映画「硫黄島からの手紙」とイラク戦争と
2007.01.23
Letters from Iwo Jima (邦題「硫黄島からの手紙」)を見てきた。Million Dollar Babyの時も思ったが、クリントイースト・ウッドはいたってシリアスな監督だ。
「映画はエンターテイメントであるべき」と考える私としては、通常はこの手の映画は避けるのだが、「米国に暮らす映画好きな日本人」としては、さすがにこの映画ぐらい見ておかないといけない。
この映画の価値は、「日本人から見た太平洋戦争」をアメリカ人監督が描いたことにある。同じ内容の映画を日本人監督が作ったとしても、そのメッセージは普通のアメリカ人にはほとんど伝わらない。
特にイラクとの泥沼の戦いに巻き込まれている今のアメリカにとって、この映画にこめられたメッセージの意味は大きい。この映画によって一人でも多くのアメリカ人が「自爆テロをするイラク人にも人格があり家族がある」ことを再認識してくれることを願うのはイーストウッド監督だけではない。
ちなみに、映画の中で、死んだ日本兵の刀を拾った米国兵士が「すげえ、こんなもの拾ったぜ!」と自分のものにしてしまうシーンがあったのだが、これで思い出したのが近所のアメリカ人が、屋根裏部屋に置いてあった数本の古びた日本刀を見せてくれた日のこと。終戦直後に兵隊として日本に上陸したその人の父親が、誰もいない防空壕に放置されていたものを持ってきたのだという。どう処分しようか悩んでいると相談されたので、「遺族を探し出して返したいのか?」とたずねると、そうではなくて「価値があるものだったら売りたい」と言う。
それを「戦利品」と呼ぶか「略奪品」と呼ぶのかは単に立場の違いでしかないし、60年も経っていれば何であれ時効なのだろうが、「価値があるものだったら売りたい」と、どうどうと言われてしまった時には、何と反応して良いものか少し悩んでしまった私である。
You can sell them out to the bereaved.
No wonder I've lost a couple of friends here in the UK.
Posted by: oxlife | 2007.01.23 at 11:25
私も先日見ました。全体を通してわずかな違和感はありますが、丁寧に作ってあります。
>特にイラクとの泥沼の戦いに巻き込まれている今のアメリカにとって、この映画にこめられたメッセージの意味は大きい。この映画によって一人でも多くのアメリカ人が「自爆テロをするイラク人にも人格があり家族がある」ことを再認識してくれることを願うのはイーストウッド監督だけではない。
この映画のテーマってやはりこれなんでしょうが、日本人からすると"当たり前じゃん"って思いますよね。
アメリカ恐るべし。
Posted by: 内科医(在米) | 2007.01.23 at 15:39
硫黄島、びっくりしたのは前半の爆撃シーンでした。
今まで爆撃シーンと言えば爆撃機からのものばかりで、実際に空襲にあった否との恐怖を感じたのはこの映画が初めてでした。
Posted by: 浦野 | 2007.01.24 at 06:07
アカデミー賞作品賞と監督賞にノミネートされましたね。外国語映画賞ではなく、本選のほうみたいです。
米国の公開映画館も増やすようです。
Posted by: 内科医(在米) | 2007.01.24 at 13:15
>この映画の価値は、「日本人から見た太平洋戦争」をアメリカ人監督が描いたことにある。同じ内容の映画を日本人監督が作ったとしても、そのメッセージは普通のアメリカ人にはほとんど伝わらない。
その通りだと思います。
感覚の違いというのは、根底にあるものが違うとどう説明してもなかなかわかってもらえないことが多いです(英語力不足っていうのも多々あるとは思いますが)。
言葉に表せない感覚をわかる人がわかるように表現してくれるというのは大切だと思います。
まだ、この映画は見ていないのですが、ぜひ見てみたいと思います。
Posted by: egg | 2007.01.25 at 18:21
狂気が去った後、皆が後悔するけれど、もう、取り返しがつかない。死んでしまった方が良かったのか、それとも生き残った方が救われるのか。
死ぬべきだったのか、それとも、生き延びるべきだったのか・・・私自信が、私が愛する人が、そして私を愛する人が。
私的には、私を愛する人が死ぬのが一番辛いかも。
そして、今日、知りましたが、日本側として戦った人には、大陸の半島から駆り出された人もいたのだそうです。
日米に加えてもう一つの視点を入れたら、クリント・イーストウッドも硫黄島の真実を描くことが出来たのでしょう。
硫黄島に原住民がもしいたのだとしたら、視点は、3つではなくて4つになるけれど。
Posted by: suuuuuuhoi | 2007.02.24 at 03:31