アカデミー賞の発表まであと三日とせまったが、ことしのノミネーション、特に大事な作品賞と監督賞の候補には大いに不満がある。昔からの映画好きとしては、ひとこと言っておかなければならない。
それぞれ5つづつの候補だが、そのうち Bebel、The Departed、Letters from Iwojima、The Queen の4つが両賞にノミネートされているが、「ちょっと偏りすぎていないか?」というのが私のいちゃもんである。
このうち、Letters from Iwojimaが候補になったのは大いに納得。別のエントリーでも書いたが、アメリカ人の監督が日本人からみた太平洋戦争を描いたことは映画史上とても重要なできごとだし、私が審査員ならこれに票を入れる。
The Queenが選ばれたのも分からなくもない。ダイアナ妃の死に対する英国王室の対応をドキュメンタリータッチに描いた良品だし、主演のHelen Mirrenの演技はなかなかのものだ。
問題は、BabelとThe Departed。私に言わせれば、どちらも「純文学タッチのバッド・ムービー」。バッド・ムービーならバッド・ムービーらしく、Die HardやPulp Fictionぐらいやって欲しい、まじめなテーマにエンターテイメント性を持たせたいのなら、Life is beautifulを見習って欲しい。一見エンターテイメント風に作っておきながら、どろどろの人間性を描いて見た人の気分を悪くするのはやめて欲しい。
どちらの映画も、全編に渡って緊迫感にあふれる映像で、役者は良い演技をしているのだが、とにかくどちらの映画も病的に暗く、後味が悪い。Babelで描かれている日本の若者の暗さといったらゾッとするほどだ。
特にひどいのが、立て続けに Gangs of New York、The Aviator、The Departed と同じような暗い作品を作り続ける Martin Scorsese 監督。どの作品もアカデミー賞のノミネーションを受けているが、明らかに政治力のたまものでしかない。Gangs of New Yorkなど、上映中に映画館を出てしまう人が沢山いるほどの駄作だったし、見た後の後味の悪さはどの作品も天下一品だ。
Letters from Iwojima、The Queenでシリアス路線はカバーしたのだから、他の候補はもう少しエンターテイメント性の強いものにして欲しかった。Dreamgirls、The Devil wears prada、The illusionist というエンターテイメント路線の作品を全部候補からはずすことはないと思う。
ということで、あえて候補の中から選ぶとしたら、作品賞も監督賞もLetters from Iwojima。でも、2006年公開の全作品から選ばせてもらえるのであれば、作品賞の方は The Devil wears pradaに。
もし、私が賞を設定するとすれば、こんな感じか。
元気が出る映画大賞: The Devils wears prada
ロマコメ部門賞: The holiday
ミステリー部門賞: The illusionist
シリアス部門賞: Letters from Iwojima
ドキュメンタリー部門賞: An inconvenient truth
やっぱり映画は「見た後に元気が出る」ものでなくては!