛ぶ)である。19世紀初頭に、ロシアに進軍しながらそのシビアな気候のためにほぼ全員を失うことになったフランス軍の行程がいかに悲惨なものであったのかを、たった一枚の図で表したものである。黄土色が行きの行程、黒が帰りで、それぞれの幅が兵隊の数を示している。

Frencharmy


セカチューブームは「多元的無知」か

060623_131213  CNETのブログのエントリー「既存のウェブサイトをAJAX化する意味が本当にあるのか?」の中でも軽く触れたが、皆が良いと主張するものを誰も否定できなくなってしまい、結果的に集団として誤った方向に行動してしまう現象を社会心理学では「多元的無知」と呼んでいる。

 難しい授業や講演を受けた人たちが、誰一人として全く理解できていないにも関わらず、それぞれが「理解できていないのは私だけかも知れない。それがばれるのは恥ずかしいから、私も分かったような顔をしてうなずいておこう」と考えて、全員が理解したような顔でうなずき質問もしない、などの状況が典型的な「多元的無知」の例だ。

 近年では、十代の子供達の間での「セカチュー(世界の中心で愛を叫ぶ)」ブームが良い例だ。確かにそれなりに良く書けている小説かも知れないが、この手の「純愛もの」は通常はごく一部の子供達だけに受け入れられるたぐいのものである。

 しかし、一旦ブームに火がついてしまうと、「セカチューの良さが分からないのは恥ずかしい」という雰囲気が子供達の間に出来てしまい、誰も否定できなくなってしまう。そうなると、普段はゲーム内で無差別殺人を繰り返しているような連中までが、「セカチュー最高!」と言い始めるから不思議だ。

 「なんで君たちは、物語の中の白血病の少女の苦しみを理解できるのに(もしくは、理解したフリをできるのに)、同時に、ゲームの中の通行人を跳ね飛ばして笑っていられるんだ」とツッコミを入れたくなってしまう私は、彼らにとっては典型的な「ウゼえオヤジ」なのだろう。


ブログエントリーをその場で編集するツール (MT限定)

060621_053734  今週はUIEJ初の開発合宿が二泊三日で開催されたのだが、私は一日だけ参加。私自身もペアプログラミングに参加したりととても楽しい経験をさせてもらった。

 今日、UIEJのオフィスに行って合宿の成果を見せてもらったのだが、その成果の一つが既に公開されているのでここで紹介。

 サービス名はYamaki(宿泊していた旅館の名前)。Movable Type ユーザー向けのWYSIWYG編集・推敲ツールだ。Firefoxで編集したいページのPermalinkを開き、ブックマークレットをクリックすると、その場でエントリーに変更を加え、保存することができるのだ。

 詳しくは、UIEJの開発者ブログのエントリーをご参照いただきたい。


社員向け必読図書、UIEの場合

060621_053935  私の会社(UIEvolution Inc.)では、これまで新入社員向けの必読図書として「イノベーションのジレンマ」を渡していたが、最近新たに二冊を追加することにした。

About Face 2.0 (日本語訳発見できず)
The Design of Everyday Things (日本語訳:誰のためのデザイン

 どちらもユーザーエクスペリエンスに関する書物。前者は、VP of EngineeringをしてもらっているPeteが"my User Experience Bible"と絶賛するアプリケーションやウェブサイトのユーザーインターフェイスに関する本。後者は、私自身が一押しの、「ドアノブ」だとか「能書き」などの、より日常生活に密接に結びついたユーザーエクスペリエンスに関する本。

 「User Experience Matters(おもてなしは大切)」をモットーとする会社としては、全員がこれぐらいは読んでおくべきだろうとの判断。こういうものを通して、会社のカルチャーをより良い方向に引っ張って行ければとの思いもある。

 ところで、他の会社では、どんな本を新入社員に読ませているのだろうか?とても興味がある。


対称性の大切さをトイレットペーパーに学ぶ

060621_053316  以前にも書いたことがあると思うが、私は「商品の『能書き』を読むこと」が妙に好きである。コーンフレークを食べながらついついそのパッケージに書いてある文字を隅から隅まで読んでしまったり、お風呂につかりながら入浴剤の成分を確認したり、という毎日を送っている私だが、色々と発見もあるし勉強にもなる。

 先日も、宿泊先の旅館のトイレにおいてあったトイレットペーパーの『能書き』を読んでいたのだが、あまりにもツッコミどころが多いので、感動して写真を撮ってきた(トイレの中で「ピロリーン」という音を立てていたのは私である)。

 何と言っても「対称性」が思いっきり壊れている点がすごい。何かを箇条書きにしたり、アイコンやボタンを並べたり、APIを決める際には、対称性を強く意識することが大切であることは周知のことであるが(「ノンデザイナーズ・デザインブック」に丁寧に説明してある)、この『能書き』は絶好の反面教師だ。

 まず、1だけに「当紙は」という主語が入っているのが許せない。1~5すべてがこのトイレットペーパーの特徴を述べているのだから、主語を入れるなら全てに入れるべきで、省略するのであればすべてから省略すべきである。

 次に、1と4だけが「です・ます」調の文になっているのがいけない。「…がよい」という形容詞で終わる文と「…には快適」という「体言止め」を混ぜるのはかまわないが、そこに「です・ます」調の文を混ぜてはいけない。

 後、他が特徴だけを述べているのに、5だけが特徴を述べた上で「…ので水洗便所の御使用には快適」と議論を展開しているのがまずい。議論を展開するのなら全てでする、そうでないなら一切しないようにする必要がある。

 この他にも、「クレープ」という意味の分からない専門用語(たぶん人口的につけたシワのこと)を使っている点、便器がつまらないことを「快適」と呼んでいる点、「当紙」という意味は分かるが聞きなれない言葉を使ってる点など、よくもこれだけの小さなスペースにツッコミどころを用意してくれたものだ。これだから『能書き読み』はやめられない。

【追記】せっかくなので、模範解答を示しておく。

本製品の特徴
1.純白で衛生的
2.やわらかな肌触り
3.細かなクレープ(紙のシワ)
4.特にすぐれた吸水性
5.水に溶けやすい


Amazon AffiliateがGoogle AdSenseに勝てる理由

060619_055028  今まで、このブログでも何回もGoogleとMicrosoftを比較して、Googleにばかり軍配を上げてきた私だが、Googleに弱点が全く無いと思っているかというと決してそんなことはない。そこで、今日はこのブログでも採用しているAmazon AffiliateとGoogle AdSenseとを比較した場合、どうして私が「長い目で見たらAmazon Affiliateの方が強いかも知れない」と思っているかを述べてみたい。

 まずは、このブログでの過去数ヶ月の実データを元に、Amazon Affiliateの結果をまとめると以下のようになる。

・測定単位: 10万ページビュー
・クリック数: 約2500クリック
・注文数: 約150点
・アマゾンの売り上げ: 約25万円
・紹介料: 約1万5千円

 まあ妥当な数値である。クリック率は約2.5%。クリックから実際の注文へのコンバージョン率は約6%である。この高いコンバージョン率のおかげで、1クリック平均で約100円がアマゾンの売り上げになり、そのうち5~6円がアフィリエーターに紹介料として還元されるのである。

 Google AdSenseに関しては具体的な数値は規約上公開できないので、「クリック率ははるかに低いのだが、そのわりに分配金は悪くない」、とだけ言っておこう(これぐらいで規約違反だとは言いませんよね、Googleさん?)。

 この状況は何を意味するのだろうか?結論から先に言ってしまえば、「Google AdSenseの広告主はお金を払いすぎているとしか思えない状況」なのである。

 Amazon Affiliateに関して言えば、広告主はAmazon自身である。そのため、紹介料もページビューやクリック数などといったあいまいなものではなく、売り上げの結果の何パーセント、というものすごくはっきりとした数字である。そのため、Amazonには明確な広告効果が見えているし、紹介料も十分な利益を上げた上でアフィリエイターに支払うことができる。このビジネスモデルの美しいところは、アフィリエイターとAmazonの利害が100%一致していること、つまり、はっきりとした「win-win」の構図が出来ている点である。

 それに対して、Google AdSenseの場合はGoogle自身が広告主ではなく、その先に本当の広告主がいる。その上、AdSenseを貼っている人に対しての分配金は、ページビューやクリック数などに比例して払われるだけで、その結果実際に売り上げに結びついたかどうかは誰も責任を取らない。それに加えて、AdSenseの料金はオークションで決まるため、ROIを正確に測るすべを持たない広告主たちが「とにかくサイトにトラフィックを集める」ためだけに競争すると、必要以上に広告費が高くなってしまう仕組みになっているのだ。

 特に最近は、ブログエントリーの先頭に(つまりエントリーのタイトルと本文の間に)AdSenseを貼り付けるブロガーが増えているが、これはあきらかに「誤クリック」を狙ったトリックで(おお、韻を踏んでいる^^)、ブロガーとGoogleにとっては歓迎すべき行動だが、広告主にとってはたまったものではない。

 言い換えれば、Google AdSenseに関して言えば、全員の利害が必ずしも一致していない―つまり「win-win」の構図が成り立ち難い構造になっているのである。

 「win-winの構図が作れないビジネスモデルは長続きしない」というビジネスの大原則を適用すれば、Amazon Affiliateは「末永く今の形で続かせることが可能なビジネスモデル」だが、Google AdSenseは「このままの形で維持するのは難しいビジネスモデル」と言える。

 この結果すなわち「Googleのビジネスモデルは虚構」という極端な話では決してないのだが、少なくともこの「必ずしもwin-winの関係ではないGoogleと広告主の関係」が、MicrosoftやYahooなどに付け入るスキを与えるのではないかと私は考えている。

【追記】 ちなみに、私のブログのデータだけだと信頼性に欠くので、ブログをお持ちの方でAmazon AffiliateとGoogle AdSenseの両方をしている人にはぜひとも、それぞれのサービスの1クリックあたりの紹介料・分配金を比較して報告していただけるとありがたい。


YouTubeをブログに貼り付けやすくしてみた

 最近になってYouTube上のCMのリンク集のエントリーを二つほど書いたが、「おもてなし」の面で言えば、やはりブログエントリーそのものに動画を埋め込みたい。しかし、二つほど問題がある。一つはこのブログが使っているTypepadサービスがobjectタグを受け付けないこと、もう一つがYouTube標準の大きさ(425x350)がこのブログには少し大きすぎること。

 そこでちょっとしたPHPのプログラムを書いて、iframeを使ってこのブログに埋め込められるようにしてみた(TypepadはobjectタグはNGだが、iframeタグはOK)。大きさも、このブログ標準の画像の標準サイズの、幅320ピクセルで表示するように指定した。

 下がこの仕組みを使った例。画像のまんなかのプレーボタンをクリック(ただし、IEはセキュリティセッティング次第では2回クリックが必要)すると動画が始まる。

 iframeタグが使えてobjectタグが使えないブログがTypepad以外にあるかどうかは知らないが、少なくともTypepadユーザーにとってはこれはなかなか重宝するサービスではないかと思う。

 ということで、ここでこのサービスの使い方も公開。以下のIFRAMEタグの{ID}の部分を、表示したいYouTubeビデオのID(上の例では"N3dlYWfNVl8")に変更してエントリーの一部として貼り付けるだけだ。

<iframe marginwidth="0" marginheight="0" src="http://www.uicentric.com/php/youtube.php?id={ID}" frameborder="0" width="320" scrolling="no" height="278"> </iframe>


UIE SDK 2.0 正式リリース

060607_031131 今までベータ版だったUIE SDK2.0からベータの文字が外れた。

http://developer.uievolution.com/sdk/download_2_0.html

 「Googleみたいに永遠にベータじゃないの?」とツッコミを入れたくなったが、担当者たちはいたってまじめに作っていたので今回は遠慮しておこう。これでIDEとしての2.0は完了。後は、MIDP、BREW、Dojaなどのプラットフォーム向けのUIEPlayerの動作検証をして順次リリースして行くだけだ。

 これでEclipseへの移行とコンポーネント化が完了したので、次はオーサリングツールだ。オーサリングツールに関しては、まだまだ開発途中なので公開できるレベルのものはないが、そこそこに動き始めているのでそろそろ私のマシンにもインストールして遊んでみる予定だ。

 ちなみに、私の会社(UIE)で開発環境を作っているの連中は、元々はAsymetricsという会社でSupercedeというJavaの開発環境を作っていたメンバーが大部分だ。せっかく良いものを作ったにもかかわらず、経営陣のミスで会社が立ち行かなくなり、一度ちりぢりばらばらになっていたのだが、開発環境を作っている私の会社のことを人づてで知り、再度結集したのである。