Googleの強さはStructured Chaosにあり
2006.10.09
今週号のFortuneの特集記事(原文へのリンク)は、"Chaos by Design"というGoogleのマネージメントスタイルに関する記事。GoogleのBusiness Operationの上級副社長は、Shona Brownという元マッキンゼーの女性。1998年にCompeting on the Edge: Strategy as Structured Chaosという本を書き、イノベーションを起こすには、会社を「カオス状態」と「きちんと構造化された状態」の間の "structured chaos"(構造化されたカオス)と呼ぶ状態に置くのが一番良いと説いたのだが、Googleが今ある状態はまさにそれ、というのがこの記事の論点だ。
今考えてみると、Microsoftも、90年代の前半から中盤の、Windows95、IE3.0、IE4.0を出した時期は、まさに"Structured Chao"の状態であった。「Macを超えるGUI OSを作れ!」、「Netscapeからブラウザーのマーケットシェアを奪え!」といった「おおまかな方向性」だけはビル・ゲイツが決めたものの、具体的な仕様やアーキテクチャは、かなりカオス状態でそれぞれのエンジニアが好き勝手に作っていたというのが実情だ。特に私みたいなタイプは、皆で相談しながら作るより、自分で作りたいものを先に作ってしまってそれを強引に仕様にしてしまう方がずっと向いているので、ずいぶんと楽しい思いをさせてもらったことを覚えている。
そんなMicrosoftが変わってしまったのが、90年代の終盤、皮肉なことにもGoogleが誕生した1998年あたりからである。Windows、Officeがともに肥大化し、エンジニア一人あたりの生産性が極端に下がってしまったのである。私も「Microsoftももっと小さなチームで6ヶ月単位ぐらいでもの作りをすべきだ」とビルゲイツに食ってかかったのだが、「そんなことは誰にだってできる。数百人のエンジニアを3年間も一つのプロジェクトに貼り付けることができるのはMicrosoftだけだ」と一蹴されてしまったことを良く覚えている。
2000年あたりからMicrosoftがトップエンジニアたちにとって魅力的な企業でなくなってしまい、大量な頭脳の流出が起こった根本の原因は、意外とこんなところにあるのかも知れない。
逆に「おおまかな方向性」すらない"Unstructured Chaos"だったのが、ジョブズ復帰以前のAppleだったのでしょうね。
今のAppleはジョブズが「おおまかな方向性」を与えた"Structured Chaos"ですが、将来はAppleもChaosではなくなってしまうのかもしれませんね。
Posted by: Baatarism | 2006.10.09 at 19:49
このstructured chaos(構造化されたカオス)という用語というか考え方の背景には、複雑系の科学というものがありますね。 EdgeOfChaosでカオスの縁(ヘリ)みたいな言い方もされます。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4102177213
そのマッキンゼーの人がその本を書いたときにもちょうど複雑系の科学の一般書が出ていたので、それを読んでそのまま会社組織にも援用したのだと思います。
Posted by: Ken | 2006.10.09 at 20:23
structured chaosとは妙な造語ですね。chaosの定義からstructuredされたらchaosではなくなるはずです。structuredな系(平衡系)とchaosの間に存在する複雑系に著者独自の名前をつけたかったのでしょうか?
複雑系が存在するためには、「カオス状態」と「きちんと構造化された状態」の両者が併存することが必要です。
会社に例えると、各構成要素(社長も社員も)が秩序(structured)と自由(chaos)の間を行ったり来たりできる環境(雰囲気?culture?)こそが重要で、そこには結果的に複雑系が存在し、秩序の系だけでは得られないイノベーションが得られるはず。
Posted by: Jun Seita | 2006.10.10 at 00:19
「買収されちゃったよ!」-YouTube創業者2名がビデオメッセージを公開
http://www.rbbtoday.com/news/20061010/34721.html
Posted by: none | 2006.10.10 at 01:05
私見になりますが、ピーター・ドラッカー氏が指摘していた「ナレッジ・ワーカー時代」と関係があるのではないかと考えております。これまでの企業では、組織において、従業員は各ビジネス・ユニットの最大成果を達成することが大切であり、また、個人の評価にとっても大きく反映されてきました。ところが、しかしです。果たして、整然と構造化されたままで、お客様は、その最大価値たる『おもてなし』を獲得することができたでしょうか・・・。いま、世界はフラット化しつつあります。いや、フラット化しているのかもしれない。つまり、いままで以上に、テクノロジーを含めたイノベーション競争が激化している。Googleでは、社員の仕事の何割かを自分の仕事以外に使うことになっています。もしかすると、Googleはナレッジ・ワーカー時代における、新しいビジネス・スタイルに挑戦している可能性があります。もしかすると、Satoshiさんがご指摘されていた"Structured Chaos"と関係があるのかもしれません。従業員が、組織全体で進むべきビジョンに賛同できるためには、構成要素である各個人が、問題意識をもったナレッジ・ワーカーであることが必要条件ではないかと・・・・。前提となるポテンシャルを高める施策が、企業の人事部門や経営者に求められているのかもしれません。企業にとって、"ひと"こそがかけがえのない財産であるから・・・。
Posted by: Maki | 2006.10.10 at 12:56