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3G版のiPhoneはDoCoMoとSoftbankが採用しているWCDMAになるだろうという話

Do Co_2 Mo  バタバタとしているうちに、息子に先を越されてしまったiPhoneの入手。少し触らせてもらったが、細かなところまで気を使ったその使い勝手にはひたすら脱帽である。わずか二年前ぐらいまでは、「日本のケイタイは世界一進んでいる」と胸を張って言えたが、iPhoneと他のケイタイの差は、ちょうどパソコン黎明期のMacとDOSマシンぐらいの開きがある。SamsungやNokiaが一見iPhone風のケイタイを出しては来るだろうが、ここまでの細部へのこだわりを持ったデバイスを作れるとは思えない。Appleストアのドアノブのつや消しのし方にまでこだわったジョブズがいるからこその芸当である。

 しかし、ソフトもここまで来ると、各ハードメーカーがいちいちハードごとに作っていてもコスト的に見合わない。そうなると、「誰か」がソフトを作るしかないのだが、それが誰になるかがどのくらい重要かは、パソコンの世界でWindowsを作ったMicrosoftがどれだけの企業になったかを考えれば、誰にでも分かるだろう。

 しかし、パソコンビジネスにおいて、IntelとMicrosoftにおいしいところを全部持っていかれてしまったメーカー陣がそう簡単に同じことをMicrosoftにさせるとは思えない。だからこそできたはずのSymbianはNokiaの子飼いになってしまったし、Linuxもまだまだである(そもそもオープンソースというアプローチで、iPhoneほどの完成度のものが作れるのかを疑問視する人も多い)。チップとOSの両方を持つQualcommは当然無視できないが、ヨーロッパのキャリアやメーカーのQualcomm敵視は、シリコンバレーでのMicrosoft敵視の非ではない。かと言って、Appleが「ケイタイ用OS-X」をライセンスするとは思えず、先を読むのが非常に難しいのが現状である。

 ちなみに、次の3G版 iPhoneはAT&T wirelessも採用しているWCDMAだろうというのが巷(ちまた)のうわさである(参照)。ヨーロッパへの展開を考えれば、その説には強くうなずけるが、そうなると日本のパートナーはauではなくて、DoCoMoかSoftbankに限られる。結局のところは、どちらがAppleが出してくる条件を飲むかという話になるのだろう。別のうわさによると、AT&Tは通話・通信料の一部をAppleに渡しているというが、そこまでの条件にDoCoMoがシッポを振るだろうか、というのが大きな疑問である。それにあくまで拒否反応を示すDoCoMoがSoftbankにiPhoneを持っていかれてしまう、というのがいかにもありそうなシナリオだが、実際のところはフタを明けてみないと分からない。


スクエニの執行役員を辞職しました

Ff Dq  わざわざブログで告知するほどの大事件でもないのだが、逆になにも触れないでおくと「どうして隠しておくのだろう」と深読みする人がいるかもしれないので、ここに書いておく(離婚の記者会見をわざわざする芸能人の気持ちが少し分かったような気がする^^)。

 私がCEOを勤めるUIEvolution Inc.のスクエニによる買収後、スクエニのコーポレート・エグゼクティブ(=執行役員)を兼任していたのだが、6月末日を持って退職させていただいた(ただし、UIEvolutionのCEOはそのまま続投)。スクエニとはau向けのezGame Portalだとか、オンデマンドTV向けのセットボックスのUIだとかのいくつかの共同プロジェクトに関わらせていただいたが、それらにも一通りの決着もついたこともあるし、FFやドラクエの売り上げに貢献できるわけでもなく、役員会議もサボりっぱなしの私がのうのうとそんな大それた名前の役職に座っていても仕方がないので、私の方からお願いして役職から降ろさせていただいた(6月末の「サメとマンボウのエントリー」に何かを感じた人←あなたはするどい)。

 UIEvolutionに関して言えば、起業、資金集め、人集め、倒産の危機、レイオフ、増資、買収、買収後の企業運営、と色々な経験をさせていただいた。辛い事と楽しい事の両方があったが、少なくともひとつだけ言えることは、あのままマイクロソフトにいたよりもはるかにドラマチックだったこと。これからの人生をもっとドラマチックにするためにも、今回の辞職は必然なのかも知れないと考えている。

 最後に、これだけカルチャーが違う会社から来た私の言葉に耳を傾けてくれたスクエニの方たちには、本当に感謝している。ゲーム・ビジネスの世界も変わりつつあるけど、ああやって外に向かってアンテナを張っている人たちがいるかぎりは安心かな、と。


iPhone風アイコンを使ったUIの試作

 iPhone風アイコンのテンプレートではいろいろと遊ばせてもらったが(参照1参照2)、今日はそれを使ってUIを試作してみた(注:星座を選択する部分のみなので選択してもなにもしない)。

 ちなみに、これを作ってつくづく感じたのは、Flashがプログラマー向けの部分(ActionScriptを使ったプログラミング)とデザイナー向けの部分(タイムラインを使ったFlash Movie作り)の二分化が加速していること。

 最初の星座用のボタンを作るまではFlashのオーサリングツールを使って簡単に作れたのだが、それと同じ動作をするボタンを他の星座に向けて作ろうとしたとき、(1)一度それをパラメーター化したプログラムに変換してから再利用するか、(2)手作業であと11個ボタンを作るか、の選択肢に迫られて悩んでしまった。結局は後者の方法を選んだのだが、その作業のかったるいことと言ったらない。動作だけ同じでアイコンだけ違うボタンみたいなものをもう少し簡単にオーサリングツールから作れると良いのだが…


映画評:キンキーブーツの準主役が香取信吾に妙に似ている件について

 Netflixに月々17.99ドル払ってDVDレンタルし放題のサービスを受けている我が家だが、このサービスの利点は「試しに借りてみる」ことが簡単に出来ること。最初の数分を見て面白くなければすぐに送り返してしまえばよい。

 そんな見方をしていると、封切り時には注目もしていなかった良品にたまに出会えたりする。今回のそれは、イギリス映画「キンキー・ブーツ」。

 「イギリスの田舎町のつぶれそうな靴工場を親から引き継いだ主人公が、苦肉の策に採ったニッチ・マーケット戦略とは…」というありがちな内容だが、準主役のLola役のChiwetel Ejioforの「女装趣味のの黒人」役がすばらしく、いかにもイギリス・ユーモアたっぷりの作品に仕上がっている。ちなみに、その女装した姿が妙に香取信吾に似ていると思うのは私だけだろうか…


ブロガーをレンガ職人にたとえてみる

Blocks  ブログを書き始めて4年近くたつが、私にとってのブログを書くことのの一番のメリットは、自分の頭の中が整理できることである。

 私にとって、「ブログのエントリーを書く」という作業は、自分の頭の中に他の考えと混ざり合って混沌(こんとん)としている粘土状のアイデアや考えを、ブログエントリーという型に流し込んでから軽く焼きを入れてブロック状のレンガにして積み上げて行く作業のようなものである。

 私自身にとってもっとも価値があるのは、この「型に流し込んでから焼きを入れる」という作業そのもの。これは単に「自分の頭の中にあるものを文章化する」という比較的簡単な作業の場合もあれば、「少し調査をして自分の主張がある程度正しいことを確認する」という手間のかかる作業である場合もあるが、いずれにせよそうやってブログエントリーというレンガをひとつひとつ「型に入れて、焼いて、積み上げる」という作業を4年近くも繰りかえすことによって得られたものは、単に積み上げられたブロック塀(=このブログ)だけではなく、整理された頭の中だし、自分の考えを人に説明することが得意になった自分である。

 私がエンジニアを採用するときに「ブログを継続的に書いていること」を重視しているのは、ある意味では「普段から頭の中を整理して、人にわかりやすく説明する訓練をしているか」を見ているのである。自分の頭の中すら整理できていないエンジニアに良いプログラムが書けるとは思えないし、コミュニケーション能力に欠けるエンジニアがチームの一員として成功できるとも思えない。

 その意味では、ブログは格好のトレーニング・ツールだし、「ブログを継続的に書くこと」は自分への投資である。書いてみませんか?「忙しい」とか「書くことがない」とか言わずにィ…

【参考文献】「ブログは始めてみたいが、何を書いてよいか分からない」と悩んでいるための三冊


ソフトウェア・パテント不要論

Whitefish_sunset  今日、家に帰ってみると、Georgia Institute of Technology (ジョージア工科大学)から、Inventors and Their Inventions: Understanding the Innovation Process というアンケート型の質問状が届いていた。過去数年間に、米国・ヨーロッパ・日本でパテントを申請した人の中からランダムに抽出したサンプルだという。

 質問の内容は、なぜパテントを申請したのか・その発明にどのくらいの時間をかけたのか・その発明は実際の商品に活用したのか、などのありきたりのものだったが、最後に自由にコメントを書いてほしいという欄があったので、そこでソフトウェア・パテントに関して徹底的な批判を加えておいた。

 前にもこのブログで書いたことがあるが、ソフトウェア、ユーザー・インターフェイス、そしてビジネス・プロセスに関してのパテントは認めるべきではない。

 特許法のそもそもの目的は、苦労して何か新しいものを作り出した人に先駆者利益を与えることにより、発明に対する努力を促して文明の進歩を促進しようとするものである。

 その意味では、開発費が莫大にかかる素材や医薬品や製造工程に関しては現行の特許法が良い方向に働いているが、ソフトウェアやユーザー・インターフェイスのように「アイデアを思いつくのは比較的簡単だが、それをビジネスになる形のソフトウェアやサービスに仕上げるプロセス方がずっと大変」であるものに関しては、現行の特許法を適用すると、逆に文明の進歩にマイナスになる。

 私が知っている例としては、Amazonのワンクリック・パテント、ホンダのどのドアが半ドアかを示すパテント(これはやっと特許が切れたらしく他のメーカーも採用しはじめた)、松下がジャストシステムを訴えたアイコン・パテント、GemstarのEPGパテント。どれも、アイデア自体はすばらしいものの、これらのパテント化を認めたことによる弊害の方が、そういったものがパテント化可能であるがゆえに人類全体が受けるメリットよりもはるかに大きく、権利化が文明の進歩に役立っているとは言えない。どのドアが開いているか教えてくれない警告ランプだとか、妙に使いにくいHDレコーダーなどは、そういった弊害の典型的な例である。

 私も、マイクロソフト時代にたくさんソフトウェア・パテントを申請して来たが、マイクロソフトとしても、そうやってパテントを申請しておかなければ、他の企業にパテントを申請されて痛い目にあう可能性があるからと防御目的で申請しているだけのことである。

 そんなことをして得をするのは弁護士だけだ、ということを知りながら「申請しなければ損をする」現在の特許法。「パテントやくざが甘い汁を吸うだけで文明の進歩になんらプラスになっていない」の現在のソフトウェア・パテント。早くなんとかしていただきたい。