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「皆既日食地図」に学ぶプレゼンのテクニック

 "Total Solar Eclipse Map (20001-2025)"を見て関心したのは、そのプレゼンのしかた。皆既日食の見える場所と日付がたった一枚の地図で一目瞭然になるというすぐれもの(下の図参照。クリックすると元の画像のあるページに飛ぶ)。「Edward Tufteに学ぶプレゼンのスキル」でも紹介したが、グラフィカルに表現するのとそうでないのでは伝えられる情報量が圧倒的に違うケースがあるが、これもその典型だ。

Eclipse


iPhoneのYouTubeが意外と使えない件について

 iPhoneに関してはベタボメ状態の私だが、数ある機能のうち「使えない」と思うものが一つだけある。Youtubeだ。iPhoneの入手当初2~3日は目新しくてなんどかYoutubeビデオを見たのだが、それ以来ぜんぜん使っていない。

 なぜかといえば、Youtubeは私を含めたほとんど人にとって「ブラウズする」ものではなく、「他の人のブログに貼り付けてあるものを見るもの」であるからである。

 CGMサービスの「おもてなし」をデザインするときに強く意識すべきなのは、 

作る人の数
  << 作品を積極的にブラウズしたりコメントを加えたりする人の数
   << 他の人たちが発掘してくれた作品をROM状態で楽しむ人の数

だという事実である。この比率はサービスによってことなるのだが、Youtubeの場合その比率は、Web2.0Expoで得たデータによれば

 1 : 10 : 250

ぐらいだそうである。つまり、youtube.comに自分からわざわざ出かけて言って面白そうなコンテンツを探す人は少数派で、ごく普通の人は、他の人のブログで面白そうなYoutubeビデオが紹介されているのを見るだけなのだ。

 iPhoneのYoutubeアプリが使えないのは、それがわずか数パーセントの少数派に最適化されたものであり、一般ユーザー向けのものではないという点である。それに加えて、iPhone上のSafariが(まだ)Flashをサポートしていないので、一番肝心な「他の人のブログに紹介されているYoutubeビデオを見る」という機能が欠如しているのである。

 iPhoneの一ユーザーとしては、「iPhoneのYoutube機能を使わない」だけのことであるが、もの作りをする立場の人間としては、「おもてなし設計」の難しさを再認識したしだいである。


「ギークの格言」ベストスリー

Flower1  diggで見つけた"The best geek Quotes, Sayings and Phrases"というエントリー。そのうち、私の笑いの琴線に触れた三つを紹介する。

・There are 10 types of people in the world: those who understand binary, and those who don't.
→この世の中には10種類の人間がいる。二進数が分かる人間と、分からない人間だ。

・I would love to change the world, but they won't give me the source code.
→僕は喜んで世界を変えてみせるつもりなんだけど、奴らったらソースコードを僕に渡してくれないんだ。

・The glass is neither half-full nor half-empty: it's twice as big as it needs to be.
→コップは、「水が半分入っている」のでも「半分空っぽ」なのでもなくて、コップが本来あるべき大きさの二倍の大きさを持っているだけなんだ。

 その中でも最も気に入ったのが、三番目のコップに関する格言(何のパロディだか分からない人はここを参照)。「愛すべき理科系人間たち」で紹介したジョークに通じる笑いだ。


全米には既に30万人の「歩くiPhone広告塔」がいるという事実

Iphone_bbq

 左の写真は、焼肉屋に集まった4人全員がたまたまiPhoneを持っていた様子。この状況だけでも結構すごいのだが、もっとすごいのが全員が「いかにiPhoneを持っていることが楽しいか」を口々に語り始めたこと(ちなみに、二人は女性。三人は、iPhoneを使いたいがために別の携帯電話会社からAT&Tに乗り換えたユーザー)。

 USA Todayのアンケート調査でiPhoneを買った人の90%が「とても満足している」との結果が出たそうだが(参照)、確かにうなずける数字だ。

 Appleは最初の30時間で27万個のiPhoneを売ったと発表したばかりだが、その後の販売も順調であることを考えれば、少なくとも30万人の「iPhoneを買ってとても満足している」ユーザーたちが、歩く広告塔となって全米でiPhoneをさもうれしそうに使いながら宣伝しまくっているということになる。

 これぞ「バイラル・マーケティング」の真髄だが、この勢いなら9月末までに100万台を売るとう目標を達成するのはそれほど難しくないだろう。


普通のiPhoneユーザーは月に100MB以上のデータを送受信する

 iPhoneは現在のところ米国でしか販売されていないし、AT&Tのネットワークでしか使えないが、興味深いのがそのデータ通信料金。使い放題で$20ドル(訳2400円)と良心的な値段だが、一つ興味があったのが、パソコン並の機能を持ったブラウザーとメールクライアントを乗せたiPhoneの場合、どのくらいのデータ量を使うことになるのだろうということ。

 ちょうどiPhoneを入手して二週間になるので、settings->usageのページを開いて調べてみた。AT&TのEDGEネットワークを使って(つまりWiFiの圏外で)送信したデータが20MB、受信したデータが120MBである。これを月に換算すると300MB近いデータ(パケット換算で200万以上)を送受信することになる。

 私がヘビーユーザーであることを差し引いても、普通のユーザーが月に100MB(78万パケット)以上のデータを送受信する可能性は十分に高いわけで、果たしてこれがAT&Tのネットワークにとってはとんでもない負荷なのかどうか、データ通信ビジネスとしておいしいのかどうかが、とても興味のわくところである。

 この「月100MB以上」というデータ通信量が、日本の使い放題ケイタイの数字と比べてどのくらいなのか調べようと、「携帯 使い放題 MB」でググってみたのだが、良いデータが見つからない。もし、日本の「パケ放題サービス」の平均的なユーザーが実際にどのくらいのデータ量を使っているのかをご存知の方がいたら、ぜひともコメントやトラバ教えていただけるとありがたい。

【追記】NTTドコモの料金プランのページによると、携帯電話の場合高々月10MB(78,000パケット)ぐらいしか使わないという前提で月3900円の値段設定がされていることが分かる。ただし、これは携帯電話のブラウザーやアプリに限定されたもので、「通信量の多いパソコンユーザーは、パケットパック90がお勧め」と書いてある。このままの料金体系でiPhoneを日本に持ってくると、280MB(=約200万パケット)を使う私の場合、たとえ1パケット0.015円のパケットパック90を使っても月約3万円を払わされる計算になるが、これじゃ使う気にならない。やはり、「予想外な価格設定」が出来るソフトバンクに分があるのか…。


私がMBAを取得することにした10の理由

 人がある行動を取るときには、色々な方向に自分を引っ張っていこうとするさまざまなモチベーションが合わさった結果、合同ベクトルとして一つの方向に進ませる、と考えた方がしっくりとくる。私を「MBAを取得する」という行動に駆り立てたのも、さまざまなモチベーションが合わさっての結果だ。

 ということで、頭に浮かんだモチベーションを列挙してみる。

1.MBAを持たずに企業経営をすることにハンデを感じたから
2.MBAの連中が話すMBA用語をちゃんと理解できるようになりたいから
3.他のエグゼクティブたちとコネクションを作りたいから
4.UIEの起業を通して学んだことを頭の中でもう一度整理したいから
5.メインジョブ・エンジニア、サポジョブ・MBAというのが最強だから
6.これからいくつもいくつも会社を作りたいから
7.私だってMBAぐらい取ろうと思えば取れることを証明したかったから
8.MacBookやAdobe CS3が学割で買えるようになるから
9.飛行機の免許を取るよりは実生活に役に立ちそうだから
10.ブログのネタになるから

 まあ自分の車を改造して「最速マシン」を作るために時間とお金をたくさん費やす人たちがいるのだから、こんな風に自分自身に投資をするのも悪くはない、と思う私である。


9月からUWのMBAプログラムに参加します

Mba 日本に暮らす人たちから考えれば、私ぐらいの歳になってから今さら学校に行って勉強するとなどということのはめったにない話かも知れないが、「生涯教育」がシステムとして確立している米国では、それほどまれなことでもない。

 特にUW(University of Washington)の場合、通常のMBAプログラムの他に、働く人向けのExecutive MBA Programというのがある。月に一度だけ三日から四日の集中授業を受ければ二年間でMBAが取得できるという特別コースだ。

 このプログラムの存在を知ったのは、去年の夏のことだが、去年の分に関しては、既に申し込み期限を過ぎていたため、今年の9月からのプログラムに応募したのである。

 GMATというテストをぶっつけ本番で受け(得意の数学のおかげでそこそこのスコアが取れた)、書いたエッセイは知り合いに添削してもらい、マイクロソフト時代の同僚・最初にUIEに投資してくれたベンチャーキャピタルの知り合い(UIEの元会長)・今の会社の腹心の部下(UIEの現社長)にrecommendation letterを依頼し、卒業した大学から英文の成績証明書を取り寄せて願書を出したのが5月の頭。

 ところがマイクロソフト時代の同僚に頼んでいたrecommendation letterの一つが大幅に遅れ、書類がぜんぶそろったのが6月のなかば。「これで結果を待つだけ」と思いきや、6月の末になって「米国の大学を出ていないので、TOEFLを受けてもらう必要がある」との連絡が来る。「17年もアメリカに暮らしているのにいまさらTOEFLはないでしょう」と掛け合うが、「規則は規則」と譲ってくれない。しかたなくTOEFL受験の申し込みをすると8月まで受験できないという。再びUWに連絡すると、「TOEFLの代わりにMichigan Language Testを受けても良い」と教えてくれ、それを受験したのが7月12日。

 先週になってそのテストの結果が出、最終面接をしたのが今日。家に帰ってみると合格通知がメールで届いていた、というしだいだ。

 なぜいまさらMBAを取得しようと思ったか、などについては次のエントリーで。


直感的なUIとhand-eye-cordinationの話

 下のビデオは一歳度児がiPhoneのフォト・アルバムの機能を使っている姿を撮影したものだが、これを見ると「直感的なUI」とは、まさに人間が赤ん坊のうちにマスターする"hand eye cordination(目からフィードバックを受けながら手先を動かして物をコントロールする能力)"に合致したものなのだということが良く分かる。


【追記】参考までに、私が特に好きなUI関連の書物二冊へのリンクを張っておく。特に「誰のためのデザイン」はUIが単なるソフトウェアやウェブ・サイトのUIデザインの問題ではないことに目を開かせてくれる良書だ。

誰のためのデザイン?—認知科学者のデザイン原論
Envision Information


give thumbs-up to ...

 今朝起きて最初に読んだのが「Copyright Board of Canada gives thumbs-up to "iPod tax"」。日本でも話題になっているiPod課税にかんして、「Copyright Board of Canada」(カナダ著作権評議会とでも訳すべきか?)が「ipod課税すべき」との結論を出したという記事だ。

 今回うんちくを傾けたいのは、タイトルに含まれる"give thumbs-up to ..."という表現。"thumbs-up"とはアメリカ人がものの良し悪しを表現するときに、親指だけを立てた握りこぶしを作り、良ければ親指を上に、悪ければ親指を下に向けるしぐさに由来している言葉である。直訳すれば「…親指を上に向けたしぐさを与える」、つまりこのケースでは、「iPod課金を採用すべきだとの結論を出した」となる。

 リンク先の文章には、さらに

The Copyright Board's decision now not only gives the go-ahead to the "iPod tax," it also makes some worrying statements regarding potential levies on other everyday electronics.

という表現が出てくるが、この"give the go-ahead to..."もほぼ同じ意味である。ここでの"go-ahead"とは「前に進め」という命令文を名詞化したものなので、同じくiPod課金を支持する結論を出したことになる。

 ちなみに、日本語で言うところの「にゴーサインを出す」は、ほぼ同じような"give the go sign"という表現が和製英語となったものである。


映画評: Hairspray

 ジョン・トラボルタが太った女性(主人公の母親)を演じるミュージカル・コメディ映画「Hairspray」が公開されたので早速行ってきた。まだ白人と黒人が別々の教室で授業を受けていた1962年のBaltimoreを舞台にした、ダンス好きの小太りの女の子Tracyを主人公にした、とにかく笑えて元気の出る映画。

 私もこちらに暮らすようになって知ったのだが、こちらではわずか四十数年前まで国や公立学校でどうどうと人種差別が行われていたのだ(参考:wikipedia, racial segregation)。そんな中で、それまでの「常識」に疑問を投げかけ、「未来のために」と立ち上がるTracyは「正のオーラ」のかたまりだ。

 ちなみに、となりに初老の白人女性が二人座っていたのだが、自分たちの青春時代が懐かしいのか、激しい盛り上がりをして大笑いをしていた。最初はどうしようかと思っていたのだが、あそこまで徹底的に楽しんでいる人たちがとなりに座っているとこちらまで一緒にもりあがってしまうから不思議なものだ。帰りがけに、「good movieだったね」と声をかけると、「great movieよ」と返された。こんな風に知らない人と気楽に会話ができるここ(シアトル)の文化が妙に肌になじんできた今日このごろである。

 日本での公開はいつかは知らないが10月の中旬らしいが、とりあえずYoutubeにアップロードされていた予告編を貼り付けておいたので、興味のある人はどうぞ。