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企業の決算情報とおもてなし

 昨日のエントリーへのフィードバックがたくさんいただけたので、今日はその応用編としてもう少し具体的な例を示す。まずは、下の表を見ていただきたい。

Three_digits

 公開企業が株主(もしくは将来株主になろう人たち)のために発表する決算情報は、多少の違いはあれ、おおかたこんなフォーマットで提供される。

 問題は、右下の「単位:百万円」である。「日本語の作文技術」の著者である本多勝一氏が「植民地的」と批判する三桁法を使っているためにこんなことになってしまうのだが、この決算情報を一目見て「この会社の前期の売り上げは1244億円だったのか」と把握できる人は、証券会社の人と熱心な投資家・投機家ぐらいだ。私のような普通の人は、相当注意して読まない限り簡単に桁を読み違えてしまう。

 そこで、日本語に適した四桁法と、ちょっとした工夫を使ってこの表を書き直してみる。

Four_digits

 これだけの小さな工夫で、こんなに読みやすくなる。User Exprience Matters! (=おもてなしは大切だ!)


素直な疑問:数字には四桁ごとにテンを打った方が日本人には読みやすくないか?

Digits_1  中学校の数学授業で「数字は三桁ごとにテンを打つ」ことを教わったときに、手を上げて「何で三桁ごとにテンを打つんですか?」と質問したことがある。「その方が読みやすいでしょ」という教師に、「読みさすさを優先するなら、四桁ごとの方が読みやすい」と食い下がる私。「そうは言っても決まりだから今さら変えられない」という教師に、「そんな役に立たない決まりなんて変えた方が良い」とさらに食い下がるが、「決まりなんだから皆さんはそれを覚えるように。では、次に進みます」と頭から否定されてしまって少し傷ついたことを覚えている。

 今になって考えてみれば、その教師は「確かに君の指摘するように日本人にとっては四桁ごとにテンを打った方が読みやすい。でもね、英語やフランス語などの欧米の言語の場合は3桁ごとにテンを打ったほうが読みやすいんだ。戦争に負けて、欧米を中心にしたグローバル経済圏に取り込まれた日本はそれに従うしかないんだ。不便だけれど我慢してくれ。」と答えるべきだったのだが、そこまでの知識が教師自身になかったのか、単に面倒い生徒だと思われてしまったのか、そんな答えはもらえなかった。

 何でこんな話を思い出したかといえば、「実戦・日本語の作文技術」という本に、三桁ごとにテンを打つ慣例のことを「植民地的三桁法」と批判してあったからだ。「教科書でも四桁法を推進してほしい」と主張する筆者に思わず心の中で拍手をしてしまった。こうやって子供のころに教師に頭から否定されてしまった「素朴な疑問」が、実は全然まとはずれではなかったことをこんな形で発見すると、妙にうれしいものである。


今年の末までにFirefoxのシェアがIEを抜く?!

 今月に入ってからGoogle Analyticsをこのブログに導入したのだが、「どんなサーチワードでこのブログにたどりつくのか」とか、「訪問者のブラウザーのマーケットシェア」などを一目で分かる形で表示してくれるのがとても良い。

Market_share

 興味深いのがブラウザーのマーケットシェア。去年の初めに別のツールを使って測定したときは、Firefoxのシェアはまだ20%と少しぐらいしかなかったのだが、今や約35%。Safari+Operaと会わせるとほぼInternet Explorerと肩を並べる。

 もちろん、このデータはインターネット全体のデータではなく、このブログの訪問者に関するデータでしかないのだが、このブログに来る人たちの多くが、インターネットのアーリィ・アダプタ(もしくはオピニオン・リーダー)であろうことを考慮すれば、今後の傾向を読む意味でも、このデータには意味がある。

 ということで、これから四半期ごとぐらいに、このデータを公開して行こうかと思う。「今年の末までにFirefoxのシェアがIEを抜くのか?」、これが今年一番の見所である。最近、妙にアップルが気になる私としては、Safariにももう少しがんばって欲しいのだが、そのためにはMacそのものにもう少しがんばってもらう必要がある。


このブログの楽しみ方

 FPNの企画「アルファブロガーを探せ2006」で、アルファブロガートップ40に再び選んでいただけたおかげで、新規の訪問者が増えている。そこで、今日はそんな方々のためのおもてなし。

 初めての訪問者の方にまずは読んでいただきたいのが、左のサイドバーに「人気エントリー」としてリストアップしてあるエントリー。「ソフトの仕様書と料理のレシピ」はIT業界の人にはぜひとも読んでいただきたいエントリーだが、「日本語とオブジェクト指向」はそうでない方にも楽しんでいただけると思う。「イノベーションのジレンマ」や「リーダーシップについて」も、ずいぶん前のエントリーにも関わらず、よく読まれるエントリーだ。

 技術系・ビジネス系のエントリー以外にも、「おいしい親子丼を作るコツ」、「ついにおいしい焼き鳥の焼き方をマスター」のような料理に関するエントリー、「プラダを着た悪魔」、「『硫黄島からの手紙』とイラク戦争」のような映画に関するエントリーもあるので、ぜひとも気楽に楽しんでいただきたい。

 ちなみに、右のサイドバーには、私が作ったユーザー参加型のブログパーツ、「本日のひとこと」と「ラーメン大好き」が貼り付けてある。どちらも「次へ」をクリックして他の人たちが投稿した「ことわざ」や「気に入ったラーメン屋さんの情報」を見ることが出来るが、「追加」をクリックして自分でも情報を提供できる。ブログをお持ちの方は、このブログパーツを自分のブログに貼り付けることもできる(タイトルの部分をクリックするとその方法が書いてあるページが表示される)。

 最後に、自分でもブログを書き始めようかと考えている人たちに参考になればと、いくつかエントリーを選んでみた。これがきっかけで、自分でもブログを書いてみようと思う人が一人でも増えてくれれば幸いである。

ブログで「ゆるコミュニケーション」
世界に一つだけのブログ
「ブログは始めてみたいが、何を書いてよいのか分からない」と悩んでいる人のための三冊
就職・転職活動にブログを活用すべき時代が来ている
「なぜブログを書くの」、「もちろん、あなたのためです」
ブログのあるのは良い知らせ


ブクマコメントに「後で読む」と書かれたら負けだと思っている

 こうやってブログを書いていてつくづく思うのは、簡潔で分かりやすい文章を書くことの難しさと大切さ。だらだらと思いついたままに長い文章を書くのは簡単だが、「小粒でピリリと辛い」文章を書くには推敲に推敲を重ねる必要がある。

 特にブログの場合は、最初の1~2段落が勝負。そこで読者をグッと引き込み、飽きてしまう前に要点を手早く効果的に伝えて一気に結びの文章に持って行く。スクロールしなければ読めない部分はまず読んでもらえないと思ったほうが良い。ブクマコメントに「後で読む」と書かれたら負けだ。


2万行のソフトウェア・プラットフォームは可能か?

Snow_1 CNetのブログに、「UIEngineのデザイン・プリンシプル」というエントリーを書いていたのだが、ちょうど良いタイミングで、アラン・ケイの東大での講演がネットで話題になっていたので、少し反応してみる。

 私の琴線に触れたのは、

…同じことが2万行程度でできるはずである。2万行であれば一冊の本に印刷することができるし、数冊の説明をつければ1人の人間がすべてを理解することができるはずである。我々がNSFからの資金を受けてこれからやろうとしているのは、2万行でOS、グラフィックスシステム、ネットワークシステムからエンドユーザーシステムまですべてを書いたようなシステムを作ることである。

という部分。肥大化してしまったWindowsやInternet Explorerを反面教師にして、全く正反対のデザイン・プリンシプルでUIEngineを作った私としては、講演の会場にいたら「だよね~」と握手を求めていただろうぐらい強くうなずいてしまった(「プリンシプル」の定義に関しては、「プリンシプルのない日本」が良い教科書)。

 念のためにJavaで書かれたiアプリ版のUIEPlayer(UIEngineのクライアント部分)のソースコードの行数を数えてみると、トータルで6273行。悪くない^^。C++で書かれたμ-iTron版、embedded Linux版などのUIEPlayerは、VRAMに直接アクセスしなければならない分もう少し大きいが、それでも2万行は超えない。

 激しい勢いで進歩しているハードウェアに「おんぶにだっこ」で肥大化ばかりしてちゃんとした進化をしていないソフトウェアが本来進化すべき方向は、UIEngineやアラン・ケイのプロジェクトが(アプローチはずいぶん違うようだが)目指している究極まで贅肉を落とした「マイクロ・プラットフォーム」にあるのでは、と考えている今日この頃である。


映画「硫黄島からの手紙」とイラク戦争と

 Letters from Iwo Jima (邦題「硫黄島からの手紙」)を見てきた。Million Dollar Babyの時も思ったが、クリントイースト・ウッドはいたってシリアスな監督だ。

 「映画はエンターテイメントであるべき」と考える私としては、通常はこの手の映画は避けるのだが、「米国に暮らす映画好きな日本人」としては、さすがにこの映画ぐらい見ておかないといけない。

 この映画の価値は、「日本人から見た太平洋戦争」をアメリカ人監督が描いたことにある。同じ内容の映画を日本人監督が作ったとしても、そのメッセージは普通のアメリカ人にはほとんど伝わらない。

 特にイラクとの泥沼の戦いに巻き込まれている今のアメリカにとって、この映画にこめられたメッセージの意味は大きい。この映画によって一人でも多くのアメリカ人が「自爆テロをするイラク人にも人格があり家族がある」ことを再認識してくれることを願うのはイーストウッド監督だけではない。

 ちなみに、映画の中で、死んだ日本兵の刀を拾った米国兵士が「すげえ、こんなもの拾ったぜ!」と自分のものにしてしまうシーンがあったのだが、これで思い出したのが近所のアメリカ人が、屋根裏部屋に置いてあった数本の古びた日本刀を見せてくれた日のこと。終戦直後に兵隊として日本に上陸したその人の父親が、誰もいない防空壕に放置されていたものを持ってきたのだという。どう処分しようか悩んでいると相談されたので、「遺族を探し出して返したいのか?」とたずねると、そうではなくて「価値があるものだったら売りたい」と言う。

 それを「戦利品」と呼ぶか「略奪品」と呼ぶのかは単に立場の違いでしかないし、60年も経っていれば何であれ時効なのだろうが、「価値があるものだったら売りたい」と、どうどうと言われてしまった時には、何と反応して良いものか少し悩んでしまった私である。


ゼンハイザー PXC300 の日米価格差を利用した「アマゾン・アービトラージ」で一儲け?!

Pxc300 昨日の夕食の席で、知り合い二人から、「中島さんぐらいしょっちゅう飛行機に乗っている人で、いまどきノイズキャンセラー付きのヘッドホンを持ってない人なんて珍しい」と指摘されてしまった。

 飛行機の中で眠るのにはあまり苦労しない方だが、確かにあのノイズをずっと聞いていると疲れる。一度Boseのヘッドホンを試したことがあるのだが、耳に熱がこもるのが気に入らず、それ以来避けていた。しかし、「ゼンハイザーのPXC300は小さいので耳が暑くならなくて良い」との言葉に、心が動く。

 さっそくアメリカのアマゾンで注文しようとしたのだが、219ドル(日本円だと今日の為替レートで26,600円)-聞いていた価格(100ドル強だったはず)よりずいぶん高い。Googleで調べてみると、他のオンラインストアもみな似たような値段だが、アマゾンだけは何らかの理由でつい最近までは139ドルで売っていたようだ。と言うことは、ごく最近値上げしたのだ。

 「少し前なら139ドルで買えたのに、今は219ドル」と言われると、妙に悔しくなるのが人の常。一気に購買意欲が萎えてしまった。

 しかし不思議なのは、なぜアマゾンのみが他の小売店よりも格安の値段で売ることが出来たのか、である。新製品が好きなブロガーたちを狙い撃ちした、発売当初の初期ロットのみの特売をしたのかも知れない。バイラルマーケティングを狙った、ゼンハイザーとアマゾンの共同作戦という可能性は十分にある。

 そこで「ひょっとしたら」との思いで日本のアマゾンをチェックしてみると、なんと17、353円。米国のアマゾンより9000円以上安い。今回の値上げはまだ日本のアマゾンには波及していないようだ(ちなみに、ヨドバシカメラは24、800円)。次に日本に行くまで手にすることが出来ないのは少し悔しいが、さっそく注文。

 これだけ価格の差があると、日本のアマゾンで買ったものを、米国のアマゾンのマーケットプレースで売る、という「アマゾン・アービトラージ」で一儲けできそうだ(アービトラージとは、この様に二つの市場での相場の違いを利用して儲けること)。もちろん、そこには為替リスクと在庫リスクが若干伴うので、必ずしも儲かるとは言えないが、少なくともマルチ商法で誰も使わない浄水器をネズミ講式に売りまくる(参照)よりはずっとまともだ。


podcastインタビュー初体験

Snowman2 12月に日本に出張したときのインタビューがpodcastとして公開されたので、ここで報告。

 Universal Interview, 第19回「アプリケーションやコンテンツへデバイスを問わないアクセスパスを提供~パーベイシブ・アプリケーション時代を築く」
 (リンク先のページの「パソコンで再生」をクリックするとパソコンで再生できる)

 podcastインタビューと言うのは初体験だったが、自分で聞いた感想は、「無駄な言葉がやたらと多い」だ。

 インタビュー記事の場合は編集者の手が入るし、ブログの記事の場合は自分で推敲できる。しかし、インタビューの内容がそのまま音声として公開されてしまうpodcastの場合は、もう少し言葉を選んで簡潔に話さなければならないと自分でも反省。まだまだ修行が足らない。

 ちなみに、普通は一回分におさまるインタビューが、私があまりにもたくさんしゃべりすぎたために、19回、20回に分けて放送するそうだ。


プラダを着たiPhone

Prada_phone 少し前からネットではうわさが飛び交っていたようだが、LG ElectronicsがAppleのiPhoneと同じく、全面タッチスクリーン型の携帯電話をPRADAブランドで出すとの発表をした(LG PRADAのウェブサイト参照)。

 iPhoneを発表を見て、最初に追いかけてくるのはSamsungあたりと私は見ていたのだが、それが同じ韓国のLGなのは良いとして、Appleに先んじて2月に発売とは少し驚かされた。ひょっとするとAppleの製造委託先から情報がリークしていたのではないかとかんぐりたくなるぐらいのタイミングだが、逆に「アップルの方がLGをまねた、これは訴訟ものだ」と言う声も聞こえて来るし、ここは中立の立場を取っておくのが politically correct と…。

 どっちにしろ、液晶の値段の下落だとかタッチパネルの性能の向上などによって、こっちの方向に進むための下地は十分にあったとも言えるわけで、これから他のメーカーがどんなレスポンスを見せてくるかが楽しみだ。