ドラッカー博士著「経営者の条件」は、会社経営者のための本ではない
2006.10.04
先日、ダイヤモンド社の人と会う機会があったのだが、その時に出たのがドラッカー博士の「経営者の条件」という本の話。題名が「会社経営者のため」の本という誤った印象を与えるために、読者層が偏っているらしい。ドラッカーファンとしては、これは何とかしなければならない。ということで、今日はその誤解を解くためのエントリー。
原題は "The effective executive"、直訳すれば「成果のあげられるエグゼクティブ」。日本語にしにくいのが、このエグゼクティブ。決して「経営者」でもなければ「管理職にある人」でもない。立派なスーツを着た商社マンのことでもない。一言でいえば、「なんらかの意思決定をする立場にある知識労働者」のことである。(この業界で言えば、「次のプロジェクトはRubyを使った開発に切り替えるべきか」、「次世代テレビにはどんな機能を盛り込もうか」、などなどの意思決定)
ドラッカーが他の本でも繰り返し述べていることだが、先進国においてすら、知識労働者が大部分を占めるようになったのは人類の歴史を考えればごく最近のことである。やることが明確に定まっており、その成果もはっきりと「生産性」という数字で表すことのできる肉体労働と違って、知識労働者は、「次に何をすべきか」「どうやって成果をあげるか」を常に考えながら仕事をしなければならない。
そんな知識労働者が、効率を重視せずに長時間労働したり、「なぜこの仕事を今しなければならないのか」を理解せずに目の前の作業に埋没することに、ドラッカーは大いなる警告をならす。
知識労働は、量によって規定されるものではない。コストによって規定されるものでもない。成果によって規定される。(P.9)
不適切な製品のための美しい設計図を大量生産するようなエンジニアリング部門ほど、ばかばかしく、非生産的な存在はない。(P.5)
日常の仕事の流れに任せて、何を行い、何に取り組み、何を取り上げるかを決定していたのでは、日常業務に自らを埋没させることになってしまう。(P.16)
「忙しくて本なんて読んでる暇がない」人もたくさんいると思うが、そんな人たちにこそ、ぜひとも時間を作って読んでいただきたい本である。
10月から労務管理をする立場になったこともあり,ぜひ読んでみたいと思います。
それにしても反射的にThe defective executiveと茶化したくなる書名ですねぇ。
Posted by: musina | 2006.10.04 at 19:48
要するに何行コードを書いたかは関係無いと。
テクノロジストの条件は読んだことあったけど、テーラーの話以外あまり覚えていない、、、
Posted by: hama | 2006.10.04 at 20:09
はじめまして。
会社経営に携わる二代目です。弊社では先代の社長が昔から熱心にドラッカーを説いて回ったおかげで(?)幹部は全員必読書となっています。
2002年のネクストソサエティでは、「知識労働者とネットワーク社会でいかに私たちは、生きるべきか」という哲学を突きつけられたように思います。
より良く楽しい仕事環境を実現するためには、的確な時代認識と、そこに生きるという覚悟が必要であるということも学びました。
経営者以外にも必要なことと言うことですが、結局そういう日々(意思決定の連続)を送るということは、経営幹部に他ならなくて、自然にステップアップ、もしくは、マネジメントの領域に足を踏み出すということではないでしょうか。
Posted by: 佐藤浩 | 2006.10.07 at 07:31