書評:生物と無生物のあいだ
2007.08.12
今回の書評は、成田空港の書店で何気なく買い求め、そのまま飛行機の中で一気読みした「生物と無生物のあいだ」。
生物学そのものに関する読み物としても面白いが、その中に描かれる人間ドラマがスパイスとして良く効いている。特に前半のDNAのらせん構造の解明にまつわる研究者間の熾烈な戦いの様子は、著者が研究者であるからこそのリアリティが伝わってくる逸品。
あと、私が普段からピア・レビューに関して前から感じていた疑問に、研究者の立場からあっさりと答えてくれているところが印象に残った。
このような状況下におかれたら天使でさえも落ちるかもしれない。あなたは、F教授の論文の細部について、ああでもない、こうでもないと難癖をつけ、論文採択のためには、図表の改良や追加実験の必要があることを指摘した回答文を編集部に戻し、できるだけ時間を稼ごうとする。そして一方で、自分の部下たちに必要なデータと緊急命令を与えて自らの研究の完成を急がせる。これを別の専門誌に提出すれば、うまくすればF教授を出し抜くことができるかもしれない。【103ページ】
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