Previous month:
May 2006
Next month:
July 2006

速報!ビル・ゲイツ、事実上の引退宣言

http://seattletimes.nwsource.com/html/businesstechnology/2003063990_webgates15.html

 シアトルタイムズによると、(私の予想どおり^^)Bill GatesはChief Software Architectの地位をRay Ozzieに今日付けで譲ることを決めたそうだ。ただし、会長としての地位は今後2年間維持したまま、徐々に自分の役割を減らして行き、2008年には完全に引退するとのこと。

 Gatesは引退の理由として「私は(Microsoftの成功により)、巨額の富を得ることに成功したが、富には責任が伴う。その富を必要とする人たちに最も適切な方法で再分配するべき時が来ている」と延べ、引退後は、世界の人々の健康と教育のために、Melinda夫人と一緒に設立したBill & Melinda Gates Foundationを通じたチャリティ活動に専念すると宣言したそうである。

 このGatesの引退宣言は、彼のことを良く知っている人たちにとっては驚きでもなんでもない。50才を過ぎたあたりでの引退を考えていること、Microsoftの成功で築いた資産のほとんどをチャリティ活動を通じて寄付つもりであることは、以前から何度も言って来た。

 ちなみに、Gatesの資産は400億ドル超、日本円に換算して約4兆円強である。「自分の子供には暮らして行くのに十分なお金だけ残し、後は慈善活動を通じて寄付する」と宣言してきた彼が、その言葉どおりのことを実行すれば、4兆円近いお金が世界中のさまざまな慈善活動団体を通して、子供達の教育や、貧しい人たちの医療に使われることになるのである。日本の2003年のODA実績が89億ドルであったことを考えれば、その規模がいかに桁違いなものであるかが良く分かる。

【追伸】 CNETブログに解説記事を投稿。「Ray OzzieはMicrosoftを生まれ変わらせることが出来るか?


必ずしも「テクノロジー=人間不在」ではないことをブログが証明してくれた

060614_232715

 何ヶ月か前のことだが、社員の一人が、UIEngine上のサンプル・アプリなどを公開している「UIEngineだ」というブログを発見した。ブログが日本語で書かれていることもあり、当初は「サトシが偽名で書いているに違いない」、とふとどきなことを言い出す社員もいたぐらいだ。

 それ以来、「UIEngineだ」さんには、フォーラムなどにも活発に参加していただいている。第三者に使っていただくにはまだまだ未熟な点の多いUIEngineだが、こういった方々からの叱咤激励こそが社員たちのエネルギーになるので、大変感謝している。

 そんな「UIEngineだ」さんから、「遊びに行っていいですか」と連絡を受けたのは1ヶ月ほど前のこと、それが実現したのが先週のことである。彼のブログには既に訪問レポートが書かれている。

「永遠のパソコン少年」の会社-UIEvolution-訪問 その1
「永遠のパソコン少年」の会社-UIEvolution-訪問 その2

 この件に関してつくづく感じたのは、やはりブログの持つ力。既にお互いのブログを読んでいたからこその信頼関係も既に生まれており、その「個人と個人」の繋がりの上にこそ成り立つ、「遊びに行っていいですか」「どうぞ」「せっかくなら会社の取材も」「それは楽しそうだ」というものすごく気軽で自然な流れの中で実現した今回の訪問。「ブログ以前」の社会ではありえなかったことである。

 「テクノロジー」と言う言葉には、どうしても「人間不在」みたいなイメージが付きまとうが(チャップリンの「モダンタイムズ」以来か?)、ことブログに関して言えば、逆に「個」の存在感が高まっているようにすら感じられる。ネットには、「荒らし」、「晒し」、「出会い系犯罪」、「ネット廃人」などなど暗いイメージばかりが先行していた感があるが、そんなイメージを払拭する力を持っているのがブログではないか、と思う今日このごろである。


世界のビール、CMコレクション

Bud  Youtubeは本当に困ったものだ。著作権法やぶりのコンテンツだらけなのも問題だが、面白いコンテンツが多すぎる。こんなもので遊んでいてはブログを書く時間どころか寝る時間までなくなってしまう。

 ということで、今日もYoutubeのリンク集。今回は私の大好きな「ビールのテレビCM」の中で、よりすぐりのものを集めてみた(リンク先のページは開いたとたんに音が鳴るのでボリュームに注意)。

 ちなみに、私のお気に入りはTiger Beerの広告。

http://www.youtube.com/watch?v=yKJDgR4n0iM
バドワイザー、人文字広告。特撮かな?

http://www.youtube.com/watch?v=AgB0qkJMPSs
Bokke beer、強く望めば夢はかなう?

http://www.youtube.com/watch?v=eH3GH7Pn_eA
Carlton Draft、ものすごくお金のかかった広告だということそのものを売りにした広告。確かに。

http://www.youtube.com/watch?v=9jSIbIXl2zI
上のCarlton Draftの広告のパロディ

http://www.youtube.com/watch?v=daG6ycdC3IM
HAHN、彼女とビール、どっちが大切?

http://www.youtube.com/watch?v=KFucIHZVPjY
HAHN、彼女とビール、どっちが大切?パートII

http://www.youtube.com/watch?v=gE65FMuEtEA
Bud light、これも同じテーマ

http://www.youtube.com/watch?v=dlMR5ONb3ag
Tooheys、マッチョ対決に女性が参戦すると…

http://www.youtube.com/watch?v=wfmXyx8yD2U
Bud Light、ビールは飲みたい、でもペットを連れてはバーには入れない。さあどうする…

http://www.youtube.com/watch?v=IKIp-wLyV2k
Miller、ドミノ倒し広告。これが本当の将棋倒し!?

http://www.youtube.com/watch?v=aZsoffnl6Y4
Amstel、サッカーネタ。「オフサイド」を理解できるということは…

http://www.youtube.com/watch?v=f_7Bi9bDWGo
Tiger Beer、Jessica Alba の記者会見に行ったが人が多すぎて彼女の顔も見えない、さあどうする?

http://www.youtube.com/watch?v=zAmJEqBSBqI
Tui、ここのビールは男には魅力過ぎるため、ビール工場では男性の従業員は働けないそうだ

http://www.youtube.com/watch?v=B-3UDRk33Cw
Bud light、ヒッチコックの「鳥」か?

http://www.youtube.com/watch?v=K0xPrTc1Vxw
Heineken、ブレイクダンス。でも、あの耳の動きはありえない。

http://www.youtube.com/watch?v=hLnmn2hf5MM
Bavaria、ブラジル、ビーチといえばビールと美女。

http://www.youtube.com/watch?v=xiv2II7Olrs
EICHHOF、これがドイツ人のユーモアのセンスか?

http://www.youtube.com/watch?v=kIV4Mgdi0jM
Guinnes、このビールに出会うまで人間は何億年も待っていたという話。

http://www.youtube.com/watch?v=eMMpHZppqR0
Root Beer、ノンアルコールのRoot Beerにしておきなさい、というメッセージ。

http://www.youtube.com/watch?v=RemFqVe2Qs0
Michelob Beer、美女とフットボール

http://www.youtube.com/watch?v=9k1x4J6bM0s
Big Rock、尻にひかれていても、これだけは譲れない…と

http://www.youtube.com/watch?v=LY-s_6nhU9c
アサヒビール、絶対に最後に笑わせるオチがあると思って見ていたら…ないじゃん!

http://www.youtube.com/watch?v=scBnkpw6Hh8
サッポロ黒ラベル、焼肉編

http://www.youtube.com/watch?v=QJAyPuw9Rbo
Brahma、コマーシャル・オブ・ザ・イヤーに選ばれたそうだが…

http://www.youtube.com/watch?v=WH63RGNoYz4
Ariana beer、メキシコかな?やはりビールには美女か

http://www.youtube.com/watch?v=7eJQs3KjZFY
Green sands、フランス人のセンスはイマイチ理解できない

http://www.youtube.com/watch?v=QrqFq94dJHA
Polar Beer、ベネズエラ、地味さが逆に新鮮

http://www.youtube.com/watch?v=kKDL9vf-FWc
Bhahma Beer、ペルー、日本で言えば、昭和40代風の笑い

http://www.youtube.com/watch?v=GXmIYFmmxaw
Bud Light、ビールを盗もうとしてはいけないという教訓

http://www.youtube.com/watch?v=rADqHn93Ssw
Heineken、マカリナ・ダンスはこうして誕生した!?

http://www.youtube.com/watch?v=7zSp-cCJ_GM
Bud Light、秘密の冷蔵庫は魔法の冷蔵庫


世界のワールドカップCM集

Nike  Youtubeにワールドカップのハイライト映像がどのくらいアップロードされているのかチェックしようとしたいたところ、世界各地のワールドカップ関連のCMがいくつもアップロードされていることを発見し、思わず見入ってしまった。

 で、これがリンク集。私の一番のお気に入りはドイツのCM。なぜ面白いのかは見てのお楽しみ。放送禁止になったNikeの広告もなかなか。たぶん良い子がまねしないように禁止にしたのだろう。

韓国 KBSテレビ
中国?(台湾だったらごめんなさい) Victory
米国 Nike (たぶん4年前のもの)
米国 Nike  (98年のワールドカップもの)
米国? Nike (放送禁止になったらしい)
イギリス コカコーラ(これはCMの撮影風景)
米国 Adidas (今放映中)
ドイツ? 笑える
イタリア? コカコーラ 


JavaWorld Day 2006での講演に向けて、AJAXに関する質問募集

Javaday 一つ前のエントリーで、AJAXに関する執筆の話を書いたばかりだが、来週は東京でAJAXに関しての講演をすることになっているので、お知らせしておく。Javaworld Day 2006というJava開発者向けのイベントでセッションの一つを担当するのだ。

http://www.javaworld.jp/jwday/session/index.html

 内容としては、「AJAXの本質、『非同期メッセージアプリケーション』のススメ」に書いてあることをさらっと説明した上で、「Google OSを妄想すると未来が見えてくる」「Google OfficeがMicrosoftに勝てる理由」などのエントリーで展開している、ビジネスモデルの移り変わりについて話そうと考えている。

 できるだけインタラクティブにやりたいと考えているが、当日、セッションに来ている人たちから活発な質問が来るかどうか、やや心配である(参照:恋のブックマーク)。

 そこで、この場を借りて読者の方々にお願いしたいのだが、AJAXに関する質問をコメント欄などで私に向かって投げかけていただけないだろうか。観客からの質問が途切れた時に、「ブログの読者からはこんな質問が来ていました」と、話のネタとして使わせていただきたいのだ。もちろん、いただいた質問に対しては、講演で使おうと使うまいと、後日このブログを通じて何らかの返答はするつもりだ。

 ちなみに、こんなことをお願いするのには「ブログと講演をリンクさせてみるとどうなるのか」という実験の意味合いもある。ブログを読んでから講演に来る人もいるだろうし、講演を見てから初めてこのブログを訪れる人もいるだろう。講演には参加しないが、このブログを通じて質疑応答の形で参加していただける人もいるだろう。そんな人たちとのコミュニケーションを通じて、ブログの新たな活用のしかたが発見できればもう獣儲けものである。


Web2.0 キーワードブック、共同執筆

 少し前書いた「AJAXの本質、『非同期メッセージ型ウェブ・アプリケーション』のススメ」は、このブログの人気エントリーの一つだが、あれを書いて以来、AJAXに関する執筆や講演の依頼がいくつも寄せられている。本業もあるので、全ての依頼を受けられるわけでもないが、受けたものの一つが、翔泳社の「Web2.0キーワードブック(7月5日発売、アマゾンは既に予約販売を開始)」の共同執筆。

 各執筆者がWeb2.0関連のキーワードを一つづつ担当し、それぞれのキーワードを切り口として最近のウェブ・サービス・ビジネスの動向を語る、という面白い企画だ。私自身、まだ出来上がったものを手にしていないので私のセクション以外にどんなことが書いてあるかは知らないが、執筆者の面子を見る限りかなり楽しめそうだ。

 私の担当はAJAX。「使い勝手の改善がソフトウェアを変える」というサブタイトルで、AJAXの技術面よりも、なぜ今AJAXが注目されているか、だとか、Microsoftに代表されるソフトウェアビジネスへの影響など、を書いてみた。

 私のセクションの小見出しは以下の通り。

・AJAXの定義
・なぜAJAXなのか―Google Mapの功績
・「リッチクライアント対シンクライアントの戦い」第二幕
・根本的に変わるアプリケーションの作り方
・ビジネスへのインパクト
・AJAXはパソコンだけのものか
・AJAXのもたらす未来
・使い勝手を良くすることがなぜそれほど重要なのか?

 前半でAJAXに関する一般論を展開した上で、後半はUIEのビジョンやUIEngineの話を織り交ぜながら(しっかりと会社の宣伝をし^^)、親会社(スクエニ)の将来のビジネスモデルに関してもサラッと触れた上で、最後にユーザー・エクスペリエンスの重要性を強調する、るという味付けに仕上げてみた。 


ジミー大西は世界に通じるコメディアン

Jimmy 会社の昼休みに、となりのブース(アメリカ人)からバカ笑いが聞こえる。何をしているのかと除くと、なにやら面白いビデオをインターネットに見つけたらしい。リンクを送ってもらうと、なんと日本のお笑い番組の違法コピーである。

http://www.break.com/index/dontyoulaugh.html

 英語の字幕もないし、ろくな説明も付いていないのだが、ジミー大西の天然ボケのおかしさはアメリカ人にもそのまま通じるようだ。パフィーに続いてジミー大西がアメリカで大ブレイクする日も近い?!

 ちなみに、これはYouTubeではなくbreak.com。この手のコンテンツの違法コピーはとどまるところを知らなくなって来た感がある。Winnyのようなものでコンテンツの複製に協力するのにはさすがに罪悪感を感じるが、この手のストリーミングものを見るだけなら抵抗感がない、と感じているのは私だけはないようだ。

 こうやって雑草のように増え続ける海外のCGMサイトに、日本の放送局がいちいち英語や中国語でクレームをつけなければならないという状況が長続きするとは思えない。「じゃあ、落としどころはどこにあるんだ」と言われても困るのだが…。このエントリーで私がしているように「明らかに違法コピーと思えるコンテンツのリンクをブログに張ること」すらけしからんと主張する人たちの気持ちも分かるし、私も「たてまえ」上そう主張すべき立場にはあるのだが、「本音」の部分では大半の人はもうこの動きは止められないと感じているし、歓迎すらしているのではないだろうか。インターネット以前に作られた著作権法。そして、その法律に守られたコンテンツビジネス。社会のインフラがこれほどの変化を遂げつつある今、法律やビジネスモデルそのものを見直すべき時が近づいているのかもしれない。


正解は一つとは限らない―だから面白い

060610_025953  昨日の「ミネラルウォーターの謎、謎解き編」で宿題として出した「線分重なり判定問題」だが、さまざまな答えをいただいた。単なる「生姜焼き定食」でも料理人によってさまざまな調理方法があるのと同じで、こんなに単純な問題にも何通りも解答方法があるところが楽しくてしかたがない。

 実際の社会では、複数の正解が存在するケースが多々あるのに、今の日本の教育システムは、一つの問題には正解が一つしかないという前提で作られている様に思えてしかたがない。もっと、一つの答えが見つかっただけで満足しない探求心の深さだとか、他人がたどり着いた自分と異なる解答にきちんと耳を傾ける謙虚さ、みたいなものを身につける機会を子供達に与えるべきではないかと思う。

 その意味でも、こうやってたくさんの人からそれぞれの個性にあふれた解答を集めるだけで、私自身にとっても、とても良い勉強になる。自分と違うものの見方をする人、私が想定もしていなかった解き方を見つけてしまう人。こんなに楽しいのなら、一度は教職についてみるのも悪くないと思ってしまう今日このごろである。

 さて、ここで宿題の正解の発表だが、集まった解答の中から合格点を与えるに値するパターンを三つ見つけることができたので、それぞれ紹介する。

【正解例1】

 図は省略させていただくが、線分AとBの関係を図に描いてみると6通りある。そのうち4通りが重なるケースで、2通りが重ならないケースである。重なるケースを式にしてみるとかなり複雑になってしまうので、重ならないケースを式にして、それを反転させる。

重ならない条件は、

  A1<B0 or B1<A0

重なる条件は、その反対なので、

  not(A1<B0 or B1<A0)

これを簡略化すると、

  A1>=B0 and B1>=A0

となる。

 これが最も一般的な解き方。ある条件が成立するかどうかをチェックする条件式を作る場合に、成立しない条件の方が簡単であれば、それを求めて反転する、というテクニックは実際にプログラムを書いているとけっこう良く使う。

【正解例2】

 それぞれの線分を正弦として含む円を書く。その二つの円が接するか交わっていれば、二つの線分は重なる。線分A、線分Bの中心はそれぞれ、

  (A0+A1)/2、(B0+B1)/2

である。それぞれの半径は、

  (A1-A0)/2、(B1-B0)/2

となるので、その二つの円が接するか交わる条件は、二つの円の中心の距離がそれぞれの半径の合計と同じか小さいときである。すなわち、

  |(A0+A1)/2 - (B0+B1)/2)| <= (A1-A0)/2 + (B1-B0)/2

となる(|...|は絶対値の意味)。各項を2倍しても大小関係に変化はないので、

  |(A0+A1) - (B0+B1)| <= (A1-A0) + (B1-B0)

となる。

 二人ほどこの解法で答えを出してきたが、こんな答えを出してくる人は、一般的な解法を知った上で、「常識的な方法だけに囚われず、あえて他人とは違う方法も考えてみる」ことを習慣にしているタイプではないかと思う。とても良い習慣だ。

【正解例3】

 図は省略するが、A0→B1をベクトルV、A1->B0をベクトルWとした時に、VとWの向きが同じであれば重なっていない、異なっていれば重なっている、どちらかが0であれば接していることに注目する。

 直線上の二つのベクトルの方向が一致しているかどうかは、内積の正負で判別できるので、ベクトルの方向が異なる(どちらか一方、もしくは両方が0である場合も含む)条件は、

 (A0-B1)(A1-B0)<=0

で表せ、すなわちこれが二つの線分が少なくとも一点で重なる条件となる。

 この解法を提示してきた人が二人いるが、ベクトルの概念を持ち出したところが鋭い。この二つのベクトルの方向が一致するかどうかで、二つの線分が重なっているかどうかを判断できるというところに気づいた点は高く評価できる。ただし、それが誰にでも直感的に分かりやすいか、というと必ずしもそうではない点がやや難点ではある。

 ちなみに、この様に三つの解法を用いて、

  A1>=B0 and B1>=A0 … *1
  |(A0+A1) - (B0+B1)| <= (A1-A0) + (B1-B0) … *2
  (A0-B1)(A1-B0)<=0  … *3

と三つの異なる答が導かれたわけだが、ここで「解法が複数あることは分かるが、どうして同じ問題に三つの異なる答があるのだろう?」と疑問を持たれる方もいると思う。もっともである。

 実は、この三つの式、全く同じ条件を別の形で表現しただけのものなのである。この問題をきちんと理解していれば、*1を*3に、*2を*3に変換することはそれほど難しくない。これもまた、中学生卒業レベルの数学で可能なので、腕に自身のある人はぜひともチャレンジして欲しい。 


ミネラルウォーターの謎、謎解き編

Tsu  昨日のエントリー「ミネラルウォーターの謎」、答えは「すぐに私が飲んでいる水だと分かるように色をつけた」である。

 ヒントは問題の「私の家では、『ミネラルウォーターをたくさん飲む』という健康法が流行っている」という部分にある。つまり、私以外にも同じようにミネラルウォーターを飲んでいる人たち(妻と子供)がいるのである。

 『ミネラルウォーターをたくさん飲む』とはいっても、一度にはたくさん飲めないので、家族全員がそれぞれペットボトルを抱えてそこから直接ちびちびと飲むことになる。するとだらしない私とか息子とかは飲みかけのペットボトルをパソコンの横だとか、テレビの前だとかに置いたままどこかへ行ってしまうことがしょっちゅうあるのだ。そんなことをしていると、置いてあるペットボトルを見ても自分のものかどうかすぐに分からなくなってしまい、誰かのを飲んでしまったり、すでに飲みかけのボトルがあるのにもう一本空けてしまったりするのだ。

 ペットボトルのラベルに名前を書いておくという方法もあるが、書きにくいし、分かりにくい。それならいっそのこと「色のつく何か」を混ぜておけばよかろうと白羽の矢を立てたのが、一度だけゼリーを作る時に使ったまま何年間も放置されていたペパーミント(リキュール酒)である。

 ペパーミントの色はとても強いので、数滴まぜただけで十分に色がつく。こうすることにより、「緑色の水の入ったペットボトルは私の」ということが私自身にも家族にも一目で分かるようになったのである。「ミネラルウォーターに混ぜて飲むのなら摂取するのが目的であるはず」という常識に囚われている限りこの答えにはたどりつけない。

そこで、またまたもう一問、今度はプログラマーになりたい人向きの頭の柔軟体操。

【問題】ある直線上に線分AとBがあります。線分Aの両端の座標はそれぞれA0とA1(ただしA0<A1)、線分Bの端の座標はそれぞれB0とB1(ただしB0<B1)とします。そのとき、線分Aと線分Bが一部でも重なる(一点だけで接している場合も重なっているとみなす)ための条件を出来るだけ簡単な式で書いてください。式は純粋な数式でも良いし、プログラム言語の一つを使ってもOK。

 「式を書け」と言われてもとまどってしまう人もいるだろうから、簡単な例題とその解答例を書いておく。

【簡単な例題】ある直線上に線分Aと点Pがあります。線分Aの両端の座標はそれぞれA0とA1(ただしA0<A1)、点Pの座標はP0とします。そのとき、点Pが線分Aの上にある(PがAのどちらかの端点にある場合も含む)ための条件を出来るだけ簡単な式で書いてください。
【解答例】
例1.(A0<=P0 && P0<=A1)
  例2.(A0<=P0 and P0<=A1)
    例3.P0はA0以上でA1以下

 大切なことは「出来るだけ簡単な式で書く」という部分。妙に複雑になり始めたら「何かおかしい」と思った方が良いかも知れない。

【追記】 この手のエントリーが増えてきたので、「頭の柔軟体操」として独立したカテゴリーに。「ビルゲイツの面接試験シリーズ」4部作もこちらに移した。一気に読む場合は、下から上に読まないと、先に解答を見ることになってしまうので注意。


英語うんちく ― 米国はイラクに正義をお届け?!

Bush 今朝のニュースのトップは、アルカイダ幹部のザルカウィの殺害のニュース。ブッシュの記者会見が放映されていたが、そこでの言葉がここでの「英語うんちく」に最適なので引用。こんな感じだ。

 Last night, the Special Operation Forces delivered justice to the most wanted in Iraq.

 そのまま直訳すると、「昨夜特殊部隊が、イラクで最も望まれている人に正義を届けた」なってしまってわけが分からない。"wanted" という単語は西部劇やピンクレディーの歌(古い!)にも出てくるので、「お尋ね者」のことだとは分かる人も多いとは思うが、問題は "deliver justice" の部分である。

 辞書を引くと justice の訳語としてまずは、正義、公正、公平、などの単語が並んでいるがどう考えてもそれは「届ける」ものではない。しかし、注意深く見れば、当然の応報、処罰、などの訳語も並んでおり、そのあたりから大体の意味はつかめると思う。つまり、"deliver justice"は「正義の鉄拳を振るう」もしくは「天罰を下す」という意味の言い回しなのである。

 ブッシュがこんな仰々しい言葉を使うのには理由がある。そこには、「米国は世界の警察であり裁判官であり、イラクへの軍の派遣は決して間違いではなかったし、無駄ではなかった」というメッセージが強く込められているのである。

 長引くイラク戦争と高騰する原油価格で、ブッシュの支持率は下がる一方であった。そもそもイラクに戦争を仕掛けた一番の理由であったはずの「大量破壊兵器」を見つけることもできなかったし、相変わらず自爆テロの続くイラクから軍を撤退することも出来ないし、ブッシュ政権としては、この状態を好転させる何かがぜひとも必要だったのである。

 そこにこの空爆の成功。ブッシュの取り巻きたちは、これを機会に米国が「世界の警察官」であることを世界に誇示するとともに、米国国民からの支持率アップに繋げたいと狙っているに違いない。

 ちなみに、米国のマスコミもこの手のニュースは好意的に報道する。「空爆などせずに逮捕して、裁判にかけるべきだったんじゃないの?」などと野暮なことを言っても視聴率は稼げないところがこの国の国民性を良く表している。愛国心教育が大問題になってしまう日本とは大違いだ。