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Livedoor の「テレビ番組RSSフィード」で遊んでみた

Tvguide

 「新しいテレビの楽しみ方」にやたらと興味がある私としては、Livedoorが番組表のRSS配信サービスを始めて以来何か作りたくてしかたがなかったのだが、やっとプロトタイプを作る時間を見つけることができた。まずはその作品の発表から。

 「テレビ番組ガイド」(Javaのランタイムが必要)

 工夫した点は以下の4つ

1.上下左右キーだけで操作が可能
2.マニュアルを見なくとも使えるぐらい使い方が自明
3.非同期通信中でも操作が続行できる
4.携帯電話のように少ないメモリでもサクサク動く

 もちろんUIEngineを使っているので、携帯電話だけでなくさまざまなデバイスで動かすことが可能だ。

 ちなみに、サーバー側はPHP。Livedoorのサーバーから取得したRSSをXMLParserでパースし、PHP版のミニコンパイラでバイナリのレコードセットに変更してデバイスに返す、という仕組みだ。

 XMLParserの使い方が分からなくて半日ほど無駄にしてしまったが(ドキュメントが思いっきり不備--;)、それを含めて、のべ約二日でこのプロトタイプが完成。色々と勉強になったし、サンプルとしても提供できるし、何よりもプロトタイプ作りは楽しい。

 MySpaceとのケースでもそうだが、今まではパソコンでしかアクセスできなかったウェブ・サービスを、携帯電話やテレビなどさまざまなデバイスからアクセスしたい、というユーザーからの要求は高くなる一方だ。そんな時に、「ブラウザーじゃまともなユーザーインターフェイスを作るのは不可能に近いですよね。かと言って、JavaやC++でデバイスごとに作りこんでいてはコストがかかりすぎてビジネスにならない。UIEngineを使えばこんなものが簡単に実現できます。」と見せて歩く時に、こういったのプロトタイプが役に立つのだ。

Satoshi, the Chief Prototyping Officer


プロトタイプを重視するカルチャー

Ipod 最近、UIEJのメンバーの間で「うみがめ」というGoogleの「20%ルール」に相当するルール作りの話が盛り上がっている。ルール作りはおおいに結構なのだが、「なぜうみがめが必要か」というプリンシプル(相当する良い日本語がないが、あえて選ぶなら「筋」-詳しくは「プリンシプルのない日本」参照)を見失って「ルールのためのルール作り」に陥らないで欲しい、というのが私からのお願いである。

 そこで、今まで私がプロトタイプ作り、ベータ版サービスの重要性に関して言って来たことをまとめてみた。

1.UIEのような会社にとって何よりも大切なものは、賢くてクリエイティブな人。そんな人たちが働きたいと思うような、そして彼らがクリエイティビティを最大に発揮できるような環境を提供することが大切。

2.本当のイノベーションはごく少人数でおこすもの。一人とか二人とかのクリエイティブな人が、「こんなもの作りたい」という情熱を持って突き進んだ時だけにイノベーションは起こる。合議制からは決してイノベーションは起こらない。

3.そんな「情熱」を他の人に伝えるのに一番の方法はプロトタイプ。実際に手を動かして、その斬新なアイデアを「眼に見える形」に落とし込んでこそ、他の人に理解してもらえるし、本当の価値が見えてくる。

4.当然、プロトタイプを作ってみたらあまり役にたたないことが見えてくるケースなどもあるが、それもおおいに結構。「こんなものは役に立たない」という知識も会社にとっての貴重な財産。失敗を恐れて新しいものにチャレンジしなくなったり、失敗をすなおに認めない気持ちの方がよほど問題。

5.ユーザー指向のもの作りにおいては、実際にユーザーに使ってもらって、そこからの直接的・間接的フィードバックを受けながらものを作って行くことは不可欠。その意味では、プロトタイプや未完成のサービスをアルファ版、ベータ版としてウェブで公開するメリットはとても大きい。

 ちなみに、写真はiPod Linux上で動くUIEngine。正式なプロジェクトなどなかったのだが、一人のエンジニアが「作りたいから作ってしまった」ものだ。忙しい通常業務の合間に休日を利用して作ってくれたものだが、これから会社が成長して行っても、こういった行動を賞賛し奨励する会社であり続けたい、と思う私である。


ロスまで遊覧飛行!?

 「CTIA Wireless IT」に合わせた今回のロスへの出張。展示会場での写真をたくさん撮ろうとカメラを持って行ったのだが、家に帰って撮影した写真を見てみると、移動中の飛行機からの写真ばかり。これじゃあ、遊覧飛行にでも行ってきたみたいだ。まあ、たまにはこんなエントリーもよかろうかと…。

Blue_planetSky2_1Sky3_1Sky4_1


UIE、MySpaceと提携

Montana_sun 昨日のエントリーでも少し触れたMySpaceとの提携、正式なプレスリリースが出たので、今日はそれの紹介。

 UIEvolution to Develop a Mobile MySpace User Experience

 要約すればMySpaceがモバイル版のユーザー・エクスペリエンスの構築のパートナーとしてUIEvolutionを選んだ、ということだ。

 「これからはWeb2.0企業と組むべきだ」、「パートナーシップを組むならその業界のNo.1かNo.2と組まなきゃだめだ」と無謀なことばかり言う私にしっかりと答えてくれた社員たちにはひたすら感謝、感謝である。

 日本でも知られているとは思うが、MySpaceは、会員数7000万人、月刊ページビュー300億ページを誇るソシアル・ネットワーク・サービスの王者。メディア王マードックの率いるNews Corpが$580Million(約600億円強)という巨額を投じて買収したことを受けて、一時は「高すぎる買い物だ」と批判する声もあったが、そのページビューをテコにGoogleから$900Million(約1000億円)をせしめた営業手腕はさすがだ。

 「Pervasive User Experience」をビジョンとして掲げ、音楽や映像といったメディアコンテンツと同じく、友人や知り合いにも「いつでも、どこでも、どんなデバイスからでも」アクセス出来るべき、と考えているUIEとしては(「Edward Tufteに学ぶプレゼンのスキル」のVisionの図参照)、MySpaceとの提携は喜ばしい限りだ。

 さて、次はどんな無謀なことを言おうかな…と。


マイクロソフトにいた時の「作っていれば誰かが売ってくれる状態」がいかに恵まれた状況だったかを再認識してみる

Homepage 今週ロスで開催される「CTIA Wireless IT & Entertainment 2006」に会わせて、うちの会社(UIEvolution Inc.、略称UIE)のホームページもリニューアル。

 よりユーザー・エクスペリエンス(=おもてなし)を重視する企業であることを強調しつつ、柱となるビジネスであるソリューション事業に「UIEnable」という名前をつけて自社のポジショニングを明確にしようという試みだ。

 会社の経営のことなどなにも知らなかった私が、2000年の8月に設立したUIE。Googleには成長率でちょっと負けているけど(^^;)、6年間でここまで成長できたのは社員たちのおかげ。

 この6年間で一番学んだことは、作ったテクノロジーをビジネスに結びつけることの難しさ。マイクロソフトにいた時の、「作っていれば誰かが売ってくれる状態」がめったにないほど恵まれている特殊な状態だったことが身にしみて認識できた。

 ちなみに、ホームページにMySpaceとIMDB(映画情報を提供するアマゾンの子会社)のロゴがおいてあるが、これに関しては間もなく正式なプレスリリースを打つ予定なので、詳細はそちらにて。


焼き豚対決

 ピザストーンを使ったバーベキューグリルでの焼き鳥の成功(参照)に調子に乗った私が今度チャレンジすることにしたのが焼き豚。それも、タレの中で煮込む簡易焼き豚ではなく、タレに一昼夜漬け込んだ豚肉を遠赤外線でゆっくりと時間をかけて焼くという本格的な焼き豚だ。

 しかし、いそいそとタレに肉を漬け込む私を見た妻が、「それってオーブンで焼いた方がおいしんじゃない?」と言ったときから戦いは始まった。「いやいや、焼き鳥があれほどおいしく焼けるんだから、やはりバーベキューグリルだよ」と主張する私と妻の意見は平行線をたどり、結局、肉を二つに分けて、まったく同じレシピでどちらがおいしく焼けるかという「焼き豚対決」をすることになった。

 ただし、条件を出来るだけ同じにするため、オーブンの方もピザストーンと同じくセラミック製のLE CREUSETのBaking Dishの上にバーベキュー用の串を使って豚肉を吊るす形で焼くことにした。

Yakibuta1

 温度設定の出来るオーブンの方は350度F(約180度C)、バーベキューグリルは弱火で、どちらも約二時間、時々タレをハケでつけたり裏返したりしながらゆっくりと焼いて完成したのがこれ。

Yakibuta3Yakibuta2

 平らでキツネ色に焼けている方がバーベキューグリルで焼いた方、丸く縮んでいる方がオーブンで焼いた方、である。見た目ではバーベキューグリルで焼いた方がおいしそうだ。そこでさっそく試食(というか、これが今日の夕ご飯のおかず)。

Yakibuta4

 左がバーベキューグリルで焼いたもの、右がオーブンで焼いたものである。食べてみると、やはりバーベキューグリルで焼いた方が脂がのっている。しかし、オーブンで焼いた方も、脂は落ちているものの肉はとろける様に柔らかく、決して引けはとらない。

 「どっちもおいしいね。でも、どちらもおいしいなら手間がかからないオーブンの方がいいわね。」と早々と勝ちを宣言してしまう妻。言葉に詰まっている私に、「オーブンの方が光熱費もかからないし」と追い討ちをかける妻。「でも、バーベキューグリルだったら10枚ぐらい同時に焼けるし」と意味のない言い訳をする私。

 対決には負けてしまったが、おいしい焼き豚が食べられたので結果オーライ。残った焼き豚で明日はチャーシューメンだ!


ギークな会話、Sudoku編

Snail  数年前に同じ職場で働いていたソフトウェア・エンジニア二人が、パーティで久しぶりに出会い、昔話に花をさかせている。

「ところで、Sudokuって知ってる?」
「ああ、知ってるよ。シアトルタイムズにも連載しているしな。」
「僕はSudokuの大ファンなんだが、最近Sudokuの問題を自動生成するプログラムを作ったんだよ。」
「え、偶然だな。僕もSudokuのプログラムを作ったばかりなんだ。でも、僕のは問題を作る方じゃなくて、解く方だけど。」
「そりゃ、面白い。二人のプログラムを合わせれば…人は必要ないってことか。」
「本当だ。それで人はSudokuの問題を作る作業からも、解く作業からも開放されるんだね。」


最新鋭のプロペラ機 Q400 初体験

 下の子供がモンタナ州の全寮制の学校に行くことになったので、先月に引き続きモンタナ州へ。だだし、今度はドライブではなく飛行機で。Horizon Airという近距離専門の飛行機会社の飛行機で行ったのだが、近距離だけあって70人乗りぐらいの大きさのプロペラ機。「プロペラ機なんて、観光地の遊覧飛行以外で乗ったことがあっただろうか。揺れないといいな。」などと不安になりながら乗り込む。

 大げさなタラップも使わずに乗り込むので(写真参照)、まるでバスのようだが、以外意外に機内はきれいだしシートの座り心地も悪くない。席がプロペラの真横だったのでプルプルとうるさいのではないかと心配だったが、以外意外に静か―というよりも、ジェット機よりも全然静かだ。滑走路からの離陸も、普段乗りなれているジェット機と比べて滑走距離も短くあっさりと飛び立つ。

 わずか一時間半のフライトは妻と「数独対戦」(ちなみに、紙と鉛筆を使ったローテクなやつ)をしながら過ごしたのだが、アッという間。飛行機に乗っていたとは思えないほど、全然疲れなかったのには驚かされた。

 あまりにも乗り心地が良かったので、家に帰ってネットで調べると、私の乗った機種はカナダのBombardier社のQ400と判明。プロペラ機とは言え、最新式のTuboPropTurbopropというエンジンを使った最新鋭機だったのだ。経済性と乗り心地をうたい文句にした機種だが、それに恥じない乗り心地だ。

 今まで機種を意識して飛行機のチケットを買ったことなどなかったのだが、「今度からは選べるものならばQ400に乗ろう」と真剣に考えてしまった私である。


「Why?」と言えない日本

Grasshopper  先日、たまたまティーンエージャー(13~19才)の子供を持つ親のための講習会に出る機会があったのだが、そこで『二つのWhy』という話を聞いた。日本語にも若干通じる部分があるので、今日はそれに関する英語うんちく。

 その講師は、親はティーンエージャーの「Why」には二種類あるので注意すべき、と主張する。一つは単なる質問の「Why」で、この場合は普通に答えて良い。もう一つが、こどもが自分が何かを拒否したい気持ちを伝えたくて「Why」と言っている場合。この場合に、その気持ちを理解しておきながら、理屈だけで納得させようとすると泥沼にはまってしまう、と指摘するのだ。

 良い例が登校拒否のこども。親が「学校に行きなさい」というと「なぜ学校にいかなければいけないの?」と言い返してくる。そこで親としてはつい「ちゃんと学校を卒業しなければ、ちゃんとした会社に就職できないんだよ」などと答えて説得を試みたくなるのだが、そうすると「どうしてちゃんとした会社に入らなければならないの」とさらにつっかかってくるのがその年頃の子供である。そんな彼らのペースに乗せられていると、いつの間にか本題から大きくはずれた「人間の幸せとは何か」みたいな禅問答になってしまうのだ。

 その講師に言わせると、そんな時には「そうか、学校に行きたくないのか。なぜ行きたくないんだい?」と、まずは子供が本当に訴えたかった点をこちらがちゃんと理解していることを示してあげた上で、会話を続けることが大切なのだそうだ。

 この話を聞いていて思い出したのが、アメリカ人の上司を初めて持った時に"Why don't you ~?"という言葉を文字通りの質問と誤解してしまってかなり無駄に不愉快な思いをしてしまったこと。

私「週末ぶっとうしで働いてきて、頭がフラフラだよ。」
上司「Why don't you take a break?」

 これを、「どうして一息入れないんだい?」(take a break = 一息入れる)と文字通りの質問として受け取ってしまった私は、「仕事がたくさんあるから週末働いていたことぐらい知ってるだろう。くだらない質問するな!」と心の中で怒りまくっていたのだが、しだいに英語に慣れてくるにつれ、「Why don't you ~?」はどちらかというと「~したらどう?」ぐらいの意味だということがだんだん分かってきた。つまり、上の会話は、

私「週末ぶっとうしで働いてきて、頭がフラフラだよ。」
上司「少し一息入れた方がいいんじゃない?」

というごくごく普通の会話なのだ。

 こう考えてみると、同じWhyでも色々とあることが分かる。

Why do I have to go to school? (拒否のWhy)
Why don't you take a break? (提案のWhy)
Why are you Romeo? (感嘆のWhy、by シェークスピア)
Why is this car so f***ing slow? (悪口のWhy)

 ちなみに、外交ベタの日本人の中でピカイチの交渉力を見せた白州次郎は、何かにつけて"Why?"とアメリカ人に食い下がり、"Mr. Why"と異名をとったらしいが、そんなWhyを使いこなせる人が今の政治家や官僚にいるのかいささか心配である。

 「なぜアメリカ軍の基地の移転費を日本が三兆円も負担(参照)しなければならないんだ?」とブッシュに食い下がる根性のある人がなぜ日本にはいないのだろう?