心理トリック:Anchoring
2007.08.31
"The Hidden Traps in Decision Making" という Harvard Business Review の記事を読んでいて面白い問題を見つけた。
問題1:トルコの人口は3千5百万人より多いでしょうか少ないでしょうか?
問題2:トルコの人口は何人ぐらいだと思いますか?
これ以上進む前に、上の二つの問題に対する自分なりの答えを考えておいて欲しい。
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興味深いのは、この二つの問題を、問題1の数字だけを変えて(例えば「1億人より多いでしょうか?」として)二つのグループに与えてみると、問題1で使った数字と問題2で返って来た答えの間に強い相関関係があることである。あたりまえといえばあたりまえの話だが、問題2を解くときに「問題1で3千5百万人より多いか少ないか、と尋ねているのだから、正しい答えはその前後に違いない」と思うのが人間の心理である。
こういう心の働きを、心理学では anchoring (anchor=船のいかり)と呼んでいる。つまり、上の例で言えば、問題1で与えられた数字が(海の底に沈んだいかりのように)心に強く残ってしまい、問題2をその数字抜きでは考えられなくなってしまう状態を言うのだ。
さてここで問題である。こんな人間の心理をついたセールステクニックや交渉テクニックにはどんなものがあるか考えていただきたい。
「天才数学者、株にハマる」(pp.25-26)ではウクライナの人口という例で同じ話が書かれているのですが、その続きはさらに興味深いです。最初に選ぶ数字をランダムに決めて(たとえばルーレットに2億、1億、500万といった数字を書いて回し)、その数字を指してウクライナの人口はこの数字より上か下かと質問すると、その返答は最初の数字と驚くべき相関を示すのだそうです。
正しい答えを質問者が知っているわけはない(ランダムな数字なんだから)というのがわかっていても、最初にあげられた数字に気持ちが引っかかってしまうということなんですよね。
Posted by: rui | 2007.08.31 at 23:17
定価を吊り上げておいて、何%値引き!みたいなやり方。
例えば、家電製品のような原価にどれくらいの経費がかかっているのか、
素人目には予想がしにくいものなんかは、
全く根拠がない定価を盲目的に信用してしまう傾向にあるように感じる。
Posted by: TeruWatanabe | 2007.09.01 at 02:10
数字だけでなくて、商品のネーミングでもそ~だよね~。
iPodのあとのiPhone。もし仮にiPodがなくて(最悪例としてはNewtonの後の)iPhoneだったら、これほどの期待感は高まっていただろうか?
あるいはiPodとは似ても似つかないStevePhoneというネーミングであったなら?とか。
だからWindowsXPのあとのVistaというネーミングは最悪だったと思うんだ。
Posted by: ぶらりん | 2007.09.01 at 04:40
通販番組がまさしくだと思いました。
「なんとこれで¥9999。今ならこれも付いてきます。」
最初の値段提示で買ってもいいかなと思わせて、さらにおまけ付きでこれはお買い得と思わせる。
Posted by: yasuki | 2007.09.01 at 10:54
ワインの値段( http://www.amazon.co.jp/モンドヴィーノ-ドキュメンタリー映画/dp/B000EGDDMW )とか。
Posted by: かわうそ | 2007.09.01 at 16:48
セールスマンには、「客には高い商品から見せよ」という鉄則がありますな。
Premium Class 10万円→High Grade 8万円 →Standard Grade 5万円の順で紹介せよ。間違っても逆順に紹介して、5万円をAnchorにしてはならぬ。
Posted by: Ron | 2007.09.03 at 06:18
セールスマンには、「客には高い商品から見せよ」という鉄則がありますな。
Premium Class 10万円→High Grade 8万円 →Standard Grade 5万円の順で紹介せよ。間違っても逆順に紹介して、5万円をAnchorにしてはならぬ。
Posted by: Ron | 2007.09.03 at 06:19
「ビタミンCがレモン○個分」なども、近いですかね。この場合、予めレモンのビタミンC含有量などを消費者に提示するわけではないので、「レモン=いかにもビタミンCが多く含まれていそう」という「先入観」をベースにしていると言えますが。
Posted by: Dyun | 2007.09.04 at 20:04
http://www3.nhk.or.jp/gatten/archive/2007q2/20070425.html
NHK「ためしてガッテン」での実験。
ルーレットは単なる運試しとし、ruiさんの例示よりさらに関連性を薄くしていました。
Posted by: zax | 2007.09.09 at 08:44