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シオレットに「すごい」Weblioを加えた

 bookmarkletのアイデアを求めて、del.ico.usをプラプラと探していたら見つけたのが、弾さんの「Weblioがすごい」というエントリー。読み進むと、

中島さんもこれを見ていたら、シオレットに是非Weblioを加えて下さい。
404 Blog Not Found:Weblioがすごいより引用】

と書いてあるではないか(う、行動パターンを読まれた^^;)。ちょっと試してみると、確かにすごい。(gooやAmazonのような)コードページの問題もなく、あっさりと動く。

 もう少しテストをしてからと思っていたのだが、間違えてリリース版のファイルをアップデートしてしまったので、「ま、いいか」ということでここで発表。

 ちなみに、シオレットに関しては、こちらのページを参照。複数のbookmarkletを自分で管理しているヘビーユーザーには必要ないかもしれないが、こんな「シェフにおまかせコース」的なサービスを喜んでいただける方もいるきっといるはず。私なりの「おもてなし」だ。


月刊ascii4月号コラム:古くて新しいパーソナル・コミュニケーション

 私がコラムを連載中の月刊asciiの4月号が手元に届いたので、宣伝を兼ねて引用。

 私自身、2003年から足かけ5年もブログを書いているのだが、つくづく感じるのは20世紀末にテレビや新聞で一方的に届けられる「マス」に傾きすぎたコミュニケーション(すなわち「マスコミ」)が、ネットのおかげで「パーソナルなコミュニケーション」に揺り戻されている、という感覚である。

 「そうは言いつつ、月刊誌ってマスコミじゃないの?」と少し自己矛盾をおこしてしまった私である。


「ソフトウェアの仕様書は料理のレシピに似ている」へのフィードバックをいくつか集めてみた

 一年近く前に書いた「ソフトウェアの仕様書は料理のレシピに似ている」というエントリー。今になってもトラックバックやコメントが送られて来るのは、実際に日本のIT業界に働く人たちの間にも「今のやりかたはおかしい」という疑問や不満があるという証拠だろう。

 そこで今日は、シオレットの引用機能のテストも兼ねて、よせられたフィードバックを新しい順にいくつか紹介してみる(それも、昨日になってやっとシオレットが動き始めたSafariブラウザーを使っての投稿だ^^)。

まして、優秀でないエンジニアがコードを書かずして、仕様書を作ることが出来ようか?ソフトウェア開発はウォーターフォールでは上手くいきません。

さくねこの”チラシうら”にっきより引用】

別会社のSEが設計して、それを請け負った会社のPGが実装する。こんなやり方でまともなプログラムが作れたらある意味凄い。物凄いオーバーヘッド作業をこなして作るわけだから。それでも意見のすり合わせとかできない部分はどうしてもでてくる。 その結果、ぼろぼろなソフトウェアが完成する。ぼろぼろじゃなかったら本当に凄い。鳥肌が立つぐらいに。どれだけの犠牲が支払われてきたのか想像するのも怖い。

ネリモノより引用】

今だにこんな世界があるのか。何処の国だよwwwwwww

黎明日記(シューティングゲームおもすれー)より引用】

でも…一番熟読して欲しい人々の耳にはきっと届かないんだろうなぁ。

がるの健忘録より引用】

問題はカネではないのだ。これは下流工程どころか、やがて上流工程でもインドや中国に先を行かれてしまう原因になる。そうなったときには、日本にIT企業は何社残るだろう。オフショアで人件費を浮かすことの合理性も大事だが、国内に本当の設計ができるような秀な人材をはぐくむためには、下流も上流もこなせるようなアーキテクトを現場が鍛えなければならないと感じる。

AFTER SEVEN - SICPを読む(42)より引用】

現在の自分の会社上の立場では、管理や仕様の確定などが主な作業となっており、プログラムを自分で書くようなことはなくなった。とはいえ、やはり自分自身で組んでみないことにはどうしても違和感が残る。

Smart and Changeより引用】

僕が前の会社を辞めた理由の一つがこんな感じです。僕の場合は下の立場だったわけですが、提案をすれば自分の会社の利益が減ってしまうという葛藤が常にありました。

髪はとんがってません。 - にぽたんさんの職業遍歴より引用】

私はここに書いている「どんなに優秀なエンジニアでも、決してプログラムを自分自身で書かずに良い詳細仕様を作ることは出来ない」という意見にまったく同意で、レシピ書き(設計)のほうに携わるならレシピに沿って調理すること(実装)は自分自身である程度は経験・理解しておいて欲しいと思います。別に実装のエキスパートになれとは思わないけど、各調理方法の特徴みたいなのは少なくともあるでしょうからそこは抑えておくべきです。

りるでい@みすぴー - レビュアーとレビューイとユニットブロックより引用】

本当にその通りだと思った。とても複雑であるシステムを設計する上で机上での作業は空論となりうる。やはり手を動かして頭を回転させ要所要所を 肌で感じないことには良いものは作れないと感じた。

kazooatokiwaの日記より引用】

 ちなみに、この日本特有のIT産業の構造と、言葉の壁のために海外へのアウトソース(海外にアウトソースする場合も、海外からアウトソースされる場合の両方)に余計なコストがかかるという特徴が、トーマス・フリードマン氏の指摘するフラット化する世界においてどんな意味を持ってくるのかにとても興味をそそられる。

 一つだけはっきりしていることは、そういった日本特有の特徴が日本のIT産業にとって大きな「足かせ」になるだろうこと。このままだと、優秀なエンジニアはベンチャー企業を興したり、海外に移住したり、外資系企業に転職してしまい、フラット化に取り残された日本のIT産業は、米国の企業と対等に戦うどころか、中国・インドとのコスト競争に巻き込まれてジリ貧になる、という悲惨なシナリオも十分にありうる。

 そんな理由もあって、若いエンジニアに会うたびに「英語だけは今からでも遅くないから勉強しておくと良いよ」と繰り返す私である。世界のフラット化が進めば進むほど、「英語が話せる」ことが必要不可欠になって来るのだから。


ネット時代の「あがってなんぼ」

 週末に作ったシオレットに関して、自分で解決できなかった二つの問題点を書いておいたのだが、読者の方からのコメントで解決することができたのでここで報告。

 一つは、Firefox上でFlashのバナーを持つページを見ているときにシオレットを起動すると、メニューの一部がバナーで隠れてしまう問題点。rakuto氏からの「position:fixedにして絶対配置にすることでFlash上に配置することが可能」という指摘どおりに変更を加えて解決。

 もう一つは、Safariでシオレットがさっぱり動かないという問題点。こちらは、iwasaky氏の「siolet.jsの110行目に全角のスペースが入っているためにSafariでは動かないようです」という指摘どおりに全角スペースを半角スペースに置き換えて解決。

 本当にありがたいものだ。ここを借りて感謝の意を表する。

 これで思い出したのが、以前、梅田望夫に聞いた「最近の学生インターンは、インスタント・メッセンジャーで横に繋がっているために、一人一人の能力以上の仕事ができてしまう」という話。私の問題解決方法も形は違えど、「他人の力を借りることにより効率的に問題を解決する」という意味では全く同じである。

 これだけ人と人とがネットで繋がる時代になってくると、ある人が「仕事が出来るかどうか」を判断するときには、こういった「他の人から助けを借りてでも問題を解決する能力」も含めた総合力-つまり、「手段はどうであれ与えられた問題を解決する能力を持っているかどうか」を問うべきである。そんな意味でも、弾さんの「プロ^2プログラマーは社交が8割」、「blogか、少なくとも作品としてのWebサイトがないと、相手にすらしてもらえない」という意見に大賛成。

 ゴルフの世界には「あがってなんぼ」という言葉があるが、これは「林に打ち込もうがバンカーに入れようが、最終的に何打でホールアウトする(=スゴロクで言うところの「あがる」)かだけが大切」という意味。仕事上の問題解決能力においても全く同じことが言える。「とても頭が良いがなんでも自分で解決しないと気がすまない」タイプと、「ちょっと困った問題が生じた時に助けてくれる知り合いが沢山いる」、「自分で解決できない問題があったときに、どこで調べれば良いか、誰に聞けば良いか知っている」タイプのどちらが実際の仕事で役に立つかは、結局のところは「あがってなんぼ」で評価するしかないのがこの世の中の仕組みである。

 そこで、川柳を二つ。

 コンピュータ ネットなければ ただの箱
 エンジニア ネットなければ ただの人

Satoshi the 川柳作家


「良い町づくり集会」を開いても誰も来ないのに、「けんか・火事」には妙に人が集まってくる

 先日の「その『頭がいい人は成功して当然』という発想が甘すぎる」というエントリー、少し強すぎる表現を使ってしまったために、「個人攻撃」と受け取られてしまい、少し反省している。

 特に反省しているのは、

子供のころから、「東大に入りさえば幸せになれるのよ、○○ちゃん」という母親の一途な価値観だけに踊らされて塾に通い続けた学歴社会の被害者

というくだり。筆者個人ではなく、このブログでも再三批判している学歴偏重社会の問題点を指摘したかったのだから、

「東大に入りさえば幸せになれる」というバブル崩壊前の価値観をあいかわらず子供にまで押し付ける学歴社会の被害者

と書くべきだったのだ。

 「匿名の筆者をあえてステレオタイプ化して問題を浮き彫りにしよう」という試みが個人攻撃に見えたのだとしたら、それは私の文章力不足の証拠。政治家だったら、口を一回滑らせただけで辞任にまで追い込まれたりするのだから、ブロガーだろうと気をつけなければならない。「口は災いの元」ではなくて、「キーボードは災いの元」だ。

 ちなみに、この「ミニ炎上」でこのブログへのトラフィックが激増(下のグラフ参照:オレンジがページビュー、ブルーが訪問者数)。丁寧なエントリーを書いてもなかなかここまでトラフィックが集まらないのに、ちょっとした論争がおこった時の方がはるかにトラフィックを集めるとはなんとも皮肉だ。「良い町づくり集会」を開いても誰も来ないのに、「けんか・火事」には妙に人が集まってくるのと同じなのか(「火事と喧嘩は江戸の華」参照)。このグラフを見ていると、「けんかだ、けんかだァ。みんな集まれ~」という江戸っ子の掛け声が聞こえてくる…。

Enjo


その「頭がいい人は成功して当然」という発想が甘すぎる

 はてなの人気エントリーに見つけた「頭のいい人が成功できるかどうかの境目」というanonymousなエントリー。ちょっと彼(そのエントリーの作者)の将来が心配になったのでひと言。

 そもそも「頭が良さ」が一つのものさしで計れると思っている点が大間違い。百歩譲って、「旧帝大の大学院にトップクラスの成績で入れるぐらいの学力がある」=「頭がいい」という彼のものさしを認めたとしても、「俺はこんなに頭がいいのになぜ成功できないのだろう=頭がいい人は成功して当然」という発想はあまりにも甘すぎる。子供のころから、「東大に入りさえば幸せになれるのよ、○○ちゃん」という母親の一途な価値観だけに踊らされて塾に通い続けた学歴社会の被害者、とで言えば良いのだろうか。

 これを読んで思い出したのが、大学時代の同期の一人。成績は文句なくクラスでトップ。ものすごく頭の切れる男で、修士号取得後に霞ヶ関の官僚になったのだが、彼が卒業間際に言ったセリフが象徴的。

 「俺の書いたプログラムにバグはない。

 既に高校生のころからプロ^2グラマー(参照)としてソフトウェアの難しさを身にしみて感じていた私から見れば、「ちゃんちゃらおかしい」セリフだったのだが、何を言っても決して譲らないタイプだったので、そのままにしておいた。

 プロ^2グラマーとして一番大切な素養は、「常に学び続ける力」。現状に甘んじたり絶望したりせずに、つねに新しいことを学ぼう、より良いプログラムを書こう、他人の話を良く聞こう、まわりの人たちから何か吸収しよう、とするハングリーな姿勢だ。「俺は頭がいいから成功して当然」「俺の書いたプログラムにバグはない」「客が欲しいものはすでに分かっている」と思ったら進歩が止まる。まわりの人も、「あいつは何を言っても譲らないから」と何も教えてくれなくなる。

 ちなみに、「謙虚にしろ」「自分の頭の良さを隠せ」と言うつもりは全くないので、誤解しないでいただきたい。頭が良いならば、その頭を使って、「バグのないプログラムを書ける人間などいない」、「市場が本当に必用としているものを見出すのは実はとても難しい」、「成功のためには頭の良さだけでなく、努力と社交力と運が必用」ぐらいは理解した上で、少しでも成功に近づくためには自分は次に何をすれば良いかを考えろ、ということである。


シオレットに「ウェブサイトの引用」機能を追加した

 昨日に引き続いて、シオレットに機能追加。今回は、自分でも前々から欲しかった「引用機能」だ。他の機能と同じく、引用したい文章を選択してからシオレットを起動し、メニューから「引用する」というアイテムを選べば良い。すると、別のページが開かれ、そこに「テキスト版」と「HTML版」の両方が表示されるので、どちらかのボタンを押して選択し、コピー&ペーストで自分のブログなどに貼り付けることができる。

 例えば、このブログの人気エントリーの一つでもある「日本語とオブジェクト指向」から文章の一部をこの機能を使って引用してくると、こんな感じになる。

ちなみに、オブジェクト指向の話とは関係ないが、言語学者の金田一春彦氏によると、目上の人に塩をとって欲しい場合の、最も丁寧な言い方は、「すみません、それはお塩でしょうか?」だそうである

Life is beautiful: 日本語とオブジェクト指向より引用】

 ただし、引用できるのは文字列のみ。画像だとか、テキストの属性などをそのまま持ってくることは出来ない。あと、技術的な制約から(詳しく言えば、「URLに引用する文章を埋め込む」という実装の仕方をしているので、URLの最大長制限に引っかかってしまうから)、あまり長い文章は引用できない。1~2段落・150文字程度の文章の引用にとどめておくことをおすすめする。

 繰り返しになるが、シオレットのインストールの仕方は以下の通り。

【シオレットのインストールの仕方】
 [シオレット] ← このリンクを右ボタンでクリックして「お気に入り/bookmark」として追加する。左ボタンでクリックしてしまうと、シオレットがこのページ上で動いてしまうので注意(その場合は、グレーの部分をクリックすればメニューを閉じることができる)。

 ちなみに、弾さんのエントリーを参考にbookmarkletに含まれているjavascriptを簡略化したので、ここで謝意を表明しておく。Thank you!


シオレットに機能追加。wikipedia と Amazon

 昨日公開したばかりのシオレット。ありがたいことに、さっそくコメント欄とブクマコメントを通していくつかアイデアが寄せられたので(感謝、感謝)、とりあえず私も使いそうな wikipedia と Amazon を追加した。

 ちなみに、シオレットのメニューはサーバーから来ているので、既にインストール済みの人は再インストールは不要(これでこそウェブ・アプリケーション!)。あと、Amazon の方には遠慮なく私のアソシエイトIDを挟ませていただいたのでここで前もって白状しておく^^。

 使い方は、Googleサーチなどと同じ。ウェブページ中のテキストを選択してからシオレットを起動し、「Wikipediaで調べる」、「Amazonで探す」をメニューから選べば良い。

 シオレットのインストールの仕方は以下の通り。

【シオレットのインストールの仕方】
 [シオレット] ← このリンクを右ボタンでクリックして「お気に入り/bookmark」として追加する。左ボタンでクリックしてしまうと、シオレットがこのページ上で動いてしまうので注意(その場合は、グレーの部分をクリックすればメニューを閉じることができる)。

 あと、昨日は省略してしまった、IEのツールバーへのシオレットの登録の方法。一度「お気に入り」に登録してから、そのリンクを"Links"というツールバーの一番左にドラッグ&ドロップする。それから、"Links"というツールバーそのものを、ブラウザーのツールバーの一番左下にドラッグ&ドロップする。結果は以下の図のようになる。

Siolet2


複数のbookmarkletの機能を一つにまとめた「シオレット」

 Bookmarkletの存在を知ってから、いくつか気に入ったものをインストールしたり、自分で作ってみたりして遊んで来たのだが、普通のウェブページへのリンクも含めて数が増えてくるとツールバーが一杯になってしまい、使い勝手がぐっと悪くなる。

 そこで、いくつかのBookmarkletの機能を一つにまとめた、メタBookmarkletを自分のために作ったのだが、せっかくなので、ここで公開。名づけて「シオレット」だ(bookmark=しおり)。

【シオレットのインストールの仕方】
 [シオレット] ← このリンクを右ボタンでクリックして「お気に入り/bookmark」として追加する。左ボタンでクリックしてしまうと、シオレットがこのページ上で動いてしまうので注意(その場合は、グレーの部分をクリックすればメニューを閉じることができる)。

 追加する場所としては、Firefoxの場合は Bookmark Toolbar への追加がおすすめ。登録後に一番左に動かしておくと、メニューボタンのように動いてくれる(下の画像参照)。IEでもLinks Toolbarに置くことが可能だが設定が少し面倒なので、ここでは省略する。

 お気に入り/bookmarkとして登録してしまえば、使い方はいたって簡単。ウェブページを見ているときに、サーチしてみたい言葉、場所を知りたい住所、意味を知りたい英単語などを見つけたら、それをマウスで選択してから(複数行に渡ってもOK)、お気に入りに登録した"[シオレット]"リンクをクリックしてシオレットを起動するだけだ。そうすると、以下のようなメニューがページの左上に表示されるので、実行したいコマンドを選べば良い(下の例は、はてなの会社概要のページで住所を選択した後にシオレットを起動したところ。ここで「Google Map で探す」をクリックすると、はてなのオフィスの場所がGoogle Map上に表示される)。メニューを閉じたいときは、メニューの外側のグレーになったところをクリックする。

Siolet

 とりあえず動作を確認したのは、IE6.0とFirefox2.0。フレームセットを使ったページでは動かないが、最近はフレームセットはあまり人気がないので、大した問題ではないだろう。FirefoxだとFlashを使ったバナー広告がメニューの上に来てしまうという問題があるが(Firefoxのバグ?)、回避の方法はまだ発見できていない。Safariでは全く動かないのだが、これもまだ解決していない(そもそもSafariでbookmarkletが動くのか疑問)。

 ちなみに、メニュー上にまだ少しスペースが余っているので、そこに追加するべき機能のアイデアを募集する。条件は、「ユーザーがページ上で選択した文字列」もしくは「現在見ているページのURL」だけから生成できるURLに行くだけで何かユーザーにとって価値のある情報が得られるサービスであること。

【追記・追加機能】


今年のアカデミー賞にもの申す

Oscar  アカデミー賞の発表まであと三日とせまったが、ことしのノミネーション、特に大事な作品賞と監督賞の候補には大いに不満がある。昔からの映画好きとしては、ひとこと言っておかなければならない。

 それぞれ5つづつの候補だが、そのうち Bebel、The Departed、Letters from Iwojima、The Queen の4つが両賞にノミネートされているが、「ちょっと偏りすぎていないか?」というのが私のいちゃもんである。

 このうち、Letters from Iwojimaが候補になったのは大いに納得。別のエントリーでも書いたが、アメリカ人の監督が日本人からみた太平洋戦争を描いたことは映画史上とても重要なできごとだし、私が審査員ならこれに票を入れる。

 The Queenが選ばれたのも分からなくもない。ダイアナ妃の死に対する英国王室の対応をドキュメンタリータッチに描いた良品だし、主演のHelen Mirrenの演技はなかなかのものだ。

 問題は、BabelとThe Departed。私に言わせれば、どちらも「純文学タッチのバッド・ムービー」。バッド・ムービーならバッド・ムービーらしく、Die HardPulp Fictionぐらいやって欲しい、まじめなテーマにエンターテイメント性を持たせたいのなら、Life is beautifulを見習って欲しい。一見エンターテイメント風に作っておきながら、どろどろの人間性を描いて見た人の気分を悪くするのはやめて欲しい。

 どちらの映画も、全編に渡って緊迫感にあふれる映像で、役者は良い演技をしているのだが、とにかくどちらの映画も病的に暗く、後味が悪い。Babelで描かれている日本の若者の暗さといったらゾッとするほどだ。

 特にひどいのが、立て続けに Gangs of New York、The Aviator、The Departed と同じような暗い作品を作り続ける Martin Scorsese 監督。どの作品もアカデミー賞のノミネーションを受けているが、明らかに政治力のたまものでしかない。Gangs of New Yorkなど、上映中に映画館を出てしまう人が沢山いるほどの駄作だったし、見た後の後味の悪さはどの作品も天下一品だ。

 Letters from Iwojima、The Queenでシリアス路線はカバーしたのだから、他の候補はもう少しエンターテイメント性の強いものにして欲しかった。Dreamgirls、The Devil wears prada、The illusionist というエンターテイメント路線の作品を全部候補からはずすことはないと思う。

 ということで、あえて候補の中から選ぶとしたら、作品賞も監督賞もLetters from Iwojima。でも、2006年公開の全作品から選ばせてもらえるのであれば、作品賞の方は The Devil wears pradaに。

 もし、私が賞を設定するとすれば、こんな感じか。

元気が出る映画大賞: The Devils wears prada
ロマコメ部門賞: The holiday
ミステリー部門賞: The illusionist 
シリアス部門賞: Letters from Iwojima
ドキュメンタリー部門賞: An inconvenient truth 

 やっぱり映画は「見た後に元気が出る」ものでなくては!