技術者にも必要な「もうける決意」
日本のタミフル消費量が突出している理由

タミフルを普通の人にどんどん処方しているのは日本の医者だけ

Ice_1 今日の夕方のニュース(Seattle King5)を見ていたら、日本で副作用らしき事例が多発しているタミフルに関する議論がFDA(Food and Drug Admistration office)で活発化しているという。ここ十ヶ月で100件以上の副作用らしき症例の報告があり(そのほとんどすべてが日本)、タミフルの説明書にこの副作用のことを言及すべき、との報告が出たらしい。

 タミフルは、スイスのロシュ社が製造するインフルエンザの特効薬だが、日本以外の国では「万が一、鳥インフルエンザが人から人への感染能力を持ってしまった場合に使うために備蓄しておくべき特効薬」との扱いであり、健康体の人がインフルエンザにかかった時にやたらと処方したりはするものではない。King5ニュースによれば、日本でのタミフルの一人あたりの消費量は、米国の20倍以上だそうである。つまり、日本だけで副作用事例が多発しているのは、日本の医者がタミフルを簡単に処方しすぎていることに起因するのだ。

 実はこれとまったく同じことが抗生物質に関しても言える。私は日本に住んでいたときは、冬になると必ずといって良いほど風邪をひき、医者に行っては抗生物質を処方してもらっていた。それと比べると、アメリカの医者は大違いで、風邪ぐらいで病院に行っても「何しに来たの?ゆっくり寝てなさい」と追いかいされてしまう。最初は私も「アメリカの医者は何と不親切なのだろう」と思っていたが、しかたなく薬を使わずに体を休めて風邪を治す、ということを繰り返しているうちに体に耐性ができたのか、今ではほとんど風邪で寝込むことなどなくなってしまった。

 後に抗生物質に関して学んだところ、抗生物質を風邪ぐらいの軽い病気にやたらと処方してしまうと、薬剤耐性菌を作ることになってしまい、その菌が命に関わるような悪さをしたときに抗生物質がまったく効かない、という最悪の事態になってしまう可能性があるそうだ。

 つまり、抗生物質にしてもタミフルにしても、この手の特効薬は命に関わる病気にかかったときにだけ使うべきもので、普通に体力のある人が風邪やインフルエンザにかかった時に使うべきものではないのだ。その辺の事情を知ってか知らずか、やたらとタミフルや抗生物質を処方してしまう日本の医者は一体何を考えているのだろうか?

Comments

ななしでごめんなさい

「むやみやたらに薬を使うな」ということは判りますし同じ意見です。
ただ、抗生物質とタミフルは別物なのでこの書き方だと読者に誤解を生むと思います。

インフルエンザはウィルスです。毎年死者を出しています。
インフルエンザ感染者が町に出るなんて殺人行為だと私は思ってます。

そもそもの問題は間違った考え方にあると思うのです。
「風邪を引くのは気がゆるんでるからだ」
「風邪を引いても無理をして働くのが美徳」
「医者は病気を治すのが当たりまえ」

あとは、点数稼ぎに薬を使いすぎてる部分はあると思います。

saury

さとしさん、今回のエントリーはちと一面的すぎます。
まず、タミフルと抗生物質の議論を混同しないでください。

ウイルス性の病気でないのに抗生物質をやたらと処方するのは、皆保険制度とか、患者側の意識(ありがたがる)とか、日本特有の事情が入り混じった現象であり、一概に日本の医者が無能だからとは言えません。

タミフルに関しては、インフルエンザの特効薬ですので、特に体力のない老人子供に処方するのは適当だと思われます。ななしさんの言うとおり、インフルエンザは毎年死者を出している、れっきとした『病気』ですので。
また、FDAは、「タミフル」と副作用の因果関係の特定は困難としています。(wikipedia日本版)

以上の理由により、『一体何を考えているのだろうか?』などと、日本の医者がさも無能である(また、アメリカの医者が有能)かのような主張をするのは、短絡的すぎると思います。

内科医(在米)

いつも楽しみに読ませていただいています。

>日本の医者は一体何を考えているのだろうか?

タミフルはインフルエンザに効く唯一の薬です。発症48時間以内に投与すれば治癒までの期間を短縮することができます。ということで日本では頻用されています。但し副作用がクローズアップされてきたのは昨年末からであり、現在は使用を控える場合もあります。副作用に関しては異常行動が主に注目されていますが、発現頻度は0.01%以下です。

>後に抗生物質に関して学んだところ、抗生物質を風邪ぐらいの軽い病気にやたらと処方してしまうと、薬剤耐性菌を作ることになってしまい、その菌が命に関わるような悪さをしたときに抗生物質がまったく効かない、という最悪の事態になってしまう可能性があるそうだ。

これはインフルエンザに関しては完全に間違いです。抗生剤の頻用により、耐性菌が常在化することはありますが、インフルエンザウイルスに関してはありません。但し集団レベルでみた場合に、タミフルを頻用する集団に耐性インフルエンザウイルスが出現することは危惧されています。

抗生剤の頻用とタミフルの頻用、個人レベルでの耐性菌の出現と集団レベルでの耐性菌の出現を混同されています。ご指摘のようにタミフルの使用に関しては、何らかの規制は必要かもしれません。

Suematsu

はじめまして。
薬に関する専門的なことはわからないですが、日本の場合は「風邪ぐらいでは仕事を休めない」というのが大きいような気がします。
家で寝てるのが一番いい、抗生物質はやたらと使うべきではない、というのはわかっていても、一日でも早く治して出勤しなくてはいけないプレッシャーが・・・。

Inaba

風邪っぴきの件で言うと、免疫機能が未熟な3歳までに、ある程度非衛生的に各種の雑菌に触れる環境(砂場遊びとか田んぼを駆け回るとか)に置くことで高い抵抗力、免疫能力ですかね、それがつくと聞いたことがあります。
私は生来数回しか風邪を引いていない健康優良中年ですが、多分幼少期にばっちい遊びばかりしていたのでしょう。過保護でなかった親に感謝してます。

UIEngineだ

コメントが盛り上がっておりますが、日本では風邪で休んでいられないサラリーマンは多いと思います。体育会系の職場では来年の昇給に響きそうです。ここ何回かのエントリーの写真、シアトルは寒そうですね。

Satoshi

 インフルエンザが風邪とは違ってれっきとした病気であること、抵抗力の弱い老人や子供に必要に応じてタミフルを使うこと、に関しては納得できます。

 しかし、それにしても一人あたりで米国の20倍という世界レベルでみても突出した量のタミフルを消費している日本は異常に思えます。この数字をみるかぎり、「抵抗力の弱い人に必要に応じて」などという生易しい使い方はされていないように思えます。

 やはり根底には、何もしてくれないと怒る患者と、一日でも会社を休めない・休みたくないサラリーマンがいる、のでしょうね。そして、そんな患者に対して「タミフルを出してとりあえず満足してもらう」というマイクロレベルでの最適化に走らざるをえない状況にあるのでしょうね。

ニュース

米 タミフルに注意書き
http://www3.nhk.or.jp/news/2006/11/14/d20061114000153.html

これは、FDA=食品医薬品局が13日に発表したもので、それによりますと、
インフルエンザの治療薬「タミフル」の薬のラベルに、服用後、患者の神経が
影響を受けたことをうかがわせる異常な行動がないか観察したほうが
よいとする注意書きを表示することになりました。

FDAによりますと、インフルエンザの患者がタミフルを服用したあと
意識障害などの異常がみられた例がこれまでに103件報告されており、
その多くの症例は日本の子どもたちだったということです。

こうした異常とタミフルとの詳しい因果関係は明らかになっていませんが、
FDAでは「注意を促すことは、安全上、非常に重要だと判断した」としています。

タミフルをめぐっては、世界中で多数の死者を出すと懸念されている
新型インフルエンザが大流行した場合に備えて各国が備蓄を
進めているだけに、安全性について関心が集まっています。

ちといろんな誤解が…?

タミフルにしても、リレンザにしても(どちらもインフルエンザの特効薬です)、インフルエンザに対して非常に有効かつ迅速に効きます。インフルエンザと判明した時点ですぐに使うのは、怪我をしたから手当てをする、ぐらい正当だと思います。
タミフルの消費量がアメリカの20倍…といっても、アメリカでは保険に入ってない貧困層も人口に入り、また保険に入っている人でも、インフルエンザの測定キットの使用、タミフルの使用それぞれで日本よりも大きな負担になりえる状況と、日本の皆保険制度とでは明らかに母数が違いすぎるます。それを承知でのデータ解釈としたら悪意を持った解釈でしょう…(これらを前提としたデータであれば問題はないと思いますが…まずないと思います)。

抗生剤に関しては…通常の風邪に対して普段処方される系統の抗生物質はほとんどきいちゃいないでしょう。偽薬効果で治るのが早くなっているだけと断言してもいいかもしれません。
強く抗生剤信仰している人ならともかく、普通の人は頭痛薬でも飲んで寝ているのが一番治るの早いです。
あと、耐性菌に関してですが…問題になるのは基本的に院内感染のような閉鎖空間での耐性菌の出現です。ある程度まともな病院なら専門の部門があり、抗生剤使用を管理している…はず。
ふつうに外にいて引いた風邪などではあまり耐性菌は見られないでしょう。
インフルエンザウイルスほどの感染能力はないですから…。

ちょっとあまりにも短絡な結論でしたのでつい…。

Satoshi

>タミフルの使用それぞれで日本よりも大きな負担になりえる状況

もっともな指摘です。私も、皆さんからのコメントやトラックバックから勉強させていただきましたが、このタミフルの摂取量の異常な多さは、日本の保険制度そのものに欠陥があるからだと思います。薬を処方しないと商売にならない医者、会社を一日も休みたくないサラリーマン、そして、薬を過剰に処方しても患者の財布が傷まない保険制度。この三つが重なっての過剰摂取ですね。

Jun(在米・医師)

日本国民は国民皆保険制度を選択し、アメリカ国民は任意保険制度を選択しています。
タミフルは発症48時間以内のインフルエンザにのみ効果を示します。すなわち投与するかの判断には、インフルエンザ迅速検査が必要となります。日本では皆保険制度のため、だれでもこの検査を受けることが出来ます。
さて、アメリカ人の何%の人が、このインフルエンザ迅速検査を受けることの出来る保険に加入しているのでしょうか?さらにタミフルを処方可能な保険に加入している%は?
このように違う制度上で運営されている2つ以上の母集団を比較して、「摂取量の異常な多さ」「日本の保険制度そのものに欠陥がある」と言う結論を導きだすのは賛成できません。
ちなみに、任意保険制度をとっているにもかかわらず、国家予算に占める医療費の割合は、アメリカの方が高いことをご存知ですか?
日本は先進国の中では比較的健全な保険制度を運営しているからこそ、必要とされる国民全体にタミフルを処方することが可能となっている。と言う見方も出来ます。

IKeJI

タミフルに関しては、「日本だけで副作用事例が多発しているのは、日本の医者がタミフルを簡単に処方しすぎていることに起因する」からという意見には賛成です。
しかし、これは結果論であり、すくなくともタミフルの危険性が叫ばれるようになるまでは、保険制度が充実していてすぐにインフルエンザの検査と必要な投薬ができる日本の方が優れているとされていたはずです。

抗生物質に関しても、たしかに、日本のお医者さんは簡単に出しすぎると思います。ただ、お医者さんとしても、目の前に患者さんがいて、その病気を直せる薬があるのなら出すのが当然かなと思います。
もし、この状況を改善するならもっと離れた所からの視点。政府などによる対策が必要だと思います。

Anonymous Coward

アメリカの場合と単純比較できないのはもちろんですが20倍の違いを保険金制度に求めるのは間違ってるように思います。
そうであるならばインフルエンザでも医者にかからない人が多いためアメリカでは大量のインフルエンザ患者がいて、既に蔓延して爆発的感染が広がっていると言うことになりませんか?

ぶらりん

インフルエンザウィルス感染のテストしないでタミフル出しているヤブ医者なんているの?もしいたとしたら、本当に問題だね。

アメリカは風邪引いたくらいぢゃ医者いかないから、風邪とインフルエンザの区別も素人目にはつかなくて、医者に行ったときにはすでにウィルス感染から時間が経過しすぎて効果が乏しい、だから処方しない(できない)ってことなんぢゃないの?

いっておくけど、タミフルはインフルエンザ治療薬というけど、その機序から言って、感染予防薬とみるか(鳥インフルエンザ対策で備蓄している国の考え方)、それとも現時点でもっとも有効な感染初期の治療薬とみるかは考え方と、医療の余裕度の問題とかもあるんぢゃない?

タミフルを鳥インフルエンザ感染対策目的として備蓄って、目の前にインフルエンザ患者がいて、しかも各国で毎年何万人もの人がインフルエンザで命を落としている現状を考えたら、医療の怠慢としか思えない!

通りすがり

中外製薬の情報を見る限りでは、「インフルエンザを発症してから2日以内」ではなく、「インフルエンザ様症状の発現から2日以内」ですね。これって結構重要では?本当に患者全員がインフルエンザと思って自覚症状が出てから2日以内に来てるのでしょうか?それを分かってて、タミフルを処方しているのでしょうか?データがないので分かりませんが、以前のコメントや記事同様、無意味な過剰投与の可能性は捨てきれないと思います。

医療関係者ではないが、親が看護師で子どものころから散々愚痴を聞かされてきたから思うのですが(素人判断ですみません)、もう一つ問題と思うのは、日本の医師の権威だけが異常に強いことだとおもう。診断・治療・看護・処方がすべてそろって医療は万全のはずなのにね。薬剤師が単なる薬売りになりがちな点があるような気がしますが。根本的に、医者よりも薬のプロ(であるべきで、あるはず)の薬剤師の意見をあまり聞かないし、医師と薬剤師が相談する光景を間接的にも見たことがないのと、以前の形式の院内薬局がただ外にあるだけで、院外処方のメリットを受けている人が結構少ないに思う。

通りすがった薬学生

薬剤師が医師と相談している光景を見たことがない、という意見ですが、実際見せません。
最近は病棟回りなどを、医師とは別に行い「回診」を行ったりはしていますが。また処方に不明、過誤があれば即座に医師に問い質しあるいは駄目出しの連絡が行きます。

内線電話で済むのに患者の前でする必要はないし、医師と薬剤師が患者の前であーでもないこーでもないなんてしたら、患者はすごく不安になるでしょう?

もっとも、薬剤師の医療における地位のようなものについて医師に比べ未だ低いのは現実ですが。
かつて日本だけでなく欧米もそうだったのですが、現在たとえばフランスなどでは同格、あるいはプロフェッショナルである薬に関しては立場として確実に上だったりしますね。

タミフルに関して言えば、副作用で異常行動だの報道されていますが……抗ウイルス薬なんだから神経症状出て当たり前。
いまさら何言ってるの?と言ったところ。
メリットとデメリットでメリットを優先して用いられるのが日本の社会。世界の80%以上買い占めている現状だからこそ天然物由来しかない合成法から脱却すべく他の出発物質からの合成を作り上げるインテリジェンスはもっと評価されるべきですね。

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