スパムメールに関する一考察
YouTubeが違法なら、ソシアル・ハードディスク・レコーダではどうだろう

YouTubeを使ったテレビ番組の「一部引用」の合法性に関する意見募集

 CNetのブログに、「YouTubeを使ったテレビ番組の『引用』の合法性に関する一考察」というエントリーを書いたので、まずはそれを読んでいただきたい。ここ数週間ばかり、私なりに「なぜSequoiaのような一流どころのVCがYouTubeに資金を提供したのだろうか」、「一見お金を垂れ流しているようにしか見えないYouTubeの本当の狙いはどこにあるのだろうか」と考えて来た結果、やっと少し「著作権法との関係の落としどころ」のようなものが見えて来たような気がするので、それを自分なりにまとめて書いてみたのだ。

 結局のところ、「テレビ番組の一部を『個人的体験の共有』のためにアップロードすることぐらい許容範囲」と多くの人が思うようになるのか(もしくは、既になりつつあるのか)が鍵である。CNetのエントリーに書いたように、人々の常識や良識が変化した時には、法律の方を変更すべきだ、というのが私の考え方である。当然、現行の法律にのっとってビジネスを営んでいる人たちは急激な変化を嫌うが、同時にそれをビジネスチャンスと見て、新しい形のビジネスを生み出そうとする人たちが現れるのも資本主義ならではの面白さである。

 そこで質問である。テレビ番組の一部をYouTubeに上げてそれに関しての自分の意見を表明することは、ブログに新聞の記事の一部を引用して自分の意見を表明するのと同じように許されるべきなのだろうか。ただし、現行の著作権に照らして合法かどうか、という質問ではないので誤解しないでいただきたい。あくまで、「良識的に見て許容範囲かどうか」という質問である。

(注)このビデオクリップは2006年4月に放送されたNHK教育の人気番組「おかあさんといっしょ」の一部を抜き出したもの。

 サンプルとして、CNetの記事でも引用した「スプー事件」のYouTubeビデオを上に貼り付けておくので、これも参照していただきたい(真ん中の矢印をクリックするとビデオを見ることができる)。この様に、テレビ番組の一部をテレビ局の許可なくYouTubeにアップロードして、ブログなどで意見を述べることを、(必要であれば法律を変更してでも)許容範囲として認めるべきだろうか、という質問である。

 コメント欄、ソシアルブックマーク、トラックバックなどを利用してぜひとも意見を表明していただきたい。賛成意見、反対意見、どちらも大歓迎である。

【追伸】 読者の方からご指摘をいただいたので、初期のエントリーに二つの変更を加えた。(1)embedタグの外側にblockquoteタグを付けた(ネット上で引用をする場合の礼儀だそうである)。(2)どの番組のビデオクリップであるかを明確にした(ただし4月の何日に放送されたものかは不明)。

Comments

miwamilieu

いつも楽しく読ませてもらってまーす。
私は絵を描いたり、文章を書いています。

ネット上で、簡単に画像や動画をやりとりできる時代になりましたね。

このような時代には、さらに本物のよさ、現実・ライブといったものが大切になるのではないでしょうか。

たとえば、私の絵をホームページからコピーして楽しんだり、お友達に紹介することは、全く自由です。

でも、ネット上の画像と、本物の絵は違うのです。全く違います。
私は、もっと多くの人が本物の絵のすばらしさに気づいてほしいと願って活動しています。

そして、中島さんのお仕事も、こういったネット上の文章もいいですが、きっと現実の講演や会合などで話されたり、いろんな活動を続けることに価値があるのではないでしょうか?

私は、YouTubeとは、目で見る口コミ情報だと思います。
口コミって、とっても力がありますものね。
そして、口コミには規制はかけられないと思うのです。

wakufactory

いつも「なるほど!」と思いながら読ませていただいています。

この件ですが、YouTubeが「引用」として正しく機能するならは、十分許容だと思います。
「引用」として正しいというための条件は、
・出展元が明記されている
・全体ではなくて(言及に必要な最低限度の)部分である
ということです。
さらにYouTubeから、引用の根拠となる言及を辿れることも必要かもしれません。

TV番組に関して放送法がどうだかよく分かりませんが、一般に広く公開しているものである以上、それに言及して個人体験を共有することは、視聴者の権利ではないかと思います。

また対象が映像作品などの場合、これが守られるのであれば、著作権者にとって不利益どころか、その作品のプロモーションとして十分に機能してくれるはずです。

kuippa

引用については日本の著作権法に対して考える限り適切な引用の範囲ではないと思いますが、それでも好意的に解釈しようとするならば……


1.著作権侵害をしているのは著作物をアップロードした人物のみ。

2.アップロードした人物はYouTubeのmyページやブログなどでアップロードしたものが従属物になる状態で適切に引用しているものとする。

3.YouTubeはその引用目的のクリップをアップロードする場所を提供し、クリップ単体でアクセスできるようにIndex、List化したもの。


現状では2番でそのクリップが従属物となる状態で運用されているとは言いがたいですが、適切に出典が明らかにされ、クリップが従属物に収まる程度のアップロードであれば文化育成的には寛容に対応すべきYouTubeの出現だと思っています。
法律レベルで対応するのであれば、ネット上にメディア図書館を政令で定めて設置すればいいのにとか…思ったりもします。

spooooo

議論は大変結構なことだと思います。
しかし、あなたはYou Tubeを使ったこのエントリーで、二人の人物の肖像権を侵害し、著作権の侵害行為に荷担しておられます。
UIEvolution Inc. CEOたる中島聡様ご自身や会社のコンプライアンスに対する意識自身が問われる結果になっていると思います。

ポジティブ

↑よく見かける上記のようなコメントを見るにつけ思いますが、
いつか架空請求詐欺の延長線上で著作権料の架空請求詐欺のような恐喝的な犯罪が起きてくると思います。個人だけでなく企業も対象にしてくるでしょうね。
立法が動くとしたら、それまで待たなければならないでしょう。

ポジティブ

↑よく見かける上記のようなコメントを見るにつけ思いますが、
いつか架空請求詐欺の延長線上で著作権料の架空請求詐欺のような恐喝的な犯罪が起きてくると思います。個人だけでなく企業も対象にしてくるでしょうね。
立法が動くとしたら、それまで待たなければならないでしょう。

okbo

映像の著作権、肖像権の概念がかわっていくとしても、
・引用者の営利活動に大きく寄与がなされる引用形態
 (PVでフィーを稼ぐblogのPVアップ目的の映像引用など)
・その映像によって利益を享受する利権者の権利侵害となるもの
 (映画やTV番組の全引用など)
はNGだと思います。

逆にいえば、「引用」とはその行為自体が引用者に直接の利益を生み出さないものであれば認められてもよいのかと思います。

shiro

映像コンテンツが文章よりもややこしいのは、直接の権利者(TV番組ならTV局)だからといって何でもできるわけではないところにあると思います。例えば出演者との契約で二次使用が認められていないとか、そうでなくても当初の契約外の形式での配布には二次使用料の支払いが絡んできますし。そこがクリアにならない限り、TV局側は「引用OK」と言いたくても言えないわけです。

もっとも、「映像の一部引用は正当な批評活動の一環」というコンセンサスが広く出来てしまえば、契約の方もいずれはそれを許容するように変化するだろうとは思います。(例えば米国の俳優組合SAGやAFTRAは昨年、インタラクティブメディアに関しては出演保証料の引き上げるかわりに二次使用料(residual)を請求しないということで合意しました)。

もうひとつ、映像の作成技術に関する論文などでは、その技術を使った実際のコンテンツを例として見せることが非常に効果的な場合があります。しかしこれも今までは、たとえカンファレンスの発表時にクリップを流すことが許可されても、予稿集などのメディアに収録して配布することは難しいケースがほとんどでした。ブログにクリップを貼り付ける形が引用として認められるならば、このようなケースも引用として認められるべきでしょうか。線を引くのは難しそうですが…

田中大介

音楽業界には『試聴』という概念があります。これは45秒以内であれば著作権の適用外にするという制度です。

http://www.jasrac.or.jp/network/contents/downdoc.html#shicho

テレビは『放送』であり、音楽とは適用される法律が違うかもしれませんが、『あちら側』と『こちら側』の共存を目指す上で参考になるかと思います。

条件付で賛成

YouTubeにおけるその手のコンテンツに対して、中島氏なりの問題提起、素晴らしいことだと思います。

論点を、ブログにおけるYouTubeからの動画の引用に絞って考えますが、一つのソリューションとして、「引用」と言う概念の適用は「なるほど」と、思いました。しかし、YouTubeの性質上、実際の所どうでしょう。
ブログでの引用自体は、自身の意見等が主となり動画は従で問題無いように思われますが、実際はYouTubeサイト上でも閲覧できてしまうので、その動画をアップロードした人はこの点に対して「引用」の適用に問題があるように感じます。

例えば、「YouTube上ではその動画はプライベートの指定をして閲覧できないようにし、個人のブログに動画を埋め込みそちらにおいてのみ閲覧可能にする。」でしたら、より中島氏の引用の概念が反映され、問題無いように思われます。
ただ、この場合やはりアップロードした人だけが対象になってしまいますね。

この問題に関して日本ではネガティブな意見も多いですが、個人的には、権利保持者と一般視聴者、共に繁栄できる法改正なり新しい解決方法なりが、中島氏の案以外にも現れてくれればと思っています。

Ken

>田中大介さん、
とても意味のある示唆であると思いました。

Jasracのページを見ると、その試聴の届け出を請求しているのはJasracであり、試聴のルールの線引きをしているのはJasracですね。
ここで重要なポイントは、あくまでボールを持っており、大勢をコントロールしているのはコンテンツホルダ側である、ということです。我々大衆ではありません。
私は上のブログトラックバックで、
http://fxsystemtrader.cocolog-nifty.com/blog/2006/07/youtube_33fc.html
著作権法というのは、あくまであちら側のための法律であり、こちら側のためにあるのではなく、進化圧というのは現象として存在するが、それによって動く動かないというのをタイミングも含めて決定するのは、コンテンツホルダ側のさじ加減ひとつであり、いくら大衆の意識が変化して「常識」が変わったといっても、対するコンテンツホルダ側がNOと言っているのだから、コンテンツホルダvs大衆という図式において、そこにすり合わせのスイートスポットの位置の変化というのは生まれない。いずれは相手側が動かざるを得ない、それが進化圧なのであるが、今はまだ踏みとどまっている、そういう状況であるというようなことを述べました。
こうやってブログの議論などで、「我々大衆は変化を望んでいるよ」とシグナルを発するのもひとつの進化圧になるのでしょうが、基本的には片方の論理だけでワイワイやっても向こうが業界内の利権の構造を整理してちゃんと動き出すまで待つしかないということになります。少なくとも「良識の範囲内である」と「こちら側の個人的な感想」を述べたところで事態は変わらないでしょう。拙速に著作権法の解釈でなんとかしようというのは、まず無理でしょうね。

音楽の試聴という仕組みの延長で動画の延長という解法「ルール」が「あちら側から」提示されるのであれば、それはおそらく長めのCMがおさまる120秒とかになると想像します。いまのYoutube10分というのは、TVプログラムのひとつのコーナーがすっぽり収まる長さであり、業界側からは長いということで受け入れられないと思います。

ポジティブ

↑JASRACは業界団体ではありませんよ。あくまで、音楽著作権者と音楽使用者の間の公正・中立な調整機関です。建前は。実際のところ、JASRACが行政機関と同視されてしまうほど柔軟性に欠け、業界団体の代表のように思われるようなことをJASRAC自身は特に否定しないとしても、その建前は変わっていないはずです。
結局、法律の問題である以上、ユーザーの声を反映させるには政治参加しかないと思います。北欧(スウェーデンだったかな)著作権廃止を唱える政党が国政の議席を獲得し、実際に影響を与えているている例もあるそうなので。

Ken

↑はい、承知しています。
Wikiだけでもかなりのことがわかりますが、実際のところjasracは独占的にライセンスをコントロールする機関であり、大衆サイドよりも体制サイドの存在であることは明らかです。そもそも中島さんの設問自体、建前の話をしているのではありませんね?

bn2islander

JASRACは権利者の団体だと思います。JASRACの会員は、作詞家、作曲家、編曲家、そして音楽出版社であり、著作権保持者が会員となっています。また、権利者から著作権を預かり、運用する団体だと言うことが、委託契約を見れば分かります。

音楽業界の代表ではありませんが、音楽に関する著作権保持者の利害を代表する団体だと言うことは明白です。

逆に、権利者と使用者の間の調整機関と言うのは、どこから出てきた話なのでしょうか。

通りすがりの箇条書き

1)法律は現行の「引用」の条件を満たすのであれば、それが映像であることは問題にしていません。ですから現行で「引用」の形態を満たせば良いのであって、「引用」とする限りにおいて、現行の法律の引用判断に何か問題あるとは思いません。合法性云々においては、既に「映像であろうと正しい引用である限り合法」です。
2)立法論と解釈論をごっちゃにして、「サンプルとして」と YouTube から映像を引っ張ってくることは「引用」と解釈するには苦しいです。“今現在において”、実際に映像を持ってくるには、“今現在においての著作権法”の範囲内に従う(解釈論)べきであって、「こういう形が良いのではないか(立法論)」で良いとしたいから行うのは間違っています。
3)引用とは言ってもYouTube へ「リンク」を貼っているだけだから問題ない、と言う屁理屈を考える人が居るかもしれません。そういう人はフレーム内リンクや FLMASK の事件を調べて、現行の著作権法がリンクをどう考えるかを調べてください。
4)「引用」は「二次使用」でありませんので、権利関係の処理は関係ありません。「引用」は権利者の権利制限の話です。引用したい人が勝手に行ってかまいません。
5)45秒が30秒でも、その曲が何かを判断できる限りは著作権法の対象です。その昔 JASRAC は「2小節でもアウト」としていた時がありました。
6)著作権は違法と罪の線引きに差があります。

SQ

引用という視点から、youTubeをみるというのは、私には新しく面白いと思いました。
これからの法律を変えていく上で議論の中心になりそうです。
しょうこお姉さんの残した絵が法律まで変えてしまうことになるのでしょうか。
これが、「破壊的イノベーション」なのでしょうか?

satoshi

>しょうこお姉さんの残した絵が法律まで変えてしまうことになるのでしょうか。
>これが、「破壊的イノベーション」なのでしょうか?

 「テレビ番組ってこんな形で後から共有したり引用できたりできるとこんなに楽しいんだ」ということをはっきりと教えてくれた、という意味ではYouTubeとそこに上げられたこの動画は、まさにイノベーションの起爆剤になっていると思います。そこにはっきりと「消費者のニーズ」を見ることもできるし、人々が「より多くの言論・表現の自由」を求める姿を見ることができます。

tr

cnet見ました。
>>優秀な弁護士であれば、現行法のままでもあの行為を『正当な範囲内の引用』と裁判所に認めさせることも不可能ではない、と私には思えるのだがどうだろうか。

言うだけじゃなくて、実行すればどうですか?
あなたが先頭に立って、裁判しましょうよ。

石原世界一

ニュースサイト(報道)なので引用時の著作権は、確か著作権の外にあるとおもわれ。

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