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社員向け必読図書、UIEの場合

対称性の大切さをトイレットペーパーに学ぶ

060621_053316  以前にも書いたことがあると思うが、私は「商品の『能書き』を読むこと」が妙に好きである。コーンフレークを食べながらついついそのパッケージに書いてある文字を隅から隅まで読んでしまったり、お風呂につかりながら入浴剤の成分を確認したり、という毎日を送っている私だが、色々と発見もあるし勉強にもなる。

 先日も、宿泊先の旅館のトイレにおいてあったトイレットペーパーの『能書き』を読んでいたのだが、あまりにもツッコミどころが多いので、感動して写真を撮ってきた(トイレの中で「ピロリーン」という音を立てていたのは私である)。

 何と言っても「対称性」が思いっきり壊れている点がすごい。何かを箇条書きにしたり、アイコンやボタンを並べたり、APIを決める際には、対称性を強く意識することが大切であることは周知のことであるが(「ノンデザイナーズ・デザインブック」に丁寧に説明してある)、この『能書き』は絶好の反面教師だ。

 まず、1だけに「当紙は」という主語が入っているのが許せない。1~5すべてがこのトイレットペーパーの特徴を述べているのだから、主語を入れるなら全てに入れるべきで、省略するのであればすべてから省略すべきである。

 次に、1と4だけが「です・ます」調の文になっているのがいけない。「…がよい」という形容詞で終わる文と「…には快適」という「体言止め」を混ぜるのはかまわないが、そこに「です・ます」調の文を混ぜてはいけない。

 後、他が特徴だけを述べているのに、5だけが特徴を述べた上で「…ので水洗便所の御使用には快適」と議論を展開しているのがまずい。議論を展開するのなら全てでする、そうでないなら一切しないようにする必要がある。

 この他にも、「クレープ」という意味の分からない専門用語(たぶん人口的につけたシワのこと)を使っている点、便器がつまらないことを「快適」と呼んでいる点、「当紙」という意味は分かるが聞きなれない言葉を使ってる点など、よくもこれだけの小さなスペースにツッコミどころを用意してくれたものだ。これだから『能書き読み』はやめられない。

【追記】せっかくなので、模範解答を示しておく。

本製品の特徴
1.純白で衛生的
2.やわらかな肌触り
3.細かなクレープ(紙のシワ)
4.特にすぐれた吸水性
5.水に溶けやすい

Comments

通りすがり

対象性?

satoshi

誤字でした。対称性です。ご指摘ありがとうございます。

imsut

> 1と3だけが「です・ます」調の文になっているのがいけない。

「1と4」でしょうか?

imsut

あ、感想書き忘れました。

大変おもしろいエントリーでした。
僕もこの手の「心の中でつっこみ」はよくありますが、
blogに書くほど強くつっこんでいません・・・ (^^;

もっと注意深く(?)生きてみます。

Fujiwo

とても面白い観点で楽しめました。
# どうでも良いことかも知れませんけれど:
# 「本製品の特徴」→「本製品の特長」の方がより模範的ではないでしょうか > 模範解答。

akion

「特長」だと「優れている」という意味になり、その根拠を具体的に示すことができない場合に虚偽表現とされるので、通常は「特徴」とするのが無難、と某社の社内基準ではされています。

3によって2が実現されているのだと思うし、吸水性に優れた紙が水によって分解される境界線がどうも微妙な気がするし、なんだか原文が英語で、日本語を習った事がある人が訳したみたいな感じのする能書きですね。

satoshi

>「1と4」でしょうか?

ご指摘ありがとうございます。修正しました。

methane

「特に」がリズムを崩している気がします。
もし吸水性が一番のウリということで「特に」なのであれば、最後に持って行った方が
リズムが良いのでは。

KOTARO

だいたい純白なのと、衛生的なのも関係ないですよね。イメージの話なのでしょうか。

するどい指摘、たのしませてもらいました。

Maki

Satoshiさん、自分も文章を書くときに「対照性」の大切さを実感しています。また、よい文章は「リズム」を大切にしています。次の文章は夏目漱石の『草枕』の冒頭部分です。読んでいると、『心地よさ』を覚えます・・・。
『山路(やまみち)を登りながら、かう考えた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。
住みにくさが高じると、安いところへ引き越したくなる。
どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れて、画が出来る』。

x31hook

僕も能書きを読むのが大好きです。何か書いてあるととりあえず全部読まないと気がすまないのです。
常体と敬体の混在というのは結構よく見るのですが気になりますね。

つぶやき

このトイレットペーパーがスーパーに並んで、それを購買者が手にとって読むのなら
対象性が必要ですね。
この商品のこの文言は、予備のトイレットペーパーを限定された空間で
読む人の楽しみと考えれば、ぴったりニーズに合ってますね。

Shu Matsuura

米国ではTV CMや大型量販店の広告で、「PC or Mac」というのを見聞きします。
「Windows or Mac (OS)」なら分かるのですが、これも対称性が崩れている様な。
ところが、この"PC"ですが、WikipediaによるとApple II発売時に普及したそうです。
PC博士の中島さんとしては、どうお考えなんでしょうか。

satoshi

PC博士ではありませんが...^^;
最近は PC=Windows PC、Mac!=PC という意味に変化しているように思えます。その意味では、「PC or Mac」で意味は通じるんですね。

waku=waku

おもしろいですね。ぼくの場合、営業職の立場から、まず最初に、ここに特徴(または特長)を記載する目的は何かから考えてみました。
目的=「お店で商品を選んでいる人やこのトイレで本商品を使う人に特長を訴求すること」によって、「本商品の売上をアップ」させること、とします。

その目的からすると、多少文体がおかしくても、特長とそれによる“ユーザのメリット”を、“わかりやすく”記載すべきと思います。ただ、この例の文体のおかしさは度を超してますけど・・・

“ユーザのメリットを書く”、というのがマーケティングの基本です。 例えば、折りたたみの健康チェアのカタログを作るような場合に、
・ 折りたためます
・ シックなグレーです
というのでは50点。
・ 折りたたみ式のため、使用後は部屋を広く使えます。
・ シックなグレーなので、たいていのお部屋にフィットします。
で80点だと思います。

次に、“わかりやすく”。 わからない言葉(クレープ)はダメ。そして本商品に5つは多すぎます。3つぐらいに絞らないと心に残りません。
というわけで:
1. 紙のきめが細かく、心地よいやわらかな肌ざわり
2. 吸水力が高く、快適さバツグンです
3. 水に溶けやすいので水洗トイレにも最適

ぐらいが良いのではないでしょうか。
2のみ「です」と終わっているのが気になりますが、訴求ターゲットを考慮して変化させればよいでしょう。 ターゲットが一般企業の提案書にはここでの「です」は不要です。また、「バツグン」というくだけた語が良いかも臨機応変に考慮すべき。本商品の場合は一般主婦をターゲットとし、口語に近い「です」も「バツグン」も良いと考えました。
なお純白というのは特長なのか疑問ですし、衛生的なのは当たり前なので削除しました。

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