私のとっておきのプログラミングスタイル
日本語の進化について、一つの実験をしてみる

映画「ゲド戦記」を見てあらためて認識した宮崎駿のすごさ

 思いっきり周回遅れでやっと映画「ゲド戦記」を見たわけだが、感想は多くの人と同じ。これではジブリ作品の将来があやぶまれる。今まで、ナウシカ・トトロ・宅急便・ラピュタなどの超一流作品を宮崎駿監督の指揮のもとに出して来たスタジオジブリ。優秀なスタッフを抱えていても、監督が違うだけでこんなにも出来が違うとは。結局は監督なんだな、と。

 「ゲド戦記」を見てあらためて認識したのは、宮崎駿が作る「世界観」の説得力のすごさ。子供にしか見えないネコバス、毒をまき散らす腐海、飛行石、神様たちの銭湯ーそんな、本来ありえないものを題材にしながら、わずか最初の五分間で彼が作り出した世界が妙に納得できてしまい、あとはワクワクドキドキしながらストーリーを楽しむだけ。それが宮崎マジックである。

 映画「ゲド戦記」の一番の問題は、この「観客に映画の中の世界観を瞬時に納得させる力」の欠如である。あんなに「入って行けない」映画は久しぶりであった。映画が作り出す世界観が納得できないままでは、主人公の気持ちも伝わって来ないし、ワクワクドキドキもしない。Wikipediaのスタジオジブリの項目に書かれている「宮崎(駿)と高畑の2人が引退したらジブリも終わる」という言葉も納得できる。少し寂しい気もするが、これだけ映画が産業として成熟しているにも関わらず、良い作品を作る力が一個人に属しているというのは、なんだかそれはそれでうれしいような気もする。

Comments

川合亮輔

その点Pixarは優秀ですね。一個人に依存することなく、多様な才能を認め、なおかつそれを継続的に育む環境が完璧にできあがっている。「Aクラスの人はAクラスの人を…」という中島さんの過去のエントリーでも似たようなことをおっしゃていたかと思います。

ジョン・ラセター曰く「Pixarはすべてが話し合いで決まる。ひとりひとりの才能が足りない分、人数でカバーしているのです」
http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/ghibli/cnt_pixar_20040518.htm)

おけー

ジブリには才能のある人材は確実に居ると思います。
「納得させるチカラ」をもつ人間も絶対に居るはずです。
単にそういう人材がそのチカラを存分に振るえないのでは、と思います。

その「納得させるチカラ」をもつ人間が、組織の中で権力を持てない、持とうとしない、持たせようとしない(もしくは出来ない)構造があるのではないかと。

単に息子、というだけで神輿に乗せられている状況から容易に推察できます。だってその人間のもつ物語や映像に関する「センス」は、「センス」を持つ人間にはすぐに判りますもの。

話題性や金銭的思惑を除けば、あんな監督をたてたりしないでしょう。

少なくとも、「物語」を創る人や「物作り」に魂を捧げている人は「ダメだ」と判っているモノは死んでも世の中には出しませんよ。

…でもそんな人に限って現世での権力は低い。

イソムラ

「プロフェッショナルの流儀」という番組で宮崎駿氏の開発現場を紹介していました。
とにかく大量のスケッチを描き続けるんですよね、ストーリー展開は二の次で。スケッチを描く作業の中から、新しいと感じる(たった一握りの)キースケッチを探すんです。
頭で考えるのではなく、手というメディアを使って(たまに普段使わない画材も使ったりして)偶発的に生み出されるものをただただ待つんです。

だからこそ新鮮で引き込まれるものを作れるんでしょうね。

ken

昨夜ラピュタを久しぶりに見ました。本当に素晴らしい冒険活劇です。
ただジブリでさえ(あるいはジブリだからこそ?)きちんと後継者を育てられないのが日本のアニメ産業の限界なのかもしれません。上記のコメントにあるようにPixarは凄いと思います。ジョン・ラセターが要であることは間違いありませんが、優秀な人をちゃんと見出し、素晴らしい作品を作り続けるカルチャーをきちんと進化させ続けているところが凄い。残念ながら宮崎監督でさえももう過去のような作品を作ることはできないんじゃないかと思います(少なくともハウルを観てそう思いました)。
持続的なイノベーションを生み出す組織。それは個人の能力に依存はしているけど、ただ一人に依存していては駄目なんですよね。。。興味深いトピックです。

nakata

なんと、私も周回遅れで昨晩、家族で観ました。タイムリーなエントリーでした。
思わずコメント欄に指が伸びてしまいました。
内容については、書かれたエントリーに全く同感です。違和感を感じたままの2時間でした。

humu

息子さんは第一回作品として考えると,多少の部分では多目に見てあげても良いかもしれません
が,プロとしてお金を払う映画という土俵でやったのは選択としてどうだったんだろう
と思わなくもないです
これが民放の2時間特別アニメで視聴者はタダで見れるなら「まあこんなもんか」で
済んでしまう気もします

わたし個人の感想としては宮崎アニメ全てにおいて,見終わった最後に「で?なにが言いたいの?」
と疑問符が山ほど付いてしまいます

いわゆる口に合わないんだと思って納得してますが・・・
それと,宮崎アニメはプロじゃない話題の芸能人ばかりが声優になってしまって
それが足を引っ張りまくってるように感じます,あまりにもヘタ過ぎですね

うみ

宮崎さんや高畑さんはテレビアニメシリーズで多く経験を積まれていますからね。そういった経験を今のジブリのスタッフは得にくくなっているのではないかな、と思います。
最初の仕事が、いきなり劇場大作といった感じで。

入社をしたら、すでに大規模OSや、オフィスソフトウェアが存在し、一から新しいソフトウェアを開発するのではなく、会社の主力商品の次期バージョンを開発しているというのに近いかもしれないですね。

Dyun

後進など、人と仕事と現場があれば育つものではないでしょうか?

思うに、私が好きな「ナウシカ」「ラピュタ」「トトロ」「カリオストロ」などには宮崎駿らしさが随所に現れているのですが、最近の「千と千尋」「ハウル」などの作品にはそれがあまり無い様に思います。タイトル選択などの商業的理由もあるかも知れませんが、宮崎駿さん自身があえてそれまでとは異なる表現にトライし続けている結果なのではと思っています。

個人的には、宮崎監督にはまた「ラピュタ」の様な大冒険活劇を作って頂きたいですね。舞台を空から海にでも移して、海中都市などの美しい映像や、元気爆裂の少年少女の大活躍が見たいです。

eakas

> 良い作品を作る力が一個人に属しているというのは、なんだかそれはそれでうれしいような気もする。
結局はそこに集約されるのでしょうね。ImaginationとWill Powerを持っている人ですね。

> 個人的には、宮崎監督にはまた「ラピュタ」の様な大冒険活劇を作って頂きたいですね。
未来少年コナンとかもなつかしいですね(^-^
でも、やっぱり年齢を重ねることで、表現したい内容が変わってくるのだと思います。
それでも千尋では凄いエネルギーを感じました。
同じくいぶし銀の監督なのに若手を圧倒する監督といえば、リドリー・スコットも凄く尊敬します。

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