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コーポレート・ファイナンス入門

 息子の大学で授業参観をする機会があったので聴講したのが「Corporate Finance」の授業。わずか70分の授業であったが、とても分かりやすかったので復習の意味も兼ねてここに解説してみる。

 まず、会社として採用することを考慮している二つのプロジェクト、「S」と「L」があったとする。プロジェクト「S」は、一年目に50万ドル、二年目に40万ドル、三年目に30万ドル、四年目に10万ドルのキャッシュフロー(=会社に入ってくるお金)を生み出すが、プロジェクト「L」は、一年目に10万ドル、二年目に20万ドル、三年目に30万ドル、4年目に60万ドルのキャッシュフローを生み出す。

Finance1

 それぞれのプロジェクトに100万ドルの資金が必要で、調達した資金には10%の利息がかかると仮定したとき、会社としてはどちらのプロジェクトを選ぶべきか、というのが今回の課題である。

 「投資した資金を回収するのにどのくらいの期間がかかるか」で比較すると、プロジェクト「S」が3年、プロジェクト「L」が4年となるが、この方法では、トータルのキャッシュフローを評価に含めていないので、資金回収後に大きなキャッシュフローが期待できるプロジェクトを過小評価してしまう可能性があるので好ましくない。

 「トータルのキャッシュフローがどのくらいあるか」で比較すると、プロジェクト「S」が130万ドル、プロジェクト「L」が140万ドルとなるが、この方法は金利をまったく考慮していない点が不十分である。

 そこで、「現在のお金の方が未来のお金より金利分だけ価値が高い」という考えに基づき、一年後の1ドルの価値を一年分の金利分だけ割り引いた(1÷1.1)ドル(約0.909ドル)、二年後の1ドルの価値を二年分の金利分だけ割り引いた(1÷(1.1)^2)ドル(約0.826ドル)、N年後の1ドルの価値をN年分の金利分だけ割り引いた(1÷(1.1)^N)ドルと、金利分だけ割り引いて現在の価格(Present Value)に変換することにより、未来のキャッシュフローを一つのものさしで比較できるようにする手法(Discount Cash Flow = DCF)を採用するのが一般的である。

 この手法を使って、二つのプロジェクトの未来のキャッシュフローをそれぞれ現在の価格に変換すると以下の通りになる。

Finance2

 繰り返しになるが、最も重要な点は、こうやって未来のキャッシュフローを現在の価値に変換することにより一つのものさしで比較できるようにする点。それゆえにその合計値に意味が出てくるし、二つのプロジェクトの価値を直接比較して定量的な判断を下すことが可能になる。この場合だと、二つのプロジェクトのキャッシュフローの現在価値の合計(PV)がそれぞれ107.88万ドル、104.92万ドルとなり、プロジェクト「S」の方が価値が高い(つまり会社として選択すべきプロジェクト)ということが分かる。

 実際には、PVからプロジェクトに必用な資金を引いたNet Present Value (NPV)を指標とし、そもそも会社として考慮する価値があるプロジェクトかどうかがはっきりと分かるようにする。NPVが正ならば価値を生み出すプロジェクト、NPVが負ならば逆に価値を損なうプロジェクト(つまり会社としては手を出してはいけないプロジェクト)、NPVが大きければ大きいほど大きな価値を生み出すプロジェクト、という判断ができることになる。

 ちなみに、この分野に関しては、一度ちゃんと勉強しようと一年ほど前に定番テキストの「コーポレート・ファイナンス」を手に入れて読み始めたのだが、173ページまで読んだところで休憩中である(上下巻合わせて1200ページ以上ある)。これを機会に、再度チャレンジしてみようかと思う。

Comments

サンディエゴ無頼

なるほどねえ。
確かに、DCFmethodを使って「4年ターム」で考えるとプロジェクトSのほうが挙げる利益は多いですよね。だからプロジェクトSを推進すべき。

しかし、この議論ですが、机上演習の悪い例ではないでしょうか。こんな問題ばっかりやっていたら、頭の固い教科書通りの会社しか生まれないんではないかな?

正解は、「その会社の戦略に依る」ではないでしょうか。

プロジェクトSの傾向を見ていると、4年目以降、売り上げが落ちて全く商売にならないでしょう。4年目でプロジェクトを打ち切らないと行けないのは火を見るよりも明らかです。新サービスをはじないといけません。なんだか携帯電話のサービスみたいですね(笑)。

ところが、プロジェクトL。年々、売り上げが増えて行きます。4年目には60。もし5年目も少なくとも4年目と同じ60を稼ぐとすると、5年間の売り上げは(PV)は142にもなります。また、5年目以降も大きな売り上げを上げるだろうことが期待できます。長い目で見ると「お金のなる木」ですね。なんだかiTuneミュージックストアみたいですね(笑)。

4年間のプロジェクトSでPV=107で事業打ち止め、それとも5年間のプロジェクトLでPV=142、今後の高い売り上げも期待できる。

4年で結果を出すのか、もう少し長いタームで利益を出すのか。それこそ会社の戦略によって取るべきプロジェクトは違うと思いますよ。ただ、DCF法を盲目的に適用するのは、あまり頂けないなといと思うのですが。

ちなみに、私は企業人ではありません(笑)、サイエンティストです。

disraeligears

コーポレートファイナンス入門!これは大切ですね。
DCF法,ひいては資本コストに対する理解をもとに,経営を実践している日本企業は見当たないと思います。


サンディエゴ無頼さんは,DCF法に基づくプロジェクト評価やコーポレートファイナンスに誤解があるのではないでしょうか。

プロジェクトYearの決定は,何らかの理由による前提です。
そして,SとLを比較するのも,そうした何らかの理由による前提に立つことで,同Termのものとして比較されたわけです。

そもそもプロジェクトYearがわからないとか,CAGRから見てプロジェクトYearを一方に有利なTermに変更するというのでは,Valuationが成り立ちません。

こうした批判を聞くと,
欧米(特に米ですかね?)の株主資本主義に対して,
ただがむしゃらに,日本的経営にも良さがある!とか,企業は公器だ!なんて言っているのと,あまり変わりがないような気がします。

ちなみに,私はサイエンティストではありません。

index2001redbull

プロジェクトの意思決定においてNPVだけでなく、IRR、回収期間、会計上の利益、あるいは経営理念など、どの要素を重視するかは経営陣の判断ですからね。ある意味でサンディエゴ無頼さんのおっしゃる「その会社の戦略に依る」は正解だと思います。

後、DCF法は貨幣の時間的価値を考慮する点が理論的に優れているし、リアルオプションでも使うので便利だと思います。キャッシュフローの見積もりが煩雑すぎますが。

ちなみに、私は企業人でもサイエンティストでもありません。

crawl7

この4年間のキャッシュフローをどうやって算出するのでしょうか?そんなわたしはコンピュータ エンジニアです。

Dallas Computer Support

Very cool..

Computer Repair

Interesting!

Computer Repair

私はサイエンティストではありません。

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